2023/02/27 のログ
ティリエ > 「怖い人だ……って、噂が本当だったんだって、今、実感してたところです。」

さっきの怒声を思い出して、身震いする。
見知った相手の、意外―――でもない側面を垣間見て、何となく得心したような表情で。

「一応、護身術はお師匠に仕込まれました、から。
 両親からは、魔物相手には通用しないからって耳タコなくらいに釘を刺されてますけど。」

酔っ払いくらいならお任せください、と胸を張る。
何はともあれ、慣れない場所で顔見知りに出会えれば、ホッとしたようで。

「ショッピング感覚じゃないお買い物って何ですか?
 先生から貰ったノートに書いてあった薬を作ろうと思ったんですけど……
 えと、紫蜥蜴の毒肝と一角獣の黒角―――あと水妖の悲涙です。」

何を探しているのかと訊ねられると、頬へ指を添えて諳んじる。
そのどれもが入手難度の高い、しかも取り扱い注意の毒物だったり呪物だったりというシロモノ。
それを使って調合できるものも、当然危険なものに違いなく。

コルボ > 「冒険者なんて大体こんなもんだよ。特にこの辺りは付け込まれたら全部持ってかれるからな」

 納得している貴女に言い聞かせながら、その視線は周囲をしばらく伺いつつ、
 無意識に腰裏のフセットに片手が添えられていて。

「あのババア、この年で対人いけるまでは仕込むって何してんだ……。
 ああいや、だから王都行くのに許可出したのか……。」

 先ほどの火力に今度はこちらが得心を得て、その後に苦虫を嚙み潰したような顔をしてしまう。

「ショッピング感覚じゃないってぇと、ティリエが”売り物”にされるとか?

 ほん、ほんほん……、ほぉーん」

 話を聞いて、頷き、腕組みをして、納得した末に「そうかぁ」とほほ笑んだ後にほっぺを掴んでむにーっとして。

「薬草学で薬草しか教えてない俺もアレだけどさーっ。
 ああでもそうか、ティリエが編入してくる前にした話だっけか……。」

 頭を搔いて、ティリエを見て。

「材料調達の際には材料の入手難易度を考慮すること。
 ティリエもその辺考えて普通じゃ出回らないものが転がってるこっちに来たんだろうけどな。

 入手できる場所の危険度も難易度に含まれるんだぞ?
 ……後これ、全部買うだけの資金はあるのか?」

 想定を遥かに上回って難易度の高い調合に取り組んでいたことに、
 嬉しいやら複雑な気持ちを抱きながら額を人差し指でグリグリと突いて。

「……そこで転がってるクソ共も黒角欲しがってたから俺今持ってるけどよ。
 払えなかったらどうするつもりだ? ここいらの店じゃ強制的に買わされることあるし、
 強制的に”支払わされる”こともあるんだぞ?

 特にティリエみたいな可愛い娘はな。」

ティリエ > 教師らしいとも取れるお説教に「へぇ~」と感心したように聞き入る少女
ノートとペンがあれば、メモを取っていたかもしれない。

「むぅーっ! 何、するんですかぁー…!
 うぅ、"売り物"にならなくなったら、どうしてくれるんですか……」

摘ままれた頬を擦りながら、ジト目で相手を見上げ。
売り物の意味は理解していても、その意味する結末までは理解できていない様子で。

「そんなお金なんて、奨学生の身で持ってるわけがないじゃないですか。
 今日は相場の確認です。ここで手に入るようなら、頑張って稼ごうかなって。」

教師の言うことは的を得ている。
そして、それは自分でも想定していたことで。
ただお金を貯めるよりは、目標額がはっきりしていた方が良いだろう。
それに常連になればオマケしてくれるかもしれない。
そんな打算もあったりしつつ。

「え? 先生、持ってるんですか? 危なくないです?
 無理やり買わされちゃったら、借金地獄になっちゃいますから、その時は先生を頼ります。」

持っていると聞かされると、心配そうな視線を向ける。
癒しの効能を持つ一角獣の角―――その変異である黒角は、所持者に災禍を齎すと言われる代物。
効能としては、二角獣のそれよりも数段上のもので。
それだけに闇ギルドには需要が高いとか何とか。
そんな高価なものを無理やり買わされたら、まずは目の前の教師に泣きつくと公言し。

コルボ > 「売り物にならなくなったら俺が面倒みてやるわバーカ」

 そこまで言って

「……売り物にならなくなってもお前のことちゃんと大切にしてくれる奴探して引き合わせるわバーカ!」

 言い直した。

「っとお前は真面目だし現実的なのに肝心なところに抜けててよぉ。
 当座の目標に確認しにきたってか。

 ったく……。
 あと、ティリエ。常連って平民以上ならお得意様だけどこの辺だったら
”カモ”って言うんだからな。」

 危なくないか、などと、女性というだけで、なく、初心な少女というだけで己よりよほど価値があるのに心配してくる貴女を見て、少ししてから苦笑して。

「さっきも”それ”と取り巻き一人で片付けたっての。
 だから俺と一緒にいたらここじゃ安心って話してんだよ。」

 烏。凶鳥。
 この国にあって王侯貴族が重宝する情報屋の”烏”であり
 ヤルダバオートの懲罰部隊にとっては”白梟の影”とも言われる男。

 表ざたにしていない立ち位置など知らぬ目の前の娘は、黒角の言い伝えを信じて心配してくれているのだろう。

 もっとも、これだけの騒ぎを起こしてこれ以上追手や介入者がいないことを、
 並以上の存在なら気づくだろう。

「……じゃあ、俺の”悪い噂通りに食べられたら”黒角をやるって言ったらどうする?」

 男のもう一つの噂。
 ごろつきめいた冒険者の他に、女性関係が爛れているという話。
 親身になって貴女の心配をする男、その噂を貴女の中から払拭した男とは思えない提案。

 無論、それは、この場にあって”娘がカラスの手込めとなり女となった”というある意味の安全策でもあるのだが

ティリエ > 「……言い直されたのは、なんかショックです……」

現実主義的に考えるのであれば、より誠実な言葉なのだろうけれど。
今のシチュエーションでは、キズものにしておいて、他の人に後始末を押し付けているようにしか聞こえない。
じとぉー、と非難めいた視線を相手に向けて。

「……?
 さっきの柄の悪そうなえっちな人のことですか?
 あの人、ただのチンピラじゃなくて、そっち系の人だったんですね。」

はぁ…、と微妙な表情を浮かべ。
話に聞く闇ギルド。どんな手練れの怖い人がいるのかと思えば、スカートの中を覗き見するようなスケベだったとは……。
若干というか、いろいろ残念な失望が過ぎって。

「えぇ……それだと、先生が損しちゃいますよね。
 なので、ちゃんとお金払います。出世払いになっちゃいますけど。」

自分とレアアイテムなら、釣り合わないだろうと首を振る。
そもそも相手が本気で提案しているとは思っていない。
出世払いという名目の踏み倒しになる可能性は―――なくもないけれど。

コルボ > 「お前みたいなイイ女が俺の慰み者になってる時点でだいぶマイナスだろうが。」

 湿り気のある視線に対して普段は余裕のある振舞いを見せている男が向けたのは、
 歯を剥き出しにして顔を”くしゃっ”とさえしている忌憚のない返しで。

「……ティリエってさ、もしかして戦闘能力高い方じゃない?」

 弱者、生き残る弱者は特に蹂躙する強者を察知する本能がある。
 だがティリエにはそれはない。
 貞操は別として、目の前の娘にはそれがない。

 ……怒らせないように努力しなければ。

「んじゃあ、俺的にはティリエが一晩俺のものになったら損したとは思わない、っつったらどうする?」


 などと、釣り合うか否かは自分が決めるとでもいうような口ぶりで返してくる。


「……この際だから言っておくが、俺はティリエのことはイイ女だと思ってるぞ。
 後々どんな手使ってでも食っちまいたいぐらいにな

 今この場だけ、受けるなら、俺は悦んで手放すぜ?」

 等という。

ティリエ > 「……? 先生のものになるとマイナスなんですか?」

慰み物にされて、捨てられたら、それは確かにマイナスだろうけど。
イイ女という言葉は、社交辞令だろうと聞き流し。
不思議そうに、いつもの授業のノリで質問してみた。

「どう、なんでしょうか?
 冒険者の両親からは、冒険者には向かないって言われ続けてたんですけど。」

うーん、と首を捻る。
事実、両親から課された課題はどれも及第点には届いていない。
だから、そこまで戦闘力が高いとは思えず。

「どうするって、えと……そんな気を遣っていただかなくても。
 うぅ……なんだか口説かれてるみたいで、照れちゃいます。」

相手のその言葉を、黒角を譲る口実を作ってくれている、という風に受け取って。
けれど、ちょっとばかり真剣な瞳に、たじろいでしまう。
相手の顔を直視できずに、おろおろと視線を左右に彷徨わせてしまい。

「その、ちょっと欲を言うと、アイテムの対価じゃなくて―――とか?
 あー、わー……ごめんなさい、今のナシでお願いします!」

口説かれるなら…と、そんなことを教師相手に口走ってしまったのは、照れ隠しにしても逆に恥ずかしい。
両手を突き出して、顔を覆い隠すようにして。

コルボ > 「俺のものになると俺はお前みたいなイイ女ひっかけたって強みになるけど、
 お前は俺みたいな悪い男に引っ掛かったってキズがついちまう。

 俺にとっては役得だけどティリエにとっては何の得もねえーんだよ」

 目を見る。けれど仕草は額を指でグリグリしながら『そんなことも分からんか』とからかうそれで。

「冒険者の適性はないと思うぞ。ティリエお人よしだからな?」

 だが、あくまで心象面。単純な膂力は今垣間見たもので理解して。

「口説いてんだよ」

 一言で言いきって、たじろぎを払拭するように。

「悪いけどな、俺は女にお世辞は言わねえ。腹も膨れねえしな。
 だから、イイ女に対してしかイイって言わねえし食いたいと思ったら餌をちらつかせてでも喰う。

 ……ティリエは真面目に質問して今後や次に活かす出来た生徒だからな。
 実際ここに来たのも、あのクソみてえな難易度の薬に手を出してるからだしよ」

 顔を覆い隠す貴女の耳元に唇を寄せて”でもな”と囁いて

「今ここにいるのは、ただのティリエと、非常勤講師の”クロウ”じゃないコルボなんだよなあ……。」

 腕を、腰に回し、頭を撫でて、優しく、優しく、残酷なまでに甘い言葉で

「……どうする……?」

 囁いて

ティリエ > 顔を赤らめて、ぶんぶん首を振って。
けれども、相手から返ってくるのは、冗談めかしたものではなく、どこまでも真剣な声音
華奢な腰に手を回されると、びくっと身体を強張らせ、蛇に睨まれた蛙のように硬直してしまう。

「ふゃ……あぅ……
 せ、先生が……欲しい、なら……その、良いです…」

耳元に囁かれると、すぐさまそこも熱を持ったように赤く染まっていく。
優しく頭を撫でられ、甘く囁きかけられると、そういうことに耐性がないらしく。
恥ずかしそうに相手の胸に顔を埋めて、どうにかそれだけ返事を返し。
無理やり顔を上げさせられたなら、火を噴きそうなほどに真っ赤になっているのが見れることで。

コルボ > 「……お前、悪い男にひっかかる才能あるな?」

 耳元で囁く男が、リップノイズを響かせて頬に口づけをする。
 かつてこの男は貴女の師と見解の違いから袂を分かったという。

 はたしてそれは本当に真摯な思想の差異故だったのだろうか。

「……お前が今日一日、俺のものになるなら他の材料も探すの手伝ってやるよ……。
 場所変えるぞ……、いいな……?」

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からティリエさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からコルボさんが去りました。