2023/04/29 のログ
リューク > そうしてしばらくぶらついた後、これという獲物を発見することは叶わず。
適当に娼館へと足を向けて――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリュークさんが去りました。
ご案内:「王都貧民地区/魔具店『シャイターン』」にアシュベールさんが現れました。
アシュベール > 今日も今日とて―――人入りの少ない魔具店は開店する。

薄暗いが埃一つ無い店内。窓から差し込む日差しの暖かさが微妙に眠気を誘うが、流石に開店して1時間で眠りに付くわけにはいかない。

カウンターに腰掛け、足元に居る相棒のミミックの蓋を趾で挟んだ羽箒で撫でて汚れを取りつつ、自由な手はひとつの魔道具を握り締めていた。

「……遺跡。ううん、ダンジョンから発掘された魔道具ねぇ……んー……?」

それはソフトボール大の玉。―――ではない。
その丸いカタチは、無数の蛇のような細長い"道"が重なるようにして出来上がっている。まるでそう、出口のない迷宮のようなそれ。
魔力を通してみるが、中でずごごごごご……と重々しい音が聞こえるだけで外見には特に変化はない。
それならば、ローブに設けたポケットから取り出す片眼鏡を左目に付け、鑑定をしてみる。此処で漸く、その情報が読み取れるわけで。

「ふーん、ふーん?……ポケット型の迷宮。対象に投げ付ける事で迷宮に捕らえる。その後、魔力を通すとその中でダンジョンが形成されて、対象にダンジョンを味わわせる、と。……うわぁ。すっごー……。
 ……んー、説明書なりあればいいんだけど、鑑定出来るのはこのラインまでかぁ~。」

どうやら持ち込まれたものはとんでも魔道具だった模様。
使ってみたさはあるけど、操作方法はよくわからないし、安全面も分からない。詳しい人がいればいいが、自分はあくまでも道具便りの鑑定しか行えない故―――。
ことん。と机にそれを置き、改めて入り口に視線を向ける。はてさて、今日はお客は来るかどうか。

ご案内:「王都貧民地区/魔具店『シャイターン』」にティネさんが現れました。
ティネ > 店内に満ちる魔力に惹かれたのか、入り口──ではなく窓の隙間からからふよふよと侵入者が入り込んでくる。
少なくとも異種族歓迎の張り紙に惹かれたわけではないだろう。
小鳥や蝶の大きさかと思われたそれは、蝶のような翅を持つ小さな妖精の少女だった。

「なんだろ、ここ?」

きょろきょろと周囲を見渡す。
魔力にふわふわと酔っ払ってしまいそうになりながら、店主に挨拶もせず物珍しげに店内の品々を物色している。
どうやら宝探し気分で、気づかれずに忍び込んだと思っているようだ。

アシュベール > ―――万引きや強盗対策というものは確りと用意している。
それこそ、扉から入らずに窓から忍び込んだり、勝手口から入ろうとした場合、即座に魔力がその動きを感知し、自分に伝えてくる。
気付かれず?そんなことはない。眠たげに玄関先に向けていた瞳は、自然と窓の方に向けられ、ふよふよと舞う小さな妖精の姿を捉えているのだ。

「…………此処は魔具店だよー。見ての通り、ポーションとか武器とか防具とか。色々なものを売ってる。
 けど、妖精さんサイズはあんまりないねぇ。」

小さな彼女の独り言には、店主として簡単に此処の説明を。
勿論、道具には魔力を通しているので、彼女が悪戯をした程度では壊れたり割れたりしないし、なんなら容赦ない魔王の魔力が襲いかかって焼け焦げたりするのだが、それはそれ―――。
視線を彼女に向けながら、手をひらひらと揺らしてみる。気付いてるぞ。というように。

ティネ > 「ひゃっ」

背中に声を欠けられてびくりと反応する。
ちょうど自分よりも背丈の高いポーションの瓶をぺたぺたと触っていたところだった。

「音もなく華麗に侵入したつもりだったのに~」

ひらひらと手を揺らされれば、さほど警戒もせず、揺れる手に誘われるように飛んで近づいていく。
宙を舞う軌道はどこかかくかくしていてぎこちない。
すとん、とカウンターに裸足で着地するだろう。
警戒がないのは、相手がほんの子供にしか見えないからか。

「まぐ店……あなたが店主さん?
 ずいぶんちっちゃい店主さんだね!
 あんまりない、ってことは少しはあるってこと?
 あ、ボクはティネだよっ」

興味深そうに赤い瞳を輝かせて、あれこれと矢継ぎ早に言葉を投げてくる。

アシュベール > 「個人経営だと、侵入者対策は万全なんだよねー……。
 あー。後、気をつけたほうが良いよー? 玄関から入らなかった人が物を取ったら……爆発しちゃうからね~? ちっちゃな身体だと吹っ飛んじゃうんじゃないかなー……。」

丁度彼女がポーションの瓶を触っていたところで、そんな注意する言葉を。
質量的に持ち上げる事は出来ないとは思うけれど、もし動かしたらどうなるか。一応、魔具店の店長として告げておくのである。

とはいえ、彼女は興味をこっちに向けて飛んできたので、爆発のおそれはないだろう。
カウンターに腰掛けた彼女のサイズ感は小さい。掌で軽々握りつぶせそう。
カウンターに置かれている金貨や先程まで鑑定をしていた魔具は横にずらし―――。

「そ。魔具。魔道具だねー。そういった物を売ってるお店で、ぼくが店主だよー。
 やー……まぁ、まだ若輩者だからねぇ。……んー? あるけど、オーダーメイドに近いから、お値段的にはちょっと高くなっちゃうよ?
 ……はいはーい、ティネちゃんねー? ぼくはアシュベール。アッシュでも、ベルでも、好きなように呼んでくれてかまわないよー?」

ティネ > 「えっ、吹っ……やだなあ、もう。ほんとに取ったりなんかするわけないじゃん~」

おどかすようなことを言われて、表情がこわばる。
それで逃げていったりはしないけれども。
移動していく魔具の類を視線で追ったりしてから、ふたたび少年を見上げた。
物理的にも魔力的にも、誇張抜きに簡単に叩き潰せるだけの圧倒的な格差があるが、それについて怯えたり怯んだりする気配はない。

「じゃあ、ベルって呼ぼうかな。かわいいから!

 そっか~、高いんだあ。そりゃそうだよねえ。
 ボク、お金持ってないから買えそうにないや。残念」

別に何か目当ての品があるわけではないが、自分が使える品があるというのなら、興味があるのだ。
ミミックの存在に気づいて、足元に降り立ったり、カウンターに戻ったり、せわしなく動く。そのたびに翅から燐粉が散った。
繊細な人形細工のような妖精は、どちらかというと買う側ではなく、商品の側の存在かもしれない……

アシュベール > 「実際、一人で店番してると、見てない間にー……みたいのがあるんだよねぇ。困ったことに。
 だから、そういう時のための防犯みたいなー?……かしこい妖精さんでなによりだね。うへへ。」

ゆるぅく笑みを浮かべるけど、言っている言葉は割と物騒。
―――移動させた道具は割と物騒だからこそ。これが例えば、魔具に精通した人だったり、冒険者として卓越した実力を持っているならともかく、はたから見れば小さな妖精。巻き込めない。という店主らしい責任感。

「可愛いかなぁ。けど、ベルくんって呼ばれるのは悪くないね?
 ……だろうねぇ。だって、ティネちゃんサイズになるとそもそもお金を持ち運べないっていうか。
 それこそ空間魔法とか時空魔法とか、そういうのがないと収納すら出来ないだろうしね~……

―――【っぷし!!】―――あー、ティネちゃん。ミミッくんは花粉とか鱗粉に弱いからあんまり近く飛ばないであげてー?」

なにせ、口が大きいからね~。って、足元をひらひらと舞う様子と、宝箱から不自然に響いたくしゃみに関して、思わずそんな注意を。
確かに商品としては売れるだろうが、こちらはあくまでも道具専門。人身売買どうこうになりかねない案件は手を出さないので、彼女を捕まえたり咎めたりはせずに。

「逆に何か道具があるなら、物々交換とかは承ってるけどー……何かある?」

―――それはそれとして、いかにも興味を持ってる感じなら、と。

ティネ > 「ボクかしこい? えへへ~」

文脈を無視して褒め言葉っぽいフレーズにだけ反応していい気になった。

「そうなんだよね~。
 じゃなかったら物を大きくしたり小さくしたりする魔法が使えたら便利なんだけど……」

妖精という身分でありながら魔法についてはほとんど素人も同然であるらしい。
くしゃみには、わっと驚いて空中を一回転する。

「びっくりしたあ……。確かに大人しくしたほうがいいかも」

ようやくあちこち飛ばずに、カウンターの上を定位置とすることにした模様。
物々交換を提案されれば、

「えっと……身体で支払う、とか?
 あ、いや。ボクの燐粉とか翅とか、ってことね……
 そういうのって値段がつくんだって。よく知らないけど」

妖精はまるごと一匹でなくても、身体の一部でもそれなりの価値がある。
燐粉や翅には魔力が含まれているし、コレクターも集めているからだ。
もちろん翅を取られれば、再生するまでの暫くの間飛べなくなってしまうのだが……

「それから……あ、いやなんでもない」

体液にも魔力が、と言いかけたが、恥ずかしくなってやめた。

アシュベール > 「実際、妖精や精霊って、こういうのを聞かないいたずらっ子も多いからね~……。
 ……普通のサイズのそういった収納袋とかは売ってるんだけど、それ自体そこそこいい値段になるのと、ティネちゃんのサイズに合わないって悩ましさがあるかな~……?」

このぐらい。って、袋のサイズを指で示してみれば、その大きさは掌大。掌サイズの彼女よりも大きなものが通常サイズ。
リュックにするにも大きすぎる、きっと彼女には持ち運びできないだろうと思いつつ―――。

「やー、わかってるよー。そもそもそういう行為出来ないでしょー?
 っていうか、そういう事を言い出せるってことは、キミも色々な所で狙われたりしてそうだね~……羽根は流石にもぐ訳にはいかないし、それなら鱗粉かなー……?」

そのまま、左目に取り付けたままの片眼鏡を使い、行う鑑定。
確かに彼女の言う通り、妖精起因の高い魔力を有している。粉末は加工がしやすいので割とよいものだ。それならば……と、取り出す銀皿と―――。

「? ―――ま、いいやー。じゃあ、此処に鱗粉、ちょっと多めにばさばさしてくれない? そうしたら……これ、交換しようよ。」

取り出したのは、いわゆるピンキーリング。という普通の人間の小指用の指輪。
実際に指輪として使えということじゃない。妖精なら、サイズ的に腕輪のように使うことが出来る一品。

ティネ > 「う~ん、確かに逆にボクが入れちゃいそうな大きさだね~……
 押しつぶされちゃいそう」

指で示された大きさを見て。
ううん、無茶な注文だったかも、と苦笑い。

「ハハハ、まあね……。
 ベルがいいひとでよかったなっ」

会ったばかりの相手を勝手にいいひとだと決めつけて。
片眼鏡を通して、自分(の、鱗粉)を値踏みする様子に、少しだけ緊張したそぶりを見せる。

「……なにそれ、腕輪? わかった、やるやる~!
 えへへ、嬉しいなっ」

やるやる! と銀皿の上に近づいて、ニコニコして翅を羽ばたかせる。
交換ができるということそのものよりも、相手に価値を見出してもらったことのほうが嬉しそうだ。
きらきらと細かい粉が舞って、銀皿の上に溜まっていくだろう。

アシュベール > 「むしろティネちゃんがこの孔を通って、その中で暮らしていけそうだよねぇ。うへへ……。
 実際、そういったバケモノがいたなぁ。シェンヤンの方に。人を飲み込んで体内で暮らさせながら、消化しちゃうみたいなね~?」

もう少し、空間魔法とかに詳しい人がいたらよかったんだけどー……。と相手の要望に応えられなかったことは少しだけ、歯痒い。
けれど、いい人と言われると「そうかなぁ?」って、首を傾げたりしたわけで……シンプルに、狩るよりも信用を得て素材を貰うほうが、今後の関係が良好になるだろうという、商売的考えなのは秘密。

「実際は指輪だけど、小さな子供向けの小指用の指輪なんだよねー……。
 けど、ティネちゃんなら腕輪として使えるだろうしー……ああ、効果はね。……氷魔法。と、耐熱効果だよー。」

銀色の指輪。其処にはめ込まれているのはアクアマリンの鮮やかな宝石。
魔力を通せば、普段は使えない氷魔法を使うことが出来、更にその恩恵で熱に対しても少々強くなる、そんなおまけ。
嬉しそうに銀の皿に自分の羽根を近づけ、ぱさぱさと細かい鱗粉を撒いていく姿はどこか幻想的。その様子を眺めながら―――。

「がんばれ、がんばれー。いっぱい出せたらもう一つ、炎魔法と耐寒効果のもあげるかもよー?」

なんて、からかい混じりな激励を向けたりしてたのである……。

ご案内:「王都貧民地区/魔具店『シャイターン』」からアシュベールさんが去りました。
ティネ > 「え、怖い! なんでそういう話するの! うへへって何!?」

飲み込まれて消化されるというのは、小さな妖精にとってやや身近な話なので余計にビビってしまう。
下手をすれば眼の前の少年にすら、生きたまま飲み込まれかねないのだ。

「へえ~、そうなんだ……
 この腕輪、じゃなくて指輪にそんな魔法の効果があるの?
 すごいなあ~」

不思議の塊のような存在だというのに、魔法の指輪に目を輝かせる、ちょっとズレた反応。
自分にとっては大きな腕輪なのに、ほんとうは小さな子供の指輪だというのが、奇妙な感じだ。

「え、もっと? ん。がんばる、がんばる~~っ」

囃し立てられて、絞り出すように、残り少なくなった鱗粉を落としていく。
果たしてもう一つの腕輪は手に入れられたのか、それはまた別の機会に語られることだろう……

ご案内:「王都貧民地区/魔具店『シャイターン』」からティネさんが去りました。