2018/07/10 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジェルヴェさんが現れました。
ジェルヴェ > (今夜も治安はすこぶる悪い。遠巻きに聞こえる誰かの悲鳴、怒声、喧騒は昼夜を問わず。
繁華街が近いこの一帯はある種の不夜城と言っていいかもしれない。

路地裏の『Bar 』。ドアは閉まり切り、そこに掛けられた営業中との表記の札が風にカタカタ揺れている。
窓からは店の中の明かりがこうこうと漏れて、薄汚れた路を四角く伸びた明かりが照らしていた。

店の軒先に男が一人。名もない酒場の店主の姿がある。
空の木箱の上に腰掛けて、口に銜えた煙草から夜空へ向け紫煙を燻らしていた。

橙に光る火種と店から漏れる照明にぼんやり浮かぶ輪郭。
座り込んだ姿勢でも確認できる長い脚に陰影を際立たせた黒い髪など、見方によってはそれなりに様になっているのかもしれない。
―――頭が大きく傾いて、殆ど真横になった角度のまま固まっていなければの話だが。)

ジェルヴェ > (深く首を傾げたまま、指の間に挟んだ煙草を口から離して白く濁る溜め息を吐き出す。
男の表情は神妙だった。大抵はのらりくらりと緩い表情をしていることが多いが、今夜はひどく神妙で、深刻そうだ。
大層な悩みを抱えて、なにかの問題に直面している)

「…………痛ってェ…」

(――――訳では、ない。単に寝違えて、その角度でないと首が痛む為である。
膝上に肘を引っ掛けだらりと下げた手に持った煙草から、風に吹かれて灰が欠け落ちた。
ぽつりと漏らした低い声での悪態は、砕け散って路に転がる煙草の灰ほどのささやかな気配だ。

男は後悔していた。昨夜―もとい明け方、店のソファーでなんて寝るんじゃなかったと。悔恨の思いが皺を刻んだ眉間に宿る。)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」に紅月さんが現れました。
紅月 > ーーーからころ、から、ら…

なんか凹んでる時に限ってバッタリ会う、とある男のお店…たまには営業時間内に顔を出そうと来てはみた、ものの。

「……、…何してん?」

思わず奇妙な訛りが出た。
近付いて、男が居ることには気付いていたのだが…それが不自然な格好で固まっている事に微妙に距離を取りつつ、微妙な表情で首を傾げる。
なんというか、こう…彼の見目が整っている事もあり、一風変わったオブジェに見えなくもない。

ジェルヴェ > (夜道の奥で靴音がした。―呼称は靴でいいのだろうか。ともかく足音で、聞き覚えのある音だ。)

「……あ、その声は。えー、…待って言わないで。
 …………赤毛…じゃない、紅月ちゃんだ」

(景色はしばらく前から真向かいの建物の壁である。首が回らないので、横から掛けられた声に振り返ることはできない。
短い問いかけで聞いた声と足音から、姿を確認しないままひねり出した回答には自信があった。
視線を横目に流しても視界に呼びかけた人物は映らない。早々に諦めて、煙草を持つ手を持ち上げ揺らし、正面においでとばかりに手招きを一つ。)

紅月 > 何なんだ、何かの呪いの最中か。
最近戦士よりヒーラーの仕事ばかりしているからか、何だか思考もマジカルになっているようで…ごく単純なその原因に気付けず、困惑。

「え、ぁ?おぅ……、…御名答、だけど。
ちゃん付けなら『紅ちゃん』って呼んでくれた方が嬉しいかな?」

何だろうこの奇妙な空間は。
とりあえず、近寄る…しかし男は振り向かない。
…もしかして、動けない?
いやいや何故に。

手招きされるままに正面へ…男の目には東国の民族衣装が、次いで、ちょこんとしゃがみこんだ女の全貌と不思議そうな顔が映るだろう。

「…で、どうしたの?ソレ」

ジェルヴェ > 「うわ、そっちもどうした。なにその服カッコイイ」

(自信満々に名前を挙げた分、正解を貰って後から安堵がやってくる。別の女性客か何かだった場合は首の痛みとは別に、弁解に苦心する羽目になる所だった。
呼び名の訂正については留意することとして、やがて足音が正面に向かい、前に戻した視界の端からも徐々に彼女の姿が横切って―目の前までやって来た所で、思わず問いへの答えより先に驚きと感想が口をついた。

見慣れない形の服装で、纏った色彩は彼女の紅い髪によく似合う。
勢いに任せて少々声を張ったお陰で首周りの筋が強張りツキンと痛みが走ったが、この姿勢で今日一日、やって来た常連客全員に指をさされて笑われながら過ごした男はこれくらいでは怯まない。
眉を寄せて笑いながら、遅れて漸く問いかけに答えていった。)

「夕方起きたら、こうなってた。超痛ェ。すごい困ってる人みたいだけど、まっすぐ前向いて生きてるよ」

紅月 > 「えっ、あぁコレ…?
故郷の民族衣装でね、これで意外と動きやすいから戦闘にも…で、この背中のデカイのが魔獣狩りのメインウェポン」

そういや私、自分の職業言ったっけか…?
凄く今更な疑問を浮かべつつに、此方では珍しい、そして主に背後が物々しい本日の格好について述べる…ちょっぴり見易くなるように刀の柄を肩の向こうに見せつつに。

「おっ、おぅ…確かに前は向いてるけども」

何と傾いた視点からの前向きか。
…とかツッコんだら可愛そうかしら。
寝違えたのね、と、思わず苦笑を浮かべつつに。

「や、それならもっと早く来てあげれば良かったか…治せるよ?ソレ」

ジェルヴェ > 「魔じゅ…、……ワア、大きい」

(突然放たれた物騒な単語の後で、彼女の背中で獲物がカチャリと微かに揺れる、そんな音がした。情報量が多過ぎる。驚かされる分、相手の素性を殆ど知らなかったということだが。
へらへらと浮かべていた笑みは一瞬真顔になって、相手の肩越しに覗く剣の柄のようなものへと視線を注ぐ。それまでの男が抱く彼女へのイメージが、ゆらゆらと形を変えていく瞬間だった。)

「うそ、マジで?早く来ればよかったのに。…あっ、いやでも」

(魔獣―想像力が乏しくてたいへん弱そうな生命体しか浮かんでこないが―と対峙し背中の剣を振るう彼女の勇ましい姿。現金にも、治せると続いた台詞にその印象が再び形を変えた。今度は白衣の天使か女神か、ともかくきらきらと美しい癒しの象徴だ。
彼女の言葉をなぞって返しつつも、はたと明るくなりかけた表情の移ろいが止まる。ちらりと視線を走らせたのは、肩の向こうから飛び出た獲物の柄だった。)

「首と胴が繋がってなきゃあこれ以上痛ェ思いもしなくて済むだろうさ、とか、急に悪役っぽいこと言い出されたらどうしよう。
 死因が首の寝違えは流石にちょっと嫌かな」

紅月 > 男の表情が『マジかよ』とばかりに真顔に。
そりゃあそうだ…か弱そうとまで言う気はないが、なにせ女だし。
それに加えて、大の男でも持つのに苦労するだろう金属の塊をブンブン振り回すぜ~っと宣言したようなもの。
…しかし、だ。

「…ぷっ、あっははは!!
いやいや無い無い、っ何処の辻斬りよソレぇっ!
っふ、くっ……やめて、死因寝違えやめて…!」

ツボった、この上なく的確にツボに刺さった。
ひーひー笑ってちょっぴり涙目にすらなりつつに…飲み友にそんな事するかいな、と訂正をば。

「私、こう見えて冒険者やってるのよ。
メインの分野は採取と魔獣討伐、それからトレジャーハンター。
最近は御時世がアレだから、冒険よりもタナールで臨時治癒術師してる事の方が多いけど」

相変わらずしゃがんだ姿勢のままニコニコと笑顔を見せ、自分の職業を語る。
回復系は得意中の得意。
ヒーラーですよ、バーサクヒーラーだけども。

「…だから安心して首を預けてくれていいよ?」

首を傾げつつ、にっこり…冗談とはいえ何とも物騒な一言をポロリ。

ジェルヴェ > (治すという言葉の意味する所が物理的な解決法だったとしら―――などとは無論、冗談のつもりだ。すっかり真顔だが男の本意ではない。が、内心でひっそりと思うのは、そうなった場合はあっさり切られるんだろうな、という諦めの心地だった。勝てない。多分逃げれもしない。彼女が優しいひとで助かった。

屈託なく賑やかに笑う彼女の声を聞きながら、短くなった煙草を最後に一口吸い込んで、煙を吐き吸殻を地面に落とす。
笑う拍子に相手の顔が正面から逸れたタイミングで空に紫煙を立ち昇らせて、ザリ、と地を靴底で擦り橙の小さな火種を消してから)

「最後のやつは狩る気の台詞に聞こえたけども。…まァいいや、治してくれるんならいくらでも預けます。
 やってやって、起きてからずっとこの角度でいるから肩も痛ェの。……あっ、脱いだほうが?」

(彼女の仕事内容は男には馴染みのないものばかりだが、治癒術と聞いて漸く具体的な治療法を理解する。ましてや国の激戦区で働いているとの事、筋を違えた程度の他愛ない症状ならば、きっと容易く癒してくれるに違いない。
明るい笑顔のまま最後に付け足された台詞には小さな笑い声を返し願い出て、こちらも思いついたように最後に余計な一言を加えておいた。きりりと表情を締めて、シャツの襟に手を持っていく。)

紅月 > 何せ動けないからか、律儀にも顔が逸れたタイミングで紫煙を吐き出す彼に「紳士だねぇ」なんて言ってみたり。

「ふふっ…はいはい。
是非頑張らせて頂きますー…って、脱がんでいいわっ!
…まぁ、直に触れた方が早く治せるっちゃそうなんだけどさ」

クスクス、と楽しげに笑っていたが、やたらキリッとした顔で『脱ごうか?』なんて言われば…やはり動揺しない訳がなく。
それこそ激戦区の生傷ならともかく、打撲や筋肉痛なんかの日常トラブルくらいなら服越しで充分。
「脱いだらセクハラかましてやるからね」
なんて頬を薄く染めつつ…恥じらい隠しのジト目を投げつつに、よいしょと立ち上がって彼の前へ。

シャツ越しにそっと首筋に触れて…と言っても、互いの立ち位置的に男を軽く抱き締める格好になるだろうか。
首筋をじっと見つめ、寝違え…つまり筋肉や靭帯の炎症を癒す。
己の掌が薄く白光を帯び…彼の患部はと言えば、暖かく感じるだろう。
…本来寝違えた場合なら冷やして安静にするのが正解で、間違っても揉んだり温めてはいけないのだが、治癒魔法となればその限りではない。

「もう首動かして大丈夫よー、ずいぶん派手に違えたねぇ?
あららぁ本当、肩凝りも酷い…」

首筋が終われば、ついでとばかりに肩の方もどうにかしてやろうと…そのままするりと手を移動させようか。

ジェルヴェ > (反応を楽しみたくてつい軽口を重ねてしまうのは、最早そうした性だ。彼女の場合、案外分かりやすく照れてくれるので調子に乗り過ぎぬよう気をつけたい。揶揄を投げ続けるつもりでいたが、ふと三度背負い込まれた武器が目に付いてそう強く己を律した。

処置の為首筋に細い手が触れると、相手の胸元が自然と目線の位置になる。
じんわりと触れられた首が温かくなっていくのは、体温が肌に染み込むといった理屈とはまた違う作用なのだろう。適正のない男には、魔力が向けられている事に自覚症状はない。ただ身体的に、引きつるような痛みが和らいでいくという感覚だけだった。)

「……紅ちゃんさあ、なんで今日この服なの」

(確実に痛みが消えていく。無理をして深く傾けていた頭が、ゆっくりと自然な姿勢に戻っていった。その最中にも突き刺さるような筋の痛覚はない。
頭の角度をすっかり元に戻して首筋を撫で越して肩に移動する彼女の手は任せたままに、真っ直ぐ前を―見慣れぬ衣装の襟元を見詰めながらぽつりと独り言めいた口振りで呟き零す。

―――己を律したはず、だったが。やはり思うだけに留めるよりは、口にしてしまった方が性に合っていた。)

「前着てたあの、胸元ガッと開いてたやつなら今ベスポジだったんですが。
 この服なんて言うの。どうやって着てんの?」

紅月 > まさか貧民地区の粗暴な輩に絡まれない為に背負っておいた刀が目の前の男にまで効いているとは露知らず、この紅娘は治療に真剣である。
「寝違えは『癖』になるから気を付けなきゃダメよ?」
なんて、治癒の力を向けつつ心配げに言って。

「…ふぇ? なんで、って…?」

男の急な言葉に首を傾げる。
普段の魔物革を鞣した服も、今着ている着物も戦闘に向いた…いわゆる『冒険者仕様』という類いの、一般市民から見たら異様に頑丈な素材の其れである。
つまり、仕事着。

強いて言うならば、治安の悪い地域で露出する愚を起こすのは如何かと思った…というのが理由になるかもしれない。
せっかく楽しく飲みに来て、邪魔する奴をブン殴るというのも面倒だし。
…なんて、一瞬真面目に考えた自分にチョップしたい。

「んもぅ、破廉恥っ!
コレは着物って言って…あぁっ、太刀が邪魔っ!
…ほら、この肋骨のとこ覆ってる帯で、巻きスカートを紐で縛るみたいに結んでとめてるだけ」

訊かれれば答えるのが紅娘の信条である。
とりあえず視線の位置の件は、若干の呆れ顔で脱力しつつに笑って置いておきつつ…説明するのに得物は要らない故に、ひょいっとあっさり武装解除。
からの、バッと何処かへ押し込むように腕を横に突き出せば…虚空が揺らいで腕ごと大太刀が消え、揺らぎの中から腕だけが帰ってくる。

くるりと男に背を向けて、ほんのりアレンジした文庫結び…リボン結びみたいに見えるだろうか、それを見せながら話す。

ジェルヴェ > (痛みがあったとは言え、筋を庇って痛めたのとは逆方向へ首を捻って無理な姿勢で過ごしていたことにかわりはない。そのせいで余計に周辺の筋肉まで凝り固めてしまっていた患部が彼女の手により癒されていく。
病院にでも掛かれば、長い待ち時間に高い診察代、匂いのきつい湿布薬などを貰った上で数日はそれで過ごさねばならなかっただろう。魔法医ともなれば諸費はもっと嵩んだはずだ。

礼はいつものように酒でいいだろうか。彼女なら笑って気にするなと明るく言いそうな予感もしたが、不埒な視線を隠さずあまつさえ憚ることなく煩悩を言葉になぞった男は、あけすけに言いながらも対価について思案していた。)

「うわ、そんなことも出来んの。…それ、そこそこ高位………
 ――――…何…だと…」

(思考は瞬く間に移り変わる。まず、彼女が徐に取り上げた剣を空間へ突っ込んで、腕ごとぷっつり消えてなくなったように見えた瞬間に一度。胸元を凝視していたのを怒って武器を手に取ったものと刹那過ぎってみぞおちの辺りがひやりとしたのは内緒だ。
転移魔法の類だろうか。虚無から物体を自在に出し入れする、そんな術を昔見た事はあった。腕の立つ魔術師か何かが操っていた覚えがある。彼女もまた、そうした熟練者なのかもしれない。
しかしそれより男の注意を奪って止まなかったのは、武器を次元のどこかへ仕舞い込んで見せた芸当の後、続く衣服についての解説だった。

―――襟を合わせて、重ねて、留める。つまりそれは)

「おいおい待てよ赤毛チャン、つまりその帯解いたら前が開いて全部脱げると。
 ガウン一枚着てるだけなのと同じだな?破廉恥!」

(その事実が何より驚愕で、新発見だった。これほど華美で艶やかなガウンがあるとは。世界は広い。
向けられた背、腰に掲げられた華やかな結び目へ向かい伸びる手は、殆ど反射に近かった。物珍しさがたたって、邪な心理はない…筈だ。)

紅月 > 想像の通り、というか当人としては『捻挫した人見付けたら手当てくらいしてやるだろう?』な程度の気軽さで治癒魔法をかけている…普段騎士や貴族から金銭毟り取ってるからというのもあるが、気紛れにやった其れに対価を求める気は更々無かった。

さて…事も無げにな行動で立て続けに男の興味をそそっているらしい紅月は、やはり律儀に答えようと、するものの。

「脱げないから!
その下、紐とインナーと下着でグルグル巻きになってるから!!
…そりゃあ似てなくもないけど、ガウンじゃないから恥ずかしくないもん!」

なんというトンデモな勘違いを…!!
あわあわと、けれど力強く訂正する。
…何故振り向かないのか?
それは不意打ち極まりない破廉恥返しにビックリしてしまい、一瞬『えっコレ破廉恥?』と悩んだ結果…かつての己の教育係が言った『着物の着方が右前なのは男が右手を胸元に入れやすいからよ~』なんて台詞を思い出し、耳まですっかり赤くなってしまっているからで。

そんな内心修羅場では、相手の行動に気付く訳もなく…無防備に背中を向けたままと相成って。

ジェルヴェ > 「ぐる……なんだよ早く言えよー、紐パンくらいの危うさ想定してた俺が馬鹿みたいだろー」

(馬鹿で間違いない。第三者がいれば間違いなくそう相槌を入れられた事だろう。
残酷な真実がもう一つ明らかになると落胆を隠さず愚痴っぽく嘆き、彼女がじっとしているのをいいことに結われた帯の端を摘んで上下に手首を振った。ゆらゆらと戯れる程度、手前に引っ張るわけではないので、結び目は解けるまでには至らない。)

「…あれ。……あ、肩も軽くなってる。ありがとう紅ちゃん。何か顔赤いけど、とにかくありがとう」

(腕を緩やかに上下させている間に身体の変化に気が付いた。肩や首筋、背中の重怠さは痛みと共に無くなり、先程までと比べても随分軽やかだ。手を当てられた場所が心なしか温かいままでいるのは、血行がよくなっているとか、そんな所か。じゃれていた帯から手を離して軽く肩を回して首を左右へ捻る。痛みが完全に引いたのを確めて、改めて誓った。もう二度と店内のソファーで熟睡はしない。

彼女の内心の動揺にはまるで気付かず、けれど発端は馬鹿げた自らの発言であろうとは承知していた。その上で後ろから身体を斜めに傾け相手の横顔を覗き込み、笑いながら礼を言う。
土埃に汚れへし折れた煙草の吸殻を一つ、拾い上げ。店のドアへ手を伸ばし、入口を広めに開けた。…そういえば、営業中にこうして彼女を招こうとするのは初めてだ。)

「じゃー、飲むか。俺の完治を祝して。
 今日はちゃんと酒作るよ」

(暗い路地に差す明かりがもう一つ、開け放たれたドアから一際強く照らされた。
―――勝手にロマンを抱き、且つ想像と大分異なった形式だと知って勝手に落胆した件の衣服。それでも異国風の装いに興味は尽きず、彼女を店に招きいれた後も同じ調子であれこれ質問を繰り返すのだろう。
煩悩、または探究心。名もない酒場は今夜も賑やかに更けてゆく―――)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジェルヴェさんが去りました。
紅月 > 「ひ、紐パ…っ、無い、断じて無い」

嘆かれましても、といった風にキッパリ言い切る。
…いやまぁ、正直、脇や裾から手を突っ込めば簡単に素肌に到達できるのだが、それは黙っていよう。

「あーもーやめい、にゃんこか!ジジにゃんなのか!
帯が緩むじゃ……、…の、覗かないのーっ!」

帯にじゃれる男にツッコミはするものの、振り向けないのが悔しい。
ひょこりと横顔を見られれば、いつぞ男が夜空を仰ぎ見たようにポフンと両手で顔を覆い隠して。

けれど彼の動く気配がすれば、さすがに振り向いて…まだ赤みのさす頬をポリポリと掻きつつに。
招かれればやはり、ぱぁああっ!と、目を輝かせ嬉々として入店するのだ。
からころ、と、下駄の音を響かせて。

「ジジさんのカクテルっ!
ふふっ、楽しみ!」

そうして今夜も居座る店内。
今日の話題は着物や故郷になりそうだ。
いやはや、うっかりボロを出さないようにせねば…私の実家は少々変わってるのだから。

…どのくらいゴロゴロしていたか?
うっかり店内に置きっぱなされたコースターなら、その答えを知っているかも。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」から紅月さんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にカインさんが現れました。
カイン > 薄暗い貧民地区の路地の一つ。
様々な商品を商う露天商たちの集う通りの中で、
露店の一つの前に足を止めて品物を眺めて思案顔の男がいた。
その露店で商われているのは荒事に従事している物ならば、
一度は目にしたことがあるだろう治癒や気付けの薬品類や消耗品の類。
そしてそれらの商品から隔離されるように置かれた怪しげなラベルの瓶である。

「えーと、これとこれと…後はそうだな…あー…。
 もう少し負からん?買う量増やしてもいいし」

商品を指定し多後、男とも女とも解らぬ全身をローブで
隠した怪しげな店の主を一瞥しそう交渉を持ち掛けるも素気無く断られる。
残念そうに肩を揺らしながらも一旦そこで注文を区切って再び思案を始める。
傍目には随分と怪しげな、少しはた迷惑な客に見える事だろう。

カイン > 「ンン。よし、これで決めておこう。
 全く、少しくらいは色をつけてくれてもいいだろうに」

常連相手に連れない事だとぼやきながら金を先に渡すと、
店主が目の前でそれなりの量の荷物を包み始めるのを眺めて肩を竦める。

「消耗品の類は平民地区とかだとちと足が付きかねんからなあ。
 全く世知辛い。昔はもう少し大雑把だったんだがな、この国」

自分の身の上的に考えていた仕方のない所ではある。
大手を振って歩ける身分では本来ない以上はどうにもならないが。
商品を用意してもらう間に周りを見回せば俄かに人の増えた様子。
それでもちっとも賑やかと思えないのがなんとも陰気である。

カイン > 「全く、出てくるのが遅いぞ」

暫く待たされた後に漸く用意された道具の数々を手に取って渋い顔。
仕方がないとばかりにぼやきつつもそのまま手を振って踵を貸して去っていくのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からカインさんが去りました。