2019/05/19 のログ
■ルシアン > 「…誰を撒いたって?」
一つ、落ち着こうとしていたであろう女に掛けられる、そんな声。
――そこに居合わせたのは本当に偶然で。
馴染みの土地であるこの貧民地区で、用事を済ませたその帰り。
何やらちょっとした騒ぎの気配を野次馬根性で見に行けば、喧嘩騒ぎなのは日常の事。
だがそれが、片方はよく見るチンピラでももう片方が身なりのいい女、となると少し興味も湧く。
その場から逃げ出す女の行き先、この道ならこっちかな…などと予想をしてみたら、ドンピシャだった様子。
声をかけたのも、単純に興味と好奇心。悪意はない、のだけれど。
「…さっきの奴ら、しつこいぞ?顔に泥を塗った奴には倍返しがモットーの連中だからな。
何があったか知らないけど…無茶な事をしたもんだ」
驚かせたかもしれないが、なるべく落ち着いた調子で声をかけた。
敵意は無い、と手を軽く上げつつ。
「まだ走れるか?…こっちの方が安全だ」
指さした先は、さらなる脇道。こんな場面で信用してもらえるだろうか――
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からルシアンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にルシアンさんが現れました。
■ミレイラ > 「ひっ!?」
びく、っと身体を震わせて飛び上がりそうになって、それでも、せめてもの意地か。
きっ、と振り向くけれど。
「………………ふん、腕を掴んできたから、趣味じゃないと口にしたまでさ。
それくらいで泥を塗られる顔が悪い。」
強がって言葉を吐きながら、相手をじっと見やる。
胸を撫でおろしながら、それでも、じ、っと見て。
ポニーテールが揺れなくなるまで………見て、ようやく口を開いた。
「……お願いしよう。
私はミレイラと言う。」
本来はもうちょっと砕けた言葉遣いであれど、今はまだ、はっきりと強い出自を言葉尻に備え付ける。
相手のことを信用はしていないが、ここにいても埒が明かない。
何より、………この場所を良く知らない。
■ルシアン > 驚かせてしまったのはまぁ当然か。身なりも良い、どこぞのお嬢様だろうか。
だけど、此方を振り返って返してきた言葉は随分と威勢が良くて、向けられた眼も強気な物。
へぇ、と感心しながらくすっと小さく笑い。
「あははっ…いや、まったく同感だね。むしろ泥でも塗れるだけ塗ってやった方が、
いつもよりまだ多少は見られる顔になるってもんだ」
返事をする頃には、軽く声を抑えつつも心底面白そうに。
こんな返事を出来るなら、腰が抜けてるという事も無いだろう。大したものだと感心して。
「僕はルシアン。ルシアン・エヴァリーフ。
…こっちへ。この辺りも、まだアイツらの縄張りだけど、もう少し行けば何とかなる」
名乗りには名乗りで返し、先導するように女性の少し先を足早に。
幾つかの細い路地を入り、もう一本横道に入れば木箱やら樽やらが詰まれた通路へ。
辺りを伺い、女性を此方へと招き寄せて。
「…此処で少しじっとしていて」
女性が奥へと進んだなら、自身はその細道の入口へ。
手近な街路樹の枝を折り、その枝で地面に線を引き、パッパと掃き慣らす。
――不思議な事に、外から見れば…その横道の入り口はレンガの壁でふさがれ、道がある事すら気づかなくなる。
遠くから、次第に何か大声をあげる気配が複数、近づいてくるけれど…
■ミレイラ > 相手の言葉に少しだけ微笑むも、更に口を開くことはしない。
こういう時に調子に乗って言葉を重ねれば、下手なことを言うに決まっているのだ。
貴族の腹の探り合いに慣れている自分に嫌になる。
「……感謝する。」
相手の言葉に乗っては、後ろをついて音を潜めて駆け足。
通路にまでやってこれば、息をひそめてそっと気配を殺し。
……気配の殺し方は、まあまあ悪くは無い。
相手の所作を少しだけいぶかしげには眺めるが、ここまできてしゃがむように息を殺しているのだ。
今さら不安になったからとて、どうにもならない。
他の出口を探すことだけはしつつも、相手がするに任せることにする。
箱の影、もしやってきたとしても間の抜けた相手なら見逃すだろうと賭けて。
■ルシアン > バタバタと数人が走ってくるような音。
『あのアマ、どこ行きやがった!』『見つけたらただじゃ置かねぇ!泣き叫ぶまで甚振ってやる!』
…典型的な三下の台詞だな、と軽く眩暈すら覚えながらも、その相手が細道の入り口の前を走り去っていく姿を見届ける。
きっと、その場に横道がある事にも気づいていない。きっとそこは壁があるという「幻」でも見たのだろう。
やがて騒々しい声も、次第に夜の闇の中へ消えて行って。
「…多分、もう大丈夫。行ったみたいだ。
災難だったな。まあ…この辺も、ああいう手合いばかりじゃ無いんだけどさ」
女性の元へと戻ってきて、隠れている前にかがみこんで。
安心していい、とできるだけ穏やかな調子で。勿論、入り口に掛けた術はまだそのまま。見破るのも、あんなチンピラには無理だろう。
「…ミレイラ、だったっけ。君みたいな人が、なんでこんなところに?
こういう事になっても不思議じゃない場所だって事くらい、知ってるだろうに」
不思議そうに、そんな質問。
■ミレイラ > ふー……っと安堵の吐息を漏らしながら、しゃがみ込む相手を制して、こちらも立ち上がって。
それでも壁に背をつけて、頭を横に振る。
煙草でも吸いたい気分だが、まあ、当然匂いなどあまりよろしくないので我慢する。
胸を押さえて、一息、二息。
「あの喧嘩の前に後ろからつけられていてね。
平民地区から、撒くように歩いてきたつもりだったんだが、どうやらこの場所に追い込まれていただけらしい。
走って逃げてきたというわけだ。
何、ちょっとお忍びで買い物という奴だよ。
平民地区からこっちに足を踏み入れることなんて、基本は無いんだがね。」
ふー、っと溜息をつきながら、助かった、と礼は口にする。
■ルシアン > 「それだけ元気があれば大丈夫かな。
あんなのに追われてれば、腰が抜けたなんてお嬢さんなんかも居たりしたけどさ」
それでも、やはり多少は応えているらしい女性の様子に小さく息を突きながら。
「キミみたいな人がこんなところに来れば、そりゃ目も付けられるさ。
身包み剥がして売るだけで1週間は酒が飲める。おまけに「中身」も使い方は色々。
アレコレ楽しんだうえで売り払えば、もう一月は寝て過ごせるって寸法だよ。
…不用心に過ぎたね」
若干、表情を険しくして。おどろおどろしい調子でそんな脅すような言葉。肩をすくめつつ、あきれたように。
流石に、さっきの連中はそこまでの悪人ではないけれど…それでも、相手によってはそんな事も起こりうる。
それが分かっているのかいないのか…多少、お説教めいた調子になってしまっている、かもしれない。
「買い物?こんなところで?…何が欲しいんだい?」
■ミレイラ > 「まあ、それなりには経験があるからね。」
度胸だけは据わる生活環境だからな、なんて思いをはせるも、口にはせずに。
心臓はまだ少し鳴っているが、それでも冷静さを取り戻せば、ふー、っと溜息をついて。
「………そりゃそうだ。
私もいろいろ経験はしたが、尾行とそれを撒く手段に関しちゃ、ちょっと経験が浅かったな。」
肩を竦めて、ぺろりと舌を。
真面目で威厳のある様子を脱ぎ捨てれば、ははは、と笑って。
説教を受け流せば、ウィンクを一つ。
「さっきも言っただろう。ここに来るのは尾行されてる相手から逃げるため。
本来行きたかったのは平民地区の時計屋と酒屋だよ。
普通の酒と普通の時計の修理さ。
もう終わった帰り道だがね。」
■ルシアン > 「お転婆なお嬢様も居たもんだ…変わってる、とか言われないか?
ああいや、こんなの僕の勝手な印象なのかもしれないけどさ」
良い所のお嬢様なんて、お屋敷の中でドレスを着てウフフアハハとやっている。
そんなイメージばかりが頭に浮かぶけど。この女性、どうも荒事なんかにも多少慣れているらしく。
感心したような納得するような、微妙な調子の口調になってしまう。
「…一応、ああは言ったけどさ。此処に居る人たちが皆あんなのばかりだ、とは思わないで?
良い人も沢山居るには居るんだ。ただ、どうしてもああいうのばかりが目立ってね…迷惑な話だけどさ」
困ったように苦笑いをする。さっきの手合いは、ここらあたりに馴染みのある者なら誰もが手を焼く厄介者で。
今までの気を張ったような様子から、茶目っ気のある様子になればこちらもつられて穏やかな調子に。
ウィンクなんかを飛ばされれば、軽く肩を震わせ笑うのを堪えてしまったり。
「そっか。ならお付の人でも…あー…お忍びだとも言ってたっけか。
この後、何かあてはあるの?それとも戻るだけかい?」
印象から良い所のお嬢様だと決めつけてしまっているけど、そう外れても居ないだろう。
■ミレイラ > 「跳ねっかえりに一家のお荷物、罵倒は慣れっこ。」
肩を竦めてふふ、と笑う。
気にすることもなく壁に背をつけたまま。衣服は質はいいものの、きらびやかなそれではなく。
「わかってるって、知り合いがいないわけじゃない。
むしろ、思ったより厄介な手合いだなと思っていたとこ。
お嬢様こそ、あの手の輩ばかりだと思わないで欲しいね?」
くっく、と笑って。 あの手の、が何をさしているかは、大体お互い同じであろう。
舞踏会とか本当につまんないからな。
「………そうだな、誰かをついてこさせるほどの立場でもないからさ。
ここから先は戻るだけになる、かな?」
お嬢様だと思われているだろうなぁ、と思いつつも、割と遠いわけではないから否定もしない。
首をちょっとかしげながら箱に腰掛け。
いい運動になったわ、なんて、強がってみせる。
■ルシアン > 「苦労してるんだか楽しんでるんだか…」
あはは、と今度こそ屈託のない笑い。
「ん、其処ら辺の認識はもう切り替えたよ。大したお嬢様も居たもんだ。
…ドレス着て、壁の花とかにさせておくのは勿体ないし…そもそもなる気も無いタイプだよね?
むしろ街の外で冒険だとか、山や森で狩りでもしてるのが似合うタイプかも」
今度こそ、本当に感心したように。めんどくさいしがらみは、これでも知っているわけで。
割と好き勝手出来ている自分の環境も思い出し、むしろ似てる気配すら感じるわけで。
「なら、どうする?ここもさっきよりまた少し奥の方に来ちゃってるし。
平民地区の方へ行くなら、送っていける。
もう少し、この辺りを見たいなら安全な所を案内するくらいはできるし、護衛になっても良い。
少なくとも、さっきのあいつらにはかち合わないようにできるけど…」
女性に望みがあれば、それに従おうと。こんなところ、さっさと帰りたいと思うのもやむなしではあるのだけど。
・・・個人的には、この女性を見てて飽きないなぁ、なんてちょっとだけ興味がわいてきていたりする。
■ミレイラ > 「さあてね、なりたくは無いけれども。
流石にこの年まで塀の中で暮らしてきて、今さら野山を駆け回って弓を放って、とはいかないわね。
気性的には向いてるって言われてるけどさ。」
相手の不思議そうな瞳に苦笑をして。
確かに、奇異に映るだろうな、なんて。
「………そうだね。
まあ、ここであんまり長居をしても仕方ない。 何より、私は足には自信が無いからさ。
……言い換えると、体力に自信がない。
だから、安全な場所に行くまでの間が怖いかな。
抜けられるなら、その方が幸いでもあるよ。」
自由な時間はまだあるから、ゆったりでいいけどね、と。
煙草を取り出して、火はあるかい、なんて尋ねるのだ。 自由人。
■ルシアン > 「部屋の中で大人しくしてろって言われてもつまらないだろうに。
その口ぶりだと、あんまり街の外にも出る機会は無かったって事かな?
獲物を捕るのは難しくても、森歩きとかは楽しいものだよ」
奇異に映るのは確かだけど、所謂庶民な青年から見ればそれはむしろ好ましい事。
えあそうにふんぞり返って何もできないよりはずっといい。
良く街の外に出る身から、そんな言葉も出してみて。
「了解。少し休んだら、とりあえず動こうか。
…もしまたこの辺りに来るような用事があれば、言ってくれれば案内くらいはできる。
くれぐれも、一人で歩こうとは思わない方がいいからね?」
女性の言葉に頷きつつ。一応、くぎを刺してはおくのだけど、どれだけ効くのやら。
火を、と言われて。次いで出されたタバコには微妙な顔をするのだけど…。
懐に合ったマッチを擦り、差し出して付けてやったり。
■ミレイラ > 「流石にね、外を夢見るお嬢様だったんだよ、昔は。
そのせいか、こんな風に出歩くように育ってしまったってわけ。
いいや、大丈夫そうで、気を抜けば食われる場所だってのは分かってる。
ま、……そのうちね。」
火をつけてもらえれば、ふー、っと紫煙を吐き出して、少し心が落ち着く。
「わかっている、わかってるって。
というか、私も諸事情が無いままここには来ないさ。
完全にここに用事があるとなれば、流石に一人で来るのはね。」
なんて、相手の言葉にウィンク一つ。 ありがとな、なんて軽いお礼を付け加えて。
「……んじゃまあ、行こうか。
何かあったら、足には期待しないで。 さっきの駆け足でだーいぶ来てるから。」
■ルシアン > 「今からだって、外を夢見ても良いんじゃない?
気が向いたらでいいさ。閉じこもってるよりは楽しくて刺激的なのは保証するよ」
火をつければ、煙を吐くときだけちょっと距離を取ってしまう。
タバコは今一つ苦手だったりするわけで。人心地着いたと見れば、また戻ってくるのだけど。
「ん…それじゃあ、なるべく危なくない道で行こう。
では此方へ、レディ・ミレイラ?」
最後は、ちょっと冗談っぽく高貴な方への挨拶のような調子で礼をして。
顔を上げれば楽しげに笑い、女性をエスコートしていくはずで。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からルシアンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からミレイラさんが去りました。