2016/06/28 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にエーシアさんが現れました。
■エーシア > ―夕暮れ曇天の空
「……」
ぱさ、と音を立てて全身を覆うマントの頭部分を外して空を見る。
昼過ぎまでは晴れていたがこの様子だと夜になるまでには、降り出しそうである。
「……ちっ」
思わず舌打ちも出る。
小間使いのような小さな仕事を上から申し渡され、碌に路銀の支給も無いままダイラスまで行けと言われる始末だ。
まあ仕事なのでそこは仕方ないとしても路銀が自費と言うのは如何なものか。
「後で絶対に申請してやる……」
通るかどうかはさておく。
とにかくうるさくしておけば多少の還元はあるだろうという情けないだか悲しいだかの心構えであった。
街道を行く他の人々も商隊も、どことなく、足早に次の休憩宿へと急いでいる。
■エーシア > 彼女が商隊や荷馬車を使っておらず、徒歩での移動をしているのは訳がある。
単に、先ほどの通り路銀の問題もあるのだが。
道中に出る簡単な魔物などは見かければ討伐・巣などの調査も行えという―――体のいい暫くかえってくるな、と言う事であって。
ならばこちらも限界一杯ゆっくりとしてやろうじゃないかというある意味意地の張り合いのようなものだった。
まあ、実際の理由は路銀も貰ってないのに金をかけてやるものか、というそんなこんなだ。
当然、別に荷馬車から視認できる範囲でも、そのお上は何も言うまい。
少し、折り合いの悪い上司と以前若干口論になったが多分そのせいかなー、などと考えつつ。
「そこまで嫌われてたかー」
とぼやくが本人はそれほど気にもしていない。
まあ折り合いがつかないので間を開けるのと同じようなものだろう。
更に雲が黒くなる中、他の者ほどではないが休憩宿への歩を進めて行く。
■エーシア > ぽつり、と。
鼻先に雨が一滴当たって。
「ん……降ってきたかあ」
ぱさ、と先ほど外したマントを再度頭まで被って。
とはいえ別に濡れる事はそれほど嫌いでは無いので一応被る程度で。
進む速さは先程と変わらず、他に比べればゆっくりと。
そして彼女とは逆に他の者達は速度を速めて行く。
雨が降れば商品に水がつくとまずいだろうが生憎と彼女はそんなものは持ち合わせていないので。
とはいえどんどんと追い抜かれていくので何だか時代か何かに置いてけぼりにされているみたいな錯覚を少しばかり覚えながら。
少しばかりの感傷的な気分もそんなに嫌いじゃない。
鼻歌でも歌いながら歩こうか、どうせ雨音で聞こえないし。
などと思っていれば。
ばしゃ、と水溜りの出来た路を馬車が走り、その泥水をひっかぶる事になる。
「……ばっかやろー!」
ドロドロになったマントを外してそれでも速度を緩めない馬車の後ろにそんな罵倒を繰り出して。
周りがギョ、っとした顔になるが気にしない。
■エーシア > 「ああもう」
ばさ、と泥だらけのマントを外す。
当然、雨脚の強くなってきた雨に晒されるがまあそちらはどうでもいい。
「ん……」
すんすんと身体の匂いを嗅ぐ。
まあ旅途中で風呂やらで汗は流していないから汗臭さはしょうがないにしても泥水の匂いは看過できないもので。
雨が汚れは流してくれるとしても、だ。
「はー……」
溜息。
元々乗り気でも無い仕事にこのザマでは。
更にやる気も(元々ないにしても)落ちるというもので。
「……」
落ち着けば先程大声を上げたのが気恥ずかしくなる。
心なしか周りからの視線も妙に生暖かいものを感じるし、その癖距離は先程よりも間隔が開いているような。
要するに見世物だけど近づかないでおこう、そんな感じだ。
マントを畳み、腕に持てば諦めてゆっくりと歩くのを再開。
それでも、まだ宿に付くにはしばらくかかる。
■エーシア > 雨が降りしきる中、周りには誰も居らず。
結局追い抜かれ続け、気付けば街道は独りだけ。
辺りに響くのは雨音と己の足音。
じゃり、じゃりと。
サァァと。
「とはいえ、ここまで降られるとボトボトだ」
既に意味を成さなくなったマントが水を吸い込み重さが増してきていている。
捨ててしまう事も考えたが買い直すのにも当然お金が要るワケで。
しょうがないので適当に背負い込む。
手に持つよりかはマシだ、という事で。
少し進んで、ふと見れば雨宿り出来そうな窪みを見つけて。
街道を少しずれてそこへ潜り込む。
道の途中に見えており、恐らく幾人もの旅人が使ったのか、妙に手入れがされていて、ひとまず凌ぐことは出来そうで。
「ふー」
そこから外を眺める。
しばらく、止む事はなさそうだ。
■エーシア > 「んんー」
とりあえずマントを軽く絞り、水を抜いていく。
しわしわになっていくが重さにはかえられまい。
さて、ここで時間を潰すのも悪くないが、そうなると火を起こす必要があるが。
正直面倒くさい、というのが先にたつ。
この調子では火種もしけっているだろうし。
少しすれば身体が冷えてきてしまうだろう。
なら一つしか選択肢は無く。
「しょうがない」
荷物から水気を若干払う。
それならずっとまだ濡れている方が身体は冷え込まなくて済む。
幸い今日の雨はそれほど冷たくないし、このまま野宿は流石に路銀をケチりたいとは言え御免蒙りたかった。
「お酒も飲みたいし、ね」
一人呟けば。
よし、と一言気合を入れて、すっかりと人の居なくなった、雨の降りしきる街道の先へと進んで行った。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からエーシアさんが去りました。