2018/04/01 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にリタさんが現れました。
リタ > ここは貧民区に存在するとあるバー、名前はマスカレード。カウンター席は6、テーブル席は1という、大層こぢんまりとした店だ。
料理の味はそこそこ、酒の質もそこそこ、お勧めはソーセージ、ザワークラウトと一般大衆向け。

昨日ゆっくりと眠れた店員、今日は元気一杯だった。しかし客は0。
酒を主だった売りにしていないこの店は、いつもこの時間は客が居ない。
だからと言って店を閉める訳にもいかず、店員は呆けた顔をしながらガラスの扉越しに見える雑踏を見つめる。

「…もっと良いお酒、仕入れようかな…でもツテがないんだな…」

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジェルヴェさんが現れました。
ジェルヴェ > (重たい体を引きずるようにして、辿り着いた先は一軒のバー。曖昧な記憶とは本当に禄でもない。途中曲がる道を一本間違えて、無駄な散策を挟んでしまった。
窓から漏れる明かりと扉の案内から、営業中であると確認。入店すれば押し開けたドアの音、もしくはそれを知らせるベルが店内へと響くだろう。
立ち寄った事のない場所だが、店内へ進む足取りに遠慮や気後れはない。知っている顔が中に居る、筈だから。)

リタ > チリン、と音を立てて開かれる扉にびくん、と体を反応させる店員。

「――いらっしゃ…と、ジェルヴェさん?」

向けられた営業スマイルが淡い微笑みに変わった。彼は先日ワインを分けてもらった、近くの同業者。商売敵。

「こんな時間に…今日はお店は終わりです?」

どうぞ、と掌でカウンターを指し示しながら、そこをダスターで軽く拭き、水を置く店員。
いつもは勝手に座る客に適当に水を出すだけ。普段よりちょっと高い待遇で彼を迎えた。

ジェルヴェ > 「…あぁ、いた。おはようリタちゃん」
(店主を探し店内へ目を配らせたが、聞いていた通り規模としては自分の所と然程変わりがないようだった。―客入りも今この一時だけを切り取れば、いい勝負に思える。
しかし空いているなら一層気兼ねがない。勧められるままカウンターまで足を運び、スツールを引き腰掛けた。挨拶もそこそこに、清潔なカウンターへ両腕を乗せる。
もし店が賑わっていたら、軽く顔だけ出して踵を返す気でいた。なにせ)
「いや開けっ放しで逃げてきた。目ェ覚ましたいから何か食わして」
(目的は集りに近い。店主一人で切り盛りしているらしい中、流石に忙しい頃合では気が引けた。問いへは笑いながら告げて、抽象的な注文を続ける。)

リタ > 「おはよう、の時間じゃないと思うけど…おはようございます。」

あれ、こんな挨拶をするということは、若しかして今起きたのかな?なんて考えながら、彼の目の前に手拭を差し出して。

「アハハ、何から逃げて来たんだか?」

そう言いながらフライパンを熱し始め、同時に塩コショウ、刻まれた野菜が入ったボウルなどを手の届く範囲に動かしていく。
そしてそれをそのままにしてカウンター奥にある保存庫を覗き込む。少し考えた後、彼に振り返り、鴨肉でいいです?と小首を傾げた。

ジェルヴェ > (訂正を入れつつも挨拶に付き合い習ってくれる彼女の声に、うん、と首肯を一つ。それからもう一度「おはよう」と繰り返し、出された布へ手を伸ばす。両手を拭い大雑把に畳んで傍らへ避け、片腕は肘を着いて頬杖の姿勢を取った。曲げた指の節に顎を乗せ、そのまま首を横へ捻って筋を伸ばす。鈍く、骨が軋んで鳴る音がした。)
「帳簿付け。…眠気?いや、うちまだ何人か飲んでんだけどさ、数字見てるとあいつらのガヤがいっそ子守唄みたいに…
あ、うん。肉いいね、任せる」
(何から、と聞かれれば、金勘定の仕事と、接客の仕事の両方だった。憚りもなくあっさりそう説明し、反対方向へもう一度首を捻る。ばきり、今度はもう少し大きな音がした。老いかもしれない。苦く苦く瞑目する。)

リタ > 返事を聞きながら彼を見れば、寝違えたのだろうかと思える行動をしていた。
この時間に起きて店は大丈夫なのだろうか、そんな事を考えながら、鴨肉を手に取り、カウンターへ戻っていく。
フライパンの熱を一度、濡れた布巾で取り去ると、鴨肉に下味を付け始める。

「お客さんです?放っておいて…良さそうな方達っぽいですね。
…変な格好で寝てたんじゃないんです?帳簿付けていたらいつの間にか机に突っ伏してたとか
…ちょっと休もうと思ってソファで仮眠を取ったらガッツリ寝てた、とか…」

彼が鳴らす骨の音にクスクスと笑いながら、鴨肉をフライパンへ置いた。

ジェルヴェ > 「寝てないよ。仕事中だもの。いい歳だもの」
(左右へ捻っていた頭を元通り指の上に戻し、ぱかりと開いた目を細めてきりりと表情を引き結ぶ。彼女の推測による間の抜けた行動が列挙されていくと澄ましたそれらしき顔付きで否定を重ねるが、職務を放棄し外をふらつきに出る体たらくは先程自らが言い放ったばかりである。
神妙に整えた表情を数秒で崩し眉を寄せて笑うと、鉄板の上で焼かれる肉と、油が弾ける音を聞きながら)
「固まってた。腕組んで伝票と二時間くらい見詰め合ってたら首肩バッキバキだよ」
(作業の間に気を失った訳ではないと、一応の弁解を入れておく。)

リタ > ワイン瓶を手にすると、お借りしたワインですアピールをした後、フライパンへと注ぐ。
フライパンを揺すりながら鴨肉を返した後、マッシュポテトとザワークラウトを和え始めた。

「アハハ、本当に寝てなかったんです?伝票整理、面倒ですもんね。繁盛するお店だったら尚更。」

和え終わったそれをプレートの上に乗せれば、今度はフライパン。溢れた肉汁を何度か鴨肉にかけ、後に火を止め、蓋をする。

「そういえばジェルヴェさんってお幾つなんです?見た感じ若そうに見えるんですけど…
ま、辛かったら後で肩揉みでもしてあげますよ。」

少々営業トークも混じっているのだが、実際の所そこまで高い年齢にも感じない。
20前半は少し無理だとしても、後半なら納得の行く、そんな風貌の彼。

ジェルヴェ > 「うん、マジでめんどくせぇ。もう月末だけ数字強いの雇おうかと思った。
勘定合わなくても怒んない優しい子希望で」
(作業が難航する理由は多分、伝票の多さにはない。同調してくれる彼女の言葉から内心でずさんに記された伝票の文字と、皺が寄ったり通し番号が所々欠落していたりする納品書を思い浮かべつつ、涼しい顔で浅く頷き同意を重ねていく。
漂う香りに自然と胃が刺激され、不思議と軽い空腹感が沸いてきた。顎を動かせば鈍った脳が活性化するかと食事を求めたが、今では食事に対しての期待が強い。)
「あれ、そう見える?でももうそれなりにおっさんだよ。リタちゃんくらいの女の子にマッサージ頼むなら金払わなきゃいけないくらい。
で幾ら?」
(社交辞令に食いついた素振りの軽口を混ぜ、そろそろ料理が配膳される頃合かと寛ぎに腕を乗せていた卓の前を空けておく。)

リタ > フライパンの蓋を取り、ちょっと味見と肉汁を匙で掬い、一舐め。
後に塩を軽く振りかけて肉を取り出す。それを一口大に切りそろえながら

「アハハ、それって勘定が合わないって言ってますよね?…んー、起きたばっかりの胃にこんな食事なんて重いでしょ?大丈夫かな。」

歯を見せながら意地悪っぽく笑いつつ、あくまで起きたばかりの体で話を進める店員。
ゆっくりと肉をプレートへ並べれば、トマトを切りそろえて添え、ここに置け、といわんばかりの彼の目の前へと運ぶ。
そこで彼の言葉を受けると、店員は結構大きな声で笑い始めた。

「ほんとジェルヴェさん、面白いなぁ。肩揉み位ならタダでいいですよ、ワインのお礼もあるし。――あ、味が薄かったらソレ使ってくださいね。」

カウンターに置いてある調味料に視線を流しながらフライパンを洗い、後片付けを始め。

ジェルヴェ > 「あー、寝てねぇって、信じない方向ですか。鋭い」
(寝起きだろうという推察をそのまま引き継ぐ愛嬌に肩を揺らし、喉元で軽い笑い声を弾ませる。今度は改めての否定ではなく肯定するように混ぜ返し、視線を彼女から運ばれた料理に伏せる。合わせてフォークとナイフを其々手へ携えると、頂きます、そう一言畏まるでもなく置いて、ソテーされた鴨肉へとナイフを通していく。)
「すげぇなこの店、メシ食いに来たら肩まで揉んでくれんの?通うわ俺」
(思わぬオプション付きを大袈裟な抑揚の台詞で感心しつつ、それでも肩凝りが解消するのなら喜ばしい見返りだった。小さな善行も捨てたものではない。一口大に切り分けた肉を口へと運び咀嚼して、喉に通した後にもう一度。「通うわ」と同じ句を繰り返し、続けて付け合せにフォークを伸ばしながら)
「いや丁度いいよ、美味い。あのワインも喜んでるよ、多分。うちに置いといたらきったねぇ酔っ払いがラッパ呑みしだすもん」

リタ > 「私みたいに若いなら、大丈夫ですけど…ジェルヴェさん、若くないみたいですから…
ちゃんと寝て下さいね?」

洗い物が全て終わり濡れた手を拭きながらの言葉。若くない、にちょっと抑揚を付けたのも意地悪の一つ。
そのまま食事に手を付ける彼を見て、美味しそうに食べてくれているのに一安心。

「…はいはい、今日だけ、ね?それとも毎日ワインを頂けるんです?…って汚い酔っ払いって…一応お客さんでしょう?」

この店にも酔っ払いは沢山いらっしゃり、しかもあまり素行が宜しくないとくる。
恐らく接客をした事のある人物でしか解らない、そんな愚痴を軽く言い放つ言葉に笑いを重ね、同調しつつ、
そのまま足を入り口へと運べば、閉店を告げるプレートをぶら下げる。

ジェルヴェ > (マッシュポテトの口当たりは滑らかで、酢漬けにされたキャベツの酸味と歯応えがアクセントとしての役目を担っている。―代金を貰う品とは、きっとこれくらいの完成度のものだ。断じて自分の店で出す適当な料理ではそれに及ばない。自店の客には無論払わせるが。掛け合う冗談の最中に言った言葉だったが、足繁くではなくともこの店への来店は一度きりにはならないだろうと思った。料理は美味く、店主も人が好い。彼女との会話も含め、楽しみにする客も恐らく少なくはないのだろう。だとしたら今夜の貸切状態は運が良かったのかもしれない。)
「安酒貢いで食事付きマッサージか。微妙に等価っぽくてアレだなー」
(食事の手は止まることなく、難なく胃へと収められていく。寝起きか否かはさておき、癖の強さをワインの香りが抑えた鴨肉と付け合せは程なくして完食に至った。店の戸口へ向かった彼女はまたすぐに戻ってくるであろうと、腰から浅く出入り口の方へと体を向かせて)
「ごちそーさま。閉店?これから仕込みですか」

リタ > 料理を食べる彼を見ながら扉を閉め、彼の言葉に頷くと、

「アハハ、それが目的で通われてもちょっと、ですけどね。でもま、ワインは本当に助かりました。
面白いジェルヴェさんに出会えたワケだし。」

カウンターへ戻ってくれば完食してくれた皿を下げ、軽くカウンターを拭き上げて。
そして彼の言葉通り、仕込みでもしようかと寸胴を用意する店員。
しかし肩揉みの事を思い出せばそれを止め、カウンターから出て彼の横に立ち。

「今日だけの特別サービス。お客さん、ここでする?あっちのソファでもいいですよ?」

手をわきわきしながらのその言葉は意地悪そうな顔から発せられていた。

ジェルヴェ > 「おー、これはあれだな。完全にひょうきんなおっさんだと認識されてんな」
(それでも畏まられるよりは良い。少なくとも互いに軽口を叩けるだけ打ち解けられたならと、面白いとの評価は作った自嘲のせせら笑い以上に褒め言葉として受けておいた。
今しがた使った皿を片付け、店の札はきっと先程閉店表記に返しておいたのだろう。あとはこちらの相手以外の仕事に取り掛かる彼女を暫く眺めて、食後の小休憩を挟んだら邪魔にならぬよう退散する。予定とも言えぬざっくりとした頃合を頭に描いてカウンターへ凭れていると不意に、どこかへと向かったはずの彼女の姿が視界の横の辺りで留まった。目的地は男の傍だったらしい。最初に顔だけ振り向かせ、なにやら宙を揉み込む手つきを見止めるとそのままゆっくりスツールごと回転させ、体を彼女の正面へ)
「すんません僕こういう店初めてで、ソファーだと緊張しちゃうんで」
(向き直るや否や、真顔で投げ出していた脚を閉じ、膝できちりと折りたたみ、拳を腿に乗せて改まる。ここでお願いします、そう続けて、もう半回転。彼女へと背を向けた頃には、無駄に強張らせた力を抜いて脚を組み再び寛いだ姿勢を取って)

リタ > 「ん、おっさんじゃなくてお兄さん、ですよ、今の所は。ひょうきんは確定かな?」

向けられた背にそっと両手を沿え、肩甲骨を捜す。そのままそれに沿って軽く力を入れながら肩へと両手を滑らせた。
張った肩を親指で押し、首の付け根まで上れば今度は背中へと降りていく。

「初めてでも心配しなくていいんですよ~優しくしますからね~、って言えばいいですか?――もちょっと強い方がいい?」

彼の言葉に笑いながらも、ちょっと芝居めいた言葉を吐いて。
その間にも上下に両手を動かし、背中を掌で撫でながら親指で筋を解していた。

ジェルヴェ > 「やべー、クズい下ネタ吐いたらおっさんに降格か。今の童貞発言ノーカンにしといて」
(お兄さん、その言葉に縋ってみるが、調子に乗るとあっけなく崩れ去る気がした。得てして、人の印象なぞは儚いものである。笑って体が振れれば施術の手が狂うやもしれないが、特に我慢はせず弾む声に乗せて更に軽口を続ける。彼女が戯言に付き合ってくれるから、つい悪乗りした返答が口から出そうになったのは内緒だ。
人肌の温かさが背を伝い、肩に乗る。親指の腹が張った筋肉へ宛がわれ、心地よい指圧が内へと響いた。手を動かしやすいよう頭を俯け下げながら、徐々に肩から圧迫の感触が背筋に沿い、下がっていくと)
「あ、その辺。イイ。でもそんな力入れなくて大丈夫だよ、そっちが疲れるでしょ」
(肩甲骨の少し下辺りに指圧が差し掛かり、ほんの少しの痛みを感じた辺りで声を掛ける。女性の指の腹、接地面は小さな点だが、ごり、と強張った筋が当たるのを自覚した。)
「ごめんなー、お兄さん無駄にゴツくて。ちょっとぐりぐりしてくれるだけでいーよ」

リタ > 「アハハ、頑張ってお兄さんを維持しないと。少々の下ネタ位全然対処できますけどね。そういう方々をお相手しておりますので。
――あ、ここ?はーい。」

彼が反応した箇所を意地悪くちょっとだけ強くぐり、と押し込んで。他に凝った所は無いか、広くその背中、肩、首筋を親指で押す。
男の肩を揉むのは何年ぶりだろうか。父の背中に教わった心地よい箇所を狙い、掌で摩りながら親指を動かしていく。

「無駄って事はないでしょ、うん。お店切り盛りして、一生懸命働いた上の疲れだったら。
――伝票整理、お疲れ様。」

肩へと伸びていた両手に少し体重をかけ、左右に指を広げながら回すように動かせば、筋をごりごりと擦る感触。
ここですね~と優しく諭す様に言いながら、彼の広い肩を揉み解していく。

ジェルヴェ > 「そー、だなぁ。リタちゃんスタイル良いから。俺も若いときに会ってたら、ケツ触らしてとか言ったと思うよ」
(圧を受けるたび切れる言葉を繋ぎ、数瞬前にやんわり孕んだ筈の危機を綺麗に無かった事にして冗談めかした。圧迫され、知らず内に堪っていた筋肉の緊張を少しずつ解されて、温もりが加わった所為もあるだろう。徐々に体が暖かくなってきた、ような気がする。ソファーに移動しなくて良かったと、今更選択肢の正解を悟った。心地よくて、多分寝る。もしくは眠いと言い出し居座ろうとして、困らせるか冷たくあしらわれるかされるのだ。だとしたら後者の方がいい、脱線しかけたそんな思考を、彼女の声が晴らしていく。)
「……、…もしくは口説いた。リタちゃんの男いいな、羨ましーわ」
(労いと、疲れを癒すマッサージ。その心遣いに心を動かされない男はそう多くないだろう。俯けていた顔を上げ、擡げて真上を向き後方の彼女の顔を仰ぎ見る。眉を寄せて笑いそう告げると、反らした首を戻してゆっくりと上体を前へ傾け、そのまま立ち上がろうとして)
「ありがとー、癒された。一瞬戻って頑張ろうって気になれたよ」

リタ > 「アハハ、気持ちは解りますけどね。私だって引き締まった男の人のお尻、素敵だなって思うし。
――ネコ被ってるだけですよ。私、悪いトコ一杯あるし。うん。」

少しでも彼が楽になってくれたのなら、肩を揉んだ甲斐がある。最後に一回だけ、優しくぎゅっと肩を揉み。
一瞬だけなんだ、と噴出したのを隠しつつ、立ち上がろうとしている彼の肩を両手でぽん、と叩く。

「私もそろそろ仕込みしないと…ジェルヴェお兄さんと話してると、時間経つの早いんだもん。
常連になるお客さんの気持ち、解るな。」

辛うじて、かどうかは解らないが少なくともまだ、お兄さんを維持している雰囲気だ。
しかし彼なら瞬時におじさんに変貌する可能性もある。そこが店員にとっても笑いのツボの様で。
立ち上がった彼を見ながら、自分の掌を軽くマッサージ。

「――あ~…ジェルヴェさんはどうします?…安酒でよかったらありますし、飲みます?
…お店、大丈夫ならそこで寝てても良いですよ、日が昇ったら起こしますから。」

ちら、と奥のソファーに視線をやる。
一人で仕込みをするのも結構寂しいもので、近くに人が居ればそれも紛れるかな、といった軽い提案。

ジェルヴェ > (不健康極まりないに違いない血の巡りが幾らかでも改善されて、温められた首周りを片手の掌で包む。そのまま左右に軽く捻ってみても、来たばかりの頃鳴らした鈍い音はなかった。それから肩を軽く回して自分でも体を解し、最後に別れを告げようとした所で紡ぐはずだった言葉を引っ込める。薄く開けた口の形は、最初に放つつもりでいたものとは違う形へ、掛けられる声によって変化する。)
「や、さすがに寝るのはどうだろう。寝顔見られたら恥ずかしい」
(朝方になれば髭面の小汚い顔になるし、終わりに付け足して首に当てていた片手を頬へ添えて眉を下げ、即興で創り上げた恥じらいの様相。そうは口にしながらも、つま先は店の出入り口とは違った方へ踵を返し、進んでいった。
勧められた、テーブル席のソファーシート。帳簿の整理頑張ろう、と言うやる気の復興は本当に一瞬だったようだ。或いは、酒を貰って、もう少し寛いだ後からでも遅くない。
言葉に甘え、自分にも甘え、ソファーへ腰を下ろし肘掛に寄り添う形で身を預ける。)
「ブランデーある?あ、一番やっすいのでいいよ。
そしてマジで寝たらごめん」

リタ > 「別に涎垂らして寝てても、すっごい鼾かいても全然気にしないけど…」

恥ずかしい、の彼の言葉にははにかんで。
そんな恥ずかしさをどこかに捨ててしまった、この店に来るお客様に聞かせてやりたい。そんな事を考えながら、
カウンターへと急ぎ足で戻り、カウンターの奥の戸棚を漁りブランデーを手に取った。
少しだけ嬉しそうな鼻歌を披露しながら、

「やっすいのしか無いので選択権、無いですよ。水割りにするお客さん、居るけど…どします?」

ブランデーグラスと共にテーブル席へと運ばれるそれ。
テーブルの上に瓶とグラスを置けば、彼の返答をじっと待つ。

ジェルヴェ > 「うん、そこまで常識緩んでないから、安心して。そうなる前に帰るから」
(寛大すぎか、と思わず意思表明の前に突っ込む台詞が先に漏れたが、実際本当に気にしないのだろうと、言い振りから察した。マッサージ中にソファで寝こけて冷ややかな一瞥を貰う、そんな想像はどの道実現しなかったようだ。
運ばれたブランデーのボトルを手に、キャップを開けてグラスへ注ぐ。酒というアイテムを貰えれば、それで準備は整った。片付け、仕込みに精を出す彼女を呑気に応援したり、世間話を放り込んで構われに行く準備が。)
「このままでいいよ、一人でやっとくんで。
ああ、一区切り付いたらおいで。今度は俺が手でも揉んであげよう」
(与えられた酒をゆっくり消費しているうちは、それから話し相手が居るうちは言うほど眠気に負ける危険もないだろう。静かな時間が続いて気が抜けると危ういかもしれないが。ともかくそれは彼女次第。

―――その日、貧民街に建つとある酒場の客は、営業中ふらりと出かけた店主が明け方近くになっても戻らなかったと、泥酔しながら語るのだった。)

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジェルヴェさんが去りました。
リタ > 「アハハ、それを聞いて安心。お客さんも居るんでしょ?いいなぁ自由なお店で。」

言葉と共にまたも足早にカウンター席へと戻る店員。
袋に入った莢付き大豆を持つと、ボウルを2つ用意してカウンター席、彼の正面へと足を運ぶ。
どうやら下ごしらえを彼の目の前でするつもりらしい。
これなら寝てもすぐ発見できる、と伝えながら、豆を剥き、さやと大豆を分けていく。
時折ちらちらとブランデーを嗜む姿を拝見させて貰いつつ、彼が眠りそうになったら大豆のひとつでも投げつけるだろうか。
もし本気で寝てしまっても、恥かしがっていた寝顔を拝見できる。
どちらにせよ今日の仕込みはあっというまに終わるだろう。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からリタさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にジードさんが現れました。
ジード > 貧民地区の中でも一層治安の悪い路地裏の片隅。
ちょうど平民地区と貧民地区とを繋ぐ裏道に当たる路地に怪しげな露天が構えられていた。
とはいっても場所が悪いのか訪れる人影もほとんどなく店の様相は閑古鳥。
繁盛していないのは一目瞭然。

「さて。普段なら訳アリが結構通りかかるんだがなあ。こっそり娼館に出かける連中、とか」

はて、と声を上げながら騒々しい繁華街のある方角に目を向ける。
そういった手合いを当て込んでの商売場所であるが本日は当てが外れたらしい。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」にナナカマドさんが現れました。
ナナカマド > そんな治安の悪い路地裏には似合わぬ軽やかな足取りの小柄な影が
スキップ踏みながらジードの露店を通りかかる。
ピンとたった長耳は森に住むエルフの民の証拠。
周囲の訝しげな視線もなんのその、気楽な様子で明るい表情を見せながら歩いている。

そして閑古鳥の鳴く露店の前に止まると、あら?という様子で店の前にかがみ込み
なにやらじっと物珍しそうに品々を眺め始める。
店の店主であるジードと目が合えば、にっこりと花咲くような笑顔を浮かべて
「こんにちは」と挨拶するだろう。

ジード > 客が来ないことにげんなりした表情を浮かべていたのだが
やがてやってきた人影に視線を向けると見知らぬ相手の姿。
その姿に少しだけ驚いた表情を浮かべるのも一瞬、すぐに笑顔で
愛想よく応対しながら一礼し。

「――おや?森の民とは珍しい。
 いらっしゃい、何かご入用かな?
 薬剤の類ならないものでも幾らか用立てられるよ」

種族的にその手の取り扱いにたけているものが多いと聞くだけに
ここが商売時とばかりにちゃっかり売り込み。

ナナカマド > 愛想よく応対されれば機嫌を良くしてさらににこにこと笑みを浮かべる。
無警戒な子供そのもののような様子。

「まぁ、エルフはここでは珍しいのですね!
 それで皆様ナナカマドに視線を向けていたのですね……なるほどなー。

 ここはお薬屋さんなのですか? 初めて見るお店でしたからつい立ち寄ってしまいました。
 どんなお薬を取り扱っていらっしゃいますか?」

相手の商売っ気にも気づくこと無くおっとりとした調子でのんきに尋ねる。
見た目通り世俗には疎そうなエルフだった。

ジード > 「人間か、あるいはミレー族辺りが多いからね」

そう言って笑っては見せるものの、後者が多いのは
決して良い事ばかりでもないのはこの街の住人ならば周知の事。
もっともそれがよい事ではないのも同時に知っているはずだが。

「そうだねえ、どんな薬でも作れるよ。傷薬から霊薬まで、
 魔法の触媒だって作れるし…ああ、後は夜のお供に使う薬とかね?」

ニヤッと少々下品と言われても仕方のない笑みを浮かべ、
セクハラじみた発言を付け加えて見せる。

ナナカマド > 「ええ、ここに歩いてくる途中、沢山人族やミレーとすれ違いました。
 人族の国ですから勿論多いのは知っていましたが、ミレーも多くいたのは驚きです」

貧民地区の事情には明るくないのか、ジードが含みをもたせながら言った言葉の意味も深く捉えず頷く。

「すごい、何でも作れるのですか?! わたくし、お薬を作るのは苦手ですから尊敬いたします!
 夜の、お供……? お夜食に使うようなお薬もあるのですか?」

セクハラじみた言葉の意味もいまいち理解していない様子で首を傾げる。
どうやら夜のお供を夜食だと勘違いしている様子だ。

ジード > 「あー。まあ、彼らが多いのは色々とね。
 君も気を付けると良いよ。この国は結構物騒だ」

困ったことにね、とあいまいに笑って言い返して見せる。
説明すること自体は難しくはないがそれを直に知る機会を奪うのも、また違うだろう。

「何せこの薬を作るというので数百年生きてきたからそれなりにはね。
 ――えーと、ほら。エッチなことをするときに使う薬ってのがあってね…?」

そのまま相手の純な返答に少しだけ困った仕草を見せた後に返答を返し。

ナナカマド > 「物騒……え、ええ!もちろんわかっております!
 わたくし、これでもちゃんと警戒できていますとも、でもご忠告ありがとうございます。
 ちゃんと頭上や足元にも十分気をつけて歩きます!」

えへん、と何故か胸をそらして相手の忠告に大きく頷いた。
本当にわかっているのかは怪しいところだが、どうやらナナカマドなりに最大限の警戒はできているようだ。

「まぁ、数百年……! わたくしよりずっと年上の方でした。
 でも貴方様のお耳は尖っていませんしお若く見えます……」

まじまじと真正面からジードを眺め、その風貌から全く年寄りとは思いもしない様子。
ついで教えられた薬の使い方にひゃ、と顔を赤くして

「えええええええっち?! そそそそそうなんですか!!
 ……えっちなことに使うお薬なんて、初めて聞きました……。
 例えば、そのう、どういう風に使うのものがあるのですか……?」

最後の方は声を小さく潜めてやましいことを尋ねるように聞く。
どうやら案外に俗っぽいというか耳年増というか、一応の興味はあるようで
露店に並べられた商品のあれこれもなにかいやらしい効能があるのだろうかとちらちら眺めている。

ジード > 「気を付けるべきは人に対して、なんだけどね。
 あんまり知らない人について行ったりしたらだめだよ?」

少しだけ困った様子で思わずそう言ってしまう。
相手に対して少々失礼かもしれないとは思いながらも
そういわせるだけの不安が同意も付きまとう子である。

「ああ、人間ではないからね。種族の詮索は無しだよ」

そういうものもいるという事で落ち着けてほしいと人差し指を口元にやり。

「そうだね。例えば単純に気持ちよくなるための薬。あるいは
 子供を作りやすくしたり作らないようにしたりする薬なんてのが一般的かな。
 そういう相手がいるなら一つ買っておくのもいいんじゃないかい?」

つらつらと説明しながらもどこかからかうような色が見え隠れする当たり人が悪い。

ナナカマド > 「は、はい。わかっております!
 知らない人について行ったりはして……いません? だ、大丈夫です。
 ご挨拶をしたからみんな知っている人です!」

今も知らない露天商に話しかけていたりする分、あまり頼りにならない言葉ではあるが
最低限子供のお使いのような約束事は守れているようだ。
と、話がジードの種族に及べば、それを知られたくない人もいるのだろうと悟り
真面目な顔でこくこくと頷いてそれきり何も聞かなかった。

つらつらと説明された薬の効能に目を白黒させながら耳の先まで顔を赤らめるが
一言一句とて聞き漏らさぬよう黙っていた。
視線が宙を見て、わずかな間に誰ぞを思い浮かべれば慌てて考えを振り払うように首をぶんぶんと横に振り

「そ、そうですね……わたくし、豊穣神にお仕えする身ですから
 子供が授からなくなるお薬はいけませんが……その、
 気持ちよくなるお薬や授かりやすくするお薬というのは……
 あ、愛を確かめ合うのに必要なら構わないと思います……」

こくりと息を呑んで小さな蚊の鳴くような声で

「気持ちよくなるお薬……おいくらですか……?」

と聞いてしまう辺りどうやら興味があるらしい。

ジード > 「言い換えよう、信用できる人間以外について行っちゃだめだよ」

凄まじく広い知ってる人の範疇に思わず即答で言い返す。
とはいえその範疇を決めるのもまた自身であることを考えると解らないが。
詮索はしないでほしいという願いを素直に受け入れてくれた相手に軽くうなずいて返し。

「ま、とりあえずそうだね。普通の媚薬の類はそう高くはないけど、
 こんなもんかな。あとは避妊薬はこっちで排卵用のはこっち」

言いながら次々と値段を提示していくが、行った順番に値段が上がっていく。
媚薬の部類は安いものならば傷薬と大差がないものの、文字通りそのあとの二つは倍々で値段が上がっていっていた。

ナナカマド > 「わ、わかりました! 信用できる人、ですね?」

即答で言い直されて言い含められればこれまた素直に大きく頷く。
信用の範疇はおそらくジードが考えるよりずっと敷居が低いが
ひとまずの安全をというのならできる決まりごとである。

出された薬の値段の範囲に指折り数えて計算をするも
どうやら硬貨の取扱は下手らしく、ごそごそと懐を探って取り出した革袋
それの口を開いてジードに中を見せる。
エルフにしては小金持ちと言えそうな額のゴルド金貨が詰まっていた。

「これで足りますでしょうか……? 他になにか必要なものってございますか?
 ナナカマドでお手伝いできることなら何でも致します」

困ったような笑みを見せてちろりと媚薬の瓶を見やる。

ジード > 「そう、信用できる人。まあ…結構そういうのは難しいと思うけどね」

信用できると思っていても裏切られるなどよくある話である。
だからこそこの辺りにはあまり似つかわしくない相手の様子には少々気をもむ様子を見せるのだが。
そのまま提示された額を見て、最初に提示した額だけ引き抜いて相手に薬瓶を手渡せば首を横に振り。

「金さえもらえれば文句はないさ。
 とりあえず飲んで使う薬だが、そこそこ効果が強いから気を付けて。
 まあ、相手に飲ませるっていうのなら別にそこまで気にしなくてもいいかもしれないけど」

ナナカマド > 「難しいのですか……? 今だってナナカマドは貴方様を信用して
 お薬を買いましたし、お金を渡しましたよ。
 信用は、小さいものでもそのようなものではないでしょうか」

きょとんとしたように目を丸くしてジードを見つめる。
今ならジードの言う事なら何の疑いもなく着いていきそうな気配すらした。
革袋の中から代金を徴収し、代わりに渡された薬瓶をとても大事そうに受け取る。

「ありがとうございます! 大事に使いますね!」

薬に大事も何も無いと思うがとても嬉しそうに微笑んで懐に革袋と薬瓶をしまっていく。
と、効果について説明されればまたぞろ顔を赤くして俯いてしまう。

「そ、そのう……飲んだら具体的にどうなるか、わかりますか?
 効果が強い……というのはどういうことでしょうか?」

ジード > 「商売のそれだけならまだしも、だまそうとする人間はあの手この手を使うからね。
 一期一会の信頼にしたって色々と種類があるさ」

一瞬で途切れるもの矢悪意が介在するものなど、特にこの界隈では様々だ。
尚の事大変だと笑って見せながらも相手の言葉には肩をすくめ。

「使うときに使ってくれればそれでいいよ。
 んー?そりゃ、飲んだら暫く収まらないくらいにビンビンになるよ」

真顔で言い放つのは何とも身も蓋もないセリフ。
相手がそのまま少年だと思ってるからこその発言でもあるが。

ナナカマド > 「騙す……」

シニカルな言葉で説明するジードに対してナナカマドも感じるところがあるようで
しばらく自分の中でじっくりと考えるように押し黙っていれば
無い知恵を絞るかのように考え込む。

「貴方様のおっしゃることは……ナナには難しいことですが
 今貴方様はナナカマドを騙そうとしなかった。
 今はそれで十分なのです。でも、気をつけますね。ご忠告ありがとうございます」

再び顔を上げるとにっこりと笑い、肩をすくめるジードとは対照的に明るい表情を見せる。

「??? ビンビン? 何がですか?」

それが男性器を指すものだとわからず、今日何度めかの不可思議な表情を見せて首をかしげる。
が、とりあえず元気いっぱいになるということは伝わったのか嬉しそうなのは間違いなく
再び頭を下げてお礼を言うと

「そろそろ、行きますね。どうもありがとうございました!
 また、近くに来たときは遊びに来ますね!」

などと言うとジードに向かって手をふりふり、再びのんびりした歩みで去っていった。

ジード > 「ああ、なるほど。そういう考え方をするなら、確かにそうだな」

違いないと笑って相手の言葉には頷いて見せながらも顎に手を当てる。
なるほど、頭が悪いわけではないらしいと見て取って目を細め。

「この街で生きていけばそのうち分る事だと思うけどね。
 勿論分かったうえでそれに染まる必要はどこにもないが、
 余計なおせっかいの部類だと思うけど――
 ああ、また何か必要になったら寄るといいよ。またごひいきに」

明るい様子にクックと喉を鳴らしながらも、こちらの隠語も解ってない様子。
それに使えばわかる、とだけ告げて頷いて見せて目を細め。

「それじゃまた、気をつけて」

それだけ言って手をひらひらと振って見送るのだった。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からナナカマドさんが去りました。
ジード > 「――さて、それじゃあ商売再開と行くか。
 ま、何が引っかかるかという話だけど」

珍しい来客に気をよくして笑いながら、
喉を鳴らしがてらやってくる人影を待つ。
その後いつまで男の影がそこにあったのかは誰も知らない話。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏」からジードさんが去りました。