2016/06/29 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にテルヴェさんが現れました。
テルヴェ > 陽は傾き、東の空には宵の明星がちかちか輝き出す頃。とはいえ今は夏至前後、時刻は18時を回っている。
王都からは北へ徒歩半日といった辺り。
テルヴェはゾス村への荷物配達依頼の帰り道、夜を押しての旅程踏破を諦め、街道からやや離れた空き地にキャンプを張ろうとしていた。

今回もまた、雑用めいた荷物配達依頼。郵便業を頼らず冒険者にそういった小間仕事を頼む連中がいるのも、世情がまだ後ろ暗さを潜めているせいか。
テルヴェにとっては、比較的低い危険度でいい金策となるためありがたい状況ではあるが。
……未だに、遺跡などの危険地帯に赴く勇気を振り絞れずにいるのであった。

身を寄せ、風を避けられる岩を見つけると、荷物を置き、テントを広げ、あらかじめ集めておいた枝木に火をつける。
季節はもはや初夏だが、野生動物を避けるためにも野宿に火は必須だ。
首尾よく(といっても30分はかかったが)火を熾すのに成功すると、ためいき一つをつき、テルヴェは地べたに座り込んだ。

「……ふぅ、疲れた……」

足腰はズキズキ痛むほどに疲弊しきっているが、お腹はそれほど空いていない。
テルヴェはぼーっと体育座りで佇みながら、パチパチと音を立てる小さな火を、夕焼けの如き朱色の瞳で眺めていた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にミシェルさんが現れました。
テルヴェ > 膝や肘を保護していた革鎧を取り外す。メグメールの野原は穏やかとはいえ安全には程遠いため、胴部の護りはそのまま。
傷ついた筋繊維が悲鳴を上げるのを感じながら、ゆっくりと脚を曲げ伸ばしし、落ち着けていく。
予後ストレッチをしながら、テルヴェは小さな指を1本ずつ折っていく。

「………ふぅ…時間掛かってるなぁ」

野宿を含め、休んだ回数を数えているのだ。当初の目算では、すでに今頃は王都に着いているはずだった。
なぜ旅程がずれ込んでいるのか。道中や現地でトラブルに巻き込まれたわけでもない。いつもどおり、極めて平穏な旅路だった。
であれば、単にテルヴェの脚が遅くなっているせいか。

「………ふぅ……」

休息をはじめて、何度目かのため息をつきながら、闇に覆われていく上天を見上げる。
その眼はどこか寂しげだ。

ミシェル > 拠点に通じるルートの治安維持に偵察班のメンバーが動き回っているが、今日は手伝いに駆り出され、馬にまたがり街道を進んでいく。
小気味良く蹄の足音が響いていくと、夕暮れに浮かぶ焚き火に気づいた。
そちらへと近づいていけば、馬から降りて手綱を引きつつ彼の姿がよく見える距離まで近づくだろう。

「こんなところで野宿?」

風除けの岩の影に隠れたテント、そして焚き火。
革鎧も外されている辺り、一休みというだけではないだろう。
馬の耳元に顔を近づけると、ぼそぼそと何かを囁くと、馬は手綱をつながれずともそこから離れることなくピタリと足を止めた。
手綱を鐙の方へと放ると、溜息を溢す彼に微笑みを浮かべる。

「最近、街道周辺の治安が凄く危ないの。だから見まわってるんだけど…」

知ってた?と言いたげに軽く首を傾けつつ、彼の顔を見つめた。

テルヴェ > 疲労ゆえか、別の理由か。
ポケッと口を半開きにしたまま、焚き火の傍でいつまでも夜空を見上げている金髪の少年。
馬から降りてキャンプへと近づいてくる女性の気配にも、そして最初の呼びかけにも、気づく素振りを見せなかった。

「………は、はひっ!?」

2度めの問いかけにようやく、やや驚いたような反応で首を振り、緋色の目を瞬く。
そして、冒険者としてのクセであろうか、素早く尻を浮かせてしゃがんだ体勢になり、すぐにでも立ち上がれるような用意を取った。
話しかけて来ているのだから害意はないのだろうが、つい、である。あるいはその所作は目上の相手に畏まっているようにも見えるかもしれない。

「え、ええ。危険だってことは重々承知してます。ですが、休まずに暗闇の中を歩き続けるのも怖いですから。
 冒険者なので、ちょっとくらいの危険は覚悟しています。ちょっと……ですけど。野犬くらいならなんとでもなります」

未だ腰に下げたままであった、鞘に納められた小剣を手でぽんと叩き、検める。子供にしか見えない体躯に佩かれていてもなお小さく見える剣だ。

「お気遣いありがとうございます。ええと……お姉さんは、王都の騎士の方ですか?」

自分とは比べ物にならないほど立派な身なり。緋色の瞳をまんまるに見開きながら、その勇姿を眺めている。

ミシェル > 「……君、大丈夫?」

声をかけても反応が鈍い、余程疲れてるのかなと思いながら眉を顰めてくすっと笑う。
驚いた様子を見下ろすも、男とも女とも取れぬ顔立ちに、随分と小柄な体付きは警戒する割には、あまり戦い向きというように見えなくて訝しげな表情を見せる。

「冒険者……ね、野犬とかじゃなくて商人の馬車を襲って命も荷物も根こそぎ奪っていくようなのがいるのよ?」

幾らなんでもこんな幼子が襲われたらいい玩具だろうと思えてしまう。
それに随分と小さなショートソードも頼りなさを強め、じゃあ気をつけてと立ち去るには心苦しい心地になっていく。
どうしたものかと思案し始めれば、掛けられる問に微笑みながら緩く頭を振った。

「違うわ、ゾス村を抜けた先にあるドラゴンフィートって集落があるんだけど、そこにいる傭兵みたいなものよ」

赤い瞳にじっと見つめられると、少しむず痒い心地で笑みが少し照れくさそうになる。
仲間もこんなお子様置いて帰ってきたら怒るだろうなと思い、腰のベルトに連なったポーチからマスケット拳銃の様なものを取り出すと、球体の弾を3つ入れていき、空に向ける。
ポシュッ!と小さな音を立てて空に放たれた弾は緑色や黄色、オレンジと発光しながら漂い、鮮やかに空を彩っていく。
数分後にはゾス村の方角、更にと奥の方の空に、似たような光の玉が上がり、それを見やって安堵の笑みを浮かべた。

「今連絡取ったから……今夜は私が傍にいて守ってあげるわね。子供おいてきたって言われたら仲間に叱られちゃうわ」

冗談めかしたように楽しげに微笑みながら告げると、遠慮無くその隣へと腰を下ろそうとするだろう。

テルヴェ > 「盗賊の類、ですか。……だ、大丈夫です。僕、逃げ足だけは速いですから! ムリはしません!」

笑いながらそう言うテルヴェの声色は、明らかに強がりの色を帯びている。
実のところ、テルヴェはここまでの冒険者暮らしの中で、その手の『無頼の輩』と遭遇したことはない。
単にそれは幸運か何かで、それゆえの慢心といえるか。

ドラゴンフィート、という語を出されればしばし首をかしげて思案する素振りを見せるが、やがて何かに思いあたり、軽く北東の山々を見やる。

「ああ、ドラゴンフィートの方だったんですね。宿の噂話でたまに聞いたことあります。……その、名前位ですけど。
 そんな遠くから来られたんですね。お疲れ様です。いつか僕も行ってみたいとは思ってるんですよぉ」

見た目の歳相応といえる、屈託のない笑みを浮かべ、目を細めるテルヴェ。
しかしその頬や手は土埃で汚れ、靴も泥だらけだ。間違いなく、この子供は旅人である。
危険多きメグメールの野を往くには、あまりにも頼りないであろうが、身につけた革鎧やバックパックなどは使い古した跡が色濃い。

目の前の女性が小型の銃器めいたものを取り出すとさすがに警戒に身を引きつらせ、しゃがんだ脚を伸ばして腰を浮かせかける。
しかし詰めた玉が空に放たれ、それっきりであることを悟れば、フゥ、と安心したような吐息を漏らす。

「そ、その、野宿は慣れてるんでそこまでお気遣い頂かなくても結構ですが……。
 ……いえ、やっぱり、お言葉に甘えます。一緒に居てくだされば、その、安心できますし。きっと野盗とかもそうそう寄ってこないですよね!」

少年は一瞬拒否を示そうとした後……やや虚ろげに目を伏せ、すぐにまた笑顔を取り戻して相手の申し出を承諾した。
隣りに無遠慮に座る仕草にはさすがに身を軽く逸らして避けようとしてしまうが……まぁ異性がいきなり寄ってきたのだ、当然の反応でもあろう。

「あ、僕は王都にある《白檀の棍棒亭》の冒険者、テルヴェといいます」