2020/08/16 のログ
カミュ > 「まぁ、自由な分だけ大変な事はいっぱいですけどね。 あはは、ありがとうございます。」

まさか自分が少女だと思われている等と露とも知らず。
親切な酔っ払いさんはやっぱり優しい。
二人で冗談を言い合いながら愉し気に笑みを零し。

「ふふ。 じゃぁ いっぱいサービスしないと、いけないですね。 今持ってきますね。」

良いお酒と言われれば振り返り、満面の笑みを浮かべ了解とばかりにグーサイン。
一度離れる少年の背中。
柔らかいお尻は相手の目を楽しませる様に揺れ、程なくしてグラス二つと店の中で少し高めの価格帯の味が良い蒸留酒を盆にのせ戻ってくる。
戻ってくると、椅子を引き寄せ隣に腰を下ろしてからグラスを相手に持たせ、蓋を開けて、とくとくとそれを注いでいく。

「アルヴァニアさん、お仕事お疲れ様でした♪」

アルヴァニア > 相手が酒を取りに離れた矢先、隣テーブルからは「隊長が子供を誑かしてる」だの「ついに母性が目覚めたか?」だの、やんややんやと盛り上がりを見せている。後で殴っておこう。力の限り。
発展途上の柔らかそうなお尻は、将来が大変楽しみだ、とは流石に酔っ払いの戯言だとしても口にはしない。
暫くして戻ってきた少女からグラスを受け取り、待望のお酌をして貰えば、酔っ払い気分の女はご機嫌な様子で一度グラスを置き、相手の手からボトルを受け取って。

「ありがとう。カミュちゃん――も、お酒は飲めるのかしら。」

グラスが二つあったものだから、すっかり一緒に飲んでくれるものだと思っていたが、よくよく考えずとも幼い外見の相手。
ゆる、と頭を傾いで問い掛け。

カミュ > やいのやいの言っている部下さんたちにはくすくすと笑いながらひらりと手を振り答えて。
少女と思っている男衆が口笛を吹けば本人は内心。
男なのになぁと苦笑いを浮かべる。
そして戻り、相手のグラスに注げば、ボトルを取られて。

「ふふ じゃぁ、お試しに一口頂いても?
あ、でもその前に僕男だから君か呼び捨ての方が良いです。」

まぁ男でちゃんと呼ばれる事もあるがどうせならと、
そこまで言って、頭の片隅にはちらりとまさか女の子と思われていた?なんて一瞬よぎり、相手が頭を傾げたのに合わす様に少年も軽く小首を傾げ問いかけ。
それはそれとして、身を寄せ肩をくっつけながらおねだりする様にグラスをゆらゆらゆらしながら見上げた。
間近で見せる少年の唇はどこか相手を誘う様に艶めかしく動かし、ボトルを持つ相手の手を誘う様に撫でる。
「アルヴァニアさんと一緒になら飲んでみたいです。」

アルヴァニア > お返しに注ごうとしていたボトルを手に、相手の返答を待ち――返された言葉に双眸が瞬いた。美少女、ではなく、美少年だったらしい。
あらあ、と呑気な声を上げつつ、

「それじゃあ、呼び捨てにするわねえ。」

と、少女だと思っていた事はおくびにも出さずに告げ遣る。
元より、男女問わずで付ける事の多い呼称なので、壮年の筋肉達磨にすら使う事すらある。
どちらにせよ、相手が愛らしい顔立ちをした将来有望株に違いはない。強請る様な仕草の少年にうっそりと瞳を眇め、グラスへと二口分程注いで。

「口が上手なんだから。」

はい、乾杯。とグラスを軽く合わせて小さな音を奏でては、口元に寄せたグラスを傾け、己もまずは一口。
口当たりの良い酒精の香りに濡れた吐息を零して。

カミュ > 相手が何やら呑気ながらもあらなんて言われても、
まぁ特に問題は無く。
くすくすと笑いながら小さく頷く。
手の中に感じる重み。
グラスを軽く合わせれば其れだけでなんだか大人になった気分にもなる。

「ふふ。 優しくて綺麗な人と食べさせてくれる人には特にかも?」

なんて悪戯っぽく笑いながら相手がグラスを傾けるのを見てから少年もグラスに口を突き一口。
一瞬咽そうになるも、舌の上で転がる穏やかな甘い味。
そして喉や食堂、胃を焼くような熱い刺激にほぅ─。とどこか熱っぽい吐息を漏らす。

「最初はびっくりしたけど美味しいです─。」

なんて呟き、手の中のグラス、残した一口分を揺らし、香りを楽しんで。
初めてのアルコールのせいか相手の体温の成果白い肌に差す朱色はわずかに鮮やかになり。
相手に身を寄せたまま、ツマミの皿を引き寄せ粗びきソーセージにフォークを差し、ナイフでパリッとした皮を切れば溢れる肉汁。
その一口分を相手の口元に運び、
「はい、あーんしてください」
等と甘く囁きかけた。

アルヴァニア > 「あら、それじゃあいっぱい食べさせてあげなきゃ。」

からからと笑いながら、二口目、三口目、とグラスの中身を干していく。
アルコールが粘膜を灼く感覚は矢張り初めてだったのだろう、僅かに揺れた身体に吐息交じりに笑みを零しつつ。

「良かったわあ。でも、あんまりいっぱい飲んじゃダメよ?」

既にほんのりと色付く肌を見れば、指の背で少年の頬をするりと撫でながら一応の注意を。
飲みすぎてぶっ倒れる、だなんてのは荒くれ共でも間々ある事だ。流石に、少年を初っ端からアルコールで潰してしまうのは忍びない。
それから、甲斐甲斐しく食べやすい様に切られたソーセージを口元へと寄せられながら紡がれる言葉に、垂れ落ちていた横髪を耳へとかけなおして顔を寄せ。

「―――ん、……おいし。」

ふっくらとした唇が開かれれば、アルコールに濡れた赤い舌がちらりと覗く。
フォークから抜き取ったソーセージを咀嚼して、唇に就いた肉汁をちろりと舌先が撫ぜ取って。

カミュ > 相手の言葉にくすくすと愉しそうに笑いながら、
慣れたようにグラスの中身を煽っていく相手を見上げ。

「ふふ。 ありがとうございます。」

忠告を素直に受け入れながら頬を撫でられればくすぐったそうにころころと笑い、戯れる様にその指にすりと顔を寄せて。
グラスを置いてから音をたてぬように切り分ける指先は丁寧で音は立たず。
切り終えればその一口分を相手の口元へ。
舌がちろりと踊り、咀嚼する顎のラインも綺麗だな等とぼんやりと眺め。
最後の唇を拭う動作につい、見惚れてしまう少年。
つぶらな視線は横顔から唇に囚われて。

「ふふ。アルヴァニアさんに喜んでもらえてうれしいです。」

そう囁きながらお皿の上にナイフとフォークを置き、細い少年の指で濡れた相手の唇を撫で、残った油を拭い、唇の左下にあるほくろを指で撫でてから、自分の唇へともっていき、それを小さな舌で舐め、じっと見つめる。

「ん。 今度は僕にも食べさせて頂けます?」

と、相手の目の前でゆっくりと唇を動かし、歌う様に囁きかける。

アルヴァニア > 焼き加減もバッチリなソーセージは、外のパリパリ感と詰められた肉のジューシーさを確りと引き出しており、一口でも満足感のある一品。
相手が唇へと触れれば、薄い皮膚に覆われた柔らかな感触を伝えるのだろう。
少年の指が滑る儘、静止の声をかけずに好きにさせる女の瞳は愉し気に眇められ。
次いだ強請る声には、もちろん、とばかりに表情を笑みに崩せば、今度は自分がナイフとフォークを手に、少しばかり大き目な一口に切り分ける悪戯を。

「カミュ。あーん。」

柔らかく甘い声音が口を開くよう促して。

カミュ > 相手の歯が皮を破ればパリッと小さな音が響き。
そして、飲み込んだその口、唇を撫でれば柔らかな感触が指を擽る。
もう少し触れていたいが、相手の笑みを見詰めながら少年も笑みを深め。
おねだりをすれば互いに深まる笑み。
少しばかり大きめなそれを見れば、相手の言葉に促され大きく口を開ける。

小さな口が大きく開けば中にはやはり小さい舌。
少し尖った八重歯が目立つかもしれない。
そのソーセージの断面ちろりと舐め肉汁を舐め、それを隠す様に口が閉じられ、少年の柔らかい唇がフォークからソーセージを抜き、咀嚼していく。
パリパリの皮の感触と肉のジューシーさを味わい、こくんと一口。
少年の細い喉がゆっくりと動きのみ込んだことを知らせる。
そんな少年の唇は油で濡れたままで、相手を誘う様にじっと濡れた瞳を見つめ。
「美味しいソーセージの脂、アルヴァニアさんも楽しみます?」

なんて、ころころと悪戯っぽく笑いながら囁きかけた。

アルヴァニア > 見た目相応の小さい舌が収まる口の中を視線が覗く。
少々尖り気味の八重歯に、薄そうな舌。小ぶりと言って差し支えないだろう、少年を形作る物に面白がるような色が瞳に滲んでしまう。
相手から視線を外す事無く、フォークから引き抜かれたソーセージが咀嚼され、細い喉を通って行くまでをじ、と眺める様は視姦染みているのだろう。
次いだ少年の言葉には、態とらしく悩む様な声を上げながら、フォークを置いた手の甲を返し、首の付け根から顎先へ、と指の腹でゆっくりと撫で上げ。

「あたし、オネダリはされる方が好きよ。」

少年の口から紡がれる煽り文句は何処か倒錯的ではあるが、女の愉悦を擽るには少し遠い言葉。
柔らかい声音ではあるが、窘める様な調子の台詞は、言外にやり直しを要求しているのだろう。無論、少年から違う言葉が出ずとも、ただ唇には触れない、それだけの事なのだけど。

カミュ > じっと見つめあい絡み合う視線。
相手に見られながら食べるというのも何とも言えない倒錯感。
わざとらしくも悩むような声、首の付け根から顎先へと撫で上げられれば背筋が甘く震えそして、告げられた言葉に眉根を悩まし気に寄せ。

「僕の唇についた肉汁と、舐め比べてみて欲しいです。 アルヴァニアさんのさっき見せてくれた綺麗な舌で…」

焦らされれば困ったように潤んだ瞳で見つめながら、頬に触れ、擽るように指の腹を滑らせ撫でながらそんな言葉を囁きかけた。

アルヴァニア > 少年の官能を引き出そうとする指の戯れは、顎先をつ、と撫でて瞬く間に終わる。選ぶのは彼自身だ、とでも言わんばかりに。
眉根を寄せ、悩まし気な表情を浮かべる相手には触れず反応を待てば、然程待たず紡がれたのは己の満足足り得る言葉で。

「どこでそんな言葉を覚えたの? いけないこ。」

言わせた癖、咎める矛盾で少年の羞恥か昂ぶりかを燻りながら、再び女の手指が相手の膚に触れ、片頬なぞってやんわりと包んで上向かせる。
濡れた唇へと己のそれを寄せれば、上唇を食み、ちう、と淡い音を吸い上げる。焦らす様に、触れる程度の啄みを幾度か繰り返し。

カミュ > 委ねられる選択。
眉根を寄せながら甘く囁いた言葉。
焦らすように滑る指がもどかしく。
言葉を紡ぐために唇を動かす度に開く唇の奥でちろりと踊る舌。

「アルヴァニアさんがとても魅力的だからですよ?」

肩頬に触れる相手の手がくすぐったく、其れに促されるように顔を上げ、上唇を食まれ吸い上げられる。
触れた瞬間、小さな体はピクリと震え、相手の舌唇を僅かに開いた唇から零れる酒精の混じる熱い吐息が擽る。
焦らす様に幾度か繰り返されるその動きに、もっととねだる様にした唇を少年の舌が擽り、ほくろのあたりを舌の先端で擽り、少年は相手の舌唇を啄み甘く吸いながら唇の裏に滑らせ、僅かに唇を開け相手とのキスを深めたいと強請り。

「んっ アルヴァニアさん… もっと…。 アルヴァニアさんとのキス味合わせて…?」

舌の裏を舐りながら密やかに、内緒事を囁きかけながら手は相手の首の両側に触れ、皮膚の薄い場所をなぞる様に、指は滑り、項から顎の付け根、もみ上げ、耳と擽るように撫でていく。

アルヴァニア > 「ほんと、どこで覚えてくるのかしらあ。」

魅力的、だなんて誘い文句がまだ幼さを十二分に残した少年の口から出るアンバランスに、堪え切れずと言った様子で笑息が零れ落ちる。
唇が触れあっただけで身を震わせる様子に、胸の奥で陶然と感情が沸くのは致し方のない事だろう。
ちゅ、ちゅ、と位置を変え、強弱を付けて上唇ばかりを愛でていれば、遂には自ら口付けを求めだす動き。下唇を滑った舌先が、女の口許を彩る黒子の上を掠め、腰の辺りにぞくりとしたものが蠢く。

「ん――ふふ、…可愛い。」

舌裏を舐られる気持ち良さと、皮膚の薄い箇所に触れられる擽ったさに掠れた吐息交じり、蜜を溶かし込んだような甘い声音が呟きを落とす。
相手の顎先へと人差し指で軽く押して圧を掛け、言外に口を開くよう示し。少年がそれに応えれば、女の唇は相手のそれへと触れ合わせ、擦れ合わせ、吸い上げて。官能を高めるべく、舌には態と触れずに、小さな、様々な刺激を積み上げ、煽り、燻らせ――店の主人が止めに入るまで、口付けだけで只管に少年を愛でよう。

衆人環視の中だった、とその時彼は思い出す事になるのだろうか、その後の事は未だ誰も知る由は無く―――。

カミュ > 「内緒です。」
まぁ実際はこの店に来る娼婦のお姉さん達に教え込まれた者。
触れあう唇の甘さに薄い胸の中心臓の鼓動はトクトクと早鐘の様に打ち。
位置を変え強弱をつけての甘い口づけを楽しむも、もっととばかりにねだるように動く少年の唇。

可愛いとささやかれれば擽ったそうに微笑み、指が顎に触れ推せば開く唇。
積み上げられる小さな刺激はぐるぐると少年の中で熱くなっていく。

技と触れずに相手の舌が逃げれば少年の舌は歯列の裏を頬を撫で、くち、くちと甘い音を響かせながらゆるゆると顔に添えた手を滑らせ、後ろ頭を撫でたり首を撫で、肩へと滑る。

腿をもじと動かし官能の高ぶりが相手に伝わるか…。

ここは上が宿にもなっている。店の主人は小さく頷くとテーブルの上にはいつの間にか部屋の鍵…。

「んっ ちゅ… キスだけで上せちゃいそうです。 もっと…二人っきりで…この先の事を教えて?」

そんなおねだりをしながら、はぁっと熱い吐息で擽りながら身を寄せ自分の鼓動を相手に告げる様に身を深く寄せていく。

この場所が貧民地区の酒場でもある為、そういうことも多く。 深くなれば冷やかす声も聞こえるがむしろそれも体を熱くしていく。
相手が少年を連れて行くか否か…知る者は店の中の者達のみ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からアルヴァニアさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からカミュさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にイーゴリさんが現れました。
イーゴリ > 表立って並べられない様な品物ばかりを取り揃えた店が並ぶ裏通りを駆け抜ける小さな影が一つ。
それを、野太い罵声やら怒声やらを浴びせながら追いかけてくる姿が五つ程。

「しつこい奴らだのー。」

路の脇に置かれた樽やらを倒して追手の進路を阻めば「クソガキがァッ!」と、がなり立ててくる。
事の発端は、通りすがりにちょっと体がぶつかっただけ、と言う分かりやすいいちゃもんだ。そのいちゃもんに「その筋肉は飾りかよ」としれっと返したらこうなったのだ。解せぬ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「ん~……」

貧民地区裏通り。一人の男が微妙なうめき声を上げていた。
何か掘り出し物でも、と思い買い物に出かけたのだが。
どうにも。男の求めているようなものはなかったらしく。

「しゃあねぇ、帰るか……。
 ……って、ん?」

やれやれ、とため息を吐く男であったが。
帰宅を決意したところで、なにやら騒々しい様子に気づく。
そのまま立ち止まっていれば、なにやら前方からその喧騒が近づいてきて。

「……なんだぁ?」

目を細め、状況を把握しようとする男。
見えたのは、小柄な人影が、凶暴そうな人影に追われている、ということ。
どうしたものか、と考える男であったが。
なにやら面白そうだ、と思い。あえてその喧騒の前に立ちはだかってみたり。

イーゴリ > 煽りはしたが、出来るだけ王都に滞在している間の争い事は避けたいのだ。
速度を上げ切らず、然し男達が追い付けない程度の速度を保って体力を削っていく。
時折、「回り込め!」だとか「人数増やせ!」だとかリーダー格の男が叫んでいるのが聞こえて渋い顔になる。

「ちょっと揶揄っただけじゃろに。」

至極面倒臭そうな表情と顔で呟き、人通りの少ない路を駆ける速度を幾らか上げ――まさか進路をわざわざ妨げようとする人間がいるとは思わず、ぎょ、と隻眼が見開かれた。

「ぉ、わ…っ!?」

人は急には止まれない。
蹈鞴を踏みつつも、衝突だけは避けようと斜めに地面を蹴って飛び上がれば男の両肩へと手を伸ばす。
避けられなければその肩で逆上がりでもする様に身を反転させよう。
避けられても地面に手をついて前転するだけだ。

セイン=ディバン > 「……うはぁ」

次第に男のほうへと向かってくる喧騒は。
いや、喧騒というか。もう怒号のほうがやたらに目立っている。
楽しそうだなぁ、などと思っていれば。
いよいよまずは小柄な人影のほうが接近してきて。

「おぉっ……!?」

相手がどんな反応を見せるのか。興味深々だった男だが。
衝突を避け、肩をつかまれ、見事な体捌きを見せ付けられることになり。
思わず、驚きの声を上げてしまった。

「……こいつぁ失礼おチビさん。
 ジャマする気はなかったんだけれども。
 形の上でジャマすることになって申し訳ない。
 ……もしも追われてるのなら。あいつらに話つけるけど?」

そういう助力は必要かな? と。
身軽な相手に、声をかけてみる。
そうしている間にも、ゴロツキっぽい連中が駆け寄ってきているのだが。
男は、別段焦った様子も見せない。

イーゴリ > 己自身は余力を残した走りではあるが、追手達の速度は全力疾走だ。
幾ら今の自分が小柄とは言え、速度の乗った子供のタックルは下手をすれば大事故である。
肩を掴んで乗り越える様にして身を反転させる事が出来れば、ほっと安堵の吐息を吐き。

「―――、」

ぶつかったら怪我する所だぞ!? と、相手の方へと身体の正面を向け、自分を棚上げに子供を諭す親の如く告げようと開きかけた口が、相手の言葉にむぐりと閉じた。なんと。
このまま少しずつ距離を離して撒こうと思っていたが、穏便に済むならその方が勿論有難い。

「頼んで良いかね?」

ごろつき達との距離は2m程だろうか、ぜえはあ、と息を切らした男達が呼吸を整えている様が見える。

セイン=ディバン > 相手の身のこなしは、まさに軽業師か。
そうでなければ、同業か、と男が考えるほどに軽やかであった。
男は、ある種相手の動きに見蕩れながらも。

「よし、任された」

相手からの言葉に男は笑みを浮かべ。
相手を追っていた男たちに向かって手を振り。

「よぉ~、諸君。
 なんというか、元気だねぇ」

男がにこやかに。そう声をかけた瞬間。
男たちは、明らかに表情を強張らせる。
のみならず、数歩後ずさるものまで出る始末だ。

「まぁ、事情はよくは分からんが。
 今日のところは、オレに免じてこの子は許してやってくれないかね。
 もしも金銭的な損害なんかがあるなら、ギルドに言って貰えれば。後で支払うが……どうかね。うん?」

男たちが萎縮するのも気にせず。男は更にそう言い、一歩前へと進む。
瞬間。それまで怒りを露にしていた男たちは。
「すいませんでしたぁ!」などと叫び、踵を返し、凄まじい速度で逃げ出してしまう。

「……いや、そこまで露骨な反応せんでも……」

さすがに、全員に逃げられると思っていなかったのか。
少しばかりショックを受ける男は。その場で重々しいため息を吐く。

イーゴリ > 撒けるか撒けないかで言えば、間違いなく可能だろう。
然し、子供に虚仮にされたと変に恨みを買う可能性の方が間違いなく高い。
笑みを浮かべながら、気安く請け負う相手の後ろからごろつき達とのやり取りを覗き込む。

声をかけた瞬間から変わる空気と言うか、何ならあからさまに表情が変わっている。
さっきまでの勢いは如何した。
男が紡ぐ言葉からは、この辺でとんでもなく顔が利きそう、と言う事が伝わってきて。何者だこの男。
一歩、たった一歩相手が足を踏み出したのがトドメとばかり、蜘蛛の子を散らす様に逃げていくむくつけき男達はいっそ哀れだ。

「おぬし、死神か何かかね?」

後に残された己と言えば、そんな事をのたまう始末。
ぴゅう、と冷たい風が吹いた気がした。

「いやしかし助かったよ。
どうやってやり過ごしたものかと思っておったのでなァ。」

ありがとう、と続ける顔は髪と顔下を覆う黒い布地で殆ど出ていないが、眇めた眼が笑みの形を作っているのが伝わるだろうか。

セイン=ディバン > 顔役、というよりは。
ただただ単純に。冒険者として顔と名が売れていただけなのだが。
……少なくとも、この男が善人でないことを知っていたのだろう。
男たちが逃げ出すのも、ある意味では当然の結果と言えた。
のだが、男としては、穏便な解決を狙っていただけに、ショックは大きいわけで。

「……そんなわけないだろう。
 いや、我が身の過去の行いが決して褒められたものでないことは知っているけれども!」

助けた相手の、残酷な一言にさらにショック受け。
思わず声をはる男であったが。

「なに。さすがに往来であんな大騒ぎ起こしてるのは。
 ちょっと見過ごせなかったんでねぇ」

相手が礼を言うのであれば。
男は、手のひらを振りつつ、気にするな、と言う。
かすかにだが、相手の笑みが見えて、男としても上機嫌、というもので。

「……で? 何をやらかしたわけよ。おチビちゃんは」

一応、自分が助けた人物が善人か悪人かを判断しようと。
そうたずねる男であった。

イーゴリ > 「お、おお? なんだ、まあ、若い頃の過ちってのは誰にでもあるものだよ。」

褒めたつもりが追い打ちを掛けてしまった様子。
語気も強く語る男に気圧され、慰めの言葉を続けた。
続く問いには、

「いやあ、通りでちょっとぶつかったんだがねぇ…、」

と、語り始める黒尽くめ。
その内容と言えば、擦れ違い様にぶつかった男が「腕が折れちまったぜえ!どうしてくれんだよ、ああん?」と意気揚々と連れ達と一緒に脅しをかけてきたものだから「見掛け倒しの筋肉達磨かよ」と鼻で笑って返したら追い掛け回された、と言う事をありの儘その儘を詳らかにしたもので。
手頃なカモだと思った相手に馬鹿にされれば、ゴロツキ共の導火線は一瞬で燃え尽きた事だろう。

「然しなあ、助けてもらっておいて礼の言葉だけと言うのも味気ないのう…。」

男曰く、邪魔してしまった詫び、との事ではあるが、自分にとっては穏便に済ませる事が出来たのは僥倖である。
悩むように顎先を指で摘まみ摩りつつ、ゆると頭を捻り。

「なにか儂に出来る事があれば言っておくれ。
これでも一応は傭兵なんぞ、やっておるでな。」

セイン=ディバン > 「うん、慰めないでくれ。
 逆に悲しい」

時に、優しさのほうが人を傷つけることもあるのである。
ちょうど、今がそんな時だったりする。
しかし、男は一度ため息を吐くと、頭を切り替え。

「ふむ。なるほどなるほど。
 ……なんというか、典型的に定型的だなぁ」

よしよし。助けてよかったな、と。
男はことのあらましを聞き、胸をなでおろす。

「別に気にしなくても。
 困ってる人がいたら、ある程度助けるのが主義なんでなぁ」

別に、礼がほしかったわけでもない、と。
男はそう言って笑うのだが。
続いての言葉には、ん、と息を飲み。

「傭兵だったのか……。それなら。
 もしかしたら、助けてもらうこともあるかもな。
 あぁ、そうだ。オレは冒険者のセイン=ディバンだ。
 よろしくな。おチビちゃん」

ことここに至り、自己紹介をしていないことを思い出し。
男は、そう名乗ると、相手に向かって右手を差し出す。