2021/09/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にアークさんが現れました。
アーク > 貧民地区。
それなりの稼ぎがあっても安い住居として貧民地区を選んだ少年。
今日もお仕事を終えのんびりトコトコと貧民地区の道を進んでいく。
手には途中で買ったちょっとした軽食。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にゾーイさんが現れました。
ゾーイ > 「……!」

貧民地区をたまたま歩いていたミレー族の少女は、目の前を歩く少年を発見した。
衣服は襤褸ではなく、手には食料も持っている。
随分と幼く見えるが、貧民地区の住民にはとても見えない。

「たまたま通ったのかな? それとも迷い込んだか……どっちにしても、へへっ!」

仔猫は歩みを進め、ある程度まで近づいたところで駆け足になる。
通りすがりに素早く、音もなく、財布をすり取ってしまおうと試みる。

アーク > とことこ軽い足取りで貧民地区を進む少年。
隙だらけである。
何故なら少年の目は手の中の軽食と目の前の道しか見えていない。
鼻を擽る食事の匂い。
食べた時の味やら満腹感だけで涎が出てきそう。

まさか狩人に狙われているなんてついぞ知らず。
財布は首からぶら下げている巾着袋を服の中に。
そして、ポケットにはキラキラした透明な、かつ価値も大してないただの石が巾着袋に入っている。
相手の指がそのどちらを捕らえるのか…。

ゾーイ > 「二つ持ってるね」

仔猫は衣服の膨らみ等から即座に少年の手持ちを見抜いた。
さて、スリというものには複数の呼び名がある。

代表的なものはpickpocket(ピックポケット)。
そしてもう一つはcutpurse(カットパース)。

前者はポケットを漁るが故の名で、後者は巾着切とも呼ばれる。
仔猫にとってはどちらか片方を狙うのは訳のないことであった、が。

「隙だらけ……と言っても、首元とポケット、一度に取るのは流石に難しいかな。よーし」

そして仔猫は、追い抜き様に敢えて少年にぶつかることを選んだ。
こうすることで、一瞬でも密着する時間を稼ぐ。

「おっとっと、ごめんごめーん!」

などと言って注意を逸らし、その間に素早く両方とも奪い取ってしまおうと。

アーク > 少年の両手は軽食が入った袋を大事そうに抱えている為、塞がっている。
そんな状況で背後からの奇襲。
お上りの田舎者は話では聞いていても、まさかそれに自分が巻き込まれる等と言う危機感も無ければ警戒心も無い。
とん、とぶつかられ、崩れる体勢。

「えっ? …ふわっ!」

転ぶ!!と思えば反射的に地面に手をつこうと伸ばしてしまう。
そこが悲劇の始まり。
もっていた軽食の紙袋は放物線を描き宙を舞うと、べちゃりと音を立て壁にぶつかりずるりと落ちる。

「あぁっ!!」

完全に注意散漫だった少年は絶望的な声を上げつつ倒れていき、そのまま相手が支えるなり、抱えるなりしなければずべしゃっと音を立て地面に突っ伏す事になる。
もちろん隙だらけである。ポケットからも首元からも熟練のスリであれば容易に奪い去れるだろう。

ゾーイ > (いっただきー、チョロいチョロい♪)

心の中でほくそ笑みながら、地面に倒れる少年を横目にそのまま走り抜ける。
当然、支えたり抱えたりなどはせずに放置だ。
そうして、ある程度の距離を取ってから巾着袋を覗き見て。

「さてさて、中身はー……何これ? 綺麗だけど……宝石じゃなくてただの石だし。何でこんなの持ってるかなー?」

一つは明白なハズレ。そのことにぶつくさと理不尽な文句を呟きつつ、もう一つの巾着袋を開いてみる。
こちらが本命となるが……さて、中にはどれぐらい入っているだろうか。

アーク > べちゃり音を立て倒れた少年。
その視線の先には壁にぶつかりぐしゃりと潰れた軽食。
目には涙が溜まってくると共にふつふつと沸き起こる怒り。

相手が明けた巾着袋。
その中に入っているのは翌日の朝食分のお金。
現金は基本的に冒険者ギルドへの預け入れというリスク管理。
相手にとってはお小遣いにしかならない金額である。

妖精たる少年、怒りのママに魔法を編み始める。
「硬い地面も今は泥、定めも無くし、全てを飲み込む」
人には聞き取れない妖精の言葉でぶつぶつと呟けば、周囲一帯の地面が突如ぬかるみ底なし沼のようになり、ゴミや落とし物を飲み込み始める。

ゾーイ > 「……ちぇっ。これっぽっち……」

中身を確認すれば、踵を返し、急いで倒れ伏した少年の方に向かって走っていく。

(いいところのお坊ちゃまかと思ったけど、見当違いかー。悪いことしちゃったな)

「ごめーん、大丈夫? 立てる? あとこれ、落としたよ」

そうして、壁に叩きつけられた紙袋(中身は無残なことになっているだろうが……)も拾って。
盗み取った巾着二つと合わせて、拾ったと称して返却しようとする。
弱者からは盗まないのが仔猫の信条、相手が少額しか持っていないならそのまま返すと決めているのだ。

しかし、相手を弱者と侮ったが故に、足元が徐々にぬかるみ、泥濘のように変化している様子には気付いていなかった。

アーク > まさか自分のお財布をすられて、挙句中身これっぽちかなどと思われていたなど露とも知れず。
編み終え発動した魔法は近づいた相手の足をずぶずぶと飲み込み始める。
相手の差し出してきた巾着を見ればお財布にして首にかけていた紐は擦り切れていないことがわかるのはアクセサリーを作ったりしていて目はしっかりとしている。

『うぅぅ…僕のご飯…。嘘つきにはお仕置き』

妖精語でぶつぶつと呟く少年。
もぞ、と地面についていた手に力を籠め体を起こしながら今にも泣きそうな瞳で相手の顔を見詰める。

『泥縄急いで編んで泥棒捕縛』

泥濘の中の泥が触手の様に何本も映え、目の前の相手の脚を絡め取り始める。

ゾーイ > 「えっ……嘘、沈んでる!?」

ずぶずぶと沈んでいく足に気付くのと、少年から魔力の流れを霊視するのはほぼ同時。
しかし時既に遅く、まるで意思を持つかのように、泥濘が脚に絡まってくる。

「キミ、一体!?」

何かを言っているようではあるが、少なくともマグメールの言葉ではない。
足を封じられては自慢の速度も全く活かせない。
反射的に精神を集中させ、対抗手段となる魔術を紡ごうとする、が。

「うっ……」

けれど、泣きそうな目で見つめられて、罪悪感で動きが鈍った。
魔法とは心の力、心にブレーキがかかれば魔法にもブレーキがかかる。

アーク > 相手が片目で霊視をすれば少年が人非ざる者とも気づくかもしれない。
少女の脚を飲み込む泥濘。
そんな少年は怒っていますとアピールするかのようにぷくりと膨らんだ頬。

じっと見つめながら、泥の縄は少女の脚から体に絡みつき自由を奪っていく。

そして、相手が差し出していた包みの中を見れば、サンドイッチは既にパンと野菜とお肉に分かれていて…。

「うぅぅ…僕のご飯楽しみにしてたのに… お仕置き!」

ゾーイ > 「あ、ヤバ……っ!」

とても怒っている、ということは悪戯な仔猫にも良く伝わった。
その理由がご飯を台無しにした自分のせいだということも。

「ご、ごご、ごめんなさいっ! ボクが悪かったよ! 新しく買って弁償するから許して……くれない? ダメ?」

全身を絡めとっていく泥の縄に危機感を感じながら、少年に許しを請う。
君は仔猫を許してもいいし、このまま泥棒猫にお仕置きをしてもいい。