2020/06/03 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にティアフェルさんが現れました。
ティアフェル > 「あら、道間違えちゃったな……」

 区画整理なんて言葉を云ったらせせら笑われそうな都内でも特に込み入った地区である。少し前までなかった建物があったり、逆にあった筈の店舗がなくなっていたり。道を覚えたつもりでも、しばらく後に来てみれば全然知らない場所のようになっていることもあり、油断していたら迷ってしまう。

「あーぁ……こっちの方は、袋小路、か……――ん?」

 記憶通りに角を曲がって出た場所に見覚えがない。どん詰まりになっているらしい進路に溜息交じりに脚を止めると、そちらから響くぼそぼそとした声と人の気配。
 別に立ち聞きする訳でもないが会話の内容が耳に入って思わず硬直し、建物の隙間から見えた男達の様子に目を見開いた。
 これは、目撃しては拙い現場という奴――こんな場所では珍しくもないが、禁制品の裏取引のようだ。もちろん、見てしまった方もヤバイ奴――

「――………」

 口を両手で抑えて、そろそろと静かに、静かに。抜き足差し足忍び足で後退して、気づかれない様にその場を離れ逃げ去ろうとした、が――

 こつ、ん……

 こういうシーンでは非常によくあるわざとらしい事態だが、爪先に転がった小瓶が当たって小さな音を立て、

『誰かいんのか?!』

 物音に気付いた袋小路の男たちが振り返り、ばっちり気づかれるという。
 こうなったらもう、逃げの一手。

「見てません! わたしはなんにも見てませんー!!」

『がっつり見てんじゃねえか!!」

 地を蹴って駆け出しながら取引現場に関しては咄嗟にしらばっくれるが、背後を追って来る男たちの即座な突っ込みが刺さって来る。

 追う者と追われる者の足音が路地裏に騒々しく響き渡った。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にイディオさんが現れました。
イディオ > (偶々というべきか、偶然というべきか、運命というべきか。冒険者は依頼を終えて、次の冒険のための道具を手に入れるために貧民地区にやって来ていた。
平民地区で、手に入らないものは、貧民地区にあるという事も多いのだ。真っ当な品だとしても、売る人間がこちらにしかいなければ、自然とこちらに買いに行くしかない、という程度のものだけれども。
只、場所柄危険が多いので、普段の装備をきちんと身に纏い、何時でも戦闘――――否逃走準備ができるようにしていたりする。
見知らぬ輩に絡んでくるという貧民地区スタンス、怖いし。オウオウ兄ちゃん此処俺らのシマ判る?が何10回も繰り返されるような場所なのだ。
だから、全力で逃走できるような準備を行いつつの、貧民地区への来訪。)

「―――?」

(今日は、妙に騒がしい、何処かで誰かが喧嘩をしているのだろうか、くわばらくわばら。不幸な人もいるものだ、と冒険者は考えながら、道を進んでいくことにする。
奇妙に曲がりくねる道、誰かが自分の居場所だと主張して作る家の無軌道さに、道もまた、無軌道になっていくもので。
歩きなれた道さえ、二日間で様変わりというのも珍しくはないこの貧民区だ。
大通りで、何かの喧嘩が行われているなら、ちょっと道に迷うかもしれないが裏路地に行くべきだ。
幸い、こういう所の裏路地は歩きなれているから。)

「――――!?」

(嫌な予感が、する。喧騒が近づいてきているように聞こえる。大声が、こちらのほうに向けられている気がして偶然かもしれないが。
偶然でなければそれはやばいという事であり、男の生命維持の本能がビンビン反応するのだ、逃げるなら今だ、と
だって、物凄い勢いで、声が、近づいて、来ているのだ。)

ティアフェル >  狭い路地を空き缶を蹴飛ばし、木箱を避けて、道端で寝ている酔漢を飛び越えながら、猛ダッシュ。追って来る足音は二つ、逃げる足音はひとつ。その逃げる方からの主張。

「見てない! なーんにも見てない! 見てないことにするからー!!」

 だから見逃しプリーズ。しかしそんな云い分が通るなら苦労はしないし、ここはそんな平和な場所でもない。

『無理があるだろそれ!!』

 ごもっともな応答が後ろから響いて、

「ですよねぇぇぇー!」

 そんな真面目にふざけているような声と足音がみっつ、たまたまやって来た一人の冒険者の方へ迫ってきていた。
 
「くっそぅ、追いつかれたら殴ってやるぅ!」

 無駄に小競り合いはしたくないので逃げ回っているが、最悪応戦に臨むハラは決まっている。スタッフを握り込み後ろを振り返りつつ、駆けていたので、進行方向からその人が動いていなければ、避けてなければ真正面からぶつかってしまうような勢いだった――

イディオ > 「うわあ。」

(最初に出てきた言葉は、それだった、近づいてくる喧騒は、まるで死神の如く、そして―――戦士をしに誘い魂を運ぶ乙女、死神ともいわれると言われる戦乙女が、自分の知った顔だからである。
彼女は厄介ごとを連れてやってきた、目に見える、というかどんどんものすごい勢いでこちらの方に来ている。
知らない人間だったら逃げるの一手、知ってる人間だったら、見捨てて逃げるの一手。冒険者仲間で、ギルドでもお世話になってるとなれば。)

「逃げるわけには、行かないよなぁ、これ。」

(くそデカい溜息が零れる、ごはぁぁぁあと、風圧さえ纏った勢いのそれと、普段からハイライトさんの逃げてる蒼い瞳は、真っ黒の暗黒に落ちてしまったかのように、光が消える。ああ、もうどうして、絶望の色ともいえる男の眼。
なんでこうなるの、と神様に言いたい、小一時間問い詰めたい。
しかし、まだ完全に見捨てられていなかった、彼女はこちらの方を見ていないので気が付いていない模様、さらに、追いかけている方も必死で、こちらに気が付いていない模様。
つまり、完全にこちらのアンブッシュ状態になるわけで。男は、背中のバックパックから2つの白い袋を取り出した。
それは何かと言えば。)

「――――」

(わざわざ声を出して位置を知らせる必要もあるまい。
無言でたたきつけるような勢いで投げれば、びゅん。とティアフェルの脇を掠めて飛んで、追いすがる男の顔にぶつかる。
すかさずもう一個、それも、狙い違わずに、もう一人の男の顔に。
勢いよく顔面にぶつかったせいで、二人とも転がるだろう、それよりも――)

『めが!?めが!?剥がれねぇ!!』

(モンスター捕獲用の鳥もちである。顔面にぶつかって運河よかっだのだろう彼ら、目にくっつくだけで。鼻や口に入れば呼吸困難で死ぬものでもある。
直ぐに取り外せば、というが―――モンスター用が普通に取り外せるわけもないだろう。
うんうん、とうなづく男の顔は、すでに疲れていた。)

ティアフェル >  ――道をひとつ間違えただけで、人生を間違うこともあるのか。今日は厄日――と嘆いたのは自分だけではなかったらしい。
 ヤバ気なゴロツキを二人背後に張り付けてその冒険者のいる方まで走り込んでくる追われる者。

「っち、追いつかれる――、っと、とと?!」

 かなり肉薄され始めていて、こうなったらもうスタッフで脳天カチ割ってやるしかないか、と決意が過り始めたその時、走って行く方向に物陰?いや人影?何か、誰かいる?気づいて避けようと方向転換しかけたその時――、

「え?! え?! えー?!!」

 まさかその人影が避ける以外のアクションを見せるとは思わなかった。その手が背後の男たちに何かを投げつけたかと思った次の瞬間には悲鳴がふたつ上がって、一瞬何が起こったか分からず瞠目し、そして改めて急ブレーキをかけて見上げて顔を確認すれば、

「イッ?! 何でッ――わっ!!」

 ブレーキに失敗して足がよろけバランスを崩しずさあ、と大きく前傾した。

イディオ > 「名前は言わないで頂戴よ。」

(後ろに気を向けすぎている彼女、自分の事に気が付いて驚いている、そして、全力疾走だったのだろう、止まりきれずにこけそうになるのが見えたので、男は腕を伸ばして彼女がこけないように支えてあげよう。
鎧がごつごつで、全力できたら、少しばかり痛いかもしれないが其処はまあ、ご容赦という所。)

「何が何だかわからないけれど、知り合いが終われていたから、ね。名前をうかつに呼んで覚えられたら後が怖い。だから、マジで名前は勘弁。」

(本当はそのまま逃げだしたかったところを頑張った男だ、これくらいは許されてもいいと思う、名前は勘弁。だって殺してないから覚えられたらいつか名前から探られて見つかって襲われてしまうかもしれない。
お願い頼んますと、助けた相手に懇願する不思議な光景がそこにあった。)

「と、それよりもまずは、逃げようか。」

(懇願とかやり取りよりも先に、ここから離れたい、だって彼らが二人だけとは限らない。応援がどこからともなく来るかもしれないので、とっとと安全―――貧民地区に安全という言葉は幻想だろうが、ここよりはましな場所に行きたいと思う。
なので、移動という名の逃走を提案することにした。
此処にいるとかごねないでほしいなぁ、と思う、何かのっぴきならない理由があるのかもしれないので、口にはしないが)

ティアフェル > 「ぉわっと……!」

 身バレ禁止令が出た。転倒しかけてそちらに支えてもらって斜めになりながら、了解、と親指を立ててうっかり声を出して名前を発してしまわないように無言でこくこくと首肯を繰り返して見せた。
 そして、何とか脚は挫いてはいないようで体勢を立て直し自立すると、

「念を押さなくっても分かったから、大丈夫だから――とにかくとっととズラかるぜー!」

 かなり入念に釘を刺されて、なんなら刺さった釘の上に鉄板でも乗っけて溶接しそうな勢いに、分かった、誓う、ともう一度言葉でも了承して、そして、ここでうかうかしている場合でもない。目をやられている隙に殴り倒してやってもいいのだが、無駄に恨みを買ってもしょうがない。目が目が云ってる内に逃げようと肯き返しては、ぐい、とその腕を引っ張るようにして逃走遁走脱兎の構え。
 トンズラという意見が一致したところで駆け出して、背後で待てコラとかふざけんな、憶えてろ、とかテンプレな科白を喚く声を無視しながら安全圏まで走り込んで行こう。

 善人も悪人もとりあえず誰もいなさそうな、むしろ誰も用がなさそうな街の外れ、所有者もいないような雑草で荒れた空き地まで駆けて行くと、はあぁーと大きく息を吐き出して弾む心臓を抑えつつ汗を滲ませ。

「ここまで、くれ、ば……大丈夫、かな……?」

 一応後ろを振り返りながら確認して。

イディオ > 「おーけぃ。」

(自分の腕の中にいる彼女、了解してくれたようで、サムズアップしてくれる、びしり、と良い勢いだ、指の指紋も見える位。さらに、こくこくとうなづいてくれるのだけれど、なんかその動きは小動物に見えて仕方ない。
本人は、自分の事をゴリラというのだけれども、むしろ、小動物に見える、うん、かわいい。でも言わない。今はそんな時ではない。
彼女が自分の負傷の確認をしている間、男は周囲を警戒する、盾は少し斜に構え、彼女をかばうモード。)

「アラホラサッサー。」

(完全に同意のお言葉、逃げるという言葉に否やはない、むしろ大歓迎なので、何処かの部下の如く返答して見せた。ちなみに、入念にくぎを刺すのも、溶接器具を取り出してのお言葉も、我が身可愛さという一言で済ませるつもりです。実に、外道。
腕を引っ張られるのと同時に、冒険者も動き始める、この辺りは慣れたものであるし、一応これでも前衛職を張る人間、元気とはいえ後衛の彼女に負けたくはないところもあるのだ。
こら待てという言葉に、男はしたうち一つ、あの鳥もち不良品じゃないか、あの程度で剥がれるなんて、と、後ろすら振り返らずに呟いた。
あの道具屋は次からは使わん、決めたと、心の中で一つメモメモ。

走りながら、右に、左に左に。右に、町のはずれの方面に進んでいることを認識しながら男は進み、脳内マップに書き込んでいく。
息が上がっているのを脇目に見ながら、男は彼女の後ろを走るのだ。)

「―――ん。大丈夫だ、と思いたい。水、飲むかい?」

(ゼハゼハしているので、バックパックの脇に取り付けてある水袋を持ち上げる、ちゃぷんという音がして、水が入っていることを彼女に教えよう。)

ティアフェル >  遁走0.5秒前、ズラかると云えば緊張感に欠けるというかおかしな返答が来た。勢い足首がこきっと曲がりそうになるのを留めるのに神経を費やした。
 もー!と云いたくなるのを堪えて数秒前と同じく、酔っ払いを飛び越えきれずに蹴っちゃって、空き瓶を道の真ん中に蹴り転がして木箱を追っ手用に横に押し。途中なれない道で行き止まりに詰まりそうになりながらも、どうにか逃げ切り成功。ここは打って変わって静まり返って不法投棄されたゴミくらいしか見当たらない。その投げ捨てられた背もたれの取れた椅子のひとつに、はあやれやれと腰を下ろし。

「ふぅっ……走った走ったー……あ、いただきます。あと、ありがとう助かったー」

 流れてくる汗を拭いつつ、水を勧められて袋を受け取り、改めて頭を下げ。口をつけてぐびぐびと煽るとっはー。と大きくまた息を吐き出して。

「いやー……でも変なところで会うねー。ごめんね、巻き込んじゃって。さっき何か投げてたよね?
 あのアイテムっていくらくらい? 弁償しなきゃね……」

 物品も無駄に消費させてしまった少々申し訳なさそうに眉を下げて小首を傾げた。

イディオ > (彼女が前を走る間冒険者はずっと後ろを警戒する、追いかけてきてはいないのか、自分たちの存在がばれていないのか、攻撃してこないのか。
攻撃に関して言えば、男は盾を持っているし防御力は高いので彼女をかばえば問題は無いと判断していたが、杞憂だったか。
蹴られた酔っ払いが吹っ飛んでいき、空き瓶が転がるのを眺め、追手用にと、動かすのを手伝いながら軽く突っ込むことにする。)

「こんなに形跡残したら、むしろ追って来てくださいって言ってるような気にならない?」

(あれやこれやと逃げる人間はしたがるのは心理的にわかる、相手を少しでも足を止めたいというものだが―――逆に追う方は、それを見て追いかける。獣を狩りに行くときも、獣の逃走の痕跡を追うのだから、こういう風に痕跡を付けない方がいい気もする。
必死なのはわかるのだけれども。男の感覚での言葉だし、そもそも、男のハイライトの無い目は、屹度ぬぼっとしているように見えて危機感に薄く見えてしまうのだろう。)

「はいどうぞ。」

(水を手渡しし、頭を下げる相手に軽く笑って見せる。たまたまだけれどいてよかったなぁ、と彼女の様子を見て思うのである。
そして、彼女の近くの手近な柱に体を預ける。)

「ああ、あれはモンスター捕獲用の鳥もちだよ、ギルドの売店で売ってるやつ。まあ、今回は個人商店で買ったんだけど粗悪品でさ。
あんな簡単に剥がれるんじゃ、モンスター捕まえられないじゃないか、全く。
とまれ、ティアが無事でよかったよ。

弁償?消耗品だし、気にしないで良いさ。」

(そんな高くもない物だし、それで仲間を助けられるなら安いもんである。
ぱたぱたと軽く手を振って、二へ、と笑って気にしなさんな、と言おう。)

「さて、追われてた理由は怖いから聞かないけれど、なんで、この界隈に?何か要件でもあったのかい?」

(追われた理由なんて、聞きたくない。聞いたら巻き込まれそうだし、しかし、なぜ彼女が此処にいるのか、そっちは気になったので、男は首を傾いで見せた。)

ティアフェル >  追っ手対策中に掛かる声に、木箱をよいしょしながら、

「大丈夫、空き瓶も酔っ払いも木箱が邪魔なのも――デフォですから」

 貧民街の道は分かりにくいだけではなく取っ散らかっている。通行の際に邪魔になるものトップ3である。不自然じゃない程度の工作にして留めていた。ただ、酔っ払いだけはどっちに行ったか見てて教えちゃったら面倒だったかもだが、コイツの口を塞いでいる余裕もないんで、そのまま寝てろ起きるな、と祈る。

 どうもどうもとお水を頂いて人心地。はふ、と息づいて残りを蓋をして「ごち」とお返ししよう。

「へー…鳥もち……そんなもの持ち歩いてるの? 確かにゴロツキの足止め程度には十分だけどモンスター相手には頼んないね。
 いやー。悪いよ。じゃあ助けてもらったお礼も兼ねて一杯奢る。この辺だとあんまいいお店ないかもだけど、地区移動するにはホネだしなー…」

 気にしなくていいと告げる相手にそれでは申し訳ない。代替え案的に提案した。
 しかし平民地区までは少々遠い。追っ手の件もあるし戻っても構わないのだが……どうしようかなあと頬に手を当ててアホ毛を考える様に揺らし。

「まー。別にわたし個人がって問題じゃなくって誰しも巻き込まれかけないアクシデントだから、話しても構わないんだけど……聴きたくなさそうなのでよすね。
 ――仕事で呼ばれてきたんだけど……途中道に迷っちゃって、なんやかんやであんなことになって今に至ります」

 事なかれ主義らしく詳細は聴かない方針らしいので微苦笑気味にざっくりと事情を話して。大分落ち着いて来て、少々火照りが残る頬に夜風が心地よく、ふいぃーと呑気な息を吐き出した。

イディオ > 「成程、それなら。」

(作業中への質問、自分よりも彼女のほうがこちらには詳しそうだ、そして、その彼女が、問題ないと太鼓判を押すので、そうなのだろうと判断する事にした。
酔っぱらいは完全に意識を飛ばしているし、瓶も木箱も確かにその辺に転がっているものだから、納得できるので、それ以上の口を挟むのをやめておくのだ。
それに大丈夫だというのならば、相手への妨害はいい事なのだから。)

「何があるかわからないからねある程度の自衛を兼ねて、バックパックに入るだけ物は持っているよ。まあ、ダンジョン探索などするならもう少し軽くするだろうけれどさ?
そうなんだよ、今回の店はアウトだな、次からは使わない、この町の中で知れてよかったよ、本当。

そんな気にする必要はないんだけどな……とはいえ、ティアちゃんが居座り悪いのだろうし。わかった、おごって頂戴。」

(行動するにしろ、手段は多いほうがいい、それに、道具は何物も使い方次第で変わるのだし、多くのものがあれば様々な手段が取れる。独り身だからこそ、ソロ活動が多いからこそ、用意は入念にするべきだと冒険者は思うのだ。
で、彼女のおごる宣言には、乗っかることにした。
確かに、手打ちというのは必要だし、心の整理的にも、貸し借り的にもと思えば、ここは、いっぱいのお酒で―――)

「はいストップちょっと待った?」

(今、彼女は何と言った?アホ毛がういんういんうなってるような気もするが。いや、こう、思考を表すように右左にうねうねしてるが。
彼女のセリフを聞いて冒険者として黙ってはいけないだろう一言があった。)

「仕事で呼ばれた?依頼なう?」

(道に迷ったとかはまだいいが、仕事中でお酒とかはおごるにしてもまずい。のんきにしていていいのですかお嬢さん。)

「のんきにしていていいのですかお嬢さん、今お仕事中なら、おごるのは終わってからでもいいでしょうにもう。
お仕事は、あれ?手伝ってもいい系?」

(おいしくお酒をおごってもらうなら、今は依頼の無い暇な身だ、そういうのはすべて終わらせてすっきり飲もうじゃないかと、冒険者、ハイライトの無い目で、凝視して言う。たぶん威圧感かるかも)

ティアフェル >  向こうも目をやられながら走っているので、周囲の状況の多少な違和感に気づく勘も鈍っているだろう。まあ、何にせよ無事に追っ手を振り切れてその気配もなさそうなので、目印にはなり得なかったということ。

「そこに一杯に詰めてるの? すぐに取り出せなくてわちゃわちゃしたりしない?
 まあ、不良品が混じってるのはご愛敬よ。一度試してから本番に臨むべきね。
 お互い明日の知れない冒険者。貸し借りはナシにしないと、ね」

 でしょ、と首を傾けて目線を向けて小さく笑い。いくら気を付けても一般人よりは危険の伴う稼業。彼が無事でも次に会えなくなるのは自分かも知れない。だからその場で借りはチャラにしておこうとあっさりとした笑みを浮かべ。

「ああ、依頼はもう終わったわ。帰る途中。近道だって教えてもらった道で迷っちゃって。急がば回れとはほんとそのとーり」

 齟齬。度々起こる会話の齟齬。まあ云い方も悪かった。仕事中ということで彼の中の認識が固まってしまったので苦笑いして首を振り。仕事中なら誘わないわよー、とひらひら手を振って見せ。よっこいしょいと立ち上がると。

「イディオさんの方は? 用事は済んでるの?
 暇なんだったら行っくぞー」

 その前に立つとやはり自然軽く見上げる態になり、小さく拳を振り上げ片手を差し出してお気楽に誘った。

イディオ > 「ああ、バックパックはそれなりに良いのを選んでるからさ、ほら。」

(荷物に関しては、冒険者は軽く笑って見せる、冒険者用のバックパック、自分様にと特注した其れは、中に小さなポケットが沢山あり、整理しやすいようになっているのだった。
大きなものは下のほう、小さなものは上のポケット、場所などにもある程度意味を持たせておけば、使いやすいだろう。あともう一つ、魔法が掛かっていて、見た目よりも多くのものが入る、中級以上の冒険者は獲物の素材も大きくなりがちなので、そういう魔法のバックパックが多いのだ。例によって、子の冒険者のバックパックもそういう魔法の品。
彼女が中を確認したのを見てから、閉じながら不満を言おう。)

「その不良品で、命の危機にと考えると、愛嬌と笑ってはいられないのさ。とはいえ、ティアちゃんの言う通り、確かに、試してから本番に向かうのがいいさね。
運のいいことに、お互いちゃんと生き残れてはいるものの、か。」

(そう、冒険者だ、自分も彼女もいっぱしのそれであり、何時命を落とすかわからない職業、万全に万全を期しても、それを超える理不尽で死ぬことも、あろう。だから、今を全力で生きる、それが冒険者という生き物だ。
彼女の言葉に理解が深く、うむうむ、とうなづいて見せて、あっさりとした笑顔に、反論は一切出ない出さない、出してはいけないと感じた)

「――――はぁ、良かった、本当に。依頼失敗の片棒を担がずに。」

(仕事は、依頼は終わっていた、自分の考えすぎだったようだ、何事も悪いように考えてしまう、最悪を想定してしまう癖だ。終わっていてよかった、と全力で吐息を零して安堵して見せる。
そして、立ち上がる様子に、自分も支柱から背を離す。)

「用事は、まあ、この界隈の道具屋でアイテムの補充をしようかな、と思った次第で。
可愛い子のお酒のお誘いならそっちが優先されます。デートのお誘いならもっと優先されます。」

(びしぃ、と、今度は此方からサムズアップして見せる。身長が小さな彼女、見下ろす形になって。アホ毛がゆらゆらしてるのを見る。
なんとなく楽しそうにしている、お酒を飲むのを楽しみにしているのだろうかと考える。
バックパックを背負いなおし、とりあえず、盾はバックパックに括り付けて、背負う形へと。)