2019/02/20 のログ
リタ > 店員は鼻歌交じりで皿を洗いながら、寸胴に入ったシチューをちらりと見た。
寒さもあってか本日はなかなか好評で、残りは2~3皿分程度しか残っていない。
店員はふと、本日未だ来ていない常連客の事を思い浮かべる。
あの人は呑むだけでシチューは食べないだろうな、とか、あの人は絶対大盛りだろうな、とか…
足りなくなったら何を作ろう。今あるのは卵と大豆、ベーコン…そんなに大したもの、作れないな、とか…

「――………」

店員の手の中の皿が泡を流し落とされ、重ねられていく。同時に自然と毀れる微笑。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリスさんが現れました。
リス > 貧民地区……そこは、非合法と暴力が牛耳る場所……と、少女は信じている。
 だから、今日は護衛を雇って、その場所へと向かう事にする。
 護衛は、いつも頼んでいる冒険者の男性と、家で暇そうにしていた狼犬のグリムくん。
 急なお願いだから、一人しか捕まらなかったので、グリムくんにお願いをしたら、のそり、と立ち上がって付いてきてくれるようで。
 よかった、と安心しながら、目的地へ。

 ――――先日宣伝を受けた酒場へと向かうことにしたのだ。
 場所は調べてわかっているから大丈夫なはずで。
 貧民区を歩く今は、ドキドキする、こう、危険な人に襲われないか、とか。
 チンピラに絡まれないか、とか。
 護衛の男性と、グリムくんがガードしてくれなければ、絶対に来れない、と涙目の少女。

 そして、目的の酒場に到着したとたんに。

「助かったァ………!!」

 砂漠でオアシスを見つけた時のように、少女は酒場に駆け込むのであった。

リタ > 突然開かれた扉と、第一声に目を丸くする店員。新たに現れた客を目にすれば、くすりと笑った。
連れだろうか、なかなか腕が立ちそうな男性と、犬。その二人にも微笑を向けて、新たなお客様へご挨拶。

「あらいらっしゃい、リスさん。」

お客様の姿に見覚えがあれば、店員の微笑みは一層深くなった。
大商人の娘さんが来るような場所では無いのにも関わらず、軽い口約束を守ってくれ、
わざわざ足を運んでくれた喜びがその理由。

「まさかこんな夜中に来てくれるなんて思ってもなかったな。物騒な所だからねー。
――お連れの方もどうぞ、ワンちゃんは…ごめんね、外で待っててくれるかな?」

手早く彼女達が座るであろうカウンター席をダスターで吹き上げながら、
そこに掌を差し出し、どうぞ、と合図をした。

リス >  半分涙目の少女、飛び込むように店に入り、少しどころでなく恥ずかしいのだけれども、ほかに人がいないようで、安堵の一息。
 そして、知っている顔を見つければ、涙目で近寄ろう。

「りたさん、よかった、勤務してた……お休みの日とか聞いてなかったし場所を調べるのも大変だったし。
 あえて良かったです……。」

 微笑んでくれる彼女の表所に救いの女神を幻視する少女で、よたよた、と。近寄った。
 だって、約束は約束である。
 そして、護衛の人とワンちゃんにかけられる言葉、新しい女性を見つけて、嬉しそうに尻尾を振ったのだけれど、外に行ってという言葉。
 グリムくんはショックを受けたようにうなだれて、トボトボと外に出る。
 せっかく匂いとか嗅ぎたかったのにぃ、と後ろ髪を惹かれるようにちら、とみるが、リスにも、首を横に振られ、しょんぼりと店の外へ。

「えーと、そこの人は護衛だから、お酒だけは勘弁して上げてくださいな。
 お食事は私が持ちますので、お食事を、ガッツリしたもので。

 私は、おすすめのお酒と、軽いものをくださいな。」

 カウンターへと移動し、護衛の人にも、食事を振舞うようにお願いしつつ座るのだ。

「あと、お土産がありますの。
 うちで取り扱っておるお酒、ですわ。」

 酒場であれば、新しい酒も興味あるだろう、と、嫁の作る酒を何本か小さな瓶に入れて持ってきた。
 お試しにどうぞ、と。

 あと、別の箱に、依頼を受けた風の魔法で強化したクォーレルを1ダース。
 箱に閉まったまま差し出そう。

リタ > 貧民地区にあるこの店、彼女が恐れるのも当然だろう。護衛を連れて来たのも頷ける。
後ろめたい仕事もしている店員。だからこの辺りの、俗に言うチンピラさん達は顔見知りの方が多い。
店員の客に手を出す事のリスクとそのリターンが見合っていない。だから比較的にも安全。
だけどそんな事、口が裂けても言えないのである。

「なんかこの前と立場が逆転しちゃってて、変な感じ…うん。
何故かこの店の常連、変な人に狙われないんですよね。常連さんに怖い人、結構居るからかな?
だから、常連さんになってくれれば、安全かも?なんて。」

そんな事を口にしながら、ワンちゃんに目が行く。尻尾を振って喜び、そしてとぼとぼと店を出る。くそう可愛い。

「ん、じゃお連れ様には特製シチューを…バケット、沢山サービスしますね。
リスさんには…きのことオニオンのブルスケッタ、それから…お酒…お酒…甘いのの方が良いかな?
カクテルでも作るから待ってて下さいね。」

口にしながら既に準備を開始する店員。オニオンときのこがシチューをソースに炒められ始めた。
それから調理に使った残り、牛の肋骨を彼女に見せて、わんちゃんにお裾分けしてもよい?と小首を傾げる。

「あ、ありがとうございます。わざわざ持って来て頂いて…
お酒?わ、良いんですか?…これはお客様に出すのは勿体無いな…うん。」

なんて軽口が出る頃には、男性の前にはシチュー、彼女にはブルスケッタが配膳された。
そしてお酒を作る為に黒ビールとミルクを冷蔵庫から取り出す店員。

リス > 「だって、私は今、店長のリスじゃないですから、個人客ですもーん。
 リタさんがいま店員さん、私、お客さん。立場逆転してますわ。

 安全になるなら、常連になりますわ……!お友達とかいっぱい連れてきます!」

 彼女の軽口に、プルプル震える竜娘、安全になるなら犠牲も厭いません、あれなんかおかしい気がします。
 閑話休題、ワンちゃんは、今現在店の外、出入り口に邪魔にならないところでふて寝してます。
 チンピラが襲ってきても大丈夫ですので放置放置。
 でも女の人近づくともれなく、お股の匂いクンクンされますのでご注意を。

「有難うございます、お酒は甘くても苦くても、美味しいのであれば。
 あまり強くないので、たくさんは勘弁してくださいませ。
 グリム君……あ、あのワンちゃんですが、大丈夫ですよ。
 でも、不用意に近づくとお股の匂い嗅いできますから、そこだけ注意してくださいね。」

 あの子、エッチなんです、と小首をかしげる相手に、冗談ぽくホントのことを。

「ふふ、これも営業努力ってやつです、もし、お気に召したら、注文頂ければ、定期配送も致しますわ。

 それでは、頂きます。」

 自分の前に並ぶ食事に、両手を合わせて食べ始める。
 上品に静かに、味わって食べる少女。
 冒険者も、下品にならない程度に気を使って、もしゃもしゃ食べている。

リタ > 「ええ、精一杯おもてなしさせて頂きます。
あはは、それは嬉しいです。でも、女性客は連れて来ない方が良いですよ?
――ウチにはお尻触ってくる常連さん、居るから。」

近づくと股の匂いを嗅ぐ女好きのわんちゃんが、なんとなくその常連さんと被ってしまう一方で、
そう言葉にしながらグラスにはミルクが3分の1程注がれ、その上から黒ビールが注がれる。
層を織り成す黒と白の上からシロップが流し込まれた。
店員はそれをゆっくりかき混ぜ、斑を泳がせたグラスを彼女の前に配膳する。

「はい、どうぞ。デザートみたいなものですから、飲みやすいと思いますよ?
――頂いたお酒、ちょっと味見しちゃおっかな…」

それと同時に、彼女から頂いたお酒をショットグラスに注ぎ、味見。
爽やかな香りとすっきりした後味、これは米が原料だろうか。中には発泡酒もあり、甘くて飲みやすい。
総じてこの店で扱うには贅沢すぎる酒である。しかし、後を引く美味しさなのは間違いが無い…。
うん、これは客に出さず、自分で楽しもうと心に決めた店員であった。

「ワンちゃん可愛いなぁ…
――そういえばリスさんってお幾つなんです?この前はすごく大人びていて、今日はなんか…可愛らしいし。
全然想像が付かない…私より年下なんだろうけど、年上って言われてもなんか納得できそう。うん。」

犬好きな店員は本気でもぅふもぅふ撫でたそうな表情である。
が、それをぐっと堪えて話題を振った。

リス > 「嬉しいですわ………っ。
 えぇ……お友達は、難しいかしら……。
 でも、お尻触る人が多いところに連れて来たくはないし。」

 おしり触るお客さん……触られるのは嫌だなぁ、と考えてもしまう。
 嫁となら……ダメだ、お客さんが物理的に懲らしめられてしまいそうだ、あまり諍いはよくない。
 どうしよう、困りました、と顔に書いてある表情で見るのでした。

「わ、綺麗……このカクテル、なんという名前、ですの?
 すごく美味しそうだけど、飲むのももったいなそう。」

 グラスを眺め、目を輝かせる少女。白と黒のコントラストに、ゆっくりと混ざる形が綺麗で、グラスを握っても、まじまじと眺めるのみで。
 しばししてから、ゆっくりと口に運ぶ。
 ビールの苦味と、牛乳のまろやかさ、シロップの甘さに、ふわぁ、と感嘆の声を。

「私、ですか?18ですわ。
 ふふ、お仕事中は気を貼りますから、そう見えてしまうのかも、しれませんわ。」

 18歳、ちゃんと大人ですのよ?子供扱いされるには、ちょっと大きい。
 でも、いろいろなお客様とあっているからかもしれない、大人びて見えるのは。
 そして、首をコトンと傾ぐ。

「―――グリム、なでてみます?」

 そのほうが、わんこも喜ぶし。

リタ > 困り顔の彼女が何だか可愛らしい。先日店に行った時との大人な印象が音を立てて崩れていて。
先程言った通り、本当に年齢不詳の感じがある。

「お尻、触るのは一人だけなんですけどね。リスさん綺麗だから、間違いなく触られるな。うん。
でも、お友達と来てくれると個人的には嬉しい、かな?
――ほら、こういうお店やってると、偶然客と外で会ってもあくまで店員と客、なんですよね。
だから親しい人ってあんまりできないし。だから今日、びっくりしたけど、嬉しかったですよ。」

困り顔の彼女にちょっとだけ意地悪を言いつつ、本日来てくれた事に感謝を告げて。

「ブラックアンドホワイト。そのまんまでしょ?普段はカクテルなんて作らないから、ご来店感謝特別サービス。
…え、じゅうはち?うそ、ほんと?」

本気で驚いた店員。今の彼女だけを見ればそれ相応だと思うのだが…
カクテルの白い部分が今の彼女であれば、黒い部分は店長である彼女。
それを混ぜ合わせた斑模様は甘くも苦く、美しくも奇妙。そんな印象が彼女にあったのだ。

「…凄く撫でたいケド…今は遠慮しておきます。プライベートの時に、是非。」

是非、の言葉に力が入っているのは、心底撫でたい、よしよししたい、こう、脇を抱えて抱きしめたい。そう思っているからである。
しかし店員は飲食店の店員。衛生からそんな事が出来ない。心底今の職を悔やむ店員だった。

リス > 「……決めました!そのお客さんのことを知って近寄らないにします!
 お友達とかは……ええ、こう……気の荒い人多いので。

 ふふ、じゃあ、お互いお店の外でしたら、お友達、で。」

 触られると聞いて、うーんと悩んで。その結果、どんな人なんですか?じーっと、リタさんの顔を見て情報を収集。
 あまり広くはないお店だし、避けようとしても失敗してしまいそうだが。
 あと、お店の外ではお友達、それは構いませんよね?なんて、笑ってみたり。

「あらあら、じゃあ……味わって飲まないと、次はおねだりしても作ってくれなさそうだし。

 本当ですわ、年齢を鯖読みませーん。」

 ぷく、と頬を膨らませて不満をあらわにする少女。
 でも、美味しいお酒が目の前にあるので、それはすぐに直り、ちびりちびりと、ブラックアンドホワイトを楽しむのだ。
 おいし、おいし、と嬉しそうに。
 でも、時折ちゃんとブルスケッタも食べてます、忘れてません。

「畏まりました。
 じゃあ、うちに遊びに来るといいですわ、場所は富裕地区ですけど。
 大歓迎です。」

 ご馳走も用意しますから。
 グリムをなでたそうにしているし、お暇なときはいつでもどうぞ、と、笑ってみせた。
 飲食店だし、フレにいけないのは仕方ないですね、と。

リタ > 「あはは、じゃ情報提供をば。普段は食事時にきて、奥のカウンター席に座ってるから、
一人で飲んでるおじさんを見たら要注意。
――嬉しいな、ありがとうございます。…でも、お互いがお互い、店の外ってスッゴク稀な様な気が…」

それでも嬉しい事は確か。恐らく、店主としての彼女だけを見ていれば社交辞令で済んでいたかもしれない。
しかし今目の前で頬を膨らませておどけ、可愛らしくカクテルを飲み、軽い冗談も言ってくれる彼女を目にすれば、
良い子だな、といった感想しか出てこない。
「うん、ありがと。」と彼女に聞こえない程小さなお礼を再度呟けば、言葉を続ける。

「注文してくれれば作るケド…次回からは、いつものアレ、とでも言ってくれれば。
――え、ホント?わんちゃ…グリムちゃん?くん、かな?待っててね、絶対撫でまくってやるんだから。」

微笑を彼女に向けた後、グリムくんにそれを向け、手を振り投げキッスの仕草。
失礼ながらも店員の口調がどんどんと柔らかくなっていっているのは、彼女との時間を楽しんでいるからであろう。
ちょっと取り残され気味の護衛の男性が可哀そう。

リス > 「なるほど、お食事時の奥のおじさんは注意ですわね!分かりましたわ!
 あら、そうでもありませんよ?私だって暇なときもありますし、なんなら、連絡いただければ、待ち合わせてデートだっててきますわ。」

 口説いちゃいますわよ?なんて、酒精でほんのり赤らんだ顔でウインクしちゃう女の子。
 小さな小さな言葉、実は竜の耳には届いても、でも、知らないふりをしておきます。

「そんなもったいない!カクテルが作れるってことは、いろいろな味を作れるのでは?
 そんなチャンスをふいにしていつものなんて……できませんわ。
 だから、私は、リタさんのおすすめで、とお願いしちゃうんです。

 グリム、ですわ。ええ、ええ。
 思う存分なでてあげてくださいな。」

 手を振ってくれるリタさん、投げキッス付き。グリムは嬉しそうに『うおん!』と、鳴いて、しっぽをバタバタ。外で埃が舞ってます。

 そして、護衛の男性はお仕事なのでわきまえております。
 二人より少し離れた場所で、危険がないか、入口の方を気にしながら、食事をしております。
 何かあれば、盾を持ってふたりの前に立つことでしょう。

リタ > 「後、時々そこの奥で、一人で座って飲んでる色っぽいお姉さんが居たら、これも注意ね?口説かれるよ?
――ん、待ち合わせで…デート?いいね、一緒に買い物でもしたいかな、うん。」

ウインクにはあははと笑い声を重ねて、口説くの声には冗談ぽくもどうぞと答え。
偶には友達とのんびり買い物して、だべって、食べて、飲んで…そんな普通の事をしたくなった店員は、
結構楽しみにしている様子で、実際想像が先走っていた。

「ん、じゃその時のリスさんの気分で考えるね。道具、揃えないとかな…お酒も…
今度リスさんのお店に、また行くね?お酒、揃えたい気分。」

外で尻尾を振るグリムくんと今現在の彼女が凄く、ダブって見え、言葉の最後にくすりと笑う。
そんな可愛らしくも嬉しい言葉を二人?から受け、店員はやる気を出した。
そのやる気を護衛さんにもお裾分けとばかりに、
先程の料理の余り、オニオンときのこのソテーを皿に載せ、そっと護衛さんの前に置いた。

リス > 「この店の奥の席は、魔境ですか……っ!
 わぁ、では、そのように、リタさんはどんなものをお買いになりたく?」

 奥で飲む色っぽいお姉さんが口説いてくる、自分と同じようなことをするのかしら、とか考えてしまう、ちょっと興味が沸くのだが。
 でも、奥でばかり、なんかそういう問題(?)のあるお客様がいるようなので、思わず口をついてしまう言葉。
 一緒に遊びに行って、ご飯を食べたり、とても楽しそう、と少女は思って笑う。

「ふふ、お願いいたしますわ。
 ええ、ええ。酒造と直接交流があるので、新鮮なお酒を取り揃えてお待ちしておりますわ。」

 笑う彼女にどうかしまして?と目を瞬く。
 ほっぺたになにか付いてるのでしょうか、と頬を触ってみたり、何もない。
 疑問符が、少しいっぱい飛んでました。

 護衛の男は、ありがとうございます、と深くお辞儀をして、オニオンとキノコのソテーも平らげるのだ。
 食事が終われば、水を飲み、護衛に集中するのである。

リタ > 「あはは、貧民地区の大衆酒場をそう呼ぶのなら、そうかもね?ま、テーブル席に座ってる人は注意って事。
…その人に口説かれたいのならまず常連にならないと、なーんて。
――ん、特別欲しいって物は無いんだけど…強いて言えば服かな…見るだけでも結構楽しいし、ね。
リスさんとだと、もっと楽しそうだし。」

当然彼女の趣味等わからない店員は、彼女がどう思っているか等知る由も無く。
だから冗談っぽくそんな事を彼女に伝えて、彼女の微笑みに微笑みを重ねた。
そして彼女が自身の頬を触る仕草を見れば、店員はまたもや笑う。

「うん、ありがとう。そのお酒を使ってリスさんに振舞うのね…なーんか笑えちゃう。
…ほんと、リスさんってキュートだね。店長のリスさんと全然違って…そのギャップもキュート。うん。」

そんな言葉を彼女に投げかけながら、護衛さんのお皿をそっと片付け、張ったお湯の中へちゃぽん。
それを泡を立たせながらもう一度、彼女に聞こえない程の声で、「うん、キュート」と呟いた。

護衛さんが飲んだ水、それに水差しを近づけ、水を追加に注ぎながらの言葉。

リス > 「ふふ、身を守るとか、そういうのもあるとは思うけれど。一番はリタさんとあって、楽しくお話したいから、常連になりますわ。
 洋服……そうですね、リタさんに似合う洋服もいっぱいありますし。

 面白そう。」

 彼女の服装、どんなのが良いのでしょう、今来ているイメージとは全然違うものでせめて見るのも、よさそう、少女はそんなふうに考えてみたりして。
 一緒に、いろいろ買い物、いいな、と考えて。
 今度、お手紙出しますわ、と少女の方も乗り気だった。

「あら、それは……でも、新しい美味しさであれば、大歓迎ですわ。
 酒造にも、こういう飲み方があるというのはいい宣伝になりますし。

 ……そんなに褒められると、照れてしまいますわ。」

 何度も、キュートと言われてしまうとさすがに頬が熱くなってしまう。
 そんなにキュートではないとは思うのだけれども。
 もう、とちょっとばかりてれを吐き出すように言葉を。

「そろそろ、お時間もお時間でしょうし。
 お暇しないと、ですわね、お会計は、おいくらで?」

 水差しで、水を注いでもらい、それを飲む護衛。
 それを眺めながら、財布を取り出して問いかける。

リタ > 「うん、リスさんなら大歓迎。勿論グリムくんも、ね。」

誰かの存在を忘れかけていた店員は、慌てて誰かさんに向かって微笑み、勿論護衛さんも、と付け加える。

しかし、彼女の言葉にそう答えるも…何故かぞくり、と背筋が震えた。
恐怖…いや恐らくそうではない何かを、彼女の言葉から感じ取ったのかもしれない。

「う、うん。お手紙、待ってる。」

そんな不思議な気持ちを抑えるように発せられた言葉は、短く端的。彼女の頬と同じ様に、店員の頬も何故か染まる。
それでも彼女が会計を求めてくれば、一転営業スマイルで。

「えっと…全部で8ゴルドになります。カクテルはサービス。
ありがとう、また来てね。」

ありがとうございます。またのお越しを…では無い辺り、店員も今夜を楽しんでいたのだろう。
彼女達が席を立ち、扉を開けば鳴るドアベル。今日のお客様は恐らくこれで終い。
店員は彼女達を見送ると、閉店中のプレートを表に掲げ、扉の鍵を閉めた。

リス > 「はい、では……道中は怖いですけど、頑張って通いますわ。」

 グリムくんと護衛がいれば多分大丈夫、と少女は微笑んでみせる。
 そして、にっこりと笑いながら、立ち上がる。

「ええ、少し、お待ちくださいませ。」

 予定を組んで、一緒に遊びに行こう、ワクワクを隠すことができずに少女は、喜んで見せて。

「ありがとう、じゃあ、代金の8ゴルドで。
 また、来ますわ。」

 彼女に見送られ、護衛とともに店を出る。
 そして、ふて寝していたグリムを連れて、戻るのだろう。
 本日最後の客となり、扉が閉まるのを眺め。
 少女は、家路に戻ったのだった――――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリスさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にイヌさんが現れました。
イヌ > 「……ん~……」

貧民地区の商店の前にて、うんうんと唸るメイドが一人。
陳列されている商品を見ては、自身の財布をちらり。

「……いくら貧民地区のお店って言っても。
 食品も素材も良い物は高い……」

本日のお買い物。食料品に魔術素材。
貧民地区にはたまに富裕地区などでは見れないレアな物が発見できるのだが。
当然レアな分高かったりで、なかなか手は出し難い。

「せめて食料だけでも奮発して……。
 オルティに喜んでもらう方向性で……」

ぶつぶつと呟きながらプランを練る少女。
愛しい恋人との時間の中で、食事はかなりウェイトが大きい。
……夜のベッド上の格闘技の時間の次に、ではあるが。
そうして少女は予算と相談し、晩御飯のメニューを考え始める。

イヌ > 「……スープ系。いや、がっつりお肉……?
 あぁでもお肉よりはサッパリ系の方が……?」

うんうんうなりつつ、メニューを考える少女だが。
メニューを決めて財布を見れば、はぁ、とため息。
あちら立てればこちらが立たぬ、ではないが。
決められた予算で豪華な晩御飯、というのもなかなか難しいらしい。

「……こうなったら方向性を変えて考えようかな。
 メニュー数で勝負、とか……」

ちょっと小ぶりなメニューをたくさん並べてパーティーみたいにするのはどうだろう。
そう考えて、いろいろと思考する少女。
商店の前でうんうん唸って百面相するメイド。
そんな物珍しい風景に、周囲の通行人は立ち止まって笑ったり。
あるいは、貧民地区特有の危険の元となるような視線が向けられたり。
しかして、少女は晩御飯を考えるのに忙しく、視線になど気付いていない。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にオルティニアさんが現れました。
オルティニア > 「はぁ…っ、はぁ…っ、はぁ…っ」

編み上げた黒茶髪の夜会巻きが、ファー付きのケープの純白の色合いが、何より長耳の尖りも目立つエルフの美貌が台無しになってしまうくらいの勢いで、小柄な少女が白皙の頬に汗を伝わせ走っていた。
精霊たちは探し人のなんとなくの方向くらいは示してくれるけど、彼女たちへの強制力を持たぬオルティニアでは正確な位置を知ることは出来ない。故に小柄な体躯に見合わぬ爆乳を重たげに揺らして走りつつ、無秩序にあばら家の立てられた貧民地区の混沌のあちこちに焦りの色濃い翠瞳を向け

「――――――……ッ! っはぁぁぁ………」

深々と脱力した。
怪しい肉ばかりをぶら下げた貧民地区の肉屋の前に、銀の尻尾をふりふりさせる小柄なメイド姿を発見する事が出来たから。
ぜはぁ…ぜはぁ…とスタミナ不足のエルフ様は、息も絶え絶えフラつきながら彼女に近づき

「――――あんたはっ、なんでっ、こんな危なっかしいトコにまで買い物に来てんのよぉおおっ!!」

背後からいきなりがばっと抱きつく形で腋の下から細腕を回し、メイド服のたわわな膨らみを揉みまくろうとする。

イヌ > 「……そういえばご主人様が持ってた本に。
 丁度いいメニューがあったような?」

遥か彼方、東の地の食事には、大きなメニューから小皿に取り分けて立食パーティーの様に食すメニューがあると聞いたことを思い出し。
そうだそうだ、それにしよう、と手をぽん、と叩くのだが。
丁度その時に声をかけられ。

「ひゃうううううううううううううううっっっ!?」

抱きつかれ、叫ばれ、更に胸を揉まれ、少女仰天。
思わず手にしていた買い物用バッグを後ろに振り回すが。
残念ながら中身が空のバッグでは、ぽふぅん、なんて衝撃を相手に与えるだけであったろう。

「……って、オルティかぁ……。
 もう。ビックリさせないでよ……。
 思わず呪文で攻撃するところだったじゃない」

激怒していらっしゃる恋人様へ、ずいぶんと間延びした言葉をかける少女。
思い返せば、以前もこんな風に、少女が無自覚に危険の只中にいた時に迎えに来られたことがあった気もする。

「なんで、って。レアな食材とか、魔術触媒を探しに来てたの。
 ……残念ながら、どっちも予算オーバーで手がでないけど。
 ……今日の晩御飯、食べたいものある?」

せっかくサプライズで晩御飯を作ろうと思っていたのだが。
こうして恋人が来てしまってしかたない。
いっそのこと相手の要望を聞こう、と。少女は笑顔のままそう尋ねる。
ちなみに、愛しい恋人に揉まれたせいで、既にメイド服の中で少女の豊満なバスト。その先端は硬くなり始めていたり。
すっかりエロエロなエロメイドなのであった。

オルティニア > 「びっくりしたのはあたしの方よっ! 予定通りに仕事終わらせて、お風呂も着替えも済ませてあんたが帰ってくるの待ってたのに、全然帰ってこないし嫌な予感がするしで、精霊にあんたの居場所聞いたら貧民地区にいるとか言うんだもん! あたし、めちゃくちゃ焦ってここまで走ってきたんだからねっ!?」

ボリュームたっぷりのおっぱいは、今日も今日とてオルティニアの小さな手指を埋めても余りある揉みごたえ満点の代物で、不意打ちに漏らした恋人の甘い声もまた豊乳の感触と共に傲慢エルフの怒りを幾らか解消してくれた。
しかし、ぽわぽわっとした危機感の欠片も無い切り返しには未だに荒いままの呼気が盛大にため息を溢させて、天の邪鬼な気質が隠す『心配したんだからぁ!』なんて心情をありありと声音に乗せてしまっていた。
無論、オルティニアと大差のない上背しか持たず、いかにもトロくさそうな雰囲気を醸していても、彼女も一応は冒険者。普通であれば貧民地区のチンピラ程度に遅れを取ることはないだろうが、それは正面から戦えばの話である。
後衛型の犬娘では、不意の襲撃に対処しきれず捕らわれて、散々薄い本みたいな真似された後奴隷市場のラインナップに並べられているなんてこともあり得るのだ。

「―――ったく、なぁにが今日の晩ごはんよ。今夜もあんたのおっぱいめちゃくちゃに食べてやるから覚悟してなさいよっ! それとお肉! 野菜とかどーでもいいからお肉食べさせなさいっ! 後、こんな何の肉かもわかんないトコで買うんじゃなくて、そこそこまともそうな平民地区のお店で買ってよねっ!」

最後に硬くなりつつあった少女の乳房の先端をきゅーっと指先で摘んで転がしながら、ナチュラルに貧民地区の肉屋をディスる傲慢エルフ。当然、周囲の温度は微妙に下がる。

イヌ > 「お、オルティ落ち着いて……。
 私だって冒険者なんだから、大丈夫だって……。
 貧民地区に来るくらいなら、慣れてるし……」

相手の凄まじい勢いに少女は困惑するものの。
相手が心配してくれているのが痛いほど伝わってきたため。
赤面しつつ、小声で「ありがとう」とか言ってしまう。
すっかりメロメロなので仕方なし。

「……前から思ってたんだけど。エルフが肉食べていいの?
 昔読んだ絵物語とかだと、肉食禁止、みたいなイメージあったんだけど……。
 ……ふふっ。じゃあ、晩御飯の前に、お腹を空かせよっか……?
 ほら……近くに、連れ込み宿、あるし……?」

少女が肉料理を作ろうとしなかった理由の一つ。それは、エルフってお肉ダメなんじゃなかったっけ? という思いがあったからで。
そのまま、相手に乳首をつままれてしまえば。
逆に少女は相手の下腹部を優しく撫で。目を細め、そう誘う。
目は爛々と輝き、発情しているのは明らか。
そんな二人のやりとりに、周囲の人間達は内心だけで。

『ごちそうさま! いちゃいちゃすんなら余所でやってくれや!』

なんて思っていたんだとか。
まさしく、貧民地区にしては珍しく、住人達の心が一つになった瞬間であった。

オルティニア > 「―――ハ、そんなだから青もやしとか言われたりもするんだわ。エルフにだってたんぱくしつは必要なのよっ! 里の連中もその辺まったく分かって無くて、だぁれが生臭エロフよっ!!」

エルフの森では野草やら木の実やら果物ばかりが食卓に並び、その食生活に耐えられず自ら弓を手に狩人の真似事をして肉を摂取してきたのがオルティニアである。お肉こそソウルフードと公言してはばからないエルフらしからぬ小娘なのだ。

「―――ふんっ、あんたへのお仕置きは、その宿で……って思ったけど、こんな貧乏臭いトコじゃ虫とかいそうだから嫌よ! ほら、明日一緒に買物付いてったげるから今日は適当に露店でなんか買って帰るわよっ!」

再びの貧民街下げに周囲の視線が険を強める。犬娘が人の良さと警戒心の薄さで危険を招くなら、こちらのエルフは生来の傲慢さと小生意気な物言いで危険を招くのである。幸いにしてその悪癖が良からぬイベントを招く前に『ご飯の前にお腹を空かせよう』なんて誘いを発情たっぷりの視線と共に受けたがために、エルフ娘は好き勝手な事を言いたいだけ言って犬娘の手をきゅっと摘んでさっさとその場を後にしようと。
そうして彼女が大人しく付いてくるのなら、帰り道の露店で適当に串焼き肉など購入し、平民地区でも治安のいい富裕地区に程近い場所にある宿へと帰り付く事となるだろう。

イヌ > 「……どっちかっていうと、オルティの方が異端で。
 微妙に里を追い出されてんではないだろうか、って今私は考えてるよ?」

別段少女自身は恋人たるエルフが肉を食おうとどうとも思わないが。
このエルフが里でトンデモなことをしてたんだろうなぁ、と考えると。
ついほっこりと笑ってしまう。
きっと昔からこんな風な性格だったんだろうな、と。

「……え~、おあずけ~……?
 じゃあ、露天で買い物して。
 とりあえず、ある物で料理作ることにしますか~……」

相手の言葉に、少女は不満そうに言うが。
相手が心配してくれているからこそだ、と理解し。その言葉に従う。
結局、帰り道の露天で適当に買い物をして、宿へと帰ることになれば。
少女は、以前口にしたことを思い出し。

「……あぁ、愛しのマイホーム、やっぱりほしい……」

などと、しょげーん、と口にするのであった。
二人の愛の巣。自宅。あったら絶対色々捗るのに、と考えるが。
当然ながら、そんなお金は現在ありません、なのであった。

オルティニア > 「……………………」

少女の予測はまさに正解なのだが、オルティニアの中では頭の硬い里の連中に対して自分の革新的な考え方が理解されていなかっただけという事で結論付けられているのである。
そんなわけで犬娘の素朴な感想に向けられるのは可憐な桜唇をムスッと引き結んだ不機嫌そうな表情。そして道中、少女の漏らした呟きには

「――――あ、それ、もしかしたらなんとかなるかも知れないわ。あたし、ちょっと前に他の冒険者から気になる話を聞いて、情報屋にお金払って調べてもらってたんだけど、その情報、あたしが思ってた通りっぽかったのよね。とりあえず、数日中にまた外に出て、今度は無名遺跡に行ってくるけど、ダンジョン探索がうまく言ったら結構なお金が転がり込んで来ると思う。………そしたら、一緒に住むトコ探そ?」

優雅にダンスでも踊る様にくるりと身を翻して振り向きながら、ぐいっと少女の細腕を引き寄せる。そうして彼女がたたらを踏んで、こちらの胸に飛び込んで来たのなら、犬娘のそれよりも更に豊満な乳肉で受け止めて、にっこり笑顔の翠瞳で見上げよう。
何やら死亡フラグのぷんぷん香る気配だが、オルティニアが次に挑もうと思っているその場所はエロダンジョンなので、少なくとも死ぬ心配だけはない。

イヌ > 「あ、怒った」

相手の表情の変化に、くすり、と笑う少女。
このエルフ様は、実に分かりやすいタイプだ。
少なくとも、少女の主人たる男よりは、よっぽど。
その実直な感情表現は、少女にとってとても好ましい。

「……へぇ。そうなんだ。
 ……それは、いいけど。
 ……私のこと、頼ってはくれないんだね」

相手の言葉は、嬉しく思う。抱きしめられれば、笑顔もこぼれる。
だが、少女の声は微かに寂しそうなもので。
当然と言えば当然だが。この恋人はエルフであり、腕も立つ冒険者なのだ。
当然さまざまな魔術も使えるので、ちょっとした魔術しか使えない少女など足手まといでしかないのだろう。
少女は、なにやら急に不満そうな顔になり。相手の口に買った串焼き肉をぎゅむっ、と突っ込み。
宿への道をすたすたと足早に歩き始めた。

オルティニア > 2人の家を買うことが出来るかも知れない。そう伝えれば、彼女はきっととても喜んでくれるだろうと思っていた。しかし、犬娘が浮かべた表情は寂しげで、漏らす言葉は気落ちした物。豊乳の内側がずきんっと痛む。
オルティニアが彼女を冒険に連れて行かないのは、少女の実力が自分に付いてこれるだけのレベルに達していないからとかそういう理由ではないのだ。ただただ単純にタイミングが合わないというそれだけのつまらない理由である。
昼前に目が冷めれば、彼女は既にメイド仕事にでかけた後で、そんな日に限って急ぎの冒険者仕事がクエストボードに張り出されたりしているのである。
そして今回狙っている遺跡といえば――――

「――――んむぎゅっ!?」

正直に言おうかどうか迷っている間に、引き結んだ唇に串肉が突っ込まれた。
切れ長の翠瞳を丸くして、困惑しつつもぐもぐしている間に先に立って歩き出した彼女を慌てて追う。
そうして富裕地区にほど近いティオール広場に面する5階建ての立派な宿の、平民が利用するには立派に過ぎる門構えの少し手前で彼女に追いつき、その手を握って歩みを止めさせる。それでもぐずぐず覚悟の決まらぬエルフ様は、しばらくの逡巡に翠瞳を泳がせた後、バツが悪そうにうつむけた顔にじわわ…っと赤みを広げ

「―――――――……ヤらしい、とこだから」

ボソ…と、今回彼女を誘わなかった理由を口にした。

イヌ > 少女自身、自分の実力が相手に及ばないどころか、足手まといだということは自覚している。
だが、それでも一緒に冒険したい。支えたいと思ってしまっているのだ。
自覚と欲望のジレンマに、少女が落ち込む中。相手の口に串焼きを突っ込み、歩いていれば。
相手に腕を引かれ、少女はゆっくりふりかえる。

「……。でも、だったら尚更一緒に行きたいよ。
 オルティが危険な目に遭うなら。傍にいて守ってあげたい」

相手の赤面しながらの言葉に、少女は真っ直ぐにそう言い。
相手を抱きしめる。もちろん、それが思い上がりだなんてことは分かった上だ。

「オルティの傍にいたい。オルティが苦しんでたら助けてあげたい。
 だって、私はオルティの恋人だもん。
 体も、心も、命だって。オルティの為に使いたいんだよ?」

普段とは違う、決意に塗れた言葉。
少女にとって、この恋人は何よりも誰よりも大切な存在になっていた。
そのまま、相手を抱いていたのだが。ちら、と宿を横目に見て。
相手へ、潤んだ瞳を向ける。

オルティニア > 「――――ベ、別に危険な事はないのよっ! た、ただ……その、や、ヤらしい目に合うだけで……うぐっ。い、命まで使われたら困るわよっ、バカワンコ! もぅ……そういう言葉は、もっとかっこいい仕事を前にしたタイミングで聞きたかったわよ……」

全く、様にならないなぁと、少女の匂いに包まれながら力の抜けた笑みを浮かべた。眼前の犬娘が物語の主人公の様な物にあこがれているのは分かっていた。だからこそオルティニアも、安全だけどヤらしい目に合う可能性の高いダンジョン探索などに彼女を連れていって、自分の無様な姿を見せたくはない。なんだかすごい冒険を成功させて大金を稼いで来たのだとか思って欲しい、なんて浅ましい考えもあったのだろう。
その結果、これまでのすれ違いも合わせて不安を爆発させてしまったのなら、エルフ様とて覚悟を決める必要があるだろう。

「――――……じゃあ、あんたも一緒に、行く?」

きっとふたりとも大変に恥ずかしい目に合うはずだ。それは彼女の求める冒険者らしい冒険とは違った物だろう。それでも、少なくとも寂しい思いをする事だけはないだろうし、どうせ家を買うのなら2人で一緒に稼いだお金で買うのがいいとも思えた。
だから、羞恥の赤を滲ませつつも、見上げる翠瞳は真っ直ぐ恋人の垂れ目を見上げて問いかけた。
ちなみに2人の傍らの立派な宿の3階角部屋こそオルティニアの定宿で、今現在は犬娘との愛の巣と化している場所である。なので、中庭の掃除をしつつ、ちらちらとこちらを見つめる従業員のお姉さんとも顔見知りなのでますます恥ずかしかったりもする。

イヌ > 「でも……。そのやらしい目、っていうの。
 どの程度危険な物か分かってるの?」

ただ単にいやらしい目に遭うだけならまだマシだろうが。
下手をすると、やらしいことだけではないのではないか。
少女はそう思い、相手のことを真っ直ぐに見る。
もちろん、相手に大人しくしていろといわれれば、我慢するつもりだったのだが。

「……いいの? ……もし、連れてってくれるなら。
 行く。……オルティと一緒に、冒険、したい……」

まさかの提案に、少女は決意を漲らせた表情で頷く。
そのまま、相手を抱きしめ、嬉しそうに、こくこくと何度も何度も頷く少女。
役に立てるかは分からない。
それでも、少女は相手の傍にいたかった。
相手と違い少女はもう嬉しさ絶頂なので、周囲のことなど気にしてすらいない。