2015/10/09 のログ
ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にティネさんが現れました。
ティネ > メグメール街道――に沿った、小川。
その縁にティネは腰掛けていた。
通りがかってもうっかりすれば見逃してしまいそうな
ちんまりとした彼女だが、注意力があれば気づけるだろう。
草は彼女を覆い隠すほどには育っては居ない。

「ふう……」

ぱしゃぱしゃ。
普段身に着けている貫頭衣と自分の身体を洗っていた。
棲むところの無い彼女は、服や身体を洗うときは小川や湖に足を運ぶ必要があった。
もちろん、民家を無断借用するときもある。
これ以外に服などないので、今は一糸まとわぬ裸だ。肌着などもない。

ティネ > ぱしゃぱしゃと、河の水に浸けて、ゆすいで。
退廃したこの国でも、ここの河の流れはまだ清らかだ。
戦場からは距離があるためだろう。

「さんざんな目にあったな……」

この間は盗み食いを見つかって口ではとても言い表せない目にあった。
やっぱりヒトにうかつに見つかってはならない、という思いを新たにする。
近づくにしてもこう……もう少し妖精をいじめない方向……
要するにダマされやすそうな……そういう感じの……

濡れたお腹をさする。皮の内側、骨と臓腑の手応え。
この身体になってからも、変わっているはずのないもの。
しかしあの夜は――。

水面に自分の不安そうな顔が映る。
見慣れたはずのじぶんの顔――
だけど自慢だったはずの髪はボサボサで、何の手入れもできていない。
表情からも、随分と余裕が失せてしまったように見える。
この娘は誰なのだろう?

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」にテルヴェさんが現れました。
テルヴェ > 冒険者テルヴェはこの日、冒険斡旋業者(冒険者の宿)から依頼を受け、メグメールの街道へと赴いていた。
……というのも、街道からそう離れていない場所で、スライムの存在が確認されたという報告が荷馬車から入っているためだ。
積極的に襲撃する様子などはなかったそうだが、馬や人が水場に近づいたときに襲われないとも限らない。ゆえに、冒険者へと依頼が出されていた。
とはいえ、その報酬はたったの1000ゴルド。初心者向けと割り切られているのであろう。
……テルヴェのような弱小冒険者にとっては、そんな報酬でも手を出さずにはいられない。

「……うーん、スライムがいるとしたらやっぱり水辺だよなぁ……」

会敵状況によっては、剣が有効なときもあれば弓が有効なときもある(どっちも不得手だが)。よって武器は抜かない。
下生えをかき分けかき分け、慎重に眼を配りながら、小川の方へと踏み入っていく。

「…………ん? ネズミ……?」

小川の水面が見える程度の距離まで踏み入って来た時。
何か、その縁に肌色のモノが佇んでいるのを、目の端に捉える。
スライムではないが、モンスターかもしれない。テルヴェはハッと息を飲み、汗のにじむ手を、ショートソードの柄に添える。
そのまま、忍び足でその肌色へと近づく……ジャブジャブと足音はしっかり立ててしまっているが。

ティネ > ぶんぶん、とかぶりを振る。
暗い考えに魅入られてはいけない。
今、これからのことを考えよう。たとえばこの一張羅を
どこで乾かすか、だとか――

小川に踏み込む足音が響く。

「!!」

顔を上げる。視線が合う。ヒトだ。しかも――どういうわけか明らかにこっちに向かっている。
どうしよう? 戸惑いのあまり、うっかり、洗濯中の服を手放してしまった。

「あーっ! 待って待ってー!」

ハンカチを加工した、白い貫頭衣が流されていく。
小川の流れは緩やかそのもので、人間ならそれを捕まえるのはそう難しくはない。
だがティネの小さな身にとって結構な急流であった。

(あれを手に入れるの結構めんどかったんだから!)

現れた少年をとりあえず無視して、流れていく服を捕まえようと走る。
が、凸凹な地面(妖精比)では敏捷性は発揮できず、どんどん距離が離れていく。
飛べばいいようなものだが、慌てるあまりそんなことも忘れていた。

テルヴェ > 怪しい肌色の物体から何かが転げ落ちると同時に、そこを発生源として叫び声が響く。
小心者のテルヴェはビクッと全身を引き攣らせて危うく転びそうにさえなりかけるが、すぐに、その現状を理解する。

(……あれは人間、いや、いわゆる妖精や小人の類なのでは?)

そして、小川の水面を流されていく小さな布切れは、服だろうか。追いかける肌色の動きはおぼつかない。
もし水に入ったら、あの身体のサイズ。下手をしたら、溺れてしまうのでは……?

「あぶないッ……!」

追いかける小人を制するように叫ぶテルヴェ。その声は見た目相応に甲高く、性別を感じさせない。
同時に駆け出し、レザーブーツのままで小川に飛び込む。幸い、子供の体格とはいえ人間である、この程度の水深なら走ることさえどうってことない。
ザバザバと水しぶきを上げながら、徐々にその布切れとの距離を詰める……が。

「……ひゃっ!」

あと数歩のところで、水底の大きな石に蹴つまづき、盛大に小川へと全身を投げ出してしまう。
ひときわ派手にしぶきが上がり、小川の両岸へと降り注ぐ。

「……ぷはっ! はあっ……だ、大丈夫かい、キミっ! ふ、服は大丈夫だよ……!」

ズブ濡れになりながらテルヴェは仰向けになって顔を水面から出し、転倒の瞬間に右手で捕らえていた小人の服を差し出して見せる。

ティネ > 叫び声。おそらくは自分に向けられたもの。その声量にびくりと身を震わせる。
しかしそれが自分を案じるものだというのは、すぐにわかった。
続いて、駆けだし――そして激しい水しぶきを立てて転ぶ少年の姿。
それを何をすることもできずに、ただ呆然と眺めていた。

「あっ、あ……ありが、と」
ぎこちなく礼を言って、おずおずと彼の指からそれを受け取る。
全裸でヒトと対面していることにハッと気付いて、
とりあえず大事なところだけを腕と服で隠して俯く。

「き、キミこそ大丈夫……?
 派手に転んじゃったみたいだけど。ゴメンね……」
申し訳無さそうにそう言った。

テルヴェ > 川のなかに座り込んだまま服を渡し、声を掛けられれば、苦笑を浮かべつつ自分の身が五体満足であることを確認する。
軽装鎧を着込んでいるのもあり、スネを石にぶつけたようでちょっぴり痛む以外は、怪我や打撲の類はなさそうだ。

「うん、僕は大丈夫だよ。全身濡れちゃったけどね。キミこそ、裸でこんなところを走ったりして……ッ!!」

……ここまで言ったところでようやく、テルヴェはその小人が女性であること、全裸であることを察する。
彼女の恥じらう仕草に呼応するようにして、テルヴェもまた顔をかっと赤らめ、目を逸らしてしまう。

「……ご、ごめん。水浴びのところを、ジャマしちゃったんだね。き、気付かなくて……。
 僕、どん臭い上に目もちょっと悪いから、その、小さい生き物とかに気付きにくいんだ……」

絞り出すように言い訳のセリフを吐くテルヴェ。その息は荒い。小人とはいえ、女性の裸を、外で見てしまったのだ。
と同時に、インナー全体に染み渡ってくる川の水の気持ち悪さに、上半身をブルッと震わせる。
腰に佩いたショートソードも、ベルトポーチに畳んだ街道の地図も濡れてしまった。高かったショートソードも、これが原因で錆びてしまうかもしれない。
自分のどん臭さに泣きそうになってしまう。かといって、この小人の少女に弁償を要求するわけにもいくまい。
しばらく、キラキラと光る水面に視線を落としたまま押し黙ってしまうテルヴェだが。

「……ぼ、僕はテルヴェ。冒険者をやってる。キミは?」

目の端でギリギリその少女の姿を捉えられるまでに首を戻す。とりあえずは挨拶だ。

ティネ > (小さい生き物……)

その言い方に少しだけ傷つく。『矮人』とは別の方向で。
ネズミや虫けらのような存在に貶められたような気がしてしまった。
……実際あまり変わらないだろうし、悪気はないのだし、言い返しはしない。

「ううん……服を落としちゃったのはボクだし。
 ボクは――ティネ。えっと……妖精やってます。
 テルヴェくんね。よろしく」

向こうまでも恥ずかしがっている初な様子に、
こっちはなんだか微笑ましくなってしまい、くすりと笑った。

「とりあえず、さ、河上がって、それ脱いで――いや、変な意味じゃなくて。
 お洋服、乾かさない? キミも、ボクも」

指先を立てると、そこに本当に小さな火が灯る。
ティンダー(火口)の魔法だ。

テルヴェ > 「妖精のティネさん、だね。よろしく。僕、妖精ってはじめて見るなぁ……」

直視しないギリギリのアングルを保ちながら、目を細め、微笑みかけつつ軽く会釈をする。
相手の半裸体を見据えないように心がけているため、ティネさんの心情の機微に気づく様子はない。

「そうだね、僕も服を乾かさないと。……って、僕もここで脱ぐの?
 いやでもそんな、恥ずかしいよ……うう……」

再び俯きつつ、さすがにこれ以上水に浸かっていてもいいことはないので、腰を上げようとする。
……も、革鎧を縫って綿入りのインナーに染みこんだ水は想像以上に冷たく、重い。立ち上がるのにも難儀してしまう。
このままでは風邪を引くかもしれないし、そうでなくても装備が重すぎてクエストどころではない。
結局、ティネさんの言うとおりに、鎧を脱ぎ始めるテルヴェであった。

「……へぇ、火の魔法。ティネさんは魔法が使えるんだ。いいなぁ。
 僕も勉強しようとしたことはあるけど、さっぱりでさ……アハハ……」

魔法はテルヴェにとっては珍しいが、珍しがってばかりでは他の冒険者仲間にバカにされてしまう。
世間話のタネに用いて互いの状態から気を逸らそうと、苦笑いを奏でるテルヴェ。
湿った革鎧、ベルトポーチ、そして今やそれら一式以上に重みを持ってしまった布の服を草の上に寝かせると、テルヴェは下着一丁になった。

「……あ、あまり見ないでね。火で乾いたら、すぐ別のところに行くからさ」

ティネさんと同じようにテルヴェも股間をバックラーでぎゅっと覆い隠したまま、熾された火の傍に近づく。

「ティネさんは……この辺に住んでるの?」

ご案内:「メグメール(喜びヶ原) 街道」に魔王アスタルテさんが現れました。