2023/03/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にピーターさんが現れました。
ピーター > 「いやぁ儲けた儲けた。たまにはこうして大勝するってのも悪くねぇや」

黄昏時も過ぎた頃合い、薄暗い貧民地区の路地を一人の男が悠々と歩いていた。
手には麦酒の入った木のジョッキ。既に半分ほど口にしており、ほんのりと酒気を帯びて頬を上気させている。

「いやぁしかし連中の唖然とした顔ときたら! イカサマも見抜けねえ脳筋ばかりで良いカモだったなまったくよ!」

半刻ほど前に近くの賭場で大勝した男、名前はピーター。
自白している通りにそのツキは仕組まれたものだったが、妖精の瞳力を用いたため、その方面に明るくないものには驚異的な運の良さにしか見えなかった事だろう。

「けれどまあ、しばらくあそこにゃ近付けねえな。流石に怪しまれかねねぇ……
 それに、調子に乗ってガス欠起こしちゃ格好もつかねえし」

くい、と麦酒を呷り酒気の濃い吐息を撒きながら。
悠然と、しかし足取りは若干おぼつかずに歩いていく。

ピーター > 「さて、当面の生活費は稼げたから……イカサマで使った魔力を補填しねえとな。
 この分なら娼館でも行きゃあ良いんだろうが……うーん」

商売女はあっちのテクは良くても魔力の量も質もイマイチ。虚空を見遣りそんな失礼なことを独り言ちる。
ただスッキリしたいだけなら悩むことなど何も無いのだが、今求めているのは活動に必要な魔力の補給、ようは食事同然の事なのだ。
イカサマを用いたとはいえ、せっかくギャンブルで気分良く勝ったのだから良いもの食べたい。そういう心地なのである。

「となると、また幼気なガキのフリで修道院にでも転がり込むか……いや、その手はこの辺では散々使ったからな……
 金も一度置きに帰らにゃならねえし……うーん、」

さてどこかに魔力量も質も潤沢な女の子でも都合よく居ないだろか。
失礼千万通り越した妄言を宣いながら、歩いていた所為か足元が疎かになっていた。
小さな段差に蹴躓いて、蹈鞴を踏んで傍の壁に寄り掛かると、一縷の期待を掛けて周囲の気配を探ってみる。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にイェンさんが現れました。
イェン > (その路地に足を踏み入れたのは、予想を超えて手こずった冒険者仕事の帰り道、少しでも早く寮へ戻ろうとする余りの近道としての事だった。もちろん、治安の悪さに付随するリスクは承知の上。チンピラの一人や二人程度であれば《武器》を抜くまでもなく体術のみでも往なせるだろうし、そうして作った隙をついて駆け出せば追いつかれる前に貧民地区を抜けられると考えての事だ。そんな駆け出し冒険者の朱化粧に彩られた切れ長の双眸が前方に不審な影を捉えた。何をするでもなく壁に寄りかかりじっと動きを止めた男。20過ぎと思われる長躯は同業と思しき軽装を身に纏い、すらりとした四肢は力強さこそ乏しくともしなやかさが見て取れる。油断を見せれば瞬時に喉首を掻き切られる。《蛇》の構成員と似た気配を感じ取り、イェンは美貌の無表情はそのままに華奢な肢体には薄く緊張を滲ませながら、それでも道を変えるでもなく歩を進める。ゆっくりと近付いて行く互いの距離。街灯などの存在しない月明かりすら差し込みづらい狭い路地の暗がりの中、ようやく互いの顔立ちが確認出来る距離へと至る。ちらりと一瞬男に向けた紫瞳は、相手の目の中に悪意や害意が含まれていないかを確認するための物だったが―――。)

「――――――ピーター君……?」

(何事もなくすれ違い、そこから数歩進んだ所で足を止め、呟きを漏らして振り返る。それは冒険者登録をして間もない頃、下水道の探索仕事の最中に出会った少年の名だ。貧民地区の裏路地によりかかる不気味な長躯とその少年が同一人物であると見極めての言葉、という訳ではない。一瞬目にした男の顔がどうにも記憶に引っかかり、それを探り続けた結果、彼の顔立ちにかつて出会った少年の面影を見たというただそれだけの事だった。)

ピーター > 「―――おや?」

いい具合に酔いも回り、ひんやりとした土壁が心地好く、このままひと眠りしてしまえるんじゃないか、と至って普通の酔っ払い思考を呈し始めた矢先。
先程まで向かおうとしていた方から規則正しい足音が此方へと近づいて生きているのに気付いた。
一瞬酔って都合の良い事ばかり考えてた故の幻聴かとも疑ったが、目を凝らせば薄暗い路地の向こうから確かに人影が歩いて来ている。

「ま、滅多に人が通らんって訳でも無し、そりゃ誰か通り掛かりはするか―――」

けれどまあ、どうせならとそのままの姿勢で来訪者を誰何しようと、半ば興味本位で思い立ち酔いを醒ましてる態を装って壁に凭れて待つ。
これでもし人影が男であれば後で落胆すれば良し、先の期待に沿った女性でなくても同様に、万一期待通りの相手だったとしてその時は――まあその時考えれば良し。
無計画極まった思考と共にぼんやりと待った末に訪れたのは――

「………!」

以前子供(本来)の姿で遭遇した少女であった。
いやいや流石に既知は拙い、とそれに相手が知っているのは幼い姿の自分。ならばと知らぬ振りで遣り過ごそうとも考えたのだが……

「……うん?―――あ、いや、私の事です?」

呟く様に名を呼ばれて、思わず反応してしまい、慌てて愛想の良い笑みを取り繕っては誤魔化す様に訊ねる。
まさか顔立ちで判断されるとは、と内心冷や汗がだらだらと止まらない。

イェン > 「―――――え……?」

(意図したものではなく、本当につい口をついて出てしまっただけの名前。それと共に振り返ったのは、もしかしたらかの少年の親類縁者なのではという考えもあったからだ。)

「あ……いえ、すみません。違うのです。以前、恩を受けた少年と貴方の顔が良く似ていたものですから、つい……」

(代り映えのしないポーカーフェイスに若干のはにかみを覗かせつつ、武芸家を思わせる真っすぐの背筋が軽く頭を下げた。そうして改め身を起こし、目弾きにて印象を強めた切れ長の紫眼がじ…と男の姿を眺め、幾許かの迷いの後に再び桜色の唇を開いて問う。)

「よもや、と思っての事なのですが、貴方はピーターという名の少年に心当たりはありませんか?」

ピーター > 「――ああ、そうだったのですか。」

どうやら看破されたという訳では無さそうだ。
律儀に頭を下げる少女の様子から、そう判断してほっと胸を撫で下ろす。
流石に10歳の少年と、20過ぎの青年が同一人物であるという考えは俄かには持ち辛いということを再認識し、今後も使えると内心ほくそ笑む。

「ピーター、ですか。珍しい名でも無いですが、子供というと心当たりが。確か、従兄の息子がピーター君という名前ですね……同じ子かどうかは分かりませんが。」

その子に恩を?と問い返しながら、此方を見る紫の瞳を翠の瞳が捉える。
大人の姿である現在では無いよりまし、程度の効果しか望めないが印象緩和の為に魅了の瞳術を発動させて。

イェン > 「なるほど……甥御さん、と言うには少し血が離れますが………」

(問いかけへの返答にブレザーの膨らみを寄せた上げた双腕が片手でそっと唇を抑えて小首をかしげ、改めて彼の顔立ちを観察する。親子、もしくは年の離れた兄弟というならいざ知らず、それほど血の隔たりがあってこれ程に似る物だろうか。彼の顔は少年がそのまま年経て成長したかのよう。どうにも納得の行かない思いを抱きつつ、しかしてこれ以上の言及が必要となる場面でもない。彼がピーター君の肉親であるならば、かつての出来事に対する礼を延べ、少年が今はどうしているのか聞いてみたいとは思ったのだけれど……。そうして早々に追及を取りやめたのは、彼が発動させた瞳術の効果もあったのかも知れない。)

「いえ、分かりました。応えて下さってありがとうございます。もしいずれピーター君と顔を合わせる事があったなら、どうかイェンが礼を言っていたとお伝え下さい。 ――――では」

(今一度下げた頭でポニーテールの黒尾を揺らした後は、最初から最後まで一貫して温度という物の感じられぬ無表情で身を翻し、ふわりと浮いたローブの背布を抑える様に背負い袋を担ぎ直して学生冒険者は男の前から立ち去ろうとする。多少後ろ髪を引かれる物を感じてはいても、このまま彼と言葉を交わす理由もないのだから。)

ピーター > 「――ああ、ちょっと待ってくれませんか。
 私もあの子と最後に会ったのは、もう何年も前の事でして
 この街に居る事も知らなかったくらいですから、もし良ければですが――あの子の事、聞かせてくれませんか?」

これも何かの縁です、とにこやかな笑みを保ったまま、去ろうとした少女を呼び止める。
むさ苦しい賭場に長時間居た反動か、見目良い少女との邂逅を短時間で済ませるなんてという不埒な考えも勿論あった。
何せ相手の肢体は以前詳らかに『視て』いるし、淫行手前の状態に至ったほどである。
あわよくば彼女から魔力を――満足いくまでではなくとも、次の相手を見つけるまでの分は得られるだろうとも考えていた。

「それに、人違いだったら後味も悪いですし。
 ――如何でしょう、お急ぎでしたら無理にとは言いませんが。」

と口では言いつつも腰掛けるのに手頃そうな木箱を見つけそこに腰を下ろす。
どうぞどうぞ、と彼女にも着席を勧めながら。

イェン > (学院寮に向かって歩き始めていた細脚が、人の好さそうな声掛けに足を止めた。横向けた頭部が肩越しに背後の長躯をしばし見つめ)

「…………分かりました。私も彼と会ったのは一度だけ。それも冒険者仕事の最中の事ですから、余りお話出来る事もないでしょうが、それでよろしければ」

(ゆっくりと振り返り、愛想のない美貌で軽く首肯を返してから長身の男を見上げる。ふんわりと波打つ金の髪と、猫を思わせる湖畔の色合いの双眸。少年に対しては下水道というロケーションが不釣り合いに感じたが、それを成長させたかの様な彼もまた貧民地区の薄汚れた路地裏には似つかわしくない品のある顔立ちに思えた。そんな青年が平然と傍らの木箱に腰掛けたのを見て、流石のポーカーフェイスも『え…っ、ここで……?』という雰囲気を醸すも)

「……………………」

(ひとまずは誘われるまま背負い袋を地に下ろし、プリーツスカートを上品に抑えて木箱に腰掛けた。ニーソックスとロングブーツに包まれた脚線をぴたりと揃える様子もまた、うらぶれた路地裏には見合わぬ物。)

ピーター > 「なにぶん彼を最後に見たのはまだまだ幼くて4つか5つか、それくらいの頃でしたから。
 それで、冒険者の仕事中に? まさか彼も冒険者に、なんてことはないとは思いますが、危ないことはしてませんでした?」

貧民地区の、それも路地で。さも当然の様に談話を始めようとしているが、ピーター本人は全く意に介している素振りは無い。
それもそのはずでこの男、まだ酔ってるのだ。
一時動揺と共に酔いも醒めたかと思われたが、どうやら一安心した事でまた酩酊が戻って来たらしい。
ぐい、とジョッキに残る気の抜けた麦酒を呷ってから、木箱に行儀よく座る少女――イェンへと様々な期待の入り混じる視線を向ける。

「――と、その前に。私はペテル・ロベルトといいます。ペテルとお呼びください。貴女は――イェンさん、でしたっけ?」

そう言えば自己紹介がまだだった、と白々しく笑って見せ。
折角の再会、目の保養を今一度、とかつての様に透視を仕掛ける事も抜け目無く。

イェン > 「私が彼と出会ったのはここ王都の地下。下水道の溝内です。冒険者としての活動を始めたばかりの私は、下水溝の調査依頼で地下へと潜っていたのですが、ピーター君は遊んでいるうちに迷子になってしまったとの事でした」

(ふふ…と小さく覗かせた笑みはよくよく注意して分からぬ程微かに桜色の唇端を上げた物。恐らくは下水溝をダンジョンに見立てての冒険者ごっこでもしていたのだろう微笑ましさが、懐かしさと共に鋼の無表情を綻ばせたのだ。浅層であれば然したる危険もないだろうし、あの年頃の少年はとかく無茶をしたがるものだ。その程度の冒険は余程痛い目にでも合わぬ限りはいくら言い聞かせた所で止めたりはしないだろう。)

「―――あぁ、そうでしたね。ご丁寧にありがとうございますペテル様。はい、イェン=リールゥと申します。シェンヤンからの留学生で、今はラジエル学院にて学ばせてもらっています」

(タイミングを逸して聞きそびれていた彼の名を脳裏に刻み、こちらも改めて丁寧な名乗りを返す。にこやかな笑みを浮かべた青年の翠瞳が、よもや己が裸身を盗み見ているなどとは思いもしない。ぴたりと膝をそろえた長脚の腿にそっと重ねた双手が邪魔をして、楚々たる姫園は割れ目の上部を淡く飾る産毛めいて繊細な黒毛の翳りを覗かせるばかりなれど、実用性を重視するスポーツタイプのブラジャーに寄せ上げられた双乳の芸術的なまでの曲線は先端を飾る薄桜色の蕾と共に堂々と曝け出されていた。)

ピーター > 「――ああ、やはり学生さんでしたか。
 実を言うと私も学院でカウンセリング室を持たせて頂いているのですよ。もしかすると今後学院内で顔を合わせる事もあるかもしれませんね?
 ……失礼、話の腰を折ってしまったところでした。
 どうぞ、その後を続けてください。彼と下水道で会ったとか――ふふ、やんちゃに育った様だ。」

両親のどちらに似たのやら、と小さく肩を竦めながら瞳を細める。
その視線の先は陶磁の様に白く滑らかな肌が醸す曲線美。以前と変わらず均整の取れ女らしさに富んだ肢体にピーターの頬が緩む。

そして、ただ座して語るだけというのも芸が無い、と視線をイェンの瞳へと合わせれば。
これから語るであろう顛末を知っていればこそ、彼女の記憶をより鮮明に揺り起こすべく軽い催眠を伴う邪視を仕掛けようか。
抵抗されることなく成功すれば、当時の記憶がさながら今体感しているかのような感覚に囚われる事になるだろう。
その上で、ピーターは話を続ける様、彼女を促すのだった。