2015/10/16 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にケイシー(少年)さんが現れました。
ケイシー(少年) >  メグメールの街道、「まれびとの道」からやや離れたとある場所。
とはいっても、自然地帯と大まかに呼ばれる場所程には離れぬ、
しかし街道側からは見え辛い開けたこの場所は、秋が深まる頃になると一面紫色の花で埋め尽くされる。

 良く晴れた秋の空。そろそろ肌寒くなってくる風。ゆられる草花。
天然の鮮やかな紫絨毯のなかに、ポツリと黒い影。
黒い三角帽子に黒いマント姿の少年が、一人膝を抱えて屈み込む。

 その視線の先には、何かの目印のように手の平大の石が幾つか積まれていた。

ケイシー(少年) > 「何処にだろうと連れて行ってやるって言ってた癖に。
 ……この、嘘つき師匠。」

 ケイシーの師匠で『寿命喰らいのエド』と呼ばれた魔術師は、この季節のこの場所で消滅した。
ある時期に若返り続ける呪いを統御できなくなり、ケイシーの手の中で、小さく小さくなり、
やがて消えてしまったのだ。

 それももう、数十年前の出来事。
だのに、この時期になるとどうしても寂しさを拭いきれずにこの場所へと足を運んでしまう。

 帽子の中からワインを詰めた小瓶を取り出すと封を切り、
墓代わりに作った石積みにコポコポと、三分の一程を残し中身をかけ流す。
ケイシーはその残りを日の光を透かして見た後で、グイと一気に喉へ流し込んだ。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にワルセイ・イダーヤさんが現れました。
ケイシー(少年) >  遠い遠い昔、ケイシーがエドに囲われた時、彼は老人の姿だった。
ミレー族が次第に奴隷化されていく最中に、小姓として彼に拾われたのだ。

 それなりに整った顔立ちとはいえ、薄くそばかすの浮いた、
けして際立って美しいとは言えない少年の何を気に入ったのか、
老人はケイシーを方々連れ歩いた。

 ミレー族を毛嫌いする者が増えてからは、彼はケイシーに猫の姿を与える。
あるときは肩に乗せ、ある時は懐に納め、何かある度に彼を構った。

 そんな昔の事をとりとめもなく思い出し、もはやミレー族として生きた時間よりも、
猫や猫妖精の姿で生きた時間が遥かに長くなったケイシーは、じっと自分の手を見つめる。

ワルセイ・イダーヤ >  (男は。まれびとの道からやや外れた道を歩く。人通りのある道はあまり歩きたくはない。この男、あまり人間は…特に健康な人間が好きではないのだ。)
 ……(ザクリ、カツリと固い靴が草を踏み、石を踏みつぶす。ふと、男の鼻腔に草や花の匂いではない、発酵した果実の匂い…すなわち酒のにおいがするのを感じ取て)……?(男は興味にかられ、その香りのする方向へ向かう。すると、一人の少年が果実酒を何かにかけている。その姿に、何とも言えない哀愁を感じ、つい声をかけてしまって)
 ……少年。こんな道外れで何をしているのだね(つい偉そうな口調だが、これがこの男の口調。男はそのまま近づき、石の積み重なりを見る)
 ……誰かの墓かね?(そう少年に聞いてみて)

ケイシー(少年) > 少量とはいえ酒をあおり、物思いにふけって。
普段ならば割と物音には神経質なケイシーだったが、随分と近くに人影。

「…ん、まあ。墓参り、みたいなモン。
 ……兄さんは?道に迷ったかい?街道ならもうちょっと、アッチの方に歩けば合流出来るぜ。」

立ち上がって膝を払い、空き瓶は帽子の中へと放り込む。
ほんの微かに、薬品のような匂い。

「それとも、薬草でも…って、薬草探しにこんな秋桜の花畑なんかにゃ来ねぇか。」

要するに、何してんの?といった感じで、現れた青年(少なくとも外見は)に首を傾げてみせる。

ワルセイ・イダーヤ > ……道になど迷ってはおらぬさ。ただ、人通りのある道が嫌い故、道はずれを歩いていた。

(そう言いながら、少年の墓参りという言葉に反応する)

……そうか、墓参り…であるか。では、この墓に眠るのはそなたの家族か?

(そう言って男は目を閉じ、目の前の墓に少し黙祷をささげる)

……俺の名はワルセイという。少年、そなたの名は?

(そう言いながら、カバンから薬品臭い酒瓶を取り出し、墓の前においてやる)

ケイシー(少年) > 墓参りと聞けば、黙祷を捧げ、酒を供えてくれる見ず知らずの男。良く見れば、貴族の身なりのようだ。
名を尋ねられて少しばかり躊躇するものの、礼儀正しく接してくれている者に対してだんまりで居るのは失礼だ。

「…オレっちはケイシー。へへ、ありがとな、ワルセイさん。
 家族っていうか、その…なんだ。血はつながってないんだけどさ。
 オレっちの大事な、大事な人。は、ははは。」

そう照れくさそうに、笑って見せる。

「きっと喜んでるよ、わりと飲兵衛だったからさ。
 …悪りぃね、これ…もしかして、お高いお酒だったりしない?」

ワルセイ・イダーヤ > ふふ、故人にささげために持っていた酒ではないのでな。そう高いものではない。ただの木の実の酒だ。確か…効能は滋養強壮に不老長寿、あと、飲むと妙に猫がよってくるんだったかな。面白い効能だろう?

(そういって薄く笑う。男としては不老に少しでも役立つかと思い持っている酒である。)

 ……血はつながってなくても家族か…ケイシーとやら、そなたは強いな。俺は…いや、故人の前でするはなしでは無いな。

(つい、妹のことに頭が行ってしまうが、頭を振って気を取り直し、小さなグラスを二つとりだす)

ケイシー、共に一杯、この酒を飲もうか。故人への、手向けの酒だ。

(そういってグラスに酒を注ぎ、ケイシーへと手渡そうとして)

ケイシー(少年) > 「はは、猫が寄ってくるって?何、マタタビ酒かなんかかい?それじゃあ、遠慮せずに…」

 差し出されたグラスを受け取るため手を伸ばす。酒を勧める貴族の胸元にチラリと、
 怪しげなメダルが収まっているのに気がつく。

(あれー…な〜んか、おっかねぇ感じのモンぶら下がってんなぁ…)

 一瞬怪訝そうな表情が表に出るも、気を取り直しワルセイの顔に視線を戻す。

「ワルセイさんがさっき言いかけてた話って…ああいや、立ち入った事とかならあんまり勘ぐるのも失礼なのかな。
 言いかけの話って、割と気になっちゃったりなんかして、さ。へへへ…」

 改めて見れば、割とおっかない雰囲気の貴族。果たして、勧められるままにコレを呑んでしまって良い物なのか、ケイシーは分からなくなってきてしまった。

ワルセイ・イダーヤ > ……ふ、少し辛気臭い話になるぞ。

(男は、言いかけの話が気になるという言葉に、少し考えてから口を開く)

俺には妹がいた。美しさと可愛さを兼ね備えた、俺の自慢の妹がな。

(そう言う男の表情は昔を懐かしむ老人のように見えるかもしれない。だが、少しずつ、表情がこわばっていく)

だが、俺の妹は不治の病を患った。少しずつ体の感覚が無くなり、最後には呼吸すらできなくなる病気に…

(そう言っている男の腕は少し震えていて、そして、グラスを持っていない手はメダルに触れる。)

俺は神を呪った。このメダルは、俺の精一杯の神への呪いを込めて作ったのだ…まあ、効果なんて欠片もないと思うがな…

(そう言い、自嘲気味にふっと笑う)
そして俺は、妹が死にゆくのを認めなかった。ケイシー、君は死者を弔えたが、俺はそこまでの強さはなくてな…だから、今も未練たらしく、妹を治す術を探しているのさ。

(そういって男は毒ではないと言い張るように一口飲んで見せて)

…言ったろう?楽しい話では無いと…まあ、こんな怪しい男の盃は受け取れるわけはないか。

(そういう男は少し残念そうで)

ケイシー(少年) > 語りだすワルセイの話に、じっと耳を傾ける。徐々に強張っていく表情を、じっと見つめる。
絞り出すようにつむぎ出される話に、ケイシーは日に日に心までも幼くなっていく己が師の姿を重ねていた。

『こんな怪しい男の盃を受け取れる訳なないか』
その言葉に、少年は瞼を閉じて首を横に振る。

「オレっちと、ワルセイさんは、似てるよ。」

そして、グラスの中の液体をグっと飲み干した。

「いやさ、貴族の人に安易に『似てる』とか失礼かもだけど…
 俺も、未練たらしく昔の事思い出しちゃベソかきそうになる事も有るさ
 でも…」

シャツの袖で、ぐっと口元を拭う。

「そうだよな、俺は大事な人を…救えなかったけど、弔えた。その通りだ。
 だから、ワルセイさん。まだ、何か治す術を探してるって事はさ、決まった訳じゃないんだろ?妹さんの事を、治せないって。
 だから…だから。きっと、見つけてくれよ、どうにかして…妹さんを、治す方法を、さ。」

ケイシーは真っ直ぐワルセイの眼を見つめて、そう言った。

ワルセイ・イダーヤ > (男は、自分の目を真っ直ぐと見つめるケイシーに少し目を丸くするも、その言葉に、口元がふっと笑みになり)

ああ、そうだ。きっと、いや、絶対に見付ける。いつか、妹が元気になる方法を…な。

(そして、ケイシーが勘違いしている点を一応正す)

あと、俺は貴族にあらず。正確には元貴族だ。俺は家を追い出された身でな…

(そう言いながらわらって、こちらも、酒をもう一杯飲んで、残りは墓にそなえる)

…さて、俺はもう少し歩いて、街へと行く。人の多い場所にはいきたくはないのだが…まあ、買うものは買わねば生活できぬゆえな。そなたはどうする?

(そう、グラスを片付けながら聞いてみて)

ケイシー(少年) > いえいえ!時間については問題ないのですが、夜中になるにつれ睡魔にどんどん負けそうになるので、一区切りついた辺りで失礼しようかと。えっちな方向に持っていけてない事については申し訳ない気分であります
ケイシー(少年) > 「はは、なんだよ勘当されちまったのか。じゃあ、色々と大変だろうな、きっと。
 うん、街までならまだちょっと有るものな…あんまり引き止めたら悪りぃな。」

 すっと息を吸い込み、ふっと吐き出す。互いに量を呑んだ訳ではないが、流石に酒の香りがする。

「ん、オレっちはまあ…ほろ酔い気分で、太陽が沈むのを見てくよ。毎年、大体そうしてるから。
 ワルセイさん、ごちそうさまでした。ありがとうね。
 ……何か、お返しでも出来りゃいいんだけど、さ。とはいえ、何か役に立てるって訳でもなし…」

 少しばかり、口をもごもごさせて考え込み…

「そうだ、俺のこのカッコ、単なる仮装とかじゃないんだぜ。
 もし何か役に立ちそうな本だとか見つけたら…どっか定宿とか有んだったら、届けるぜ?」

 引き止めては悪い等と言いつつも、提案をする。
尤も、こんなものは口約束でしかないのだが。

ワルセイ・イダーヤ > (男は、ケイシーの提案をうれしく思った。だが、残念なことだが、男にとって書物にかかれていることなどこの数十年でやりつくしてしまった。だが…もし、寿命関連の秘術がのった本があるのなら、ほしいもので)

ふぅむ、それは興味深くあり難い申し出。だが、俺はまだここに来たばかりでな。この先の街を中心にここらの薬学などを調べるつもりゆえ…まだ定宿するかどうかわからぬ。だが、その気持ちのみでもあり難い……じゃあ、また会う機会があったら会おうではないか。

(そう言って男は、ケイシーの手を握り、握手する少年の手は暖かく、久しく感じていなかった感覚に顔がほころぶ。)

……ではな。

(そう言って男は手を放し、歩いて街へと行く。いつか妹を復活させるための秘術を探しに……)

ケイシー(少年) > 「ん、じゃあ…縁が有ったら、またどこかで。」
差し出された手を、握り返す。そして、歩き去っていくその後ろ姿を、見送る。

ケイシーよりもずっと背の高いその背中はだんだんと遠ざかっていき、やがて見えなくなってしまった。

握手した手をぎゅっと握り、開く。

「……見た目通りの歳じゃなさそうだな…
 そんなトコまで、似なくてもいいのに。」

ケイシーはひとり、眼を細めて笑った。

やがて、夕日が丘の向こうへと沈むだろう。

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からワルセイ・イダーヤさんが去りました。
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」からケイシー(少年)さんが去りました。