2022/04/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 地下下水溝」にイェンさんが現れました。
イェン > (《王都下水道の調査、及びモンスターの間引き》 冒険者ギルドに幾つか存在する常設依頼の一つである。冒険者になり立てのGランクでも受けられる依頼にしては珍しい討伐要素のある仕事であり、薬草採取などと比べれば単価自体は悪くない。そのため地方から出てきた新人が嬉々として受け、『………もう二度とこんな依頼は受けない』なんて言葉を吐き捨てていく仕事だ。そんなわけで押しも押されぬ《塩漬け依頼》の一つなのだが、依頼主は王国である。誰かに定期的にこなしてもらわねば困るので、大体年に1,2度くらいのスパンで依頼料が跳ね上がるのだ。そのタイミングで仕事を受けるというのが正解だと知るのは、大抵の場合はGランクを抜けた後なのだから皮肉な話だ)
イェン > (新人冒険者イェンはそうした中でも幸運な一握りだった。偶然料金の高くなったタイミングでこの依頼を受ける事ができたのだから。とはいえ、不人気なのには理由がある。下水溝の暗がりからのアンブッシュは、例え相手がスライムや大ネズミといった雑魚であろうと危険を伴うし、奥の方ではとんでもない物が棲みついているなんて噂もある。迷宮の様に入り組んだ構内は、下手な横道に入り込めば大いに迷う事となるだろう。とはいえ―――)

「――――――っ、ん。 ………確かに少々臭いますが、これくらいなら……うん。何とかなりそうな気がします」

(全ての汚水が集められる中央溝は異界めいた不浄に侵食されているだろうが、この辺りを流れるのはほぼ真水と言ってもいいくらいの透明水。それでも暗がりの先から流れてくる汚臭の一端が苔むした壁に染み込んでいるらしく、ルーキー丸出しの安物装備で身を固めた女学生の、目弾きも凛々しい双眸は若干涙目になっていた。それでも、これくらいであれば我慢出来ない事もない。ならばなぜ塩漬けとなっているのか。実の所、奥の方まで調査するほどボーナスが加算されていくという依頼内容に罠がある。どうせならもう少し奥まで……と欲をかき、その結果としてレイプ目になって戻ってくるというのが新人達のお約束であり、そんなルーキーの末路を酒の肴に盛り上がるというがベテラン達の趣味の悪い楽しみになっているのだ。)

ご案内:「王都マグメール 地下下水溝」にピーターさんが現れました。
ピーター > 「はぁっ……はぁっ……!
 ここまで来ればもう追って来れねえだろ……」

貴女が進む下水溝の先から、小さな足音と息を切らした子供のものと思しき声が聞こえてくることだろう。
独り言の内容からすれば、誰か、あるいは何かに追われている様だが、他に足音や気配がある様子はない。

「ふぅ……ひぃ……あー、参った。
 暗いし臭いし……どの辺りかも分からんときた。」

ぶつぶつと悪態を吐きながら歩く先に仄かな明かりを見つけ、誰か居るのかと警戒しながら其方へと進んで行き――

恐る恐ると言った様子で、暗闇の中から貴女の前に姿を現した。

イェン > (黒色の霧が立ち込めているかの溝道内を一人静かに歩く小躯は、羽織ったローブこそ駆け出しの魔術師らしい出で立ちなれど、留められていない合わせから覗く制服姿は場違いもいい所。墨色のシックなブレザーはまだ目立たぬが、白ブラウスに刻まれたタックラインの品の良さや、その襟首に巻かれたリボンタイの鮮やかさはいっそ冗談のよう。タータンチェックのプリーツスカートから覗く太腿の純白がニーハイソックスの食い込みに柔らかく拉げる様子などは幻想的でさえあった。油断なく周囲に紫瞳を走らせる切れ長の双眸は目尻を朱に彩られ、きゅっと引き結ばれた桜色の唇と共に形作る凛然たる美貌は、下水の悪臭になど決して侵される事のない超越者を思わせようか。)

「―――前回の調査は半年前と聞きましたし、であるならば、そろそろスライムの一匹くらいは現れても良い頃合いかと思うのですが…………っひゃう!?」

(そんな澄まし顔を維持する鉄面皮も、中身は16を数えたばかりの小娘に過ぎない。溝内を流れる水音以外は存在しない暗がりの静寂に不安を覚え、ついつい独り言を漏らしてしまうのも仕方なかろうし、それに被さるかの如く近付いてきた気配に思わず悲鳴を上げてしまうのも致し方あるまい。それでも腰の短剣を素早く引き抜き構えを取って、曲がり角の向こうから現れるであろう何かに正しく対処すべく膝を落としたのは流石と言えよう。)

「――――――ッ、…………? おとこの、こ………?」

(そんなイェンの眼前、ランタンのほの暗い光源に入り込んできたのはブロンドのショートヘアも眩しい少年の姿であった。思わぬ相手の出現に、朱の化粧で縁どられた吊り目を瞬かせ、しばし動きを止めてしまった。)

ピーター > 「明かりは一つ、追手じゃなさそうだけど用心するに越した事は無いな……」

この場に自分以外の人が居ると分かれば声を潜め、そろりそろりと近づいていく。
光源が無ければ手を伸ばした先すら見えなくなりそうな闇の中でも此処まで来れたのは、暗闇でもある程度の視界は確保出来る特殊な瞳術のおかげ。
産まれてすぐに取り替え子として攫われ、妖精界で育つという経歴を持つ少年には、幾つかの瞳術と魔術が備わっている。

「女の子……? こ、こんにちはお姉さんッ。」

暗闇でも視界を確保出来ると言っても、半端者である少年では精々が“物の輪郭が判別できる”程度、人が居ることが分かっても詳細は実際に明かりの元で確認しなければ分からない。
そのため恐る恐る近づいていたのだが、相手が自分への追っ手では無さそうと判断すると、ホッと胸を撫で下ろした。
それと同時、身形の整った少女と分かり、子供らしい笑みを浮かべてペコリとお辞儀などしつつ挨拶をして。

イェン > (困惑に停滞していた時が、少年の返事で動き始めた。声変わりもまだなのだろう少女めいて愛らしい声音は、イェンの涼声以上に下水の暗がりにはそぐわぬ物。たった一人で闇と静寂の中を進む不安に目に見えぬ緊張を覚えていたのだろうイェンは、悪しきものとは思えぬ少年の登場に心底の安堵を感じてしまった。)

「ふぅ………こんにちは。初めましてでもありますね。私はイェン。王立コクマー・ラジエル学院にて魔術の手ほどきを受け、最近活動を始めた冒険者でもあります。貴方は……何故このような場所に……?」

(細身の中でそこだけが柔らかく実った胸の膨らみを抑えて呼気を漏らし、ランタンの明かりをギラリと反射するナイフをしゅざっと鞘に戻しながら自己紹介の言葉を向ける。膝に手を乗せ腰を落とし、少年と目線を合わせる様にしての問う仕草は優しげなれど、引き結んだ唇と、きりりと締まった細眉は変わらぬまま。目弾きの強調する双眸の鋭さも相まって、妙な緊張感すら漂わせてしまう。)

ピーター > 「イェンさんっていうんだね、僕はピーター。
 あのね、遊んでるうちに迷子になっちゃったんだ。」

容姿も物腰も涼やかな貴女を見て、追手では無い事を確信する。
にこにこと努めて無邪気な笑みを浮かべていたが、何故此処に居るのかと問われれば、咄嗟に出鱈目を口にした。
実際のところ、青年姿で昼間から酒場で酒を呷っていたところ、無銭飲食がバレて店の主人や常連客に追い回された末、下水道に逃げ込んだだけである。
ランタンの明かりをナイフが反射するのを視界の隅に捕らえ、小さく身を竦ませながらも此方を見据える双眸をやや脅えて見える様に見つめ返す。

視線を合わせて数秒、瞳にて魅了の術を仕掛ける。
――と言っても先の通り、半端な効力しか持たないため自分への悪印象を抱きにくくさせる、程度の効果しか期待出来ないのは少年も百も承知だ。

「イェンさんは、どうしてこんなところに居るの?お仕事?」

イェン > (人畜無害どころか庇護の対象と言うべき少年と、このような暗がりで自己紹介を交わすという非現実に若干の可笑しさを感じつつも納得する。入り口から差し込んでいた午後の明かりなどとうに見えなくなってはいるが、それでもここはまだ浅層。やんちゃ盛りの子供が道に迷って入り込んでしまう事も十分にあるだろう位置だ。身に着けた装備がきちんと小躯に誂えた物であり、ぶら下げたダガーもただのイミテーションでは無さそうなのが気になると言えば気になるけれど、取り立てて追及するような事ではないと意識の外へ。子猫を思わせる翠目のきらめきに『こんか可愛らしい子が悪い子なわけないじゃないですか!』と決めつけてしまったが故に。そこに彼の施した未熟なチャームが影響を及ぼしているなんて知る由もない。)

「ええ、先程も言いましたが駆け出しとは言え冒険者なのです。本日は下水溝の調査と、モンスターの間引きを目的としてここまで来た次第です。………とはいえ、貴方をこのまま放っておくわけには行きませんし、一旦出口に戻りましょうか」

(言いながら折っていた腰を戻して立ち上がり、純白の繊手を彼に差し出す。)

「安心して下さい。私と一緒にいればすぐに外に出られますから」

(冷淡なまでの美貌の見せた微笑みは、花のつぼみが春風に誘われてふわりと綻んだかの様にも見えるだろうか。)

ピーター > 現状の容姿と相俟って、彼が危険視される事は殆どと言って良いほど無い。故に瞳術の効き目が術者であるピーター本人にも分からないのが難点ではある。
しかし自身の扱う術が未熟なのは承知済み、飽く迄も保険として使用しているに過ぎなかったりする。ごく稀に効き過ぎる事もあるが、どうやらイェンはそうでは無いらしい、と判断して。

「調査とモンスターの間引き……わあ、凄いね。イェンさん一人でそんな凄いことが出来るんだねっ」

一応ではあるがピーター自身も冒険者ではある。しかしそれは青年の姿であるときの話。年端もいかぬ男の子の姿で冒険者であることを主張すれば、逆に怪しまれるだろうと理解しており。
少女が口にした依頼内容に目を見開いて、子供らしく感想を口にした。

「うんっ、ありがとうイェンさん
 あっ、でもねここまで来る途中で帽子、落としちゃったの。帰る前に一緒に探して貰っても、いい?」

出口までの同伴を申し出られ、せめて日が暮れるまではこの辺りで潜伏してやり過ごそうとしていた目論見が崩れそうになり。
差し出された手を取りながら、微笑む少女へと上目遣いでお願いを口に。理由は理由だが、帽子を落としてきてしまったこともまた事実ではあるので、嘘ではない。

イェン > 「いえ……出来る、と判断して引き受けはしましたが、まだ達成したわけではありませんので……」

(子供らしい素直な賞賛の言葉が、白皙の頬に仄かな紅を灯らせた。自分が少年の憧憬を受け取れる程の実力者ではない事を知っているからこその反応だった。)

「――――そう、でしたか。…………分かりました。あまり奥まで行くわけには参りませんが、ある程度まではお付き合いしましょう。ただし、私がここまでと判断した際には大人しく同道して下さい。よろしいですね?」

(差し出した手を取られた際には浮かべていた微笑みもにっこりと深められたが、続く言葉を耳にすれば美貌は元の怜悧な物へと戻って沈思する。そうしてしばしの瞑目を経て答えを返せば、改めて目弾きの双眸を暗がりの先へと向けた。冒険者などという荒事を主としたヤクザな商売をしているとは到底思えぬ繊細で柔らかな白手できゅっと少年の手を握り、ソールに工夫の施されたロングブーツが潜める微かな足音と共に下水溝の奥へと向かう。)

「ピーター様。帽子を落としたのはどの辺りか、覚えはありますか?」

(少年に目を向けぬまま、暗がりの濃い部分に油断なく視線を向けて問いかける。)

ピーター > 「それでもモンスターと戦えるから、依頼うけたんでしょ?
 やっぱりすごいや、かっこいー!」

無邪気な称賛を送りながら、視線は新人冒険者の装備を検めるかのように肢体を撫でる様に眺める。
美貌に合わせる様に身綺麗にまとめられた学生服に、それを内から押し上げる膨らみ。スカートから覗く太股、と舐める様に見回して。

「うん……お仕事中なのに、ごめんね?帽子、失くしたって言ったらお母さん悲しむから……
 はぁい。暗くて怖いけど、でもイェンさんみたいな強くてかっこいいお姉さんと一緒なら大丈夫だよね!」

産みの親の顔など全く知らないし、育ての親は異界の妖精。この街に来てからは幼子の容姿を悪用し孤児院などに転がり込むなどして過ごして来たが、そんなことは微塵も感じさせない親思いの少年を演じる。
引き返す判断はイェンがするという事に頷きと共に了承の意を告げ、ついでに重圧にならない程度の期待の言葉も投げる。


「………。」

さてひとまず直ぐに外へと連れ出される心配は無くなった、と内心安堵しながらも、思わぬ美人との遭遇にスケベ心が沸き上がる。
イェンの意識と視線が自分よりも進む先、下水溝の闇へと向けられているのをいい事に、『透視』の瞳術を発動する。
しかし術の成立には自分の名前を呼んでもらう事が条件。術の発動前に名前を呼ばれてしまい、ここで返事をすれば術が成立しなくなってしまう、とピーターはイェンの問いに敢えて無言を返した。
暗闇への不安に駆られて聞き逃したという設定を通すため、小さな手を震わせながらイェンの手をぎゅっと握り。

イェン > 「―――そっ、な…っ、ぃ、いえ、それほど大した事では……」

(どこまでも真っすぐな憧れをぶつけられ、頬の赤らみがますます色を濃くしていく。切れ長の紫瞳をそわそわと反らす様子は年相応の反応と言えるだろう。よもや精通すら経験していなさそうな少年が、値踏みするかの性的な目で制服姿を見上げているとは思いもよらない。そんなイェンなので、帽子をなくしたらお母さんが悲しむなんて言葉にきゅんっと庇護欲を刺激され、『これは多少無理をしてでも見つけてあげなくては…!』と密かに決意を改めたのもむべなるかな。正直チョロい。)

「………ピーター、………くん?」

(もしかしたら『様』なんて呼称に慣れておらず、自分への問いだと気付かなかったのでは? なんて見当違いの思考の結果、若干の気恥ずかしさに耐えての『君』付け。無論、彼が異能を用いたいやらしい企みを抱いているなど、想像だにしていない。そして、一拍遅れて繋げた手からの震えに気付けば、引き結んだ唇に改めてふ…と優しい笑みを湛えて彼の前にしゃがみ込む。)

「大丈夫ですよ、ピーターさ……ピーター、くん。私がついています。何も心配する事はありません」

(普段の鉄面皮を知る者ならば、誰だお前はと突っ込まざるを得ない微笑みを見せた女学生が、優しい手つきで金髪を撫でる。間近にしゃがみ込んだ肢体からふわりと漂う青林檎のような体臭は、僅かに下水の悪臭を忘れさせもするだろう。)