2022/12/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリアさんが現れました。
リア > 貧民地区。革のブーツの足音が響く以外は静かな――静かすぎる路地。
帽子の大きなつばの下から不安げな眼差しを覗かせ、呟きを漏らす。

「どうしてこんなに街灯が少ないの……?」

ゆったりしたシルエットの裏ボアレザージャケットとキャップの中に髪を隠すことで、一見性別のわからない感じにしてはいるけれど、これは男性でも不安を感じる地域なのでは、と思い始めている。
何か具体的な危険があったわけではないけれど、街中だというのにおそろしく人気が無く、街灯はまばらで壊れていたりもする。

先ほどは道端で寝ている人に思わず声を掛けたけれど、酔いつぶれていただけだった――どうやっても起きないものだから、衛兵さんに「倒れている人がいる」と伝えて「わかった」と返事は貰ったけれど、思い返せば邪険に扱われた気がしなくもない。

あの人は大丈夫だろうか、と気にかかりはするが、目下自分のことも心配になってきている。
かさ、と手のひらの中の折りたたんだ紙切れを開く。
走り書きの地図とあたりを見直して、足を早める。

人に教えてもらった魔具店がいわゆる貧民地区にあると聞いた時、少し躊躇したけれど、人通りの無いところを歩かなければ大丈夫だろう、くらいに甘く見ていたのだ。
そもそも人通りのあるなしを選べる場所でもないと気づきもしなかったし、薄暗くて静かというだけでこんなに不安になるものだとは。
治安の悪さ、という曖昧な言葉を体感として初めて理解する。

リア > どこか遠くから硝子が割れるような音が響いてびくっとして、
建物と建物の隙間からねずみがちょろちょろと走り出てきてびくっっとして、
人の姿があった――とほっとしかけたら、視線が合ってもにこりともされず、会釈されるわけでもなく、通り過ぎてもまだ背中に視線を感じてびくびくする。

もはや何もかも怖く見えてしまうのは、これは心の持ちようが悪い。
慣れ親しんだ地区でなら、どれもそこまで過剰に反応するようなものではなくて、「そんなこともあるかな」程度である。

「ええと――マーシャル通りとスワロウ通りのぶつかるところを右……あ」

道を曲がったところで、もぞもぞとジャケットのお腹が動く。
小さなかたまりが服の中で上に登ってきて、合わせた襟の間からぴょこっと顔を出したのは白黒のまだら模様の仔猫。

「ふふ、おはよ。ねえ、お前が初日でお部屋を脱走して迷子になるからこんなことになったのよ?」

居場所を特定できるペット用の首輪などはないか、という相談をした相手が教えてくれた魔具店がこのあたりだったのだ。
まだところどころ毛の薄いところがあるくらい生後間もない仔猫は、にー、と完全無罪の顔つきで返事をする。

「お願いだから大人しくしていてね、もうすぐ着くはずだから」

不意な仔猫の飛び出しに注意しつつ、指先でそうっと額を撫でる。
くりくりした目が細くなるので、そのまままた寝てくれないものかと足早に歩きながら撫で続ける。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にヴァンさんが現れました。
ヴァン > 夜の貧民地区はことさら寒く感じる。
平民地区以上であれば、冬至を祝うための準備として商品を売る店が多く賑わっている。
貧民地区にそんなものはない。明日より今日を生きることに精一杯の者ばかりで、とても静かだ。

壮年の銀髪男性は首を竦め、ジャケットの前のボタンを可能な限り留めて足早に歩いている。
足元ばかりを見ていたが、ふと顔を上げるとこの場には似つかわしくない姿が目に入った。
男性とも女性とも見えるが、身なりがいい。
そして、貧民地区に馴染があるようにも見えなかった。思わず声をかける。

「こんばんは……こんな時間にこんな場所に、何か用かい?」

話しかけた後、ジャケットの襟の間からのぞく仔猫の顔に訝しげに目を細める。

リア > 平民地区にお出かけするときの恰好で問題ないだろうと思って赴いて、浮いている自覚が無いので声を掛けられて少しきょとんとするけれど、初めてまともに会話のできる人に会えた安心感で自然と笑顔になってしまう。

「こんばんは! ええと……お店を探しておりまして。
 変わり者の店主さんだから、夜中でも機嫌を損ねなければ入れてもらえるって聞いて……
 このあたりの方ですか? ここなんですけど、もしやご存知ないですか?」

特段男性の振りをするわけでもなく、声も少々ハスキーではあるけれど明らかに若い女のもの。
手描きの地図を見せる――と、相手の訝しげな視線に気づいて、仔猫を見せるように撫でていた手をよける。

「ふふ、可愛いでしょう。この子の首輪を買いに行くんです」

ヴァン > 返ってきた言葉から察するに、少女のようだ。声変りをする前の少年かも、と考えたがすぐに打ち消す。
帽子の下に笑顔が覗くと、つられるように笑う。貧民地区ではあまりお目にかかれない。

「いや、このあたりの者ではないが……あぁ。この場所ならすぐ近くだな。
首輪……その仔猫はよっぽどお転婆なのかな?小さい子は少し目を離すととんでもないことをする、と聞くが。
君の身なりからすると、陽が昇ってから、あるいは人を使って買いにいかせることもできそうだと思ってね」

地図を覗き込む。幸い地図が読めるので、現在地と目的地は理解できた。ここから数分、すぐの所だ。
男は動物を飼ったことがなく、ペットに何が必要かもわからない。思ったままを口にする。
地図で現在地を指さした後、進行方向――男が歩いてきた道を示し、歩き出した。
寒い中ただつっ立っている必要もないと踏んだのだろう。どうやら、道案内をするようだ。

「その子はだいぶ小さいが、産まれたばかりかい?名前は?」

ただ黙っているのもよくないと考えたか、とりとめもないことを口にする。