2017/01/21 のログ
アラン > 「……何これ」

白を基調としたコートのフードを被った男性。
巨大な氷柱の裏に一人の賊と共に隠れ、隣の賊にそう問いかける。
メグメールの街道で馬車を襲撃するという事で馬車の襲撃の補助・護衛のために彼らに雇われた。
雇われたのだが…いざ襲撃を開始すればこの有様。

いきなり現れた魔術学校の制服姿の少女に仲間の賊達が瞬く間に氷漬けにされていく。
『あんな少女相手に情けない』と思いつつ、チラッと見えた得物を理解すればその考えも改まっていく。
両手に持っていた魔法銃。それにこの巨大な氷柱と跳弾による死角の無い攻撃。

「こりゃ、『使う』な。……今回の襲撃は諦めた方がいい」

隣の賊の肩に手をポンと置き、他人事のようにそう告げる。
馬車の襲撃ならば簡単と思ってた数時間前の自分に説教がしたい。
自分の発言を聞いた賊は怒り出して、「そのためのお前だろ!」と自分の頭を叩いた。

「え~…だってあの娘強そうだし…わかった!わかりました!行けばいいんでしょ行けば!!」

頭と背中を何度も叩かれれば、フードを取っ払って氷柱の陰から出て少女の方へ向き直る。
見えたのは金髪のツインテールに魔術学校の制服姿の彼女は自信に満ちた表情で笑みを浮かべていた。
頬を掻き、首を鳴らせば彼女の方へ向かい直り、そちらへ歩いていく。

エルフリーデ > 「悪党に容赦するほど、わたくしは慈悲深くはございませんことよ? それと……」

改めて警告を発するも、背後から不意打ちを狙って忍び寄る族の気配に気付く。
飛びかかってくるのを音で察知すると、振り返りながら後退し、スカートが揺れるのも気にせずに色白の細い足を無遠慮に振り抜く。
首の動脈を打ち付けつつ、足の甲を首の裏に引っ掛けると、そのまま振り抜くようにして地面に叩きつけ、正面へと向き直る。
顔面から地面に激突する鈍く痛々しい音が、彼等の戦意を削ぐだろうと思ってのパフォーマンスというのもあった。

「残念ながら気付いてましてよ?」

返事はなく、賊の一人はくの字になって顔から地面に突っ伏している。
何やら柱の裏が騒がしいのに気付くと、そちらへと銃口を向けながら警戒していく。
そこから現れたのは、白いコート姿の男。
身長も高く、戦う男といった様子の彼に警戒は緩めず、銃口も向けられたまま。
何時でも撃てるという威嚇を込めて、銃口からは魔法陣が広がっていた。

「止まりなさい、それ以上近づくのでしたら撃ちますわよ?」

変わらぬ自信に溢れた様子、満面の笑みも少々高飛車な口調もあって愛らしいというよりは小憎たらしいといったところか。
ワインレッドの制服姿はコクマー・ラジエルの物とも異なり、ここらではあまり見ないものだろう。
表情こそ慎ましやかなら、西洋人形の様な可愛らしさの在る顔立ちだが、今はそれが見て取れるやらどうか。

アラン > 「……!」

後ろから奇襲をかけた賊に対応する彼女。
見事な蹴りを喰らい、顔から地面に叩きつけられた仲間を見て、驚いた表情をする。
鈍い音が耳に残り、動かなくなった賊を見て顔を真剣なものへと変える。
先ほどの緊張感のない発言をしていた彼とは正反対の表情で彼女を見据えた。

(流石にやり過ぎだ。……大人の厳しさ、教えてやる)

馬車を襲撃した賊に対しての今の攻撃。
何の罪もない人々を脅かした者に対する攻撃として、彼女や周りの者の中では正当化されるかもしれない。
しかし、今の攻撃をした彼女が自信満々に嗤っているのが気に食わず、眉間に皺を寄せる。

「魔法銃、魔法陣…並の銃じゃなさそうだ。言葉遣いとか制服とか…裕福な所の出か?
 裕福で英才教育を受けてて…それで、自信満々という訳か…」

彼女の銃、身なり、言葉遣い。
それらを視て、独り言のようにブツブツと呟いて観察結果を口にする。
彼女の発言と向けられた銃口を見れば足を止めて、腕を回す。

「…あぁ、撃ってこい。」

短くそう返せば、手を前に出し、掌を彼女の方へと向ける。
掌には青い魔法陣を展開させて彼女の攻撃を防御する構えを取り、彼女に『来い』と軽いジェスチャーをする。

エルフリーデ > 先程までの賊と違い、闇雲に突撃するような様子は見えないものの、憤りを向けられているのは分かる。
火の粉を払うわけでもなく、奪うために弱者を襲う輩の身の錆、自業自得だと思えば、その怒りを正面から受け止めるつもりなど無かった。
だから、笑みは変わらずに、力を持つものとして悠然と立ち向かう。

「……何をブツブツ仰ってるのかしら。何か言いになられたいなら、確りと仰ってくださいな?」

罵声の一つもなく、何かを呟く様子は奇妙に見える。
眉をひそめて訝しげに様子をうかがっていると、掌を向けて戦闘体勢を取る彼に、笑みがゆっくりと収まっていく。
魔法に対して何かできるのだろうか、だとしても自分の魔法弾が早々破られることはないと思えば、左手に握った魔法銃のトリガーを絞った。

「では遠慮なく…」

引き絞られると同時に魔法陣から氷の槍が吐き出され、白い冷気を撒き散らしながら彼へとまっすぐに飛翔する。
恐らく、これは止められるか…最悪、自分の術のように反射させてくるかもしれない。
その上で、同時に右手の銃のトリガーを引いた。
向けた銃口は自身の右手側の方角、氷の柱に水の弾丸を反射させ、迂回するような跳弾で彼の背後を狙おうとする。
当たれば水圧による強い衝撃とともに、魔力が冷気となり、着弾地点を急激に冷やそうとするだろう。

アラン > 相変わらず笑みを浮かべ、悠然としている彼女とは相反した強張った表情。
目を細め、眉間に皺を寄せた彼の顔は怒りが滲み出ているものの、頭の中は冷静であった。

「……!」

彼女の銃から発射された氷の槍。
掌の魔法陣を大きく展開し、魔術を行使する。
魔法陣から盾を喚起し、迫って来る氷の槍の衝撃から彼を守る。

左手の魔法銃から放たれた氷の槍を防いだのを見れば、すぐさま盾の取っ手を掴んで後ろへと投げる。
氷の柱を跳弾し、背後を狙った水の弾丸を盾で相殺する。
盾は強い衝撃により吹き飛び、冷気により瞬く間に氷結する。

「怖い怖い…では、次は俺から…!」

氷漬けになった盾を見て、そう小言を呟けば彼女の方を見据え、走り始める。
彼女の方へ走りながら、自身の周りに六つの魔法陣を展開させる。
魔法陣は彼と並走しながらそれぞれ一本づつ剣を喚起して、彼女の方へ矢の如く放ち始めた。

エルフリーデ > 正面から囮として放った派手な槍は、彼の魔法に遮られる。
彼が浮かばせていた魔法陣は、どうやら盾を呼び出すためのものだったと見えた。
けれど、背後の攻撃はどうか?
槍の着弾から少し遅れて回り込んだ水の魔弾は、放られた盾に撃ち落とされる。
時間差があるにしても、こちらの手を理解しての対応に、一人前に出てきた理由に納得がいき、違う笑みが浮かぶ。

「貴方こそ、よく後ろからの攻撃に反応できたものね。ふふっ…」

叶わなかった年下の少女との戦いを喚起させるような、魔法の応酬。
戦いに喜びの笑みを浮かべれば、彼の突撃に備えた。
地面に二つの銃口を向ければ、バックステップをしながら一つを放つ。
それは二人の間に氷の槍衾を地面から発生させ、氷が剣と視線を遮る壁の役割を果たすだろう。
氷自体は、剣がぶつかればひび割れ、壊れてしまう耐衝撃性のない、貫くための攻撃手段だが、遮れればよかった。

(「これなら如何ですの?」)

地面に向けてもう一つはなったのは、罠となる魔法の弾丸。
彼の進路に合わせるように放ち、氷槍の襖の真裏に設置していく。
彼が壁を砕いて突撃するなら、罠となった魔法が足元を氷の枷で包み込み、移動を封じ込めようとするだろう。

アラン > 氷の槍と水の魔弾による波状攻撃を防いだ途端、笑みを浮かべた彼女。
何が可笑しいのかわからず、ムッとしながら剣を放ったものの、氷の槍衾によって防がれる。
自身の剣と視界を遮ったそれを見て、チッと舌打ちをする。

「偉そうなお嬢さんだ…!アンタの鼻っ柱を折るのが楽しみだ!」

彼女の言葉を聞けば、走る速度を緩めつつ、今度は魔法陣から鉄製の戦鎚を喚起する。
鎚頭が異様に大きいそれを先ほど同様に六つ、氷の壁へ向けて放つ。
矢のように放たれた戦鎚は一定の距離で槍衾に激突し、氷を砕いて道を作る。

(見えた…)

彼女の姿を視認すれば、真っすぐと走りながら先ほど同様に剣を喚起し、放つ。
矢の如く彼女へと剣が向かい、自分もその流れに乗って突撃しようとした―――矢先、足が動かなくなり、その場に立ち止まる。
何があったのかわからず、驚いた表情をしつつ、真下を見ると氷が張って足を掴んでいた。

「…っ!?罠か…!」

足元の氷を見て、引っ張ったり、揺らしたりして壊れないか試す。
しかし、彼女が創りだした氷は強度が高く、それだけで壊れないのは明白であった。

エルフリーデ > お稽古事の様に魔法を嗜んだ、同じ上流階級の少女達との手合わせでは何一つ満足できない。
生きるために学んでも、自分に追いつかない平民の少女達では満足のしようもない。
唯一、口惜しさすら感じたのは今まで一人だけ。
それに匹敵する戦いの高揚を覚えながら、戦いを楽しむ笑みがあふれる。

「どうぞ折れるものなら折ってくださいませ?」

高慢ちきな態度は崩れず、魔法を放てば剣に合わせて鉄槌が道を切り開く。
砕けて開けた道から放たれるなら横への広がりは少ないと判断し、身を低くしながらサイドステップで回避を試みつつ、銃口を彼へと向けた。
氷の罠が彼を掴んだのを確かめれば、水の魔法弾を左右交互の発射で連射し、彼の胴体めがけて飛翔させる。

(「チェックメイトですわっ!」)

一発の凍結力は弱くとも、連続して当たれば、凍死や凍傷を与えぬまま、氷の枷で全身を覆って動きを封じ込めるぐらいは出来る。
氷の枷は先程の攻撃ほどの衝撃が当たれば砕けるだろうが、逃れようと藻掻くだけで砕けるほどの柔い強度はしてないようだ。
後は彼の剣が避けきれていれば完璧だが、果たして。

アラン > 戦いの高揚を覚え、笑みを浮かべっぱなしの彼女。
何が楽しいのかさっぱりわからない、頭を抱えて、ため息を吐きながら若干呆れ顔になる。
足元の氷を見れば、呆れた顔を真剣なものへと変え、彼女を見据える。

「あぁ、今からそっちに行くから待ってろよ!」

氷によって足止めされながらも強気の発言をする。
相手と自分の間に少し距離があるのを確認すれば、丁度中間地点へ魔法陣を展開する。
普通の魔法陣とは違い、魔法陣を上下に三段に重ねた巨大なものを展開させた。

「…ッ!」

彼女が引き金を引き、水の魔法弾を雨のように発射した瞬間、魔法陣が青く発光して地面から巨大な壁が出現する。
壁は水の魔弾から彼を守りながら、上へ上へと伸びていく。

その隙に手元の魔法陣から鉄鎚を喚起し、即座に足元の氷を割り始める。
もがくだけでは割れなかった氷は武器による衝撃で瞬く間に割れ、彼を拘束から解放する。

「よし…あとは…!」

目の前で上へ上へと伸びる壁。その勢いが弱まり、止まる。
壁の根元には巨大な剣の『柄』のようなものが見受けられる。

そう、喚起したのは壁ではなく、巨大な剣であった。
巨人が使うような巨剣。それを喚起し、攻撃を防ぐ壁として応用したのだ。
剣の根元にある魔法陣が消え去れば、重力に従って地面に柄尻が衝突し、彼女の方へ倒れていく。
その様子はまるで建造物…塔が倒れてくるように見えるだろう。

エルフリーデ > 口調も態度も貴族に在りがちなそれだが、中身は見た目とは裏腹に血に飢えたようなところもある。
殺し合いというよりは、手合わせ。
チェスの一手を一つずつ楽しむようなそれは、戦いにおいては酔狂かもしれない。
連射した水の魔弾が、彼が発生させた巨大な壁に弾かれていく。
防御の魔法にしては随分と大きな壁だと思いながらも、攻撃が通らないなら次の動きに回る。

「あとは…どうされますの?」

その言葉に問いかけるように言葉をかけながら、彼の側面に回り込もうと全力疾走していく。
壁がないであろう彼の側面側に回り込めば、今度は魔力を圧縮した魔法弾を彼に向け、左右交互の射撃で連射を重ねる。
ただの弾幕…と見せかけながら、その実、一発だけ氷の槍を発生させる魔法弾を混ぜた。
それは狙いが逸れたかのように彼の前方の足元へ落ちるように狙い、何かに当たれば、そこから彼目掛けて氷の槍が突き出される仕組みである。

「っ……!?」

そして、壁が本当の正体を表せば、流石に高慢ちきな笑みも消えて焦りが浮かぶ。
しかし、狙った場所が肝心となる。
壁で遮る前に見た、自分が居た方角へ倒れるように仕向けるなら、ただ驚くだけだ。
こちらへと狙い直して倒れるなら…巻き込まれないように、攻撃を中断して横っ飛びに逃げ、地面を転がるだろう。

アラン > 水の魔弾を巨大な壁で防げば、足元の氷を割って走り出す。
巨大な壁…もとい、剣の近くへと来れば、鎚を捨てて手元の魔法陣から剣を取り出す。

「次の手は…っ!?」

側面に回り込んできた彼女に気付く。
二丁の魔法銃をこちらに向ける彼女に目を見開き、驚くと共に目の前に魔法陣を展開し、彼の体をすっぽり覆い隠すほどの大盾を喚起する。
それの取っ手を左手で取って、連射される魔法弾の衝撃に耐え続ける。
大盾のおかげで魔法弾によるダメージはないものの、視界は遮られているために前方に降りた魔法弾には気づかなかった。

「…っ!」

巨大な剣が倒れる。
しかし、彼女が居た方角へ倒れるために彼女や自分に対してダメージは無く、轟音と砂埃を発生させるだけであった。
その勢いに乗じて彼女へ向かおうとした矢先、足元から氷の槍が発生する。
予想外の不意打ちに反応が遅れ、左手の上腕に槍が刺さり、切断される。

左手は掴んでいた盾ごと彼から解離し、地面へと転がる。
切断面から鮮血が滴り落ち、地面を赤く染め始める。
身体に走る激痛。それに顔を歪ませながら、傷口をもう片方の手で抑えながら彼女の方を見据える。

エルフリーデ > 大きい壁というのもあり、こちらの動向を見失っていた彼への攻勢は緩めない。
連射と、一発だけの不意打ちを交えた追撃は、こちらの思った通りに彼を押さえ込んでいく。
ただ一つ、腕を切り落としてしまう事は想定外だった。
鮮血と共に手が転がっていくのを見れば、笑みは消え、少し表情が青くなる。
手合わせの合間、血が出ても千切れるほどの事は事故以外ではなく、耐性の少なさに攻撃の手は止まった。

「――…勝負着きましたわ。まだ、続けられますの?」

銃口は降ろさず、降伏を迫った。
賊達も切り札であっただろう彼の重傷に、士気は失われるはずと思いながら軽く、周囲を一瞥して確かめる。

「その内、麓にいる治安維持の方々がここへ駆けつけますわ。神妙になさるなら、相した応じ方をしますわ…その腕も、治してくださるでしょうね」

麓にいる王国軍に属した彼等なら、治癒魔法の使い手もいれば、マトモな医師もいる。
個人的な感情としては、稀有な術を使う彼を、片端にするには世に惜しいと思っていた。
どうなさいます?と、改めて問いかける表情は、憂いの混じった、続けたくないという気持ちが浮かんだものだった。

アラン > 断面から血が吹き出る。とりあえず止血しようと冷静になりながらまだ残っている上腕の部位に布を巻き、きつく縛る。
縛った途端に血は止まり、止血をすればそこに布を巻いて応急処置を施す。
その後、腕の無いまま彼女を見据えれば、笑顔が消え去り、青くなった表情へと変わっていた。
それを見るや否や、ニヤリと笑って彼女の方へ歩き出す。

「…こういう時、『あぁぁぁあ!!腕がー!腕がー!!』って騒ぐもんなのかな?」

先ほど取り出した剣を手に、彼女へ向かって歩いていく。
腕を失い、激痛が走っているにも関わらずに表情を変えず…寧ろ、余裕そうにしてそう聞く。
彼女が『そういうもの』に耐性が少ないことを看破し、自分のペースに引き込もうとする。

「別に、戦ってりゃこういうのは想定できるだろうよ。…何をビビっているのか」

憂いの混じった表情で問いかける彼女に向ってそう告げる。
敢えて明確な答えは出さず、ただ彼女の方へ歩いていく。一歩、また一歩と。
応急処置を施した布は歩く度に血が滲み、布を赤くしていく。
白いコートなだけに血はそれこそ目立ち、彼の服を赤く染めていく。

エルフリーデ > 「…っ、そんなこと知りませんわ。とはいえ、両腕があった貴方はわたくしに敵わなかったのに、これ以上戦っても結果はお分かりでしょう?」

戦士でなくとも、片腕を失うと取れること行動に制限がかかってしまう。
劣勢から更に劣勢になった今、彼に勝機があるとは思えない。
それなのに尚、戦おうとでもいうように剣を手にこちらへと歩くなら、ぎゅっとグリップを握りしめて狙いを合わせ続ける。

「臆してなど…っ、無意味と言ったまでですわっ」

広がる赤いシミからは、独特の匂いがここまで届く。
それだけ出血の量が多いということだ。
コートが真紅に染まるのではと思えそうな出血は、これ以上の攻撃を躊躇わせる。
血みどろの殺し合いには慣れていない、それもあるも、幸福を迫ったとおり、結果の見えた相手に追い打てるほど、心を冷たく出来ない。
青い表情は引っ込んでいたが、適正射程より近づこうとすれば、彼に当てぬ程度ギリギリのところをかすめるように魔法弾を放つだろう。
次は当てるというような、脅しの射撃を余裕の消えた表情で。

アラン > 「…さぁ…そうとも限らん」

片腕を失った今、戦闘においてはこちらが圧倒的不利には変わらない。
しかし、身体的な損傷より精神的な損傷の方が与えるダメージが大きい。
激痛が走る。片腕を失ったのはそれこそ『痛い』が、今はこちらが彼女を押している。

「っ…威嚇射撃って奴か?」

彼女が引き金を引き、魔法弾を放ってくる。
魔弾は頬を掠めて奥の氷柱に命中し、掠った頬からは血が垂れる。
それを拭いながら、笑顔を向けて彼女へそう問いかけた。
この状況で笑顔を作る彼の精神力…それは彼女にとっては狂気の一言で片づけられるだろう。

「寧ろここからが本番だ。手負いの虎は凶暴ってね」

右手に持っている剣の輪郭が赤く光る。
エンチャント魔法を行使し、剣に魔術的な効果を付与した。
赤く光る、それだけで魔術的な効果を付与したことは彼女にもわかるだろう。

エルフリーデ > 「正気ですの…っ?」

これだけ不利な状況下に陥りながらも、まだ推し進めようとする彼に驚愕しつつも、問いかける。
メンタルのブレが実力を鈍らせてしまう、それは王都でも感じていたことだった。
だからこその威嚇射撃にすら笑みをを浮かべるなら、狂っていると、心の中で呟きながら剣に光が宿るのに気づく。

(「…本気のようですわね」)

剣に魔法を宿したということは、近接して何かするか、斬撃に力を宿し、飛び道具を放つか…想像できるのはそれぐらい。
どちらにしろ、近づけてはならないが、彼を殺したくもない。
取るべき手段を決めると、覚悟を決めるように深呼吸を一つ。

(「まだ死ぬわけにも、穢されるわけにも参りませんわ…っ!」)

バックステップで距離を離そうとしつつ、拳銃の銃口からは魔法陣が広がる。
後退しつつ放ったのは、氷を散弾として放つ魔法弾だ。
普段は氷の先端を尖らせ、威力を増していくところを、平にすることで、衝撃力だけが余すことなく伝わるものになる。
強烈な突進を食らったような衝撃力があれば、無謀な攻撃の手も緩むだろうと、心の弱さ故、それでも覚悟を決めたというような表情で、殺さぬ追撃をかける。

アラン > 「正気だよ!大丈夫……とはいっても、見えないか」

彼女の言葉にそう返せば、笑顔を消し去り真顔へと変わる。
いい加減に余裕ぶるのはやめ、真剣に彼女と決着を付けようとする。
それにしても激痛や損傷が治るわけではない。早めに付けなければ。

「…!」

彼女が魔法陣を広げれば、走り出して急接近を開始する。
氷を散弾として放ったのを見れば、走る勢いは止めずに剣先を彼女の方へ向ける。
途端、剣身から炎が発生し、氷を溶かして彼女の方へと向かっていく。

それと同時に彼女の頭上へ魔法陣を複数展開する。
炎を回避した場合に備えて移動先を予測し、そちらへナイフを雨の如く降らせる。
迫りくる炎を避けてもナイフの雨。炎を避けなければそのまま丸焦げ。
明らかに決着を付けようと彼女へ猛攻を仕掛けた。

エルフリーデ > 「それなら刃を収めてくださいなっ、こんなことで失うなんて、愚かだと思いませんのっ!?」

失血は完全に止まらず、千切れた腕も直ぐに術でつなぎ直さねば癒えないかもしれない。
こちらが銃口から魔法陣を広げ、後退しつつの散弾を放つと、切っ先から炎が迫る。
溶ける氷、このまま下がり撃ちでは埒が明かないと思うと、危険だが接近戦を仕掛けることに決める。
互いの間を遮るように、地面へ魔法弾を撃ち込み、先程と同じ氷の槍衾を発生させるも、切っ先は彼ではなく空へと向かう。
氷の壁といった状態にはなるが、炎で簡単に面積を減らし、槍同士の隙間から炎が入り込む…が。

「はぁっ!!」

溶けて小さくなれば、蹴っても砕けるほど。
正面の氷を蹴り飛ばし、鉄板仕込みの靴が砕くと、先程よりも大きい礫が散弾となって勢い良く彼へ飛び出していく。
炎に耐えきり届くなら、上体を崩して炎の狙いを逸らせるはずと、近づくための活路を求める反撃。
それこそ、そこから氷の槍を放てば良いものを、放てないのは殺し合いに慣れていない証拠だ。

アラン > 「失うつもりが無いからこそ、刃を収めないんですよね…!」

氷で炎の奔流が防がれれば、それを全て溶かす勢いで火力を上げる。
瞬く間に氷は水へと変わり、蒸発していくものの全て溶かしきるには多少の時間が掛かり、脆くなった氷を彼女が蹴とばした。
先ほどの散弾より大きい氷の礫がこちらに迫ってくるのを見れば、炎を放ちながら剣を振り弾き、それも出来ないものは火力を上げて溶かしていく。
大きければ溶かせないという彼女の思惑を看破した様子で礫の散弾に対応すれば、尚も彼女へ火炎を降り注ぐ。

(そろそろ詰めないとヤバいな…主に、俺の体が…)

左手に目をやれば、血が一滴、滴り落ちる。
その様子を見て冷や汗を流しながら、自身の背後に無数の魔法陣を展開し、彼女の方へと向ける。
そして、魔法陣から剣を矢の如く、彼女の体へと放っていく。
頭や首は狙わず、胴体や手足を貫いて動きを止めようと、剣の風を放った。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアランさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からエルフリーデさんが去りました。