2022/12/11 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエレイさんが現れました。
エレイ > ──ある日の夜。
男は人気の少ない夜道を、傍らにいる女性に肩を貸しながらえっちらおっちらと歩いていた。
傍らの女性はだいぶ酒に酔っているようで、殆ど男にぶら下がるようにしながら千鳥足でなんとか歩を進めている。

「……こう激しく酔っ払ってしまってはもつわけもない。とりあえずここに入って休もうず」

ちらりと女性を横目に見遣り、その酔い具合を見て苦笑を漏らす男。
度を越して飲みまくったのか、あるいは極端にアルコールに弱かったのか、それとも何か他の要因か──それはまあさておき。
男は安宿の前で一度足を止めると女性にそう提案し、返事を待たずにその中へと入り込んでいって。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からエレイさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にテンドンさんが現れました。
テンドン > 夕暮れを越えて夜中を迎えている貧民地区の一角。
誰もいない通り道で或るイベントに直面していた。

「ゴクリ……!」

それは道端に革袋が落ちていて何だろうと思って拾ってみたら存外にずっしりと重たく。
何気なく中を検めてみたら中には沢山のお金が入っていたのだ!!!
両掌の上に口の弛んだ袋を載せて棒立ちになっている。
繁々と覗き込んでいる先は勿論袋の中の大金。

テンドン > 「え、なんでこんなイベントが…確かに日頃頑張ってるボクへのご褒美に不労所得ゲットになりますようにっていつも祈ってたけど…お、重たい、一杯在る…これボクの月の給与の何か月分……?」

何度も袋を閉じたり開いたり、目をごしごし袖でこすったりして幻覚を疑いあるいはほっぺたを指先で抓って夢ではない事を再確認。
周囲に人気は皆無とは言えそそくさと道端の見えざる物陰にへと避難慣行をする。

「ふううう……」

緊張にかちかちになっている全身を揺らして深呼吸。

テンドン > 「…………」

ほわほわほわーん、押し黙って沈考するその頭上において、白黒の煙のようなものが立ち昇り出していた。

悪いボク > 蝙蝠のような翼を羽ばたかせる小さなボクが左側に浮いている。
そのボクは滅茶苦茶悪い顔をして本体のボクに囁いて来る。

「いーひひひ!どうせ誰も見ちゃいないよ!年末年始でモノが入用なこの時期に神様が憐れなちびっこのお前に恵んでくれたのさ!此処は貰っちまいなよ!YOU!ぽっけないないだ!!!」

良いボク > 水鳥のような白い翼を羽ばたかせる小さなボクが右側に浮いている。
そのボクは何時も炊き出しとかしてくれる聖教会のシスターさんみたいな顔をして本体のボクに囁いて来る。

「ダメだよっ!こんな大金!何の労もせずに懐に入れるだなんて!ちゃんとした努力が無いとこんなの癖になっちゃうでしょ!これは堕落への誘う悪い道への第一歩だよ!それに落とした人も困ってるかも知れないし、衛兵の詰所とかに届けようよ!!!!」

テンドン > 「うわあ、うわああああ…ボクはどうしたら…!!!」

ぷしゅうううと白い煙を噴き出しながらステレオで左右から責めて来るアバター二体の両挟みで、頭を抱え込んで蹲る他に無い。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にアシュベールさんが現れました。
アシュベール > そんな、貧民地区の一角。荷物を載せた籠を引きながら、自宅兼お店に向かっていた男が、蹲っている女の子を見付けてしまったのです―――。

「……おー……?」

頭からぷしゅ~。っと煙を噴き出し、頭を抱え、天丼というよりふわっふわの白い饅頭みたいな状態になってる、男?女?どっちか分からない。

「おーい。……こんなとこで蹲ってると蹴られるぞー。どうしたんだー?」

―――ので、声を掛けてみよう。ふぁーすとこんたくと、大事。

テンドン > 「にゃっ゛!!??」

びくんっと震えてその場より立ち上がる。振り返る。

「ボボボクは何もやってないデース!清廉潔白!まだ未遂ダカラ!!!」

ばたばたと相手の顔を確認する前に片手を振りつつ言い訳弁明、もう片の手を背中の後ろに隠して金袋をちゃりちゃり言わせつつ。

アシュベール > 「うお、びっくりしたー……。」

ばっ!!と音が聞こえそうな勢いでの立ち上がり。
身軽さを体言したような動きに、思わず仰け反った。けど、眠たげな表情は驚いた。という言葉とは裏腹に対して変化はない。

「いやー。腹痛でも起こしてるのかって思っただけなんだけどー……。
ふーむ……ほほー。」

何かを隠しているようにも見える。なんなら、その大げさな動きに伴い、ちゃりちゃりと音が響き渡る。背中の方から。ならば……少しいじってみよう。

「いーや、なにかしたなー? その手に隠しているのがなんらかの証拠ー。
 ……さぁ、何をしたか言うんだー。言わないと…………んー。なんか大変なことがあるかもしれない。」

―――思いつかなかった。

テンドン > 「ひゃっ!!!」

びくんっと指摘姿勢にもう一度体が震え上がり。

「うう、良く見たらボクと同じぐらいの年のころみたいなのに…はい…お金を拾いました、大金です…衛兵の詰所とかに届ける予定でした、はい」

しょんぼりと牛耳を伏せて尻尾を路上にへと垂れ流しにしつつ、観念したようにそっとお縄を受けるポーズみたいにかくしていた片手を前にへと差し出す。✨と輝くお金が一杯詰まった革袋を。

アシュベール > 「―――んー。そーね。多分、同世代。珍しいねー。此処に同じぐらいの子、いるの。」

改めて、立ち上がった彼女の事を見遣る。
ファーが揺れるふわふわとした上着のせいで、ボディラインはあまりわかりにくいけど、身長的には確かに同世代。
上目遣いで、その狼狽を隠せない双眸をじぃっと見上げつつ。

「……って、あーね。拾い物。……んー。金かー。おー、ほんとだ。おっも……。ずっしり。」

―――その差し出された掌に乗った重々しい革袋。隙間からはきらびやかなゴルドの輝き。おそらく数日、数週間は遊んでくらせそうなそれ。

「……え? 別に届ける必要、なくないー?……そもそも此処、こんな地区なんだしー……。落とした人もぶっちゃけ、諦めてるんじゃないー?」

―――ここで悪魔の囁き。もとい、魔王の囁きが彼女を襲う。
そもそも近くで何処か探してる人の声も無いのだから。

テンドン > 「え、えー……」

相手の言葉に挙動不審全開に目が右に左に泳ぎ。
怯むかのように半歩後退するものの。

「………いや、ううん、でも冷静になるとこんな貧民地区でお金落ちてるっていう状況自体在り得ないというか。これもう絶対真面じゃない金だよね、何処かのヤバいお兄さんお姉さんとかが全く真っ当じゃない手段で捻り出した暗黒ブラックマネーだよ」

ぱたぱた手を振って欲望と倫理を唱えていた頭上左右のアバターたちを追い払う。
所詮頭の中から捻出された架空存在故に脆くも手で払われると両方とも呆気なく散って塵となってしまった、儚い。

「後でこわい人に落とし前をつけさせてやるぜってストーキングされたら困るので、ボクは拾わない。なので良ければどうぞ…こちら…」

すうっと相手の方にへとそのまま譲り渡すかのように金袋を差し出す。

アシュベール > 「おー、真面目ー。いや、処世術かー……。」

彼女の言い分は尤も。たしかにこんな場所に落ちてる金がまともなものな訳がない。もし足が着いたら……それこそ大変。

「まーね。多分これ、奴隷売ったりー。なんかヤバげなモノ売ったりしたかー……もしくはそのためのお金だよねー……。まー。此処でブラックじゃないマネーなんてめったに見かけないけどさー。」

勿論、ふわっとぱたぱたで消されたアバターのことなんて見えていない。残念。

―――と思ってたら、差し出された。金袋。
少しだけ視線をそちらに向けてから、少し考える素振り。うーむ。

「んー。それなら……こっちが衛兵に持っていくよー。―――拾った人がそう決めたんなら、衛兵にオラァ!すれば、まぁ、万事解決だよねー。

 ―――にしても、優しいねー。てっきり使うかと思ってたのにさー。」

では、差し出されたそれを受け取ろう。
同時に魔法陣を展開。丁度自分の背中で隠れるように狼の魔物を呼び出せば、革袋をそっと投げ渡し、彼に衛兵の元へ持っていかせる。これで……足はつかないはず。

テンドン > 「危険地域で生きて行くには慎重さが求められるんデース。橋の向こうにお宝が在ってもその橋が崩れて下に潜んでいる怪物にパックンチョされたら困るもんね!わーくわばらくわばら!普通に在り得そう!年末年始だっていうのにあくとーの人達は意気揚々、商売繁盛だよね!悪はほろびよ!」

地団太ふみふみ、多少ながらに未練がましい目つきで譲渡された金袋の行方を視線で追い掛けるも直ぐに断ち切り振り返り直す。

「中々美味しい話っていうのは転がってないね、アリガトー。じゃあ処遇についてはお任せします。小さいのに何だか凄いね、魔法使い?ラジエル学園とかの生徒さんとか、あそこは秀才とかも多いみたいだし」

むふーと気を取り直したようにゆるんだ笑顔を湛え、改めて向い直った相手の様相にちらちら配る視線。

アシュベール > 「あーんま気にしたことないけどなー。あー……けど。確かに時々店に侵入者が来るのは、やっぱそゆことかー……。
 それは危険地帯っていうか、単なる冒険者殺しの罠じゃあないかなー。……つまり、袋の中に発信機があって、持っていったり移動させたりしたやつをー……。」

『オラァ!何やっとんじゃあ!免許持ってんのかおらァ!』(低音)

「―――みたいに脅して奴隷堕ちさせるとかー?」

妙に無駄に演技力を混ぜ込んだ低音ボイスで、想像した末路を言葉にしてみた。魔王なので声帯模写ぐらいは余裕です。
衛兵の人もいきなり狼が金貨入りの袋を持ってきたら驚くかもだが、まあ、それはそれ、これはこれ―――。

「どーいたしましてー。そーねー。今もう、憲兵のところに運んでるからご安心をー。
 ……んー。まー、向こうで魔具店開いてるしがない冒険者よー。……学園は入りたいけど、仕事あるからねー。未だ入ってないんだわー。……ま、棚卸しとかはするけどねー。」

視線を向こうへ向け、其処に自分の店があると示し――。
様相。紫色の髪の毛がフードからちらほらと見えるぶかぶか具合。ちらりと見える指には指輪を。足には彼女の履くブーツと同じように頑丈そうな靴底が。

テンドン > 「ひええっ!真に迫ってる、人権なんて紙切れだ…この世の中やはり一度洗い流して文明をやり直す方がいいのではないかなと思う今日この頃。悪は栄えたためしなし、みたいな台詞は吟遊詩人の英雄の御話とかで良く出て来るけれども栄えっぱなしだよ…実際そういうことも在りそうだからね、そういう高いツボ壊したメイドがご主人様に完全に束縛されるみたいな難癖」

びゃっ!と総毛立った牛の尻尾の先っぽがタワシみたいに膨れ上がる。
青色の溜息を洩らしながら世間話の口調にさもヤダヤダ風に眉尻を下げて首を竦め。

「魔具。ふーん…また才能ありそうな子だ。お店を経営してるって時点で凄いよね、普通に。屋台とか露店じゃなくて店を持ってるの?土地持ち?資産家?お金持ち?実は何処かのボンボンブルジョワジーですみたいなオチがついてくるんじゃ…」

きょろんっと釣り込まれるようにその方角にへと目線を見遣り、軽く値踏みをするかのように指輪にへと一瞥を配って。

アシュベール > 「まー、人間って時折魔族とかミレーより怖かったりするよねー。何よりも怖いのはなんちゃらかんちゃらー。特にこういう公共の手が入りにくい場所だとなおのことねー……。
 あー。前にあったなー、それ。メイドが壊した壺と同じものを手配してくれー。ってオーダーがさー。それ、お前がやったんじゃないのー?って思ってたけどー。」

―――まさかの既に経験済。難癖はどこにでもある。しかも一度購入したから安くして欲しい。とか言われた。難癖でしかない。
思い出したのか、眠たげな目を薄く閉じて、はふー……っと、こっちも肩を竦めてみせて。

「んぁ?―――んー、そだね。店持ってるよー。と言っても、店自体はねー。ギルドに魔物の素材換金して、お金ドーン!して、権利得れば誰でもできっからねー。土地は借り物ー。資産は適度ー。
 まー……カチコミもあるけど、それはそれー。……いやぁ、ボンボンじゃーないよ。単なる店長だってばー。うへへ。―――そんな君はどーなのさ?」

ちらりと見える指輪。魔法の素質があるものなら、一つ一つが魔法の媒体になると分かる――多分、高いと理解させるもの。それがここのつ。
それを見せつけるよに手をぱたぱた揺らしつつ、逆に相手の様相を覗き込もう。顔、身体、足。じーっと。

テンドン > 「んん?ボクは見ての通りの普通の貧民デス。種も仕掛けもゴザイマセン…でも最近やたら世話焼かれる事が多いから、何かそういう才能の種が芽吹いて来てるのかも、チャーム(魅了)とか。此処でボクの年下少年に助けて貰ったのもそういう運びかも?天運?」

ぱっと両腕を軽く左右に広げてくるりと浴びる視線の前で片足を軸に一回転、ふわっと銀髪を靡かせつつ。

「道理でさっきのお金袋にもさして動揺しない訳だ…お高め生活水準を保って食って行ける才気があるのは羨ましいですねい、せんぼーせんぼー」

指を口元にくわえてじーっとお高そうなそれに視線集中、指輪きらきら。

アシュベール > 「確かにさっきの言葉とかは小王民(市民ではない。)――っぽさがあったねー。
 ……おー、そなの? それはなんというかー……流れが向いてきたってやつだぁねー。やったじゃんー。……つまり、さっきのお金も幸運とか天運とかだったのではー?

―――あー。チャームはないねー。けど、良い表情してるねー。うへへ。」

その場でくるり。と回れば、上着の丈と真っ白なふわふわが着いた尻尾が揺れる。
楽しそうな仕草に口元が緩み―――自然と、お見事ー。っと拍手とかしてみたり。

「そゆことー。店内で会計してれば、結果的に少なからず金貨袋を用意することにもなるからねぇー。……。
 や、ぶっちゃけ店の売上より、ギルドに魔物の討伐報告や素材搬入する方が稼げんだけどねぇー。あっはっはー。

―――ん、気になるー?……店に色々とあるけど、何なら見ていかないー?
……お出会い価格で、今回はわんこいん。お求めやすくしとくよー?」

指先のそれに視線を感じれば、此処で商売人っぽく、提案してみたり。

テンドン > 「や…上がってもいいんだけれども、本当に正直あんまり余剰のお金は無いからやめておくねい、冷やかしだけで終わっちゃうのもアレだし。それにボクこれからまたお仕事だから…また何処かでその『幸運』が去来してきたら見に行くことも考えよーカナ」

すいっと衣類のポケットを摘まんで引っ張って引っ繰り返し中身ないないをアピール。
そしてバイザー部分を指にとって相手にへと軽く一礼に頭を下げた。

「という訳でボクはこれで。悪しき道にへと至ろうとしていたボクを御導き下さり感謝します、小さな賢者よ。また何時か何処かで、年末において良い稼ぎもありますよーに、またね~~☆彡」

とんとん小走りがちの歩み、手を軽く振りながらじょじょにスピードアップ。
くるくるぴゅーと駆け抜ける疾走はあっという間に遠くなり、そこに相手だけを取り残して去りぬるのであった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からテンドンさんが去りました。
アシュベール > 「あーりゃー。そりゃ残念。―――けど、そーね。
 ―――もし、また幸運があったら。どうぞ、魔具店……シャイターンをごひーきにー。」

その様子を見れば、本当に懐事情が寂しいのだろう。納得したように頷き――― 一礼に、そっとお出迎えするような、礼を返す。

「こっちこそー。―――実入りのある、面白い時間だったよー。
 そっちにも良い稼ぎ。いい出会い。何ならクリスマスのチキンがありますよーに、ねぇ。―――賢者じゃなくて、魔王だけどねー。」

そんな、最後のひとことは彼女には届かなかったが。
鮮やかに駆ける姿は見ていて楽しい。また、そんな彼女に会えればいいな。と想いながら―――再び荷物を引きずって、我が店に帰るのだ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からアシュベールさんが去りました。