2018/12/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2/酒場」にカインさんが現れました。
■カイン > 騒々しい声の響く貧民地区の酒場のカウンターに一人陣取って、
エールのジョッキを煽る男の姿があった。
「ずいぶん寒くなったもんだなあ。春先くらいが一番ちょうどいいんだが。
この時期は用心棒稼業やら傭兵稼業やらにはキツいねえ」
人目をはばかる事無く愚痴りながらも、ジョッキをカウンターに置き、
店主に次の酒を注文する迷惑な客であった。
団体客が多い酒場の中にあって個人客の利用が主なカウンター席は、
騒々しい店内の中でも人気の少ない空間になっている。
それもあってか、あるいはいつもの事なのか周りの客も店主も大した反応はしてこない。
■カイン > 「もうちょっと過ごしやすくなるといいんだがな。
ないものねだりをしても仕方ないとはいえ、
こんなときばかりは器用に魔法を使える奴らを羨ましくも感じるな」
世の中自由自在に温度を操って自分の過ごしやすい環境を作り出す輩などもいると聞く。
残念ながらそんな小器用な真似は自分自身には到底できそうにないのだが。
その代わりにと渡されたエールを手に取り軽く煽れば体の冷えていく感覚に人心地つき、
酒場の中を見回すと遅くまで飲んで潰れている者、一人で静かに飲むものなど客の様子は様々。
時折新しい客も訪れる様子に皆元気な物だと肩を揺らす。
■カイン > 「…ん。酒もそろそろ潮時かね」
ふと気が付けば随分と夜が更けた気配がする。
人波よりも随分と頑丈な体を持っている自負はあるが、
かといってほかの全ての部分が人間以上かといえばそんなこともない。
悪酔いしない程度に終わらせようかと緩く息を吐いて考えながら、
立ち上がってその場を後にしていくのだった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2/酒場」からカインさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にイーシャさんが現れました。
■イーシャ > 夜の貧民地区を歩く人影、黒の猫耳と尻尾を揺らすその姿は、こんな場所で暮らしていてもおかしくないミレー族。
両手に二つの紙袋を抱えた彼は、確かな足取りで地区の奥へ奥へと進んでいく。
やがて訪れたのは浮浪者すら寄り付かなくなったエリア…そこに聳える放棄されて久しい2階建ての安宿。
軋むどころか歪み、扉の体を成してない扉を脚でぎぃぃと明ければ、人のいないはずの宿の中から、ドタドタと慌てふためく音が。
はぁと呆れた様子でため息をついたミレーの青年は、宿に入るなり声を掛ける。
「おーい、持ってきたぞ~」
そう言って持っていた紙袋を、ここ最近掃除された形跡のあるテーブルの上へ、どさっと置く…すると。
ひょこっと樽の陰から顔を見せたのは、幼いミレーの少年。
それだけではない、階段の上から、厠のドアから、テーブルの下から、戸棚の中から、どうやって入ったのかでかい鍋の中から。
総勢6名のミレーの少年少女が、青年の元へ集まってきた。
■イーシャ > この子供たちは、イーシャが貴族連中から成り行きで「誘拐」した子供たちだ。
なぜこんなことになったのかは長い話になるので割愛するが、この子らの行く当てを見つけるまでは、ここにこうして匿っているのだった。
子供たちが集まってくると、紙袋の中を取り出しテーブルに並べよう。
パンや菓子、ミルクなどの飲食物は、購入したものかはたまた盗んだものか。
保存のきくものもあるのでしばらく食べるものには困らないはずだ。
イーシャにここに匿われ、不安な時間を過ごしていた子供たちも、安堵の表情を浮かべてわいわいと行儀良く、ささやかな食事を楽しみ始めるのだった。
「にしても、俺がガキの世話とはなぁ…」
楽し気な子供たちを尻目に、少し離れたテーブルに腰かけて、暖房用の魔石に魔力を流し込み、部屋の温度を温める。
暖炉を使えば煙が出てしまうため、使うことはできなかった。
とにかく、子供たちが楽しく食事をしている間、ナイフの手入れをしている青年は、呆れながら愚痴を口にした。
■イーシャ > この安宿は見た目こそオンボロだが、中はずいぶんきれいになっている。
子供たちが率先して掃除をしたためだ。
この年端もいかないミレーの子供たちは、自分たちがどこから来たのかもわからないまま、一定の教育を受けさせられ、金持ちに買われて身の回りの世話や、それ以上のことをさせられる存在だった。
まぁその教育のおかげで、しばらく住むのに十分な場所にはなったのだが…ちんちくりんな割に自立の早い子供たちだ。
その日暮らしの青年には子供の世話は荷が重いし、何より保護者としてふさわしい人物ではないことくらい、本人もわかっている。
「食い終わったらちょっと魔法教えてやるから、どっか行くなよ~」
『わーい』とか『やたー』とか無邪気に微笑む子供たち。
だが子供らをずっと見ているわけにもいかない青年には、生きるのに最低限必要な魔法を教えてやることしかできそうになかった。
自分の面倒見の良さに頭を抱え、果たしていつ元の自由気ままな暮らしに戻れるかと、苦笑しつつまたため息をついたのでした。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からイーシャさんが去りました。