2020/04/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にサチさんが現れました。
サチ > ――貧乏暇なし!
今日は夜中まで屋台に立ち串焼きなど売る仕事を得た貧乏人。
貧民街の街角で安酒と正直何の肉か自分でも分かっていない獣肉をじゅうじゅうと焼いて簡素な調理台を備えた吹けば飛ぶような小さな屋台で売り捌いていた。
いつも一人で屋台を切り盛りしているご主人が、開店直前でギックリ腰になってしまい、急遽ピンチヒッター中。しかし、まるで前から私がやっておりました。と言わんばかりのこなれた様子で手際よく下味をつけた肉を串に刺して炙り、こんがり焼きながら声を張って呼び込み。
「いらっしゃいませどうぞー。美味しい美味しい串焼きでーす。焼き立てアツアツ、食べて行ってくださーい」
焼いた肉を試食してみたらとても硬かったので玉ネギと酒に漬けて柔らかくして焼いて見たら柔らかくなっただけでなく臭みが消えて旨味も増して、売れ行きは上々。
愛想も惜しげもなく振り撒いて全力・営業中。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」に番号215642さんが現れました。
番号215642 > 商品として一晩売られている最中に逃げ出した宿無しの逃亡奴隷が行き着いた先は貧民地区。比較的殺伐としているこの地域なのに、なにやらいい香り。獣の特徴からか鼻が利くから、匂いに引き寄せられるようにフラフラと。


「おいしそう…」
幼い奴隷の行動原理はひどく単純。空腹を満たしたい。奴隷商が彼に与える餌はいつだって少なく、空腹はいつだって切実な問題だ。逃げている最中なら尚更。
屋台の後方。人目に付かないところから、辺りをうかがっていた子どもが走り出したのは一瞬。屋台の調理台に後ろから駆け寄って、まだ焼いている最中の肉に手をのばす。

サチ > にこにこと笑顔で通りかかる人々に焼き立ての肉を勧め。順調に売れていくと。あらー、残りが出ないかなーとちょっと残念になった。売れ残りがあるといただけるのだ。
営業を若干自粛気味にしようかしら…と不届きな事を考えかけるが、いけないいけない、と首を振って。
「いらっしゃいま――え?! あ! あ、ま、待ったぁー!」
串焼き肉をそろそろひっくり返そうかとしたその時に伸ばされた手に、反射的にその手を引っ掴んでいく女の手。
盗み食いなどここでは日常茶飯事であり、慣れたものだ。駆け寄って来る気配にすぐにそちらを向いて、その小さなお手々を、シュバッ、と阻止せん。
「まだ半生ですからー!」
そっち。

番号215642 > 獣の形質をもつ彼ならではのしなやかな脚で、気配を押さえて近寄ったはずだったのに。その手はあえなく阻止されて。

目の前で美味しそうな香りがしているのに、手にできなかったことが腹立たしい。売り物ではなく、既に買った人からかっぱらえばよかっただろうか。

自分から盗みに言ったにも関わらず、偉そうに
「やめろよ。はなせって!」
腕を捕まえられると、ふりほどこうともがき。手は捕まれたままで体は最大限の距離を取る。

身長差から相手を見上げると苛立ちから立った獣耳、獣の特徴を持った目で相手を睨み付ける

「はんなま…?」
知らない言葉をオウム返しに問いかけた

サチ > 素早い動きの掏りやカッパライなんて、この界隈にいると何も珍しくない。対応するこっちの反射神経も大分鍛えられてしまいました。この子は貧乏人ナメてたらしい。
がっし、と左手でその細こい腕をつかんで右手で手首をホールドし。
「だーめです。こんな所に手を出したら火傷しちゃいます」
ぶん、ぶん、と首を振って。離した手がまた肉に伸びると危ない、と変な方向で心配して。はんなま、と繰り返す声に真面目な顔で大きく頷いて見せた。
「そうですよ、お腹を壊してしまいます。もう少しで焼き上がりますから、ちょっと待っててください。――いいですか? 離しますよ?」
少し首を傾けて距離を取ろうとするその顔に顔を近づけて確認し、そっと掴んだ力を抜いていく。

番号215642 > できるだけ距離を取っているのは、殴られたり蹴られたりするのが怖いから。手をふりほどくことが出来ればできる限り速く逃げたいと思って。彼の非力さからふりほどくことは出来ないけれど。

「やけど?」
火傷ならば知っている。あついあとにいたいやつだ。なぜ相手が自分の心配をしたのかがわからなくて小首を傾げた。相手の雰囲気に棘を抜かれたように、苛立ちが溶けていく

「おなかこわすはこまる」
半生はお腹を壊すらしいと言うことは理解した彼は、顔を向けられると首をそらして、目線を合わせないようにはするけれども、腕を放されてもその場に留まっていた。

「なんでなぐらない?」
思わず疑問を口にして

サチ > 細くて小柄な少年は、栄養状態の悪さもあるのかとても弱弱しく感じた。普段から一日中肉体労働に勤しんでいる立場の女の方が余程強く。多少暴れた所で簡単にねじ伏せられてしまいそうだ。
「そうです、熱くて痛いの嫌でしょう? お腹も痛くなるの嫌ですよね」
大きく頷き返して確認しながら、少しばかり表情の険が抜けたのが分かると、おっとりと笑いかけて。それから手を離しても暴れたり火の方に手を伸ばしそうもない事を読み取ってから、そっと解放して、その手は代わりに串焼きをひっくり返してじっくり火を通し。
程よく焼き上がった所で。大人しくそこに留まる子に、一本だけ「ああ、ちょっと焦げちゃった……」と独り言を態とらしく呟いて。
「ちょっと焦げちゃいました。これは売れないので、プレゼントです。どうぞ、小さなお客さん。――どうして殴らなきゃいけないんです? 私の手も痛くなっちゃいますし、嫌な気分になります」
逆に聞き返しては、ほんのちょっとだけ焦げた串焼きを少し振って冷まし。
「あったかい内に召し上がれ」

番号215642 > 相手の丁寧な言葉遣いと態度に、彼も思わず素直に頷いて
「うん。あつくていたいのもやだし、おなかいたいのもやだ」
貧民なら当たり前ではあるが、特に自分の意思で医者に行けない奴隷にとってはケガや病気は死活問題だ。ケガから体調を崩して働けなくなることは文字通り命に関わる。

腕を放してもらってからも視線は肉に釘付け。たべたい。たべたい。獣耳はぴくりと立てたまま。様子を伺う。

「いいの?」
差し出された肉には即、手をのばして、受けとるとお礼を言うことさえせずに、口に運んだ。
「あち…」
狼も猫舌だろうか。熱いと言いながらも直ぐ飲み込んでしまって。

「わるいことしたらなぐる。とろうとしたからなぐらない?」

それが悪いことではなくても、奴隷商の機嫌を損ねると殴られることを思い出して言った。

サチ > 「私も嫌ですー」
素直なお答えに、ッフフ、と暢気な笑顔で笑い掛けて同感した。自分が痛い思いをするのも勿論嫌だが、人の姿を見るのも気分が良くない。火傷も食中りもしないのが一番、と。だからしっかり焼いた肉を火に近づけさせないで渡し。
耳を立てて肉をガン見している真ん丸な目にくす、と小さく笑って。
確認する言葉に勿論、と頷き掛け。
「あらあら、ゆっくりちゃんと噛んで食べないと駄目ですよー?」
肉が逃げるか盗られると思っている様な速さで食べてしまう様子に、水瓶から組んだ水をカップに注いで差し出し。そして途中買いに来た客の対応をして。
それから、彼の問いに。
「そーうですねえ……。それはそうかも知れません……」
悩む様に困った様に腕組みして首を捻り。
そして、どう見ても奴隷が逃げ出してきたその態に小さく息を吐き出し。
「たまには、殴らない人がいたって、いいじゃないですか?
たまには、そんな事があってもいいじゃないですか……」
少し遠くを見る様に視線を往来に流して呟いた。

番号215642 > 差し出される水も受けとるとすぐに飲み干してしまう。満足したように唇を舌で舐めた。
とにかくお腹が空いていたし、喉も渇いていた。

「おまえやさしいな」
丁寧な口調の相手をお前呼ばわりして。
なんで殴らないのかは全くわからなかったけれど、相手が自分を殴らないことはわかった。
ようやく笑みを零すと、狼の牙が見え隠れする。
狼の耳は後ろにねて、満足さを示し、目つきも丸みを帯びて。

「おまえ、だれにでもやさしいの?おなかへってるやつなんてたくさんいるのに。ああ、それともおれとヤりたかった?」
目つきはまた鋭くなって、苛立ちを隠さない。
相手が奥手とは知らないから、まるで見当違いな失礼なことを。それでも彼の見えている世界の中ではよくあることを問いかけた

サチ > 共用の井戸で汲める水くらいなら、いくらでも上げられるもので、もう一杯要ります?と尋ねつつ、焼き上がった串焼きを冷めないように遠火にしつつ。買いに来る客にアツアツを売って。
「あら、有難う御座います。……笑うと可愛いんですねえ」
やっと笑った、小さく覗く牙の見える笑顔があどけなくて微笑ましい。にこにこと笑い返しながら、最初に比べて随分穏やかな空気になった事に安堵し。
「んー。そうですねえ……。今日の屋台は臨時ですし、一本焦がしちゃいましたから……それだけ、ですよ。
……は? そんなに飢えてませんけど」
自分で発言しておいて、この子は勝手に苛立っている、一瞬きょとん、とした後、アハハ、などと笑い飛ばしながら。
「私のお相手は十年早いですよ? 腹ペコ狼さん?」

番号215642 > 水をもういっぱいもらうと、そちらは先ほどよりは少し時間をかけて飲んだ。仕事の邪魔をしているだろう事なんて意に介さず、会話を続けて。

「かわいくない」
小さく怒るとすぐに、笑顔と犬歯をしまった。どうしようもない幼さとそこへのコンプレックス。突然、背伸びをしたキメ顔になって、耳をピンとして目元もキリリと大人びた表情を目指す。

「そっか。ちがうならいい。10年はいいすぎだけど。へんななまえつけるな」
勝手に付けられたあだ名に文句を言って、口を尖らせた。