2020/04/19 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 裏通り」にヴェルソートさんが現れました。
ヴェルソート > 「さて、と……ん、血の匂い?」
いつもどおりの夜の仕事、歌を唄い客を呼び込むそれを始めようかと歓楽街から一歩、裏に入れば…むわっと鼻につく血の匂いに眉根を寄せて…こそりと覗き見るために足を進めれば。
視界に入ったのは、串刺しか、めった刺しか…無数の剣が突き立てられた死体4つと、なにやら身奇麗な貴族令息といった格好の少年一人。

「…こりゃまた、豪快な殺り方だなぁ…お前さんの仕業かい?」
人殺しと叫ぶ程潔癖でもなく、かといって死体を見て笑う程血に酔っても居ない小柄な、無精髭さえなければもっと若くみえる男は、キュッと眉根を寄せて呟き、そのまま問いかけを投げようか、一応…用心のために、腰の七色に艶めく指揮棒に手を添えて。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 投げかけられた声に、是で何度目だろうかと溜息を吐き出しながら視線を向ける。
しかして。その声の主の風貌と声色に少なくともごろつき達の様な敵意を感じなければ、小さく肩を竦めながら口を開くだろう。

「纏わりつく埃を掃っただえのつもりだがな。大方、捕えれば金になると踏んだ連中だろうが」

罪悪感も無ければ高揚感も無い。本当に、唯誇りを払いのけただけ、と言わんばかりの口調で男に答えるだろう。

ヴェルソート > 「おや…ごきげんよう、また場違いな格好してるねぇ。狙われてもしらねぇよ?まあ、返り討ちにしたみてぇだけど。」
さっくりと4人に止めさして平気な顔してるとは、また剛毅だこと…と思った矢先に、ふっと見覚えがあると思えば、水遊場で居眠りかましてた子だなと思い出す。
まあ、話したこともないのだからそれは口にしなくても良いか、と頭の片隅で思い出しただけだが。

「で、作った死体はどうすんだよ、このまま置いといたら野犬でも寄ってくるんじゃねぇか?」
まあ、だからといって死体に同情する義理もないので、指揮棒に隻腕を添えたまま、男は見るからに貴族だと主張するような出で立ちの少年と会話を続けることにして。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「場違いなのは認めるが、かといって場に合わせる服装を選ぶ程気を遣う場所でもあるまい。自衛するくらいの心得があれば、服装など些細な事だ」

男の言葉を否定せず、それでいて傲慢な口調で言葉を締め括る。似た様な事を多々言われているのか、緩やかに首を振る様はこなれたものだっただろうか。

「……ふむ?特段どうするつもりも無いが。野犬でもカニバリストでも、此の死体を使うなら良し。放置されたとしても、此の地区ではそんな事日常茶飯事であろう?」

不思議そうな口調と共に、首を傾げて隻腕の男に視線を向ける。
死体を処理する必要があるのかと。仮にその必要があったとしても、それを己がする必要があるのかと、言外に含ませた様な声色と共に。

ヴェルソート > 「いや、無用な火の粉飛んできてるだろ、現に……まあ、俺が気にすることでもねぇか。」
傲慢そのものといった振る舞いに、すくめる肩の名残しかない隻腕がわずかに動き、苦笑を浮かべて。

「まあ、日常茶飯事なのはわかるけど…臭ぇだろこのままじゃ。……あー、まあいい、ちょっと耳塞いでろよ、一応対象からは外すけど。」
するりと、指揮棒を抜いて軽く振ると、ポン…とピアノの音色がどこからか響き…すぅ、と息を吸い込み、指揮棒を振るうと、淋しげな音色のピアノが一帯を満たして。

『あぁ どんなに望んでも 時計の針は止まらない 癒えて 朽ちて 育ち 滅び 僕らは流されるだけ だからどうか だからどうか 魂だけは安らかに…♪』
口から紡がれるのは、今使われている言葉よりも旧い、魔術に使われる言語。
それで編まれた歌と曲が、4つの遺体を急激に朽ちさせ、風化させる。歌自体は生きた人体には何の効果もないが…男が響かせる、伸びやかでどこか艶を帯びるまで磨き抜いた声には、己の呪いも相まって、男性を誘う魅了の力が宿っている。耳をふさげといったのは、その影響を弱めるためで。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「そういう事だ。貴様が此の地区の住人であるなら些か申し訳無いとは思うが、襲い掛かってきた暴漢の死骸を処理する様な手間を私は好まぬでな」

今度は言外に含ませる事はせず、面倒だときっぱり言い切りながら肩を竦める。
小さく零した高慢な笑みは、申し訳ないとは露程も感じられない様なものなのだろう。

とはいえ、次いで投げかけられた男からの忠告には素直に従うだろう。それは戦士としての勘――ではなく、何方かと言えば宮中で培った警戒心に寄るもの。
男の能力等全く分からないが、未知の力を行使されるとなれば立場上何かしらの防衛策を取らざるを得ない。
大人しく耳を塞ぐだけに留めたのは、短い会話の中で男から敵対心の類を感じ取らなかったからでもあるのだが。

「———ほう。呪歌か何かの類か。見事なものだ。手練れの傭兵として十二分に食っていけるだけの腕前だな」

大人しく両手で耳を塞いだまま、見る間に風化し、塵と化していく死体を眺めて瞳の色は好奇心へと変化する。
男の歌が終われば、発する言葉には素直に相手を褒め称える色が含まれているだろう。
己にも何かしらの影響を与えるだろう歌に対して、事前に注意を与えられていた事も男に対する警戒心を一つ薄れさせているだろうか。

ヴェルソート > 「まあ、この辺りで働いちゃいるけどな、流石にこう…野ざらしを放置ってのも座りが悪ぃもんで。」
面倒だと言い切る少年の傲慢さに貴族ってこんなの多いよなぁ、なぞと頭の片隅。
別にそれが悪いとは言わない。彼がやらなくてもこの地区に死体が転がってるなぞよくあるのだから、それこそ彼だけを責めても詮無い事だ。
きっちりと一曲、時の流れの無常さを唄いあげれば…ピアノの音が途切れるとともに指揮棒も動きを止めて。

「…っはぁ。ん~?まさか、死体や物を朽ちさせる魔法を歌にしただけだよ。生きた人間には欠片も効果がねぇ奴さ。
 戦うための歌も、無くはねぇけどな。…ま、ありがとよ、まあ楽器がねぇのが片手落ちだがねぇ。」
ゆるく息を吐き出し、歌を褒められるとこころなしかくすぐったげに視線を左右させて。
こんなの使わなきゃ伴奏もできねぇ、と指揮棒をくるくると回せば、ヴァイオリンやピアノ、クラリネットなど、様々な楽器の音色が響いては消えて。
楽器の音を出す、ただそれだけの魔道具を見せながら。

「ま、死体の処理はこれで良いとして…お前さん、なんでまたこんなところに?」
迷い込んだようには見えないし、そもそもこの辺りは歓楽街だ、ごろつきを雇いに来たようにも見えず、少年が来る理由を測りかねて問いかけて。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「確かに、生活圏内に死体が転がっているというのは良い気持ちはせぬだろうからな。私とて、無益な殺生を好む訳では無い。こういった手合いの連中がいなければ、汚物を増やす事もせずに済んだのだがな」

此れもまた、嘘偽りない様な口調と声色で男に告げる。
殺したくて殺した訳でも無ければ、戦闘狂の類でも無い。必要だから殺し、その処理までは知った事かという言葉。

「謙遜する事でもあるまい。自らの術や力に奢るのは愚かだが、誇る分には構わないだろう」

と、視線を彷徨わせる様な男に言葉を返しつつ、鳴り響く楽器の音には器用なものだ、と言わんばかりに瞳を細める。
その表情は、男からの問い掛けにも変化する事は無い。細めた瞳で男と向かい合う様に視線を向け直し――

「此の辺りの再開発を考えていてな。その視察…と言う程でも無いが、一度現場を見ておきたかっただけの事だ。
貴族の道楽じみた散歩と、思って貰っても構わんよ」

そう言いつつ、薄暗い路地裏には不釣り合いなほどに朗らかに笑みを零して見せるのだろう。

ヴェルソート > 「まあそりゃそうだ。ところで、今更だけど……なんか、喋り方が爺くせえなお前さん。」
なんだか、老成した軍閥将校とでも喋っているような気分になる言葉遣いに、思わずぽつりと言葉を零し。

「まあ、そう言ってくれるのはありがたいがね、やっぱ自分で楽器が鳴らせねぇってのは、歌姫【ディーヴァ】としてちょっとだけ情けないのよな。」
まあ、歌姫、という称号に見合う格好ではないが、一応呪歌使いとしては高位だとは誇っている、まあ上なんてみたらキリがないし、一人で戦うのは無謀であるのは事実なのだけど。

「……ほんっとに道楽じゃねぇか。ここの再開発って、そもそも何作る気なんだよ。…ってか貴族が再開発とか言った時って、大体現地住民追い出した後ほっぽらかしが定番じゃねぇか。」
背筋寒くなるじゃねぇかやめろよ、と少年の見た目にか、本気とは受け取っていないが、性奴隷としても、高級男娼としても教育を受けてきた男は、ある程度はそういう話が通じる教養はあるらしい。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「…ふは。何せ、育った環境が環境故な。多少は言葉遣いが堅苦しくなるのも致し方ないというものだろう」

一瞬、きょとんとした様な表情を浮かべた後、小さく噴き出す様に笑いながら男に答える。
爺くさいとはな、と言葉を反復しながら零れ落ちる笑いを堪えていて。

「個人で完結する力等早々存在するものでもあるまい。まして、それを自らの弱点だと捉える謙虚さがあるのなら、それに応じた能力の使い方も出来るというものだろう。持ち得る称号も勿論ではあるが、先ずは其処に至るまでの貴様の努力に、自分自身で誇りを持てば良い」

年上の男に語るには随分と偉そうな口調ではあるが、是が己にとっては普通なので全く悪びれる事は無い。
余り背丈の変わらぬ男相手に、フンと尊大な笑みを浮かべて堂々と高慢に言葉を返すだろう。

「鍛冶場でもギルドでも。住宅地でも市場でも。生産性のある地区になるのなら何でも構わんさ。貴様の言う通り、そもそもの目的が此の地域の謂わば"清掃"なのだから、後に作る上物などどうでも良い」

そんな口調のまま告げた言葉は口調も態度も変わらぬまま。しかし、此の地区に対して全く慈悲も思慮も無いもの。
不要なものを片付けるという気軽さで、男に答えるだろう。

ヴェルソート > 「いやぁ、俺が会った事ある軍人で髭の将校さんとかがそんな話し方してたから、なんかこう…ダブる。」
別に彼の話し方が悪いわけでも、直せというわけでもない…ただこう、彼の背後にその将校が髭を撫でている姿が己の中でダブって見えて少しばかり、腹筋に悪いだけなのだ。

「まあ、歌える場所があるなら、声が届く範囲でなら俺は有能だぜ。と誇っておこうか。もしかしたらお前さんが依頼主になることも、あるかもしれねぇし。」
兼業冒険者、本業歌唄いと男娼の男は、にんまり笑ってならばとふんぞり返ってやろう、尊大な笑みにこちらは愉しげに笑みをうかべるが…続く言葉には難しい顔。

「…それ、掃除で退けたモノの行く先考えねぇと、此処で完結してた犯罪その他が他所に分散して多分他の地区の治安がもっとヤバくなりそうな気もするが…。」
ゴミ箱はゴミ箱に、とはいうものの…国を部屋で考えるとこの地区がいわばゴミ箱だ。 ゴミ箱のゴミを退けたとして、退けたゴミの行き先が無いなら、ただ部屋にゴミを散りばめて部屋が汚くなる結果に終わりやしないかと、首を傾げて。

ギュンター・ホーレルヴァッハ > 「笑いたければ笑っても良いのだぞ。若輩者が使うには滑稽な言葉遣いだとは理解もしている。直すつもりは無いが、笑われる自覚くらいは持ち合わせているさ」

尤も、笑った相手の行く末は己の機嫌次第なのだが。
今は少なくとも、男の言葉に目くじらを立てる様な気分では無い事は確かだった。

「ふむ。その可能性は決して低くは無いだろうさ。何分、宮中は魑魅魍魎の渦巻く場所。有能な人材は、抱えておくにこしたことはない」

と、愉し気に笑う男に言葉を返すが、次いで浮かべた男の表情には見定める様に僅かに瞳を細める。
そのまま口を挟む事無く、男の言葉に静かに耳を傾けて――

「そうだな。飛散した塵をもう一度集める為には、さぞ手間がかかるだろう。憲兵だけではなく、王国軍の出動もあり得るだろう。
或いは、そもそも今の王国では最早鎮圧すら叶わぬやも知れん。戦争で疲弊し尽くした此の国が、内乱さながらに乱れた治安を快復し得るのは困難であろうな」

男の言葉に返すのは奇妙なまでの同意の言葉。
反論は一切ない。寧ろ、男の杞憂を肯定し、頷き、そしてにこりと。少女めいた風貌に相応しい様な穏やかな笑みを浮かべて――

「——そうなって欲しいから、掃除してやるのさ」

始めて男に向けた年頃の少年の様な言葉。
実に愉し気な口調と笑みを見せた後、ゆっくりと背中を向ける。

「まあ、すぐにどうこうという訳にもいかぬ話だ。何も心配する事は無い。貴様の棲家が明日明後日に無くなる訳でも無い。安心して謡い続けるが良い。隻腕の歌姫【ディーヴァ】」

ひらひらと手を振り、コートを翻して裏通りの闇の中へと消えていく。暫くの間、革靴が石畳を叩く音が響き――そして何事も無かったかの様に。いつも通りの夜の静寂が、周囲を包み込むのだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 裏通り」からギュンター・ホーレルヴァッハさんが去りました。
ヴェルソート > 「別におかしいわけじゃねぇのに笑う程意地悪くねぇよ、ただ俺の頭にあの爺さんがちらつくだけだし。」
脳裏をよぎる映像を追い払うように頭の辺りを隻腕がひらひらと振られ。笑えばいいと言われて笑う程神経図太くねぇよと返し。

「ははっ、抱えるなら良い男用意してくれると嬉しいがね…っとまあ、それはさておいて。
 ……うわ、こっわ、ちょっと待て本気で寒気したじゃねぇかクソ。」
先が見えてないかと思いきや、見えた上でそう望んでるのだと年頃の少年めいた笑顔でいう彼に、今日一番寒気がして思わず隻腕が無い方の腕をさするかのようにうごめいて。

「ったく…これだから貴族ってのは末恐ろしい…くわばらくわばら…だ。」
そのまま、彼の賛辞を耳にしつつ…己も踵を返して、客引きへと戻ろうか。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 裏通り」からヴェルソートさんが去りました。