2020/09/18 のログ
ジーゴ > 随分長い間、(目の前でたくさんの人がまぐわっているのをのぞけば)特になにも起こらず、ぼーっと棒立ちのままだった少年。話しかけられるまで新たな気配にも気がつかず、話しかけられるとその耳はピンと立って。

「な!なんですか!オレ、かんしいんです」
監視が仕事のスタッフであることを告げた。
こんな媚薬にまみれたプールなのに、相手の目は欲に溺れてはいないようで、少し不思議に思った。
何か用事だろうかと小さく傾げた首ときょとんとした獣の瞳が、自分よりも背の高い相手に向けられて。

紅月 > 「あぁ、良かった!」

思わず声が弾む。
眼前の彼から向けられる視線は素直な驚きと困惑、こんな珍妙な場所にも関わらずだ。
…と、迷子の大きなお友達という珍妙な女は思った。
彼の横まで歩み寄りながら幼さの残る表情に微笑みを返し。

「こんにちは、監視員さん。
実は、ちょ~っと困ってて…もっとこう普通のプールで遊んでたんだけど、別のエリアで遊ぼうとしたら来たこと無いトコに来ちゃって……ねぇ?」

真横で響く水音やら嬌声やら、まるっとスルーしつつ軽く中腰になり彼に視線を合わせる。
そして若者にも優しい、オブラートで包みまくった言い回しで己の現状を伝えようと。
…とは言え、監視員と話している間もあちこちから品の無い視線が向けられているので察するに余りある状況というヤツだろう。

ジーゴ > 「オレ、かんしいんさんじゃなくてジーゴ。お前は誰?」
相手の話を聞き終わると小さく頷いて、名を名乗り、やや丁寧ではない言葉で相手の名前を聞こうとして。

「エッチじゃないプールね。それはあっち」
指さした先には確かに小さなドアがあって、エリアが区切られているようだった。
相手のオブラートに包まれた表現をなきものにする直接的な言い方で説明をした。

「お姉さん、きれいだからみんな見てくるね」
相手が、自分の視線に合わせて中腰になると、ミレーの視線も無意識に相手の胸元に向けられて。
漂う媚薬でややふわふわとする思考。
不躾に相手の体を見ていることに、数秒後にようやく気がついて、目をつぶってふるふると頭を振った。

「あっちまで一緒に行く?」
エッチじゃ無いプールの方を指さして、相手に手を差し出した。

紅月 > 「私?
私はコウゲツ、東の言葉でクレナイのツキって書いて紅月よ」

ぱちくり、目を瞬かせて自分を指差した後…にこやかに名乗る。
文字の習得率に落差のあるこの国で伝わるかは微妙な所だが、一応書き方も合わせて。

「…あぁ、なるほど。
そういえばああいうドア通ったかも?」

彼の豪速球な言葉選びにほんのり気恥ずかしさを滲ませつつ、その指先を視線でなぞる。
…どうやら己が通ったときは偶然開けっ放しだったらしいその扉は、今はきちんと閉まっていた。
そして彼に視線を戻せば…どうやら胸を見ていた事に気付き首を振るところ。
青いなぁ…と思わず小さく噴き出して。

「うふふっありがと、おねーさんは嬉しいぞ~!
行く行く、エスコートしてくださいな」

思わずワシャワシャと彼の頭を撫でる。
これだけ媚臭漂う中でも色気が微塵もない触れ方だ。
同時に、しっかりと差し出された手をとり繋いでいる辺り、あわよくばガッツリともふもふしたいという打算が入ってなくもない…ような。

ジーゴ > 「コウゲツ?おぼえた。東ってどこ?」
せっかく説明してもらった紅も月も全然分からず
挙げ句の果てに、東がどこかも分からずに問うた。

「えっちなところには一応扉あるらしいから」
気をつけた方がいい、と付け足して。
媚薬の香りだとか、嬌声だとかが他のエリアに行かないように一応の配慮はあるらしい。
もちろん、扉が開け放たれたり、エッチじゃ無いはずのゾーンに媚薬がまかれたりするのもよくあるはなしだけれども。

「こしょばいからやめ…」
手を繋いで、エリアの変わる扉をくぐる。
髪は獣の毛で、外側は少し固く、内側はふんわりと相手の指を包み込むだろう。

「ほらね。エッチじゃない」
扉をくぐると、とても健全なエリア。
広いプールが並んでいる場所に辿り着いて。
もちろん、もう媚薬の匂いも嬌声も聞こえない。
楽しそうな歓声や笑い声が響いているだけだ。
親子連れが楽しそうに泳いでる姿や、恋人達が健全にきゃっきゃうふふしているのがやや眩しいが。

紅月 > 「あらあら、やっぱり文字は分からなんだか。
うんうん扉に気を付ければいいのね~、ありがとうね~」

制止の言葉も綺麗にスルーし、ふわふわもふもふ。
純粋な人間とは違うこの毛並みが、手触りが、たまらない!
いかがわしいエリアは無事に脱出したが、撫でる手が止まる気配は…今のところ、ない。

「東っていうのは~…マグメールの外の、国の外の、地図見たときにずっとずっと右側の方だねぇ。
"キョクトウ"って呼ばれたりするよ」

少し困ったように笑いながら、けれど方位については補足の説明をしようと。
はてさて、彼は地図を見たことがあるかどうか。
とりあえず地図であれば大概方位を示す印があるはずで、右の一言でボンヤリにでも伝わろうが…なければ、なんならル・リエーの案内板を地図代わりに方位の概念を教えるのもやぶさかではない訳で。

「今度はお休みの時に会えたらいいね、ふふっ。
どこかで見付けたら声かけて頂戴な」

ようやっと手を離せば、また、彼に笑いかける。
またね、と手をふって…賑やかな人の中に紛れて行った。

ジーゴ > 「あ?文字はよめないけど…」
小さく項垂れる耳。
まだ、1文字1文字勉強しているところだ。
りんごの「り」、いぬの「い」といった具合に。

「こしょばい、っつーの」
もふもふする相手の手を止めることはない。
ただ、くすぐったそうに、肩をすくめるだけだ。
獣耳を触られなければ、止める理由もない。

「キョクトーは右。おぼえた。右手がこっちで…左手がこっち」
左右くらいはギリギリ理解の範囲だけれども。
マグメールの外のことはあまり知らないし、地図も見たことがない。
だからひどく曖昧な知識を増やしただけで。

「んー、またね」
去って行く相手に手を振りかえして。
少年は自分がもといた、卑猥なエリアに戻っていく。
今日の彼の仕事は、今みたいな人助けはもちろんだけれども、
卑猥なエリアで舐めるような目つきに晒されるのも
込みの高い給金だから。
もうしばらく、仕事の時間が終わるまで、視線に耐える時間が過ぎる。

ご案内:「ル・リエーの水遊場」からジーゴさんが去りました。
ご案内:「ル・リエーの水遊場」から紅月さんが去りました。