2018/06/12 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 出張鑑定の依頼をすませた帰り道。人目を避けて、薄暗い路地の壁に凭れかかっていた。
鑑定を頼まれた品物が多くて、瞳を使いすぎたかもしれない。こめかみあたりに残る鈍い頭痛をほぐそうと細い指先を当てる。
こんなところで立ち止まっているのも不安だったけれど、人の多い場所で弱みを見せるのもまずい気がしたから、動き出せないでいた。
早くよくならないかなと思う。気持ちばかり焦って眉の先がすこしずつ下がっていく。
「……どうしよう」
どこかのお店に入って冷たい飲み物でも口にした方がいいかもしれない。そう考えて歩きだそうとしても、頭痛のせいで足元がおぼつかなかった。
■ミンティ > どんな理由があったとしても、ここに長居を続けるのはよくない。無理をしてでも危険が少ない場所まで移動した方がいい。
こめかみを強く押して、歯を食い縛って、歩きはじめる気力を振り絞る。
長い距離は難しくても近くのお店に入るくらいはできるはず。体調をそう判断すると、急いで足を踏み出した、刹那、背後に人の気配を感じた。
あわてて振り返ろうとしたけれど、後ろから伸びてきた手に口を塞がれ、身動きを封じられてしまう。振り解いて逃げなければいけないとわかっていても、全身が強張ってしまって動けなかった。
靴底が地面を擦って、進もうとしていたのとは逆方向に引きずられる。口を塞がれたままでは悲鳴もあげられず、いやいやと首を振るしかできない。
ろくに抵抗できない身体はされるがまま、桜色の髪が暗闇に飲み込まれていって…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にミンティさんが現れました。
■ミンティ > 硬い地面の上で目が覚める。まぶたを開くと最初に青い空が見えて、まぶしくて視線を逸らした。薄暗い空き地の様子をぼんやりかすんだ視界におさめて、首を傾げる。
どうしてこんなところで眠っていたのか考えて、すぐに甦った記憶を拒もうと目をきつく閉じた。
こうしていても仕方がない。早く帰ってお店を開けないと。保護している野良犬もお腹をすかせているはず。
ゆっくり起き上がろうとすると全身あちこちが痛くて、かすれた悲鳴がこぼれた。
そろそろと瞼を開いて視線を動かす。開いたブラウスの下に見える肌に人の歯形のあとが見えて、吐き気がこみあげそうになった。
■ミンティ > 口の中が粘ついているように感じる。息をするだけで嫌なにおいが鼻から抜けていく。気持ち悪さに耐えようと口を押さえて、横向きに丸まった。
吐き気はすぐにおさまったけれど、それでも涙が込み上げてくる。眉間に皺をつくって、小さな身震いを繰り返す。気分が落ち着くのを待って、今度こそのろのろと起き上がる。
頭がぼーっとしていて、次になにをするべきか思い浮かばない。
小首を傾げながらまわりを見渡して、財布としても使っているポーチが目についた。お金は抜き取られていたけど、それ以外のものは残されたままで、ほっとした。
いつも持ち歩いている針と糸でボタンが飛んだブラウスを閉じようとする。ちゃんと縫い合わせていようとはしていないのに、手元がおぼつかないせいで時間がかかってしまう。
■ミンティ > 見た目は不恰好だけど、どうにかブラウスを閉じ終えた。余った糸を切ろうとしたけど手に力が入らなくて、針だけをポーチに戻す。
空を見上げる。時間は、そろそろお昼くらいになるか。お店を開けないと。また同じ考えを頭に浮かべ、立ち上がろうとした。両手をつきながら静かに動いたつもりだったけれど、足がふらついて、尻餅をついてしまう。
片方の靴がなくなっているのも、そこでようやく気がついた。
あたりを見回してみるけど、見つからない。
働きはじめた最初のお給金で買った靴。歩きやすくて、デザインも好みだった。お気に入りだったのにと残念に思う。
でも大きな怪我はさせられてなくてよかった。
瞳の力を抑える眼鏡も無事だったからよかった。
自分に言い聞かせるように考えているうちに、ぼろぼろと涙がこぼれてきて、両手で顔を覆う。
■ミンティ > ひとしきり声を押し殺して泣いて、目元をぐしぐしと擦る。
こんなところで泣いてたってどうしようもない。やらなければいけない仕事もあるんだから早く帰ろう。
自分に言い聞かせて立ち上がる。やっぱり足がふらついていたし、あちこちが痛いままだけど、歩けないほどではない。
ポーチを拾って、なんとか閉じただけの胸元を隠すように抱く。
靴をなくした片足が少し痛かったけど、ゆっくり歩いてお店を目指す。肌がべたついて気持ち悪いから、帰ったらすぐにお風呂に入ろうなんて、考えながら…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からミンティさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジードさんが現れました。
■ジード > 貧民地区の住人たちの塒が多くある区画の一つ。
その裏通りに店を構えている露店があった。
並べられているのは傷薬類のポーションや気付け薬、病薬の類で
普段男が取り扱っている如何わしい類のものは表に出されていない。
「はい、気を付けて帰んなよ。
…えーと、傷薬の減りが早いか。帰ったら少し作ったほうがいいな」
お世辞にも身なりが良いとは言えない子供に傷薬を手渡して
その後ろ姿を見やりながらぽつと呟く。
それなりに繁盛はしているものの、儲けの少ないものばかり取り扱っているので収益は左程でもない。
■ジード > 「喧嘩でもあったかな。どちらかというと傷薬の類の方がお金にはならんけど」
その分作るのに手間にもならないのは楽でいい。
頬杖を突きながら露店の内側から街並みを眺めると、
相変わらず人通りがないように見えてひょっこりと人が現れるのが散見される。
何とも不思議な光景だと妙に感心した様子を見せ。
「ま、そうでなきゃこんな入り組んだ場所には住めないか」
周りを見回せば自分の周りにも無数の路地が組み合ってるのがよく解る。
初見でくれば今でも迷いかねない。
■ジード > 「クスリの減りが早いか。…こんなもんだな」
これくらいにしておかないと後が大変そうだと考えながら
薬の材料を考えて少し目を細める。
根城にしている場所に貯蓄している材料を思い返し。
「よし、今度冒険者でも雇って素材を取ってきてもらうか」
誰か丁度いいつてが居たかと考えながら立ち上がって店を片付けて去っていく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジードさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2 墓地」にヒマリさんが現れました。
■ヒマリ > 鮮やかな髪色を隠す様にフードまで被った黒衣の少女が、珍しく治安の悪い地区を歩く。
小雨が降り、辺りは霧が掛かって視界を悪くしていた。
こんな夜だからこそ少女は護衛もつけず、馬車も遠くで待たせ、ここを訪れたのだ。
荒れた墓地。
誰かが管理している気配はないが、誰かしら訪問者がいるから墓地として成り立つ程度に保たれている。
フードから覗かせる目が辺りを見回すが、具体的な場所は分かる様には見えなかった。
―――母の埋められた場所は。
「…仕方ないか」
黒衣の内側から出した花束を、朽ちた木の傍に置く。
少女には墓標に見えたから。
少しこうべを垂らし、立ったまま目を閉じた。
父は立場が弱く、祖父に逆らえなかったのだという。
愛する女性をまともに弔う力さえなかったことには呆れるが、埋められた場所を記しておいてくれたことには感謝しよう。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2 墓地」にジャックさんが現れました。
■ジャック >
(貧民地区の墓地は、酷く荒れている。
草など伸び放題だし、墓標などもほとんどが朽ちていたり壊れていたり。
だからこそ、荒らすにはもってこいである。)
――む。
(そこへ先客を見つけた。
貧民地区には似つかわしくない身なりの少女。
彼女を横目に見ながら、ずしゃり、と重そうな音を立ててぬかるんだ地面へ棺桶を下す。
そうして、彼女に構わず地面を掘り返し始めた。)
■ヒマリ > 「……」
物音に目を開ける。
今宵、己以外にも死者に用のある者がいたらしい。
身丈のせいか、随分変わった男に見えたが異国で育った己とて、他人の外見はどうこう言えない。
(死体を埋めるのか)
墓地に棺桶を運び、地面を掘っているのだから、それ以外想像出来ない。
男はこちらを意に介す様子はなく、それはそうだろう、と少女も納得する。
死者を弔う場に第三者は邪魔なだけであろう、と。
それに加えてこちらは、この地区では身分を公にしたくない事情もある。
最後、母に心の中だけで挨拶をすると黒衣の少女はフードを目深に被ったまま、待たせている馬車を目指し歩く。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2 墓地」からヒマリさんが去りました。
■ジャック >
(ざくざくと地面を掘り進める。
素手で掘っているとは思えぬ速度で土を掘り返し、やがて腕を引き抜いた。
そこには白い棒状のもの――骨が握られていて。)
――ふむ。
まだ状態は良いか。
(それを棺桶に放り込み、更に掘る。
いつの間にか少女はいなくなっていたが、そちらを一瞥するのみで気にした様子もない。
ざくざく、カラン。
ざくざく、カラン。
リズム良く土を掘っては骨を棺桶へ。
そんなことを繰り返して。)