2016/04/25 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にテルヴェさんが現れました。
■テルヴェ > 相変わらずの貧相な冒険者装備を身に纏い、背にはあちこち修繕の跡が見られるバックパックを背負いながら、街道を王都へ向けて歩むテルヴェ。
とはいえ王都までは徒歩であと丸2日はかかるであろう、ここはメグ・メールのど真ん中。
春真っ盛りの時候も徐々に夏の気配を帯び始め、日中の陽光下で歩けば革鎧の下はじっとりと汗ばむ気温。
しかし日はすでに沈み始め、東の空が闇の帳に覆われつつある。気温は急速に下がり始め、そして宵が進めば寒気をも感じるだろう。
テルヴェは使い古した地図をバックパックの横ポケットから取り出すが、一瞥するなり溜息をひとつ。
どうやら数時間強行軍をした程度では、最寄りの宿場町には辿りつけないようだ。今日も野宿をするしかない。
冒険慣れしたテルヴェにとっては野宿も慣れたものだが、やはりテントで寝るのとベッドで寝るのでは翌日の調子は倍も変わってくる。
幸い、地図で見る限り、街道からそう離れていない場所に小川があるようだ。
汗はきちんと流したい。まだ外が明るい内にと、テルヴェは整備された道から歩みを逸し、川を探し始める。
■テルヴェ > 背負ったバックパックは萎びている。行きの道ではパンパンに膨らんでいた。
……ここしばらくの冒険者テルヴェは、主にメッセンジャー系の依頼のみを積極的に引き受けていた。
今回も、王都から港湾都市ダイラスへと、普通の荷馬車には頼みづらいような品を届ける任務を負っていた。今はその帰りだ。
駆け出しとはいえテルヴェも冒険者らしい冒険をしたい。
そう思いながら何度もダンジョンにチャレンジしたが、その度ごとにトラウマ級の遭遇を繰り返し、心身ともに疲弊しきっていた時期さえある。
今は復調し(身体に植え付けられたと思しき異形のナニカは鳴りを潜めている……あるいは消えたか)、冒険者稼業を再開できるようになったが、さすがに暫くはダンジョンに潜る気は起きないようだ。
「……お、あったあった。地図で見たよりも近いじゃん!」
街道から外れてすぐ、道に沿うように走っていた小川へと突き当たる。清流のさらさらという音に、思わず顔が綻び、性徴前の甲高い声が朗らかに響く。
キャンプにおあつらえ向きの、下生えもない砂利の広場もある。寝るときに若干痛そうではあるが。
テルヴェは水辺に駆け寄ると荷を下ろし、さっそく野営の準備を始めた。
■テルヴェ > 荷を下ろし身軽になった脚で軽く散策し、乾いた草や木の枝を集め、火をおこす。
一人用の簡素なテント(これも継ぎ接ぎだらけだ)を組み立て、中に毛布を敷く。しかし、まだ眠くはない。
テルヴェは火の傍に座り込むと、バックパックの中から、汚れた布に包まれた塊を取り出す。
野うさぎの死体だ。外傷は矢傷1つのみ。血抜きはされているが、毛皮はついたまま。
街道を歩いてるさなかに運良く遭遇し、10分程度の追いかけっこの末に上手いこと射止めた、貴重なタンパク源である。
「フフッ、うさぎを仕留められるなんて、僕の弓の腕もそこそこ上がってきたかな?」
不慣れな手つきでうさぎを捌きながら、にんまりと微笑む。
しかし、さすがに一矢では捕らえられなかった相手だ。手持ちの矢3本を撃っては拾い、撃っては拾いを繰り返した末のクリティカルヒットである。
しかもそのうち1本の矢は立て続けに岩に当たってしまったようで使い物にならなくなった。収支で言えばプラスは少ないといえる。
まぁそれでも、頑張った分だけ豪勢な夕飯である。干し肉・干しパン続きだった旅程には、新鮮な肉はそれだけでご馳走だ。
皮を削ぎ落とすと、決して量は多くないが、赤々として美味しそうな生肉が夕日に艶めく。それを火で十分に炙り、かぶり付く。
淡白なれど旨味に満ちた肉汁が、舌を悦ばせる。
■テルヴェ > 狩りの獲物を、丁寧に捌き、丁寧に火を通し、丁寧に噛み締めながら英気を養う。
王都に引きこもっていては決して味わえない、食の悦楽だ。
1時間近くかけてうさぎ1羽をまるごと平らげたテルヴェ。並の荒くれ冒険者では明らかに物足りない質量だったが、小さなテルヴェはこれでしっかり満腹だ。
「げっぷ……美味しかったぁ。味付けなしでもやっぱりウサギは美味しい!」
食休みにバックパックを枕に仰向けに寝転がると、すっかり暗くなった春の夜空が眼前を覆う。
パチパチと爆ぜる焚き火の音に、川のせせらぎが混じり、眠気を誘う。
もう少し時期が進めば河原は小さな虫たちの天国となり、こうも心地よく屋外で寝そべることは叶わなくなる。今だけ味わえる野宿の楽しみだ。
しかし、疲労も眠気もあるけれど、まだテルヴェにはすることがある。
胃が落ち着いて来たのを感じるとテルヴェは身を起こし、火を離れて水流のほうへと向かう。
そして、キョロキョロと周囲を見回す。少なくとも彼の視力では、河原に他の人影は見つけられなかった。
そう離れていない向こうに、街道を走る馬車のランプの灯りが見える。街道からもテルヴェのキャンプの火くらいは見えていることだろう。
「……うー、あまり離れてないけど、きっと見えないよね。服のままで水浴びするわけにもいかないからね……」
テルヴェは言い訳するように小さく呟くと、簡素な革鎧を外し、インナーの綿詰め服も下着も脱いで足元に放ると、夜の屋外で一糸まとわぬ姿になった。
冒険者らしからぬ白い全身が、焚き火の灯りにぼんやりと照らされる。
汗臭いままで寝て、翌日も普通に行軍するのはテルヴェには耐えられないことだった。そのまま、浅いと思われる川の中へと足を進める。
水は冷たいが、凍えるほどではない。
■テルヴェ > 水温に身体を慣らすように、徐々に深みへと足を進め、しゃがみ、やがて胸の辺りまで身体を水流に晒すテルヴェ。
急速に体温が奪われていくが、それ以上に全身にベタついていた汗や旅の埃が除かれていくのが、たまらなく気持ち良い。
テルヴェは道中で水浴びできる機会があれば、基本的に逃さない性格だ。
きちんとしたお風呂や温泉で身体を流せるなら最高だが、旅路で贅沢は言っていられない。
「はぁ……気持ち良い♪ でも王都に帰ったら温泉にも行きたいな……」
ちりちりと燻ぶる焚き火を眺めながら、金髪のきらめく頭部のみを水面から出してしばし佇むテルヴェ。
時折その頭部さえもチャプンと水面下に沈め、両手で髪をかき乱すように磨く。綺麗好きなのだ。
それに水中に居るだけでも全身の筋肉が休まるのを感じる。
風邪をひく一歩手前まで、しっかりと水浴びを続けるのがテルヴェ流の沐浴術である。さすがに冬場は無理だが…。