2016/06/30 のログ
■ミシェル > 強がる声は少しだけ音がブレて、動揺を感じさせられる。
いや、大丈夫ではなさそうだと思うと、変わらぬ笑みを深めていく。
「うん、あそこ。ホントね、ここらは管轄外なんだけど…ここらで商人が襲われちゃうと、こっちの収入も下がるから最悪なのよ」
港町と王都をつなぐ陸路に危険が蔓延ると、その途中にある集落の集客が下がってしまう。
下げぬための遠出なのだと説明しながら、困った様に笑っていた。
(「冒険者…といってたけど、それなりには使い込んでる跡はあるわね。実際に戦いに巻き込まれたかは、わからないけど…」)
装備を一瞥しながらそんなことを考えていたせいか、彼が照明弾の銃に警戒したのには気づいていなかった。
「ふふっ、素直でいいわ。もし野盗がよってきたら剣のテストに切り刻んであげるわ」
満面の笑みで物騒なことを紡ぐも、なんてね?と冗談っぽく茶化していく。
隣へ座ると避けようとする仕草にも楽しそうに笑っていた、年下の男の子をからかっているようで楽しいらしい。
「白檀の棍棒亭…たしか冒険者が多い宿だったわね、テルヴェね、私はミシェル。チェーンブレイカーって組織で戦闘担当をしてるの、よろしくね?」
簡単に自己紹介をしつつ、彼へと顔を向けると銀の髪がさらりと揺れる。
それからすっと掌を差し出していく。
「握手ぐらいはしてくれるでしょう?」
先程避けた仕草は気づいていて、クスクスと微笑みながら赤い瞳を細めながら問いかける。
■テルヴェ > 「ミシェルさんですね。えと……その、お世話になります。
……握手? も、もちろんですよぉ! ぼ、僕だってその程度の礼儀くらい知ってます!」
相手の挨拶には軽く会釈をして応じるも、握手を求められればややたじろぐ仕草を見せる。
そして布服のインナーの裾で軽く掌を拭うと、ミシェルさんの手を握り返した。握手を交わしたあとは、しばし自らの掌を一瞥している。やや頬が染まっている…。
すぐに焚き火へとまた向き直り、お尻を地べたに降ろして全身の力を抜く。
「ドラゴンフィートは王都と交易されてるんですね。そうですよね、商路は守らないと最悪孤立しちゃいますからね……。
いろんな人にこの街道は護られてるんですね……あまり気にしたことはなかったですが、頼もしいです」
手綱をどこかに繋ぐこともなく、キャンプからやや離れた位置でジッとしているミシェルさんの乗馬。
視線をその影に移しながら、テルヴェは喋る。……なかなか、話している相手を直接眺めることは少ない。
「ミシェルさんは強いのですね、きっと。……一人でここにいた僕が言えたことでもないですが、ミシェルさんも一人でしたし。
さっき連絡取ってたのは見ましたけど、あんな連絡手段は見るのはじめてですし……きっとお仲間は遠くにいらっしゃるのでしょうか」
傍らに積んだ小枝を焚き火に投げ込みながら、つぶやくように問いかける。
緋色の瞳の表面が、にわかに火力を上げて弾ける炎のゆらめきを映し、水面のように揺らめく。
「ミシェルさんは、こうやって夜の街道をひとりで警邏してて……ええと、『寂しい』っていうのかな? そういう気持ちになることってありますか?」
テルヴェはゆっくりとミシェルさんの方を振り向き、どこか言葉を選ぶようなゆっくりとした口調でそう言う。
童顔の片側が煌々と焚き火に照らされ、浮かび上がる。その表情には先程までの笑顔はない。
■ミシェル > 「ふふっ、どういたしまして。 あら、本当に?」
握手を求めると思っていた通りの反応が見える。
クスクスと微笑んだまま彼の手を握り返し、何度か揺らしてから解いていく。
たったそれだけなのに恥じらうような頬の赤みが見えると、草食動物の血が流れているくせに、彼が獲物の様に見えてしまう気がした。
「交易もあるし、九頭竜山脈に向かうルートとか、ダイラスに向かうルートの丁度真ん中に集落があるのよ。だから、宿をとったり、馬車の手配をしたりとかね? そうよ、ダイラスからのルートが酷くなると塩とか砂糖も手に入りづらくなるわ。本当は王国軍とかの仕事だけど、あんまり熱心じゃなくてね、困ってるのよ」
昔からずっと一緒にいた馬というのもあってか、逃げようという様子もなく、先ほどの囁きで今夜はここで休むと馬自体も気づいているのだろう。
「強いわよ、魔法と剣ならそこらの賊程度に負ける気なんてしないもの。 あれね、火薬で光る弾を上げて、組み合わせで意味を読み取るの。私が撃ったのは、守る必要がある人を見つけた、動けない、そのまま護衛するって意味なの。向こうの光は了解ってね?」
そんな信号弾の意味を説明していくと、炎が強まっていく。
不意に問いかけられた言葉は、何処か意味深で笑顔の消えた少年の様子に、こちらも口元の緩みがなくなっていった。
「……たまにね? 私はミレー族だけの里で自警団に入ってたんだけど、私以外の団員はみんな死んじゃったわ。里の人は守れたけど、もっと強かったらなって、静かになると思い出しちゃう時はあるわ」
仲間を失った寂しさ、それを語ると改めて彼の顔を見つめる。
こっちをみてと言いたげに彼の掌に片手を重ねようと手を伸ばしつつ、ただ見つめる。
「それで…テルヴェは寂しいの?」
■テルヴェ > 「交易都市というか、流通の拠点なんですね。そこから伸びる道を全部見張るのは……さすがに大変そうです……」
ハァ、と深くついたため息は、コトの壮大さに圧倒されてしまったせいか。同時に、そういった重要な仕事に乗り気でない王国側に呆れたのもあるか。
とはいえ彼女の立場の言葉だ、本当は王国軍もそれなりの人員は割いているのかもしれないが……大変な仕事であることに変わりはあるまい。
「……ミレー族。ミシェルさんって、ミレー族だったんですか?」
彼女の口からその言葉が出ると、テルヴェはハッとしたように顔を上げ、再び隣に座る女性を見る。
…暗い中ではっきりと見えていなかったゆえに勘違いをしていたが、ツインテールのように見えた頭部の垂れ下がりは耳だった。動物の、おそらくウサギの耳。
人間のそれとは様相を異にする頭部の造形を、唇を一文字に結びながら興味深げに眺め続けるテルヴェ。
しかし、ミレー族という言葉に対する発言はそれ以上は続かなかった。何か考え事をしているようだ。
「……仲間を失われたんですね。乱れた世の中が悪いんですかね……お気持ちはお察しします。
僕は……ううん……たぶん寂しいんだと思います。よく、わかんないんですけど。
一人で旅をしてて、寂しくないか?とはよく聴かれるんですが……その意味が、最近ようやくわかってきた、というか」
一般的には冒険者は、危険地帯に赴くなら4~5人、単なる行商の護衛や伝令の仕事でも数人でチーム(パーティ)を組み行動するのが基本であろう。
ひとりで出歩いているテルヴェは、その常識からも外れている存在といえる。
「いままで、1年近くずっとひとりで冒険者やってて、どこに行くにもひとりで。
それが気楽でいいと思うことはあっても、辛いって思ったことはなかったんです。でも、今回の旅は、なんか……その、妙に辛い気持ちがあって」
ふと、首を回し、進行方向……王都のある方角へと目を向ける。王都の明かりに照らされた夜空が、薄ぼんやりと白んでいる。
「なんででしょうね、アハハ……。……だから、ミシェルさんが居てくれるの、とても嬉しいんです」
■ミシェル > 「それを見越して組合長はあそこの土地を手に入れたらしいけどね? ホント…もうちょっと仕事が減ってほしいわ」
こちらも釣られるように溜息を溢す。
幸いな事に近くの森にある各集落からも増援を出してもらえるようになったが、それでも平穏は訪れない。
「うん、そうよ? ほら、ここ…兎の耳なの、それと、やっとこっち見てくれたわね」
ロップイヤーラビットの血が混じり、本来ならピンとしている耳がだらりと垂れている。
その証拠というようにツインテールのように垂れていた耳を掌でめくると、隠れていた内側はウサギの耳らしい薄桜色の肌を見せた。
やっとこっちを見るようになってくれた彼に、悪戯っぽく呟いて、柔らかな微笑みを見せる。
「時代か、それとも人か、どっちでしょうね。 …あら、一人旅なのね」
こちらも一人でいることは珍しいが、大体は2~3人で動くことが多い。
冒険者なら役割分担もあるからもっと数は多いだろうと思っていたものの、今日だけではなく常が一人と聞けば、少しばかり目を丸くして驚く。
「ふふっ、賑やかな世界にいると忘れられるけど、こうして一人っきりの空間は寂しかったってところかしら」
王都、喧しくも危なっかしい場所だが寂しいことは忘れられるだろう。
空元気に笑うようにみえた彼に目を細めながら、おいでという様に両手を広げてみせる。
「寂しいんでしょう? ぎゅってしたら落ち着くとおもうけど…」
どうかしら? と変わらぬ笑みで小首を傾げる。
まるで捨てられた子犬を見ているような心地で、庇護欲を擽られての事だった。
■テルヴェ > 「兎の耳……へぇ……不思議。髪のようにしか見えませんでした。
あはっ、裏側は綺麗なピンクなんですね。人間よりも耳の聞こえもよかったりするんですか? ……あっ」
ミレー族という自分の言葉に屈託のない反応を返し、耳を弄っているミシェルさんに、テルヴェの興味が浮つき出す。
座ったままで上体をひねり、身を寄せながら首を伸ばし、その獣耳の表や裏、付け根や先端に視線を巡らせる。
……そして、髪の香りに触れられるほどに顔を寄せたところで、ハッとなってテルヴェは素早く元の姿勢に戻ってしまった。
自分から女性の体に近づくことなどめったになかった。うつむき、かっかと火照る頬を懸命に諌めている。
「……ご、ごめんなさい。ぼ、僕、あまりミレー族のひと、見たことなくて」
はふ、と上気したように詰まった吐息をひとつ吐くと、煩悩を追い出すように首を振る。
「うーん……僕、どちらかというと王都の賑やかさは苦手だった……気がするんです。耐えられないってほどじゃないですが。
ひとりで野原を歩いてたり、こうして野宿してるほうが、落ち着くというか。ずっとそうして生きてきたはずで。
でも今日はなんか……早く王都に帰りたいような、そうじゃないような、よくわからない気持ちになってるというか……。
こんなこと、ミシェルさんに言っても仕方ないですよね。アハハ……」
未だ自分でも自らの心境の変化を受け止められていないようで、紡ぐ言葉も曖昧だ。
そして、ミシェルさんが傍らで両腕を広げ、柔和な表情で待ち構えるのを見ると、テルヴェは手を突き出しイヤイヤと首を横に振り…。
…振りそうになり、とどまり、しばし目を伏せながら思案する仕草を見せる。そして、
「……ごめんなさい、ミシェルさん。ちょっとだけ、ぎゅっとさせてください。
僕、自分の気持ちがよくわからなくて。もしそうやって治るのなら、治ってほしいから……。
言い方は変かもしれませんが、その……ちょっとだけ、試させてください」
初夏の虫の音に掻き消えそうなほどの小さな声でそう呟くと、テルヴェは相手の促すままに身を寄せ、ミシェルさんの胸……はさすがに失礼と思い、その下、お腹あたりにそっと顔を埋めるように寄り添った。
埃に多少汚れてはいるが艶やかな金の短髪が、焚き火の明かりに照らされ、きらきらと煌めく。若い雄の汗臭さが、布のインナーからほのかに発散する。
■ミシェル > 「髪の毛と同じ毛色だから、ぱっと見た感じだとわからないのよ。 ふふっ、聴力は強くないわ。ただここから熱を逃せるから動いても疲れにくいのよ」
動きまわるとピンク色の部分から一気に放熱が始まり、体温を調整してくれる。
その為、激しい戦闘でも長く続けることが出来るのもあって兎にしてはこんなにふてぶてしい気質なのかもしれない。
心地よい石鹸の香りを漂わせ、彼が物珍しげに顔を近づける様子にクスクスと微笑み、意地悪な言葉に恥じらって引っ込んでしまうのも、見ていて飽きない。
「…じゃあ季節柄かしらね、雨の時期は冷えるから人肌恋しいとか?」
王都の賑やかさに慣れたせいか、それとも季節か。
どちらにしても寂しそうにする彼に向ける庇護欲は変わらない。
戸惑い、遠慮がちに近づいてきた体を優しく包み込むと、遠慮して腹部に顔を埋める謙虚さに可愛いと心の中でつぶやくと、すっと肩に両手を添えて、こちらから遠慮無く胸元に顔を埋めさせようとする。
その割にはそれほど胸は大きくないが、埋めさせれば、柔らかく簡単に沈み込む感触が彼の顔を迎え入れるだろう。
「遠慮しなくていいのよ、テルヴェは可愛いから、ちょっとだけ特別ね」
汚れていても炎の光りに照らされる金髪は綺麗なもので、優しく髪を撫でる。
ツンとした汗の匂いは、何時もなら嫌に感じるところだけれど、気に入った相手のものだと悪くはない。
柔らかに微笑み続けながら、彼の体を包み込んでいく。
■テルヴェ > 「あっ………う……」
ちょっとの間身を預けるつもりが、肩に両手が回されるのを感じ、小さな体を引き上げられる力を感じると、テルヴェの四肢が驚きにわななく。
慎ましやかなれど柔らかな胸の双丘が、着衣越しに、テルヴェの瞼の上へと押し付けられる。
女性の肉感を頭部のなかでもひときわ敏感な部位で味わう喜びと当惑。ひくひくと瞼や眼球が戸惑いに蠢いている感覚が、ミシェルさんにも伝わるであろう。
しかし、テルヴェは抵抗は見せない。それどころか、全身から力が抜けていき、困惑から来る緊張感すらも徐々に薄れていく。
「……人肌恋しい……うん……そうだったのかもしれません。
暖かくて、いい匂いで……いい気持ち……。ミシェルさんって、そんなに汗かかないんですね。うらやましい…」
ひくひくと鼻先をひくつかせながら、眠たげに脱力した声が鼻歌めいて奏でられる。性徴を感じられない、男とも女ともつかぬ声だ。
本当は汗をかいているかもしれない。だがどちらにせよ、テルヴェの鼻孔に感じられる相手の体臭は、彼の気分を落ち着ける方向に作用しているようだ。
ミシェルさんの腰に回したテルヴェの細い両腕に、ぎゅ、とほのかに力がこもる。
「街でよく、お母さんにこうして抱きすくめられてる子供を見たことがあって……。恥ずかしくて、あまり見てられませんでしたが。
いまはその子供の気持ち、分かる気がします……。
ミシェルさんは、お母さんじゃないはずなのに。へ、ヘンですよね……うう……」
しかし、テルヴェも一応は男子だ。どういう形であれ女体に触れたのだ、生理反応が始まる。
股間の『男の子』が鎌首をもたげ始めたのを察知すると、身を捩り、相手にそれを触れさせない・悟らせないように懸命に隠そうとしている。
その動作自体が怪しいものであるのも確かだが。
■ミシェル > 胸元に顔を埋めさせていくと、腕の中で落ち着きなさそうな様子が動きの振動でも伝わる。
初心な感じの男の子というのもあって、やはり可愛いともっと愛でたくなっていく。
脱力した彼の髪を優しくゆっくりと撫でて、白い指の間を金糸がすり抜けていった。
「ふふっ、気を許した相手の…自分とは違う体温って心地いいものね。あら、多少なりはかいてると思うけど…?」
確りとした組織に身を置いてるのもあり、装備も身だしなみも綺麗にしていた。
だからか、汗の匂いもそれほど際立たないのだろう。
もっとと強請るような彼の腕に髪を撫でていた掌が背中に回り、優しく何度も撫ぜ続ける。
子供ができたらこんな気分なのかなと思えば、ちょっと頼りない息子のように感じて楽しそうに微笑む。
「じゃあ…それをみて心を擽られちゃったのかしらね? ふふっ、私もテルヴェを抱っこしてると、子供ができたらこんな気持ちかななんて思ったところなの、偶然かしら?」
偶然にお互いに思うことが近かったのを喜びながら、不意にもぞもぞし始める様子になんだろうと、頭から疑問符が浮かびそうにきょとんとする。
草の上にある石でも体に食い込んだのかなと思えば、もぞもぞする辺りへ何の気なしに白い手を滑りこませようとした。
■テルヴェ > 「んぅ……ん…」
ミシェルさんの指がテルヴェの髪を撫でるたび、テルヴェは胸の中に埋めた唇を震わせ、猫撫で声を漏らす。
髪質はよく、野外の風と埃に晒されて薄汚れながらも指通りはなめらかで、撫でたところからキューティクルが艶を取り戻してきらりと光る。
「はい……気持ちいい、です。僕、こうしてもらうの、こんなに気持ちいいなんて知らなかった……。
でも、ミシェルさんには何もしてあげられなくて、ごめんなさい。僕、こういうときにどうすればいいかわからないから…」
相手もまたテルヴェを抱きしめて心地よさを感じている。その事には思い至らないニブチンのテルヴェである。
肩を、背中を撫でられる感覚もまた、たまらなく気持ちが良い。ひとつ指が背筋をなで上げるごとに、微睡みの向こうへと誘われていく感覚。
とくとくと心臓がゆったりした鼓動を打ち、また、強く頭部を押し付けた相手の胸腔の中からも同様の鼓動が響いてくる。
それはまるで子守唄のように……。
「………はひゃっ!?」
しかし、そんな夢心地を打ち破るように突如、痺れるような衝撃が股間を襲った。
知らぬうちに自身のズボンの中に差し入れられていたミシェルさんの細い手、その指先のいくつかが、テルヴェの急所に触れたのだ。
そこは女性の色香に晒されて張り詰めつつあり、湯のごとく熱く、また先端はほんのりと湿っていた。
だがその肉感を堪能させる間もなく、テルヴェは跳ねるように腰を引き、その愛撫から逃れようとする。
「……な、何してるんですかミシェルさん! そんな、そんなとこ触っちゃ……!」
しかし、優しい抱擁によってテルヴェの全身からは力が抜けていた。跳ね起きようとはするも、身を完全に離すには至らない。
そして一時手が差し込まれたズボンは僅かにずり下がり、今や勃起しつつあるテルヴェの陰茎の先端が露出してしまっている。
■ミシェル > 髪を撫で続けていくと、心地良さそうな声とともに髪が綺麗になっていく。
もう少しちゃんとした居場所にいれば、もっと可愛い仕上がりになりそうと思うと、このままさらってしまおうかなんて、冗談っぽく心の中で呟きながら微笑む。
「あら、テルヴェの可愛い初めていただいちゃったわね。 いいのよ、こうしてるだけで私も何だかいい気分だから」
幼子をあやすような、ゆったりとした心地よさ。
鈍感な言葉も、初々しい感じで可愛いと微笑むばかり。
このまま眠っちゃうかなと思っていたものの、もぞもぞする理由を確かめようとした瞬間にそれが変わってしまった。
「っ!? そんなに驚かないで、石か何か…食い込んでるんでしょう?」
腰を引いて手から逃れようとすれば、こちらもびくっと驚きながら問いかける。
熱と石とは異なる固さがあたった気がしたが、気のせいだろうと思ってしまう。
跳ね起きようとしたところで、こちらも抱擁が崩れてズボンを擦り下げてしまい、露出した先端に指がぶつかってしまう。
白くさらりとした肌の感触が、先走りの汁に濡れると、指を確かめ、それから視線の先に移る肉棒の先端に暫し呆然としたものの…沸き立つようにクスクスと笑ってしまう。
「ふふっ……ごめんね、笑っちゃって。テルヴェも男の子だから、興奮しちゃうのね」
性欲盛んな兎の遺伝子としては、その匂いと光景が気に入った相手なら欲望として熱を灯す。
可愛い、可愛がりたいと思っていたのが意地悪したいと嗜虐的に歪んでいく。
優しい微笑みが少し、艶っぽくなりながら、赤い舌をのぞかせながら指の蜜を舐めとってしまう。
「……どうする?」
妖しく微笑み、赤い瞳をゆっくりと細めながら彼に問いかけた。
■テルヴェ > 「……な、何笑ってるんですか……うう……」
相手も最初は淫行を働くつもりで手を伸ばしたのではないのだろう。
石が入りこんだとか、こっちを気遣ってくれた事情も分かるが、それでも笑われればさすがにテルヴェも顔をしかめ、半泣きに近い震え声をあげる。
そして、ひやりとした夜風が亀頭を撫で、露出してしまっていることに遅ればせながら気づけば、慌てて手を伸ばし、ズボンを引き上げる。
「どうするって……何を、ですか……ミシェルさん……」
自らの体液でほのかに湿った指先。それが彼女の唇に運ばれ、桃色の舌で舐め取られるさまを目に焼き付けられてしまう。
ぞくり、と戦慄が走る。これまでの人生で幾度も感じた、恍惚の時への期待。雄として雌に食われる、夜の儀式への期待。
……しかし、今日は違った。いま自らの心が求めるものは、淫らな関係の果てにはない気がした。
「……ごめんなさい、ミシェルさん。後生です。ミシェルさんとそういう関係に、僕、なりたくないです。
自分勝手だとは思いますが……僕、もしミシェルさんにそういうことされたら……今以上に寂しくて、みじめな気持ちになりそうで」
ミシェルさんの傍らでテルヴェは、脱力した身体を懸命に腕で支えながら体をそらし、潤む緋色の瞳で見つめ、訴える。
みじめな気持ち、というのは本当のようで、ズボンにできていた肉棒のテントは急速に萎んでいく。
「ミシェルさんの優しさに甘えるようで申し訳ないとは思うんですが……その……優しいミシェルさんのままでいてください。
一晩だけでいいです。お願いです……お願いですから……」
哀願するように声を絞り出し、震える上体をふたたび、ミシェルさんの腹部へと預ける。
布地越しに柔らかな肉と体温を感じ……そこに埋もれながら、テルヴェは小さくすすり泣いていた。
■ミシェル > 可愛い男の子としか思っていなかったのに、雄としての欲望を露出させてきた。
可愛がるという方法も、色々な事を当てはめてしまえる便利な言葉だ。
だから、牝として…彼を貪って蕩けさせて、かわいがってしまおうと思えばこその艶やかな笑みだった。
「言わないと分からない…わけ、ないわよね?」
嘘はつかせないと言うように、決めつける響き。
しかし、帰ってきたのは予想外の言葉だった。
欲望を曝け出していたというのに、自らそれを収めてしまう。
呆気にとられた表情を見せるも、涙が零れそうな瞳にこちらの熱も引いていってしまう。
縋り付くような言葉に、ゆっくりと息を吐きだして、改めて金糸を優しく撫でていった。
「エッチをしても…何もテルヴェを踏み躙っちゃうつもりはなかったのよ? ゆっくりと気持ちいいことしちゃおうって」
クスクスと微笑みながら、落ち着かせようと背中へと掌を滑らせていく。
すすり泣く響きにぐいっと体を抱き起こしてしまうと、頬へ唇を押し付けようとする。
「そういうことはナシにするわ、だから…そんなに泣かれると、私も辛くなるわ。今日はテルヴェのお母さんでいてあげるわね」
泣き崩れた彼を抱きしめ、撫でて、ただ温もりと安堵を与え続ける緩やかな夜を過ごすのだろう。
翌朝、王都まで送っていく間も子供扱いに抱きすくめるようにしながら手綱を握り、朝日の街道を進みながら。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からテルヴェさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からミシェルさんが去りました。