2020/03/26 のログ
カイン > 「…ん。酒もそろそろ潮時かね」

ふと気が付けば随分と夜が更けた気配がする。
人よりも随分と頑丈な体を持っている自負はあるが、
かといってほかの全ての部分が人間以上かといえばそんなこともない。
悪酔いしない程度に終わらせようかと緩く息を吐いて考えながら、
立ち上がってその場を後にしていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2/酒場」からカインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にキリエさんが現れました。
キリエ >  貧民地区。スラムなどと蔑称されることもあるそこは、“なんでもあり”の場所であり、そうした場所は、闇の世界の住民の巣窟にもなりうるのだった。
 裏路地から入った女は、たった一匹でその巣窟で“仕事”を済ませようとしていた。
 祈りや儀式をかいくぐり、この世に出てきてしまった悪しきもの。元あった場所に送り返すことが、彼ら彼女ら悪魔祓いの生業である。
 ノックなどとお上品な作法をするまでもなく、扉を蹴破る。
 かつかつと歩いて行けば、火の付いた煙草を燻らせながら、室内へと進み出る。
 人のようで人ではなく、魔のようで魔ではない、人型のなにかがたむろするそこへ、黒衣がやってきた。

「キリエ」

 女は名乗った。

「お前らを送り返すものの名前だ」

 殺到する殺意。女は鼻から煙を吹いた。

キリエ > 「“主よ――――”」

 主文。彼女の宗教においてもっとも基本的とされる一種の呪文。主からのバックアップを得、魔を送り返すために必要な加護を授かる為の術式。
 同時に、懐から滑り出した試験管のような筒を両手を合わせながら割り破る。ぱりん。液体が手や衣服に付着した。

「寄るな」

 正面から飛びかかる異型を、ワンツースリーのアッパーで天井にめり込ませる。
 戸惑う一匹の懐にフットワークで潜り込み、文字通りに顎を一撃で粉砕しながら振りぬいた。

「三匹目」

 続く三匹目を回し蹴りにて頭部を首からもぎ取る。
 尋常ではない馬力が発揮されているのは、彼女にかかる加護の力によるものだ。
 致命傷を負った魔の人型はいずれも白煙を上げながら大気中に溶けて消え始めていた。

「気合を入れろ! おらぁっ!」

 錯乱して両手を前に振り回しながら突っ込んでくる一体の、腹部をブーツで貫通せしめ、腰の捻りと共に壁に叩き付ける。
 まるで脚部が凶器であるかのように、Iの字になる極めて高い位置まで掲げ、ネクタイを直して見せた。

キリエ > 「逃がすかよ! 沈め!」

 逃げ出した最後の一体が扉に到達するよりも早く、掲げた脚部を素早く戻し、椅子を蹴っ飛ばす。
 椅子が魔の足に絡み付き転倒させる、僅かな暇を縫い肉薄すれば、踵落としで脊髄を踏み抜き、四散させた。

「ふう、たいしたこと無かったな」

 女は跡形もなく消えてしまった魔たちがいた場所にて、無事な椅子を引き寄せ、腰を下ろした。咥えていた煙草が噛み切れてしまっていて、吸うに耐えないことに気が付き、眉間に皺を寄せる。

「煙草煙草…………アァ? てめ、くそ………」

 最後の一本だったらしい。
 がっくりと肩を落とすと、乱れた息を整えつつ伸びをした。

キリエ > 「はー……………ああ、あった」

 煙草を勢い余って噛み切る等普段ならやらない失態である。
 女は、床で燻る煙草だったものの残骸を愛おしそうに見遣ると、椅子の背もたれに重量を預けて、ぼんやりと天を仰いだ。
 気だるかった。
 疲労ではない。吸えないせいなのだ。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にキリエさんが現れました。
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キリエ > 「行くかァ……」

 煙草がない。最悪の気分だった。
 女は腰を上げると、痕跡といえば壊れた椅子と天井くらいな廃屋を後にした。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からキリエさんが去りました。