2021/03/22 のログ
ご案内:「夢幻窟」にリーアンさんが現れました。
リーアン > ―――――そも、こんな場所での会合を設定すること自体、正気の沙汰ではないと思う。
異母兄の部下からの呼び出しとは言え、応じたくなど無かったが、
連れ込み宿という側面を持つ施設であるから、密会には相応しい、と、
相手は場所を変更してくれようとはしなかった。

仕方無く赴いた先、打ち合わせておいた偽名を名乗り通された部屋で、
恐らく、半時程も待たされただろうか。
結局相手は現れず、帝国風だという触れ込みの部屋には、奇妙な香が焚かれていて、
たっぷり吸い込んだ其の香の所為か、頭が朦朧とし始めていた。

もう充分待った、帰ってしまっても構うまい。
そう考えて立ち上がり、部屋を出て――――数歩とゆかず、廊下の片隅で蹲ってしまう。
頭が痛い、目の前がぼんやり霞んでいる、―――――心臓が、不自然に躍り上がっている。
一体何が起こったのか、己はどうなってしまうのか。
何より、今、こんな場所で、城の関係者などに行き会えばどうなるか。
一刻も早く、此の忌々しい場所から立ち去りたい、と、気持ちばかりが逸っていた。

リーアン > 暗く沈む意識、頽れる肢体。
其の先のことを知るのは、己と―――――――。

ご案内:「夢幻窟」からリーアンさんが去りました。
ご案内:「夢幻窟」にタピオカさんが現れました。
タピオカ > ところで、王都には自由に夢を見られる施設があるらしい。
たまたまそれを利用する機会を得た田舎者の冒険者は、以前より少し憧れていた、色んな戯曲や書物で有名なとあるシーンを思い描き。夢幻窟の世界に入り込む――。

「いっけなーい、遅刻遅刻ー!」

機械が見せる夢幻の中で、自分は王立コクマーラジエル学院に通う学生になっていた。口にパンを咥えながら、制服姿の褐色肌の少女が短い銀髪とスカートを揺らしながら校門目指して駆け抜けていく。

富裕地区の通りを抜け、いくつも屋敷が立ち並ぶ住宅街をかろやかな足音が響く。道に急ぐまま、とある角に差し掛かる。
角の向こうはお互いに視界が効かない。
もしそこに、同じように学校へ急ぐ生徒がいれば正面衝突してしまうだろう。

大事なことなのでもう一度。

もし角の向こうから学校へ急ぐ生徒がいれば、正面衝突してしまうだろう。

タピオカ > ――どんっ……!

「いたたたた……」

ちょうど曲がり角を過ぎようとした時に誰かとぶつかって。そのままパンを取り落しつつ、その場にぺたんと腰をつけてへたりこむ。

「ごっ、……ごめんなさい……。
……あっ!今、ぱんつ見たでしょう!?
――って、……あれ……?」

そしてお決まりの如く、尻もちをついた膝の隙間から制服スカートの奥の慎みの下着までも恥ずかしいお披露目をしてしまい。それを咎めようとし。何かがおかしい事に気づく。

――自分の走り込んできた曲がり方の反対側から走ってきたのは男子学生ではなく。女子学生でもなく。
3つの犬頭を備えた魔獣の姿であった。

「……っっ!違うー!
こういうシーンじゃなくって……!
ぅわああああああ!助けてー!」

真ん中の犬の頭は、おでこにたんこぶをこしらえていた。
今にも炎を吹き出しそうな魔獣の眼光に、ずりずりと後ろに下がりながら首を振り。
想定外のシナリオから逃げ出すべく。富裕区の朝を魔獣と追いかけっこする、そんな夢幻を見たのであった――。

ご案内:「夢幻窟」からタピオカさんが去りました。