2016/02/20 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアンリさんが現れました。
■アンリ > 「ったくもう、失礼しちゃうわね。
私を見て襲ってくるなんて、危機を察知出来る能力、0なのかしら。」
山賊を追い払って、ぽんぽん、っとローブを払う女が一人。
周囲に浮かぶ小石は、彼女が魔法で浮かせた物。
それだけで相手を打ち倒してしまえば、ふん、とドヤ顔で胸を張る。
「ま、仕方ないわね。それだけ私が魅力的ってことだろーし。」
えっへん。
山賊に襲われたせいで、乗り合いをしていた馬車は逃げてしまったけれども、仕方ない。
ここは私に任せて先にいけ! を一度やってみたかった。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にロレンスさんが現れました。
■アンリ > 「後、そこで隠れてる残り一人。
さっさと逃げなきゃ……」
小石がごう、っと炎に包まれ、赤く焼けてトロリと溶け落ちる。
溶岩弾になった小石が女の周りをくるくると回ったかと思えば、赤い線を描いて街道の端に突き刺さる。
……その奥の茂みからがさがさという音と、悲鳴が聞こえ。
走り去る姿を見送りながら、肩を軽くすくめる。
「ふん、今日も勝ってしまったわね………。
ま、とーぜんだけど。」
さらりと髪を自分の手で靡かせながらくるりと回って、勝ち名乗り。
■ロレンス > アンリが勝ち名乗りをした直後の事、彼女が乗っていた乗合馬車が走り去った方角から爆ぜるような轟音が響き渡る。
砂煙が街道からもくもくと立ち込め、目が良ければ何故か馬車の車体が前のめりに拉げているのが見えるかもしれない。
「…これはマズい事をしてしまった」
柘榴色の魔力をまとった青年が、困り顔で呟く。
馬をつなぎとめる縄は千切れ、彼が手にした四頭並べの木製フレームは完全にへし折れている。
今日は街道に転移してしまい、遭遇した賊達を牛頭鬼の怪力を持って打ちのめしていたところだったのだが…。
攻撃を避けて、飛び出した先に運悪く走り去ろうとしていた馬車が突っ込み、突き出した手で遮り――今に至る。
馬車に乗った乗員乗客こそ無事だが、各々恐れを浮かべているのが窓やら壊れた扉の隙間から伺えた。
「申し訳ない…壊すつもりではなかったのだが」
謝罪をのべるも、この悪党だの化物だの、見た目からどうしてそうなったか、賊とまで遠くまで聞こえる声で叫ばれれば呆れたように肩をすくめて溜息をこぼした。
■アンリ > 「んひゃっ……」
びっくん、と飛び跳ねて前を見れば、馬車が壊れる光景が見える。
まさか先回りか! とばかりに走りだせば、ずざざざーっ、と近くにまでやってきて。
「えー、っと。………山賊の親分みたいなもんなのかしら。」
相手の姿を見れば、目をぱちぱちとさせる魔法使い。
濃い青の髪を揺らし、禍々しい形の杖を握った彼女は……ううん? と訝しげな目で馬車の前に立つ男を見やる。
「ふん、私の乗り合わせた馬車に手を出したのが運の尽きね!
お仲間はみんな散り散りに逃げてしまったわよ!」
ドヤ顔。全力のドヤ顔でバサァ、っとマントを翻す女。
「……それでいいんだっけ?」
更に確認。
■ロレンス > 乗客たちに恐れられる中、こちらへと駆けてくる気配に気づく。
魔法使いのように見える女の姿をみやれば、不意に呟いた言葉に苦笑いが溢れる。
「いや、私は賊の大将などではない。通りすがった…」
魔族といいかけたところで口を噤む。
何分、馬車の中にいるのは人間だけだ。
異能の力を使うぐらいなら魔法とでもごまかせるが、魔族と名乗れば怯えられ、この騒ぎが悪化しかねないと考える。
その思考で数秒の合間を持って、彼女を見つめながら口を開いた。
「――通りすがりの闘士の様なものだ」
訂正の言葉をかけるのだが、まるで勧善懲悪の英雄のように振る舞う彼女に唖然としたまま目を瞬かせる。
嫌な感じがしてくる、そう思いながら改めて否定するように頭を振った。
「それでいいのかは分からないが、私は賊ではない。だから…」
言いかけた言葉も乗客たちのわめき声に遮られる。
急に飛び出してきただの、一撃で馬車を潰しただの。
事実は事実なので否定も訂正もしづらい、どう説明したものやらとこまり顔のまま客達と彼女の間を視線が行き来する。
■アンリ > 「通りすがりの闘士ねぇ。………ふぅん……?」
相手の言葉を聞き取ろうとする間に喚かれる言葉に、ぴくり、と青筋を浮かべて。
「………うるさい。」
底冷えのするような声と瞳で馬車を見やって、一言で黙らせる。
元々、彼女は人への愛情に満ち溢れたタイプでは、無い。
っていうか腐っても元魔王だ。
「誰だっていいんじゃん。 襲ってきたら私がぶっ飛ばすんだからさ。
安心の一つでもしなさいよ。
この魔法使いアンリがいる限り、賊だろうと魔物だろうと……」
杖をひゅるん、っと回して地面をがつ、っと突けば、周囲の小石がふわりと浮き上がり。
「………塵芥に変えてやるんだからさ。」
なんて、乗客に向けてばちん、っとウィンク。ハートマークを飛ばして……黙らせる。
微塵も恐れを見せぬ、堂々たる姿で向き直れば。
「……で、賊だっけ?」
話は聞いていなかった。
■ロレンス > どうやら少しは話をきいてくれそうだと、彼女の態度に安堵したのもつかの間。
唐突な冷えきった声にこちらも少々圧されるながら、その様子を見やる。
しかし、誰であろうと倒すと意気揚々な声に、一層嫌な感覚が強まる。
冷や汗で持たれそうな心地で続く言葉にも耳を傾けた。
「……いや、塵芥にされても困る。まぁ…そう安々と散る気もないが、それはさておき」
絵に描いたような英雄気取りな態度に、少々笑みを零しながらも振り返る彼女の言葉を否定する。
再度問いかける言葉には、がくっと崩れ落ちそうになったが。
「……だから賊ではないといっている。力加減を間違えて馬車を壊してしまっただけだ」
弁明するロレンスの足元、石畳の街道が地面を踏み抜いたように陥没し、そこから無数のヒビが岩に広がっていた。
勿論馬車はその腕力を物語るような拉げ具合。
力加減と収まる範囲なのかは、彼女がどう見るかによって異なるだろう。
■アンリ > 「じゃあ仕方ないんじゃん。」
すさまじいあっさり感だった。
瞳をぱちくりとさせながら、肩を竦めてそんなことを言う。
「だってさー。 加減間違えちゃったって。」
振り向いて馬車の中にそうやって声をかけるも、……当然のように、嘘だ! という声が響き始める。
狙ってきたやら、賞金首に似ているやら、好き勝手に叫びだす人々を前にして、肩をこきこきと鳴らして。
見る人が見れば、魔力がぶわりと右腕に集中していくのが分かるか。
「…ふん、……だ、りゃぁあああっ!!!」
あまりにも唐突な行動。
その場に倒れこむようにしながら、白い細腕に勢いをつけて。
石畳に肘を突き刺す暴挙に出る。
ぶわりと周囲の草が裏返り、みしみしと石畳にヒビが広がる。
彼の起こしたヒビほどでもないものの、二人合わせて街道を全てヒビで覆うほどの一撃をかまして。
すっくと起き上がれば、マントを翻して言うのだ。
「加減を間違えたら、私でもこうなるしね?
ビビってないでさっさと出てきて、修理手伝いなさいよ!
女子供は中でじっとしてなさい! 動くともっと壊れるからね!」
ば、っと手をかざしながら、聞くのが当たり前と言わんばかりの指示を出す。
■ロレンス > 「……」
あっさりと信じたのは幸いなのだが、あまりにもあっさりとしすぎていたせいか、なにか裏があるのではないかと勘ぐってしまう。
少々訝しげな心地が顔に出ていたかもしれないが、乗客たちのわめき声は…分からなくもないといった気持ちすら沸き立つもので、良かったのやら悪かったのやらと苦笑いのまま溜息をこぼす。
「…っ!?」
彼女が唐突に肘落としを地面へと叩きこむ。
見た目通りの細腕なら骨が折れてしまいそうに見えるも、魔力を破壊力に返る揺れ動きに気付けば一人納得はしていたが。
(「あの馬鹿力…あの格好は何だったのだろうかな」)
魔術師というよりは拳闘士といった行動。
畏怖とも驚嘆とも取れる表情で黙りこくる乗客たちが、そろそろ可哀想に思えてくる。
「修理は…材料と道具があれば出来なくはないが」
問題は治った後、今彼があたりを見渡しても馬の姿は見当たらない。
彼女にも見当たらないだろう、激突の際に千切れが縄から逃れた馬たちは馬車を残して逃亡済みである。
乗客たちも、直しても誰が引っ張るんだと文句が増えるばかりだろう。
■アンリ > 「む、確かに。………確かに直しても引くものがないとダメか。
まー……巻き込んじゃったのは仕方ないけど、馬はアンタ、何とかしてあげなさいよ。」
腕を組んでむむむ、と唸る。
困ったような男をちらと見て、それは仕方ないでしょ、と言いながら言葉をかける。
馬、は……荷馬車用であればすさまじい値段はしない。
それでも十分な値段になるのだから、少しだけジト目だ。
その場からダッシュで逃げる奴も、いるにはいるだろう。
「………あー、もう! 分かったわよ、私がやりゃいいんでしょやりゃあ!
大魔法使いアンリ様に不可能なんてあるわけ無いでしょ!
だからせめてさっさと直す!」
むきゃー! と怒りながら、杖で地面をガンガンと殴って指示を出す。
その上で、本気でちぎれた縄を自分の腰に括りつけ始めるのだから、そろそろロレンスよりもこちらに、コイツ頭おかしいんじゃないか、みたいな目が向けられ始めるのも仕方ないことだろう。
「……馬を弁償するなら、一緒に街にでも行く?」
尋ねてみる。
■ロレンス > 「そうだな…この大きさの車では人力では無理がある。 ――私がか?」
おまけに人も結構乗り込んだ大きな馬車だ。
代わりの馬を求められれば、すぐに手配ができるのは配下においた魔物二種が浮かぶ。
しかし、人間が牛頭の鬼人とゴム質で長い両腕を携えた亞人の百鬼夜行の中をゆったりと帰れるはずもないと思えるところ。
そんな事を考えこむように、顎に手を当てて暫し思考を巡らせているのが見えるはず。
「やればって…まさか」
八つ当たりのように地面を叩く彼女がとったのは、彼からすれば無謀とも言える方法。
彼の視線もこの娘危ないと、行動を危ぶむ視線となって混じっていたかもしれない。
しかし…彼女の力があれば、自分と合わせて引いても苦労はしないだろう。
そう考えなおすと、顎に添えた手をおろしたところで、不意の誘いにその思考は引っ込んでいく。
「構わない、寧ろ…女性からお誘いいただけるのは光栄だね」
柔らかな微笑みでその言葉を快諾する。
行動はともかく、見た目は悪く無いしあまりの粗暴さは彼の中で野蛮を通り越して、興味のレベルに達していた。
■アンリ > 「そりゃそうよ。街でちゃんと代わりの、何か買うなりしてあげなさいよ。
事故でもなんでも、壊しちゃったもんは仕方ないんだからさ。」
び、っと指を立てて相手に言葉をかければ、ぱち、っとウィンク一つ。
今すぐ、というより、この後のことを言っているらしく。
よし、っと結び終われば、ぽんぽんと手を叩いて。
「………お誘いっていうか、街まで行かなきゃどうにもなんないしね。
こんなとこで一人でいても仕方ないじゃない。」
自信の塊のような、堂々たる立ち振舞だけが目立つが、女性らしい身体のラインをはっきりとさせた、魔法使いらしからぬ衣装で身を包み。
冒険者としては豪勢な赤いマントを身に着けた、若い女。
そんな女がきょとん、とした顔で声をかけつつ、ぎしり、っと馬車が動き始める。
「ふん、っしょ……… ほーら、乗るなら乗った乗った。」
よいせ、よいせと歩き始めながら、親指で中を指し示す。
合わせて引く、という思考には至らなかったらしい。行動力は溢れているが、思考力はちょっと残念なようだ。
■ロレンス > 「そういうことか…それは問題ない、安心してくれ」
馬の数頭ぐらいなら直ぐに用意できるだろうと思えば、相変わらず茶目っ気すら感じる自身の溢れ様に、薄っすらと笑う。
確かに言う通りに街に向かわねば事態は変わらないのは分かる。
しかし、引っ張って行くついでの話というのは普通ではなかろうと、心の中で静かに突っ込んでいた。
「――…ぁ、いや、私は後ろから押そう。そのほうが楽だろう?」
本当に動かしたと、心の中で呆れるのもつかの間。
一人で引っ張っていこうとする彼女の思考力の弱さに苦笑いが溢れる。
そのまま馬車の後ろに回れば、未だに体に宿したままだった牛頭鬼の怪力を以って馬車を押していく。
壊さぬように加減しながら後押しすれば、彼女の引く力もだいぶ楽だろう。
「アンリ…でいいのかな? 私はロレンスだ、ところで君は…魔術師の様な恰好をしている割に、どちらかと言えば戦士に近いと見えるんだが」
杖といい格好といい、なんで魔法使いらしい特徴を持って力技をしているのだろうか。
不思議に思いながら後から声をかけ、馬車を加速させていく。
■アンリ > 「だってさ、よかったね。」
馬車の持ち主に声をかけて、手をひらひらと振って、に、っと笑顔。
やっていることは人間離れしているのだけれど、まるで「転んで怪我がなくてよかったね」くらいの笑顔であっさり片付けて。
ぎしりぎしりと動かせば、流石に汗の一つも垂れる。
ふうふう、と動かしていれば、その重みが急に楽になって。
「……あ、いいの? へへ、ありがとね。
いやまあ、流石に街までは大変だと思ってたからねー。」
明るくそんなことを言いながら、ぎしりぎしりと馬車は進む。
「ロレンス、ね。 ……ま、魔法使いだってば。 あれよ、魔法があまりに得意過ぎていろいろと加減できないからさ。うんうん。」
冷や汗を一つかきながら、とてとてと早足に。誤魔化すようにしながらも、馬車は次第に普通に歩く速度になっていく。
なんとなくで魔法を使っているから、加減が下手なのは本当で。
■ロレンス > 自分にとってはそれぐらいの扱いでも問題ないことではあるが、平民たる馬主からすればそんな軽い話ではないだろうと、貴族であり、吸血鬼の長たる彼でも思えるところ。
変わった娘だと思いつつも馬車を押していき、王都まではそう遠くなさそうに感じた。
「女性にだけ力仕事をさせるわけにはいかないからな」
少々くさい台詞が出てくるも、素で思うからのこと。
良くも二人だけで動かせるもんだと、乗客たちが驚く中、さもありなんといった様子で馬車を押し続ける。
「…ふむ、普通は得意であれば有るほど自在に操るものだ。それは…自身の魔力や術を従えるのではなく、そのまま叩きつけているというように感じるが」
早足にも苦なく追いつきながらも、思ったことを直接的に遠慮無く語る。
後ろ姿がかろうじて見えるぐらいなので、彼女の顔色が伺えず、車体越しに彼女の背中を眺めていた。
「……ちなみにどんな魔法が得意なんだ?」
ここは変に勘ぐっているより、直接喋らせたほうが答えがわかるだろうと考えつく。
少なからず…そこにいる娘は、巧みに嘘がつけるとは思えなかったからで。
少しだけ意地悪げな笑みも浮かんでしまう。
■アンリ > 「……そうでしょー? ま、私くらいの美しさになると、あんまりにも突出しちゃってるから共に働けないのもわからなくはないけどさ。」
褒められると上機嫌になって、るんるんと歩き始める。だんだん速くなる馬車。
「………あー、いやまあ、やろうと思えばやれるのよ?
コントロールもできるんだけど、ほら、あんまりにも強すぎるから封印、みたいな?
べ、別に苦手とかそういうんじゃないし!」
遠慮無くぶつけられても、怒ることはない。
怒らずただひたすら慌てた様子で言葉が跳ねて。顔が見えずとも焦りがはっきり分かる。
「…え? あー、えっと。
……そのー、あれよ。 溶岩、どーんってぶつけるやつ。」
子供でももう少し分類できそうな魔法を大雑把に語る。]
あれ、これ私やばくない? って理解できるらいの頭はあった。
■ロレンス > 「まわりの男が随分とシャイだったんだな」
と、上機嫌な言葉に素直に乗っかるような言葉を返したものの…内心はこの馬鹿力が要因ではないかと思う。
彼女の見た目は悪くはないし、口を閉ざしていればなお良いぐらい。
しかし、人間の程度ではこの力についていくのは難儀するだろうと思うと、馬車の裏でこっそりと笑ってしまう。
「強すぎる…か、では、そうしておこう」
嘘だと即答できそうな返事に苦笑いが分かりやすいほどに浮かんでしまう。
車体に隠れていなかったら、間違いなくバレていそうなほどだ。
強すぎるなら寧ろ力を一層制御して弱めるはずだという内心の突っ込みを口にしなかったのは、言葉の音で容易にわかった。
「溶岩をドーンと…それは何かコントロールしているのかな?」
荒々しい南方の料理を放り込まれたかのような、魔法の大雑把な説明に珍しく吹き出しそうになるほど笑いが込み上がった。
馬車に乗っている客には、肩が笑っているのが見えるかもしれないほど。
まずいと思う頃には彼には筒抜けといったところで、そうこうしている内に王都の門が見えてくるだろう。
■アンリ > 「ま、なかなかね。釣り合う相手もいないわけだし?」
えへへー、といい笑顔で笑いながらるんたった。買い物に行くような足取りで街道を歩く。
褒められれば上機嫌のままだ。
「そ、そういうことね!
まー、やろうと思えばできるのよ、やろうと思えば!!」
嘘ではない。嘘ではないが、そのまま真実でもない。
怒れば、動揺すれば、それだけで魔法の性質から威力まで変わってしまう、天衣無縫の魔法使い。
相手を打ち倒すという一点において見れば確かに自由自在、威力はいくらでも引き出せるのだろうけれど。
人に混じって相手だけを打ち倒すというのは、まあ、苦手であった。
「え? ……ほら、石を溶かして、とんでけー、って。」
南方の料理でももうちょっと凝る。
門の前までやって来れば、ずずず、っとストップをかけて振り向いて。
「……もーいいでしょ? こんな格好で門をくぐったら、いい笑いものだわ。」
それは分かっていたらしい。 するり、と縄を解いて肩を竦めて。
■ロレンス > 「なかなか男も選ばれるな」
思考力の低さ、喜怒哀楽の激しさ、子供のような騙されやすさ。
失礼ながらにいうならオバカの子という奴だろうと脳内で確定してく。
この言葉であんなに上機嫌になるとは思いもせず、静かにそんな思考の答えを決定してしまう。
「それなら…人質を盾にした相手だけを魔力を透過させて叩きつけたり、見えないほどに細くした魔力の糸で罠を仕掛けたりもお手のものだろう?」
自分が得意とする魔法の細工を一例に、意地悪な問いかけを重ねる。
所謂パワータイプで勢い任せと把握しているが、こんな無茶ぶりに近い質問にどう応えるだろうかと、意地悪な笑みを深めながら答えを待つ。
「…すまないが、コントロールしているのが溶かす、飛ばすの二点しかないのだが」
訂正、料理というよりは丸焼きであった。
これで誤魔化せると思っていたのだろうかと思うと、込み上がる笑いを抑えこむのが大変なぐらいである。
門の前まで来ると馬車が止まり、彼も車体の影から身を晒す。
「そう…だな、流石に見世物…になってしまう」
押し殺した笑いで息を荒げつつ、わずかに目元に涙が浮かぶ。
それでも体の反応を押さえ込めたのは幸いだと思えた。
門の傍というのもあり、出立用に馬を揃えている店がそばにあるのを見かければ、彼女へと視線を戻す。
「馬を準備した後だが、労いも込めて食事に誘いたいのだが…どうかな?」
その粗暴さにもっと触れてみたくなった。
楽しげに微笑みながら、改めて誘いの言葉をかければどうだろうかと首を傾ける。
■アンリ > 「ま、そういうことね。大変でしょーけど、それもまた仕方ないこと。」
ふっふん、と、すごいドヤ顔で言い放つ女。
上機嫌のままに鼻歌交じり。 だけど相手の言葉でぴしりと固まって。
「………そ、そりゃあ、そりゃあ。
………………で、できるわよそのくらい。 ええ、そんなの、簡単だし。
な、なんていうの? 複雑なコントロールも感覚的に出来ちゃう辺りに、こう、凄みを感じるじゃない。」
プライドは高いのだ。言われたら全部出来ると言い放って。
でも顔をそむけてそそくさと歩く。
必死に自己フォローをしながら縄を解けば、相手の言葉に少しだけ思案をして。
「折半ならいいわよ。
私は、貸しは作っても借りは作らない主義なのよ。」
契約を重んじる悪魔の王。本人にその気は無いのだけれど、まあ、価値観と言う奴だ。
■ロレンス > 「分相応の相手じゃないと、釣り合いが悪いだろうからな」
煽てているというほどでもないのだが、何だかどんどん機嫌が良くなっていくさまは、少々見ているだけでも面白く感じてくる。
そしてこちらも、細かな細工をできると言い放つ様の無茶さがおかしいほどで、笑い崩れない自分が素晴らしいと思えたほど。
そんな楽しい王都までの道も終わると、彼女の提案は少々予想外の着地点で、目を丸くして驚くも小さく頷いて肯定する。
「殊勝だな、それでいいなら構わない」
あのノリですんなりと頷くかと思っていたのだが、予想外の折半に、再び興味を会おれるところでもあった。
そのまま馬を買い揃えに店に足を運ぶと、四頭の馬を馬車主へと手綱を差し出して渡す。
すべきことが終われば彼女と共に都の中央へと繰り出すのだろう、その後の話は二人のみぞ知ることだろう。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアンリさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からロレンスさんが去りました。