2020/09/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にフィリさんが現れました。
フィリ > 頬を掻く。……問題発生……此処は一体何処なのか。
実年齢はともあれ、この位の大きさまで育っておいて。まさか迷子になるとは思わなかった。
それも、一応半生の殆どを過ごして来た王都の中で。

……が。考えてみると、有り得る事だった。
暮らしていると言っても、基本引き籠もりがちな少女にとって。出歩く範囲は限られており。
移動が最低限で済むルートの構築にこそ余念がないが。裏を返すと、一旦ルートを外れてしまうと。知らない通りが多すぎる。
ほんの少し、無謀な冒険心を発揮して。近道を開拓しようとした結果が。このざまだった。

「――……………」

黙って。もう幾度目だろう。周囲を見回してみるものの。
狭い路地は薄暗く。左右に迫った高い壁で、視界はどうしても塞がれる。
翼を持つ同族のように、空を飛ぶ事でも出来たなら。直ぐに問題は解決しそうなのに。
残念ながら、人の血の方が濃い少女には。翼も、角も牙も、何一つ存在しなかった。
もう一度半端に唇を開くものの、零れるのは細い呼吸だけ。

大丈夫。馴染みの深い、平民地区の商店街から。少々横に逸れただけの筈だ。
きっと歩いていればその内。何処か見覚えの有る所に出れる筈。
そう信じて歩き出す、根拠のない自信が。ますます、身近な地区から遠離る歩みになっている事を。
今は未だ知る由も無く――。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリヤンさんが現れました。
リヤン > ―――カツン、―――カツン。
狭い路地に響き渡る、少女以外の足の音、靴が地面を踏みしめる音がする。

  ―――カツン、カツン。

その音は徐々に、徐々に、音を大きく響かせ、路地裏にある一人の少女へと近づいていく。
黒い影が長く伸びて、路地の中に広がっていく、その影が大きくなるごとに、少女へと近づいていく足音は近づく。

 カツン、カツン、カツン、カツン。

石畳を踏みしめる音、その硬質な音は、時計のように正確に、単調に、歩を進めて居る事を表して、さまよう少女に、一直線に向かっている。
彼女が視線を向ければ、カンテラの乏しい明かりを手にせずに歩いてくる一人のメイドが見えるか。
金髪の短いショートウルフカットと呼ばれる髪型をした、口を開かぬ一人の女、目さえも伏せていれば、起きているのかどうかわからない。
人形じみた薄い表情、感情を見せぬ顔。
一種のホラーのような現れ方をしているそのメイドは、ゆるり、ゆるり、しかし、間違いなく、彼女をめがけて歩いている。
貧民区と呼ばれる、この場所は、入り組んでいるうえに、毎日のように住民があちらこちらと改築する、地図の無い地域。

「――――。」

そして。
 少女の前に、メイドが、腕を組み、仁王立ちするのである。
 何も言わず、何もせず、只、その幾先を、塞ぐかのように。

フィリ > 「――……!」

ぴくん。仮に、その耳蓋がエルフやミレー族等のように、長く伸びた物であったなら。間違い無く震わされていただろう。
代わりに肩口を跳ねさせ、首を竦めてしまう――足音に。

そう、足音。それが近付いて来る。
誰の物かは分からないが。何処か硬質で、一定調子を保ち続け。さながら不穏な路地裏に、何の忌避感も抱いていないかのように。
あまりにも澱みのない、一直線の接近は。ひょっとすれば思い浮かべてしまいそうだ――大昔、人類が狩猟に特化していた頃を。
安定して高い視界や、体毛を削ぎ落とした故の熱効率に、長時間移動し続ける事が出来る持久力。
それ等をフル活用して、獲物を追って旅をし続け、最終的に仕留めていたという時代。

一瞬で其処まで想像してしまったのは…まぁ、先日ダイラスの古書市にて手に入れた、生物図鑑の影響なのだろうが。

どこか現実逃避に似た思考を重ねてしまうが。近付く足音は間違い無く現実だ。
わたわたと左右を見回し、矢張り、登りも逃れも出来ない壁である事を再確認し。

――どうした物かをまるで決めきる事の出来無い内。足音の主が現れた。

「――っ……、っ、ぁ…ぁぅ。……ぅん…?」

(唇を開いては震わせ。また閉ざしては開くものの。初対面の女性を相手に、なかなか声が出てこない。
そう、初対面である、筈だ。無知な少女にすら解る、こんな場所には不釣り合いであろう…メイド姿のその女性。
伏される瞳に、引き結ばれた唇は。何処か、怖そう。そんな印象を抱くのは。足音の硬さ故なのだろう。

…前方に、立ちはだかっている。その先へは進むなという様に。
ただ、迷わず進んで、進めば判る場所に出るか否か。それすら知らない状況なので。
よもや、この先は危険なのか。そう考え、息を飲んだ。

リヤン > 少女の前に出て来たメイド、場違いだと言わんばかりの存在であり、実際の話で言えば、普通にここに居るのならば、ならず者にさらわれ、慰み者になってもさもあり何と言うべき存在だ。
そうなっていない事にはいくつか理由があるがそれは後述させてもらうことにする。
偶然なのだろうか、其れとも、意図的な物なのか、主が懇意にしている所へのあいさつ回りをしていた。
その護衛に一緒についてきて出てきていた、そして、この周辺は平民地区と近しい貧民地区、貧民地区と言っても比較的安全な場所ではあるが危険がないとは言い切れないのだ。
故に、主の命を受け、女は主が進む場所の付近の危険度の確認と、掃除を行って居た所である。
主の護衛には、仲間が受け持っているので問題はないという事だ。

その際に、やって来る一つの気配。人間ではありえぬ強大な気配で、危険を感じた女は、その気配の確認のため。
危険な存在であれば排除をするために、やって来た。
実際に到着してみれば―――強大な気配なのに、性格は何処までも小動物。
物凄いアンバランスな小娘がいるばかり、自分を前に何やらきょどきょどおどおどしているのが、判る。
メイドは考える。

メイドが来た方向に関しては、貧民区の奥の方危険な方になる。
伏せた瞳の儘、腕を組んだままで、いる訳にもいくまい。腕をほどき。
念動魔法でペンとメモを取り出すことにする。

『この先に、何か目的が?この先は貧民区。』

さらりさらりと、メモに、問いかけを欠いて、彼女にそっと、差し出した。