2019/08/22 のログ
紅月 > 「あぁ…軽いケガくらいなら鎧が壊れる方がキツかったりするもんねぇ。
お財布とか修繕費とか、ついでに修理に使う素材収集とか」

ハハハ、と乾いた笑みを溢す。
治癒術師としては怪我をしないようにと言うべきだろうが…自身の戦闘スタイルが中々に特攻型だからというのもあって、ついつい賛同してしまう。

「っび、美人だなんて…!
んもぅ…褒めても何も出ないぞ~?」

キョトンと目を開いたかと思えば、薄桃に染めた頬をおさえて目を逸らす。

「そうそう、そのリスク回避のために更に治癒術師の需要が上がる、と…乾杯!
採取や遺跡探索も依頼次第ではオイシイんだけど…やっぱり雑用やら、タリスマンとかマジックアイテム作った方が堅実なのよね」

副業が安定しやすいのは何処も同じであるらしい。
照れたのを誤魔化すように酒を煽り、ままならぬ稼ぎと収入源を愚痴る。
涼を届けてくれるのど越しに笑みを浮かべつつに。

「…そういえば、思ったよりケガしてなかったけど。
アセナって実は何かのハーフさんだったりする?…なぁんて!」

たとえば獣人が頑丈だとかはよくある話で…人間であればもう少しあちこち痣になっていそうなものだから、冗談混じりに問うてみる。
もちろん、ただの頑丈な人間という線も…否、それにしては筋肉量が足りなそうに見えるのだが。
…もし獣人だったら尻尾撫でさせてくれないかな、なんて打算込みで。

アセナ >  
「そうなんだ。この鎧、結構したから修理費も高いだろうと思ってな……」

結構すると言っても中くらいのランクなのだから人間の造るものは恐ろしい。
上を見れば果てはなく、下を見ればキリがない。

「ははは、照れる姿は美人というよりも可愛い感じだ」

副業について聞くと、手先が器用なほうが何かと金になるのは人間も同じらしい。
しかし魔狼に手先が器用という概念は存在しない。
だって手がない。前肢しかない。

今はあるが。自分の人間としての手を握ったり開いたりしてみる。

ベーコンを一口食べると、フォークを下ろして。

「ああ、バレたか。実は先祖に岩がいてな……それも巨岩なんだ」

己はハーフではない。純粋な魔狼だ。
しかし獣人に化けると迫害されるという噂を聞いて。
純粋な人間に化けているというわけだ。
あれ、ひょっとして今、純粋な魔狼と純粋な人間のハーフか……? 違うな。酔っ払いか。

冗談を言いながらその日は夜遅くまで紅月と語り合った。
財布は少し軽くなったが、それ以上に良いリフレッシュができたというもの。

明日からも頑張ろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/酒場『カラスの坂道』」からアセナさんが去りました。
紅月 > 「あぁ、それは…
ある程度稼いだら付与術師に硬化を頼むと安心かしらね…」

武器防具の破損紛失でスカンピン…冒険者ならば誰もが通る道であり、当然自身にも身に覚えがある。
懐かしむように助言を投げつつ、香ばしいベーコンをフォークに刺して咀嚼すれば口内に肉汁が広がり…それを酒で洗い流す、至福。

「もうっ、からかわないの~っ!」
と、おだてに慣れない女は恥じらいつつ…相手が何とも愉快な事を言い出せばケラケラと笑い出す。

「い、岩…岩って!
さすがに無機物は意外すぎるでしょ…!」

すっかり笑いのツボにハマり、今にも笑い転げそうな様は笑い上戸に見えるかも知れない。
…酒場の空気は楽しんでなんぼ、無理に物を訊ねるのは野暮というもの。
結局閉店間際まで飲み明かし、すっかりアセナを飲み友認定した紅月であった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区/酒場『カラスの坂道』」から紅月さんが去りました。