2015/12/27 のログ
タマモ > 釣りは根気が命である。
誰かにそう聞いたような気がする。
引かれぬ釣り針が揺れる様、それをじーっと見詰めていた。
なんかつけておいたパンの欠片がなくなってるような気が…
くいっと軽く引き上げ、その先についた釣り針を見る。

うん、つけておいたはずのパンの欠片が無くなっていた。
長い事水中に浸けっぱなしにしてたせいで、パンがふやけて外れてしまったのだ。

「む…意外と難しいものじゃのぅ…」

その程度でへこたれる少女ではない。
再び釣り針にパンの欠片をつけ直し、ぽちゃん、とまた川の中に投げ入れた。

タマモ > のんびりと釣り糸を垂らし続ける少女。
だが、この川で魚を狙うのは何も少女だけではなかった。

音を立てず、背後からゆっくりと近付いてくる気配。
筋肉隆々で浅黒い肌を持ち、各々武器を手にして居る…数匹のオークだ。
近付いてくる気配を気にする事もなく、少女は釣りに集中している様子だが…

その様子を見て取った一匹が、更にゆっくりとした動きで少女へと近付いていく。
…と、後数歩のところで、不意に少女の枝を持たぬ手が動いた。
釣り針を垂らした場所ではない方向へと手を翳し、手首を返し、何かを引き寄せるような手の動き。
途端に、ばしゃぁんっと大きな水飛沫が起こる。
そこから飛び出してきたのは何匹かの大きめな魚。
それが一番近くまできたオークの足元へとどさりと落ちる。
びちびちと跳ねている、元気そうだ。

「………妾の釣りの邪魔をするでない、それを持ってさっさと去るが良いのじゃ」

振り向きもせずに少女は声をかける。
足元で跳ねる魚を見るオーク、後ろの仲間達へと顔を向け…なにやら声を掛け合っている。
このまま魚を手に身を引くか…そうはいかなかった。
どうやら魚だけでは満足出来なかったらしいか?
更に一歩近付くオーク、ぎちり、獲物を握る手に力が篭る。

やれやれ…そんな感じに、少女は肩を竦めた。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にアシュトンさんが現れました。
アシュトン > こんな時間に迷子のペット探しとか舐めてんの?
或いはフザケてんの?
もしかして馬鹿なの?
(ぐちぐちと愚痴を呟きながら、林の中を歩く男が一人。
風呂上りの休憩中、繋がりのある貴族から急に仕事ですわ一大事。
と向かってみれば、犬が一匹街道方面に逃げたのだなんだのと。
肩すかしにも程があるが、前金付きで額が割といいのと、貴族と仲よくしておくには越した事がない、という訳でしぶしぶながら受けた訳である)

と言っても、街の中なら兎も角、外だからなぁ。
人に育てられたなまっちょろい犬が、生き残ってるとは思いにくいんだが。
どうせ、オークかその辺のご飯になってるんじゃないか。
(その場合、骨か、首輪か、証拠になるモノでも持って帰ればいいだろう。
全額とはならずとも、それなりに貰えるはずだ。
ため息混ざりに、歩くこと暫し)

お、抜けたか。
(視界が開けると、川があり、そして)

あ…………
(噂をすれば何とやら、か。
幾ら先に、オークの背中が見えた。
なお、タマモの姿はオークの影で見えないようです)

タマモ > 「まったく…愚か者よのぅ?」

ぽつりと呟く少女。
言葉と共に、側にいるオークの体を抜けていく幾陣の突風。
その突風によろめくようにぐらりと体の揺れるオーク、そして…
どちゃり、揺らいだ体がそのまま何重もの刃で切り刻まれたかのように、何個もの肉塊となってその場に崩れ落ちた。

そんな事を意にも解さない様子で少女は釣りを続けている。
オークだったものが広げた赤い水溜りの上で、びちびちと魚は飛び跳ね続けているのだった。

距離を置いていたオーク達は、それを目にすれば一斉に怯む。
何が起きたのか分からない、その凄惨な様子に少女へと突っ込もうとする者達は居なかった。
跳ねる魚に目もくれず、残ったオーク達は逃げ出すだろう。

…その逃げる先に、無関係な男性が突っ立って居る事も知らずに。

アシュトン > さーて、どうするかな。
何かに気を取られてるみたいだし、後ろから奇襲――いや、別に倒しても面倒なだけだしな。
ちゃっちゃと逃げ……おや?
(一匹のオークが腕輪としてはめている、赤い物体。
良く良くと見れば、首輪の様にも見える)

そう言えば、赤色の首輪してるって言ってたな。
もしかしたら、遺品かも知れないな。
(となると最低、あの一匹だけでも倒しておきたい所だ。
腰のカトラス、その柄に手を掛けた……辺りで)

あ……
(なんかそのオークがいきなりバラバラになった)

って、ちょまっ!!
何故こっちへ来る、何故一斉に敢えてコッチに来るっ!!
(それが逃走、だと言うのは分かるのだが。
急に走ってくるものだから、咄嗟に制止を掛けてみるも、当然通じる訳でもなく。
怒涛の如くやってくるその一団が、すぐさまと目前に迫り)

とぉう!!
(横っ飛びに跳ねると、地面を転がり。
その脇、土煙を上げながらオーク達が通り過ぎてゆくのであった)

タマモ > 逃げていくオーク達、うむ、とその様子に少女は満足そうに頷いた。
その先に居る男性にも実は気付いてはいた。
相手をするも、避けるもその者次第だろう、そう思っていた。
…あ、うん、やっぱり避けるよのぅ?
横っ飛びで避けた様子を見もせずに、ぽつりと呟いた、当たり前である。

そんな事があった後に残るものは、いくつもの肉塊と、そこで飛び跳ねる数匹の魚だけであった。

少女といえば…やはり何事も無かったかのようだ。
くいっと再び釣り針を引き上げる…またパンの欠片は無かった。

アシュトン > (あんな一斉に突っ込んでくるのを相手にするのは、正直専門外である。
そして相手にするだけ無駄とも言う。
まぁそのうち、魔物討伐の貢献狙いで動く騎士団か貴族か王族辺りに倒されるのをそっと心の中で祈りながら。
身体についた草を払いのけつつ、立ち上がる)

しかしまぁ、どうしたんだろうねっと……おや。
(何やら見覚えのある、もっこもこの尻尾と、異国の服装。
となれば先のは彼女がやった訳で、ふむ、と呟くと顎を緩くと撫でた)

いよぅ、少しぶり。こっちに来てたんだな。
しかし、さっきのは一体なんだったんだ?
いきなりとバラバラになるもんだから、驚いたが。
(ヒラヒラと手を振りながら近づいてゆけば、どうやら相手は釣り?か何かをしている感じだろうか。
そのまま、切り刻まれたオークの死骸、すぐ近くとまでやってきて)

えーと……うぅむ、血生臭いな。
確か名前はフランソワ、フランソワ
(若干切れた首輪を血の海から指で摘まむように拾上げれば、プレートの文字を確認し。
どうやら、間違いではなさそうだ)

やっぱ食われてたか、骨もついでに持って帰るか
(胴体辺りをつま先でつつくと、胃の内容物を確認していく)

タマモ > さすがに三度目はしないか、枝を引いて糸と針を手繰り寄せる。
ことりと岩の上にそれを置けば、やっと後ろへと振り返った。

「おぉ、久しぶりじゃのぅ?元気にしておるようでなによりじゃ。
…ん?さっきの…あぁ、あれか。
大した事ではない、ちと小うるさかったんで、ちょいとそこいらの風を使って…のぅ?」

ひらひらと手を振り返す。
問われれば、特に隠す事でもないのでさらっと答えた。
…何を使ったのか聞いてるんじゃない、何をしたのか聞いたのだが。
まぁ、面倒な説明はしたくない、相手が理解してくれるだろうと決め付けた。

「して…お主は何をしておるのじゃ?
そんな汚物を漁っても何もないじゃろうに…?」

腰かけていた岩の上に立ちながら、男性が何をしているのかじーっと見詰めていた。
ぱっと見は死体漁りに見えるからで、これといった物を持っているようには見えなかったからだ。
というか、すでに少女にとってこの肉塊はそんな扱いになっていた。

アシュトン > ま、ぼちぼちとはね。
へぇ、どうも魔術や魔法の類とはまた種類が違う雰囲気ではあったが。
世の中広ければ、色々とあるものだな。
(思案気に小さく唸ってから、一人頷きを。
オークと言えば人型の中ではゴブリンやコボルトなんかに次いで雑魚のイメージだが。
一般人がそうそう簡単に仕留めることが出来る、という訳でもなく。
それを事もなげにあしらうのは、彼女の力量故にという事か)

ちょっとばかり犬探しをな。
正確に言えば、元犬だが。
案の定食われていたんだけど、遺品を持って帰れば小銭位にはな。
お、これかな。
(砕かれて半分消化されたような骨を見つけると、これも指で持ち上げる。
後で、川に持っていって洗おう。
本当に犬の骨かは分からないが、言い切れば案外と信じてくれるものだ)

でそっちは魚釣り、みたいだが。
殆ど釣れてねーな。
(見たところ、一匹がビチビチと跳ねている位である)

此方の仕事も結果的に手伝ってもらう形になったし。
お礼に、魚をもっと沢山取ってやってもいいんだが。
(悪巧みよろしくくちの端を上げると。
懐からそっと、金属製の筒を覗かせた。
火薬だけ詰めた方の、手榴弾である)

タマモ > 「ふむ…それは良かった。
そうそう、色々とあるものなのじゃ。
なのであんまり気にはしないでおくれ?」

ふふんっ、と偉そうに胸を張る。
とはいえ、説明するのは結構面倒か…ひらりと手を振った。

「なるほどのぅ…犬か、そんなものは見なかったが…」

はて?と小さく首を傾げ、考える仕草。
実際にその犬とやらは食べられた後なのだ、少女が知る由もない。
…が、遺品といって首輪を手にしたり、拾う骨を見る。
なるほど、あれがそうか、と一応は納得したようだ。

「………気にするでない。
あぁ、いや…釣った魚こそが妾の食するべきものじゃ。
気持ちは嬉しいが、心遣いだけ受け取っておこうかのぅ?」

ちょいちょいと岩の上に置いた枝を指差し言う。
これは己の意地だ、必ず釣ってみせる、そんな勢いだ。
もっとも、結果は釣れずに終わるのだが、それは今分かる事ではなかった。

アシュトン > 個人的には、色々とが気になる所、ではあるんだがな。
もっとも、俺に扱える部類のモノでも無さそうだが。
(小さな笑みに喉を鳴らせば、肩を竦める仕草。
どうやら攻撃系の術は、余りと適正が無いらしい)

そりゃま、見てないだろうな。
どうやらオークに食われてたみたいだし。
野生じゃなくて飼われてたヤツだからな、襲われたらひとたまりもない。
(猟犬であれば話は別だったかもしれないが、完全に愛玩用である。
美味しく胃に納められてしまったのは、間違いなさそうだ。
骨と首輪を片手に提げたまま、テクテクと川の縁へと近づいていく)

そうかい?
ま、無理にとは言わないがな。
んじゃ、何処かで会った時に何か軽く奢るって事にしておいて、と。
(手榴弾を懐へと戻す、いわゆる発破漁をしようとしていた訳だ。
骨と首輪を水で洗いながら、釣りの現場を眺めて見る)

ところで、餌は何を使ってるんだ。
それらしき物が見えないんだが。
(パン、は見えるが。
まさかそれで釣っている訳ではあるまいと、はなから考慮には入っていなかった)

タマモ > 「素直で良い事じゃ、長生きするぞ?
ふむ………そうじゃな、お主では確かに無理じゃろう」
口元に手を添え、くすくすと笑う。
じっと見詰めて…僅かの間、どうやら何かを確かめたらしく、仕方なしといった感じに呟いた。

「飼い犬か…まぁ、自業自得じゃろうな。
主から離れる事もなければ、そうもならなかったじゃろうに…」
さらりと答えるも、その表情は少し複雑そうだ。
離れてしまったのも悪いのだろうが…そんな環境を生み出した主もまた、悪いと考えているからで。
ふぅ、と一つ溜息をつく。

「うむ…ん?なんじゃ、軽くなのか…遠慮なくは奢ってくれぬのか?」
奢るの言葉にうむうむと頷くも…軽く、に少し引っ掛かり感じた。
えー?といった感じで見遣り、こう、それ以上を求めようという雰囲気だ。

「…餌?そんなもの、見れが分かるじゃろう?」
ぽふぽふと餌にする為に置いたままのパンの欠片を指で突く。
それはもう、当然これを使っているに当たり前だろう?と言わんばかりだ。

アシュトン > とりあえず爺が80過ぎまで生きてたから、それ位が目標だな。
はは、ズバッと言うな。
とは言え反論も出来ない訳だがね。
(ため息一つに顔を横に振る。
便利系の術であれば、そんじょそこらのヤツにはそうと負けはしないのだが)

仕方ないよなー。
街から一歩と出れば、弱肉強食の世界。
貴族の飼い犬が生き残れる道理も無し、か。
ま、ヘタすると俺もこいつと同じ道をたどる訳で、明日は我が身かね。
(傭兵や冒険者全体に言える事だが、ヤクザな仕事だ、仕方がない。
洗い終えた骨と首輪を、皮袋へと仕舞い込み)

流石にもう死んだ犬の遺品と交換だからなー。
残念ながら、遠慮なく奢ってしまったらむしろマイナスさ。
デカい仕事が入ってそれを手伝ってくれたら、結構奢れるんだけどな。
タマモは戦力としてアテになりそうだし。
……というか、他人の採った魚はNGで、奢られるのはOKなのか。
(指でくるっと円を作る、お金のマーク。
そして、やり取りにそこはかとなく矛盾を感じていた)

見れば分かるって……いや、まぁ、全く釣れない訳ではないだろうし、実際一匹釣れてるっぽいんだが。
(なんとも言えない微妙な表情を浮かべると、うんうんと唸り)

その辺掘り起こすか、草陰で虫でもひっ捕まえればいいのに。
ははぁん、もしや虫に触るのが怖いとか?
(口元がニヤニヤとする。
オークをバラバラにするのは大丈夫で、虫に触るのは駄目とはこれいかに。
前者の方がどう考えてもグロいのだが)

ふーむ、んじゃ俺が虫を取ってきて針につけてやるから、タマモはそれで釣る、というのでどうだろうか
(第二案を告げつつ、ちょいと首をかしげる。
それでちゃんと釣れるかは、彼女次第と言った所であろう――)

タマモ > 「ふむふむ、この地ではそれほどが人間の寿命であるものか…ならばそれまでは生きねばのぅ?
変に期待を持たせても仕方ないからのぅ、これで良いのじゃ」
己の地での寿命はどうだったか…何かを思い出したのか、苦笑を浮かべつつもそう述べて。
出来ないものを出来るといって出来るようになるのなら、それほど便利なものはない。
だが、それはありえないのだ、ならば多少冷たくもそれが良い、そう思う。

「そうじゃな、現に今もその状況ではあるのじゃからのぅ?」
喰らおうと思えばこの男性を己は軽く喰らう事が出来るだろう。
男性を見詰める瞳をすっと細め…
まぁ、さすがにそれは冗談だ。
表情を戻すと、それを否定するようにひらひらと手を振った。

「ふふ…依頼内容が飼い犬の確保では、確かにそうじゃろうな?
というかじゃな、それで手伝うくらいならば妾がじかに受けた方が良さそうだと思うのは…妾の気のせいか?
それは気の持ちようの違いじゃな。
釣って食べるつもりで居るこの状況で他人の魚に手をつける。
奢られるつもりで奢られる…ほれ、違うじゃろう?」
ふわりと乗っていた岩から舞い降りるように、男性の側へと着地する。
体を小さく屈め、男性を上目使いに見上げる形に。
ぴっと指を立て説明しながら、指を振る。

「あー…それは釣ったんではない、連中にそれで納得して貰おうと思ってくれてやったのじゃ。
…こうやってのぅ?」
そろそろ魚の弱ってきているか、跳ねる力が小さくなってきている。
立てていた指を魚に向け、ぴっ、と川の方向へと小さく振る。
何かに投げ飛ばされるかのように、その魚は川へと飛んでいき…どぼんっ、と水中へと戻された。
キャッチアンドリリース、いや、ちょっと違う。

「………何を言うておる?
触れなければならぬのと、触れなくても良いのでは違うじゃろう?」
何を当たり前の事を、といった感じにばっさりと切り捨てた。
いや、確かにそうだが見た目はどう見ても違い過ぎるだろう。

「………ふむ、ならばそれで試してみようではないか。
釣れなかったらお主の責任で一つよろしくのぅ?」
その意見ににっこりと笑顔で返した。
釣りの成果に責任も何も無い気はするが…そこは気にしない。

ちなみに、結果だけを言うならば…見事に釣れたのは先に分かる事である。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からタマモさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からアシュトンさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にシレイラさんが現れました。
シレイラ > 冬の夕暮れ。
時刻はまだ17時過ぎといったところだが、陽はすでに半ば沈みかけており、東に宵の明星も光っている。
街道の、王都からは徒歩で4~5時間といった程度の距離の場所。
王都へ向かう旅人たちは、このあたりで野宿を張るか、強行軍をおして街へと駆けこむかの選択を迫られる位置と時間帯である。

「♪~」

木枯らし吹きすさぶ宵の口。道行く人の大半も、防寒具に身を包んでいるか、あるいは荷物から取り出していそいそと着込んでいる。
そんな中を褐色の女性が単身、王都へ向けて歩いていた。
荷物は軽装、衣服も軽装、しかし、その見た目はあまりにも重厚……。
ふくよかという表現がぴったりのシルエットが、ゆったりとした一歩を進めるたびに重く揺れる。
胸につけた2つの柔肉は、傍目から見ても頭部の数倍の体積を誇っており、プリンのように乱雑に震えながら肉体へとへばりついている。

おおよそ旅向きとも思えないだらしない体格である。
なによりも異様なのは、その巨大な胸肉と腹肉を最低限覆うように巻き付いた薄手のチューブトップ1枚という装い。
あきらかに、冬の夜の野外を歩く装備ではない。言ってみれば、湯上がりそのままの姿で街道を歩いているとみても不思議ではない。
……しかし、その喩えも決して外れてはいない。
不思議な事に、いずれ氷点下を迎えようという外気の中で、彼女の肌には玉のような汗が幾筋も溢れ、伝っているのだ。
さらに、彼女をおびただしい量の白い湯気が包み、もうもうと冬の夜空に立ち昇っているのだ。それは明らかに、彼女の身体から発散されている。

「♪~」

まぁそんな感じで、あからさまに異様としか言いようが無い姿の女性が、甲高い鼻歌を奏でながら街道をのそのそと闊歩していた。

シレイラ > 「……はふぅ」
湯気を押し割るように、つややかな唇から真っ白な溜息が吐かれる。それと同時に、シレイラの脚も止まった。
慣性の法則にしたがい、たわわに実った量の乳房と、それに引けをとらないほどに付いたお腹の肉が振り子のように前後に揺れる。

道の続く先には、闇が包み始めた空を薄ぼんやりと照らす街明かりが見える。とはいえ、街並みそのものはまだ見えない。
振り返ると、延々と続く《喜びヶ原》の地平線や林の波。

「……疲れましたぁ。そろそろ、休憩にしましょうかぁ」
甲高くも気だるげな声が紡がれる。
「今日はぁ、えーと……10マイルくらい、歩いたでしょうかぁ。
 王都は、遠いですねぇ~。到着は、明日の夕方くらいでしょうかぁ」
これは、日中歩き通したとしても、健脚を持つ一般的な成人の旅人の半分以下の進行速度である。
立ち止まる彼女の足元に、ポツポツと幾つもの雫が垂れ、湿った跡を残した。

街道を離れ、冬でも細々と茂る芝の下生えの中へと脚を踏み入れるシレイラ。
道からはそう離れてもいない場所に立っている常緑樹へと身を寄せた。好都合なことに、腰を下ろすに適した大きめの岩も傍らに転がっている。
ひんやりと冷えきった平らな岩肌に大きなお尻を下ろすと、湯気を放つ褐色の肉体がぶるるっと震える。しかし、すぐに落ち着き、疲労にこわばった全身から緊張が抜けていく。

「はぁぁぁ~……。やっぱり、歩き通しは、つらいですねぇ~」

シレイラ > 徒歩という運動をやめ、重たい身体を手ごろな岩に預けてからも……。
否、それまで以上に、シレイラの身体からは大量の湯気が立ち昇り続けていた。
汗も全身からとめどなく溢れ、岩を濡らし、周囲の地面を柔らかくし始めている。
医者が見れば、高熱を発した病人ともとられかねない様子。しかし、岩に腰掛けて寛ぐ彼女の表情は柔和そのもので、呼吸も落ち着いている。

また不思議な事に、彼女の周囲にはほのかに硫黄の香りも満ち始めている。まるで、温泉の涌泉地がすぐ近くにあるかのように。
湯気や硫黄の香りは、そう離れてもいない街道の方にまで、風に乗って僅かに漂っている。

「しかしぃ~。戦争ってのは、なんともはた迷惑なものでしたねぇ~」

全身から長旅の疲労が抜けていく感覚に目を細めながら、ひとり呟くシレイラ。
こんな身なりでありながら、徒歩による放浪がほぼ唯一の趣味といえる彼女。しかし、かかる戦火がこの地を騒がせている間は、おいそれと単身で旅をするわけにもいかなかった。
九頭龍山脈の洞穴にて、数ヶ月にわたって篭もり、身を潜めている他なかったのだ。
今はその騒乱も落ち着き、元の雰囲気を取り戻しつつあるマグメール。
治安も元通りとはまだ言えないだろうし、もともと良かったわけでもないが、さすがにおっとりふわふわのシレイラでも我慢の限界であった。

「王都の《九頭龍の水浴び場》、久しく浸かってないですねぇ~。
 あそこは泉質こそ山脈の温泉には及ばないですがぁ~、風情があって、楽しい場所ですからぁ」

王都に向かう目的もつまるところは温泉であった。
広々とした敷地に掘られた、多種多様の湯船や湯の色、湯気の森を思い浮かべると、にんまりとえくぼが浮かぶ。
それと時を同じくして、シレイラを包む湯気がより一層濃さを増し始めた。

シレイラ > 「山に篭ってる間に、すっかり冬になっちゃいましたねぇ~。さすがに夜は冷えますぅ」
湯気の中にふわりと漂う、吐息の白い渦。それを感慨深げに眺めながら、寒々しい格好で呟くシレイラ。
そして彼女は、唐突に自らのチューブトップの上裾に指を引っ掛け、おもむろに引き下げた。

ぶるん。擬態語でなく擬音語でそう表わされるような湿った肉音をステレオで響かせながら、2つの柔肉が下半球までも露わになった。
指を離すと、弾力性のある素材のチューブトップが引き締まり、下乳へと滑り込む。
やや垂れ気味の、とはいえその暴力的なまでの巨大さから比べれば十分引き締まっていると言えなくもない、歪んだ球形の乳房。
先端には、周りの褐色肌からやや薄まった色づきの乳輪がぷくっと輝いており、まるで夜空に浮かぶ満月のよう。
さらにその中央から生えている乳首は太くて長く、乳房の震えからやや遅れる形で夜風の中をふらふらと振れている。

シレイラはその両の乳首をそっと両手で握ると、これまでの歩みと全く同じ、眠くなるようなペースで丹念に扱き始めた。

「んっ…♪ ふっ…♪ んっ……♪」

小さいとは言えない彼女の手。しかし彼女の下品なほどに膨らんだ乳首は、5本の指で握りしめてもはみ出るほどに大きい。
それを扱き上げる様は、まるで男性の自慰行為のよう。実際、彼女の乳首は平均的な成人男性の非勃起時のソレと比べても大差ないほどのサイズと形だ。

「はふっ…♪ あっ……ぽかぽかして、きましたぁ……んふっ♪」

全く緩急をつけることなく、一定のペースで自慰を続けるシレイラ。
喘ぎ声も、色っぽさの中にどこか享楽の雰囲気が混じる。まるで、玩具で遊んでいる子供のような、陽気な喘ぎ声。
屋外、それも街道の傍だというのに、声を抑えることもなく自らを奏で続ける彼女。湯気の密度も、濃さを増していく。

シレイラ > 陽もすっかり暮れ、宵闇が辺りをすっぽりと覆い隠している。
冬の夜空は澄んで星も多く綺麗だが、秋にはうるさかった虫の声ももはや鳴りを潜め、ひゅうひゅうと甲高い風鳴りが断続的に響くのみ。
この時間に野に居る者は、基本的に野宿や夕食の準備に追われているもの。
しかしシレイラには火を熾す様子も、食べ物を取り出す様子も見られない。腰を降ろしてからはひたすらに自慰に耽っていた。

「はふっ♪ ふぅっ♪ ふぅんっ♪」

かれこれ1時間以上、全くペースを乱さず、自らの乳首を扱き続けているシレイラ。
傍らで喘ぎ声を聴き続けていた者がいたら、興奮を通り越して眠気を誘われかねないほどに、スローペースで単調な手つきと声である。
シレイラ自身の顔もうっとりと快感に蕩け、眠たげに目を伏せているが、かといって気の遠くなるような自慰が終わる様子も見えない。
彼女にとって、自慰は食事や火熾し、寝床の設営にもまして優先される事柄だというのか……答えはイエスである。
まるで炉のそばで吹かせ続けるフイゴのように、乳首を扱き続ける。それが彼女の体内の熱を高温に保ち、そのまま彼女の生きるエネルギーとして活かされるのだ。
その証拠に彼女の体温は歩き続けていた時よりもさらに上昇し、湯気の量ももはや傍の常緑樹の梢を越えて立ち上るほど。
また、ほのかな温泉臭、つまり硫黄臭は野生動物の忌避する匂いでもある。その点でも、火を熾す必要はないのだ。

まぁ、異様な光景であることには変わりないが。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にフォンさんが現れました。
フォン > (ちょっと山脈の方へと宝飾品の原材料を発掘しに行った帰りの露天商の男……背中のリュックの中には
金や銀の原石がたんまりと詰まっているのを背負いながら街道を歩いていると……、男からしたら
この辺りには温泉などの土の卦など感じた事が無いはずなのに、鼻には硫黄臭が届き、軽く首を傾げてみせていき)

ん?……土の卦が薄い地域のはずなのに…温泉とはこれはいかなるものか……

(疑問に思った男は、鼻をヒクヒクッと動かしながら、臭いの元へと向かうように歩いていくと
眼前に現れたのは見事な体格の女性の自慰姿……。

あっけに取られつつも、歩みは緩めず、女性の方へと近づいてみせていき)

こんばんは……いくら人ならざる者とはいえ、このような開けた場所でそのような事をするのは
避けた方がよろしいと思いますが……

(初見で女性が人族ではないと見抜く発言をした男は、自分が羽織っていた外套を女性の体を隠すように
掛けようとしてみせていって)