2017/10/26 のログ
ご案内:「冒険者ギルド1F 酒場」にオルティニアさんが現れました。
オルティニア > 「はぁぁああっ!? ゴブリン退治ぃいい??」

語尾を思い切り跳ね上げた小生意気でトーンの高い声音が冒険者の酒場に響き渡った。
声音の主はミルク色の清肌とピンと尖った長い耳、そして、人間とは一線を画す類まれなる美貌を持ち合わせたエルフ族の少女である。
若葉色のチュニックの上に意匠の凝らされたミスリルプレートを着用し、腰には精緻な装飾も美しい一本の細剣。
その様は森の貴婦人と称されるエルフらしい勇壮なれど上品な装い。

「あんたねぇ、よく聞きなさい。あたしは見ての通りのエルフ様よ?弓と剣術に長じ、精霊魔法にも深く通じた有能な妖精族。そ・の・あ・た・し・に、よりにもよってゴブリンみたいな雑魚の退治を斡旋するとか、あんた目が腐ってんじゃないのぉ!? ふざっけんじゃないわよっ、こらぁーっ!」

しかし、カウンター越しの受付嬢にムギャオーと憤慨の声を上げるその体躯は、むくつけき大男が客層の大半を占める冒険者の酒場においては子供じみて小さく、力を入れて抱き寄せればそれだけで折れてしまいそうな程に細い腰は華奢その物。
はっきり言って頼りない。
にも関わらず、無骨なベルトで強引にサイズ調整したと思しきブレストプレートからはみ出す双乳のサイズと来たら、そこらの娼婦が裸足で逃げ出す魔性のボリュームなので、真っ昼間から飲んだくれる冒険者達のいやらしい視線がニヤニヤ笑いと共に突き刺さっていた。

ご案内:「冒険者ギルド1F 酒場」にセイン=ディバンさんが現れました。
セイン=ディバン > 「ちゃ~、っす。マスタ、いる?
 冒険者ギルド『エデン』のセイン=ディバン。依頼を受けて来ましたよ、っと」

喧騒渦巻く酒場兼冒険者ギルドに、一人の少女がとことこ、と現れる。
スイングドアを開けながらそう言い、のんびりとカウンターへと向かう少女。
その様子は、萎縮も緊張も無い。実に堂々としたもので。

「はろ、お嬢ちゃん。依頼書番号09823010。このギルドからエデンに回されたお仕事、引き受けに来たわ。
 詳細の説明と報酬内容の提示を。私の冒険者登録番号はS17AII25。よろしく」

カウンター前でなにやら騒いでいるエルフの女の子を、ずいっ、と軽く押しのけ、受付嬢ににこやかに話しかける少女。
困った顔をしていた受付嬢だが、すぐさま依頼書を提示する。

「ふ~ん? ゴブリン退治、ね。もうそんな季節か。
 ……ちょっとお嬢ちゃん? あんまり酒場でギャースカ声を上げるもんじゃないわよ?」

提示された依頼は、ずばりゴブリン退治。だが、少女はその依頼に不満一つ言わず、書類にサラサラと受領のサインをする。
そこで隣の少女に気がついたのか。
いきなりにそんな注意をするのであった。

オルティニア > 「―――ひゃぁうっ!?」

背後から近づいてくる脳天気な女の声音には気付いていたが、よもやエルフ様を押しのけて自分の用を済まそうとする不届き者とは思っておらず、結果、その不意打ちは見事に成功。

年相応に(といっても実年齢は100歳を越えているが)可愛らしい声音を上げて、エルフ娘はあっさりと押しのけられてたたらを踏んだ。
当然の如く持ち上がる柳眉が無礼な女冒険者の姿を睨む。
ふさふさの尻尾と尖った狐耳からして、人間以上に卑しい奴隷身分のミレー族とかいう獣人なのだろう。
小柄な己よりも更に小さなその体躯を、鮮やかな衣装に包んだその姿は、悔しいけれどエルフから見ても可愛らしい。
とはいえ、エルフ様を押しのけたその所業は許せる物ではない。
早速何か言ってやろうと足を踏み出した先手をとって、彼女から向けられた言葉に

「――――……っんな!?」

あからさまな子供扱いに絶句する。

「…………むぎぎぎぎぎぃぃいっ。」

華奢な体躯をぷるぷる震わせ、高貴なるエルフ耳までぴくぴくさせて、眉尻を逆立てた少女の美貌が赤く紅潮していく。

セイン=ディバン > 少女としては、『ちょっくらごめんよ』程度に、ひょいっ、とどかしたつもりだったのだけれども。
どうやら、よほどの不意打ちになったか。視界の端でエルフの女の子はよろけていた。

が、それを無視し、依頼を受けていれば、目の前の受付嬢から。
『その依頼を斡旋していたのが、そちらの方なのですが。
 パートナーとしていかがでしょうか?』
などと言われ。

「……うん? ……えぇ?
 いやいや、って言われてもねぇ」

改めてエルフ少女に視線を向ける。見た目はまだ若々しい。
顔立ちは、さすがエルフ。整っている、というか。可愛らしいと評するべきか。
気になるのは、随分と豊満なバストだ。これは、酒場の客どもがゲスい視線で見るのも仕方ないな、と思うが。
もっと気になったのはその装備の着こなし方や、状態で。

「いや、うん。ちょっと、ねぇ。いくら私でも、シロートのお守りはちょっと……。
 それに、この子この仕事嫌がってたんでしょ? だったら、本人の意思を尊重した方がいいんじゃあないの?」

少女はこう見えても経験豊富なベテラン冒険者。相手の装備から、経験の浅さをあっさりと見抜き。
これまた失礼極まりない言葉を口にする。
なんだか紅くなって、怒っている様子の相手に、さらにトドメの一言。

「それにほら。いくらゴブリン相手っていっても。
 ビビっちゃってるエルフちゃんなんて連れて行ったら可哀相だって。
 泣いちゃうかもしれないし?」

今。正に。少女は相手にとってかなり逆鱗的部分に。そりゃあもう気軽に踏み込んでしまった。

オルティニア > 「………………っ、…………っっ! ……~~~ッッッ!!!」

無礼な獣娘と受付嬢のやり取りに、エルフ耳がぴくぴく動く。
そして、そのあまりにも人を馬鹿にした言葉に、こめかみに浮いた細い血管もまたぴくぴくする。
そうして更に挑発的なセリフが彼女の口から飛び出したなら、海の様に広く深い器を持つエルフ様と言えど、到底許せる物ではなく

「―――けぅ……っ、げ、下賤で無礼な獣風情が、エルフ様に対してデカい口叩いた物ねっ! いいわ、あんたみたいなトイレの躾すら出来てなさそうな獣娘に世の道理というのを教えてあげるのも高貴な者の務めでしょうし、お仕置きしてあげるわっ。表に出なさいなっ!」

あまりの怒りに喋り出しの声音を跳ねさせつつも、エルフ娘は言うだけ言って純白ケープを翻し、足音も荒く店の外へと歩を向けた。
ぷりぷりと怒りの感情も顕なその背中は、いっそ長閑なまでに無防備だった。
いきなりの不意打ちという可能性を全くもって考慮していない、お人好しで隙だらけな所作である。
上下動の少ない歩み姿こそ、なるほど、それなりに鍛えられているのだろう。
とはいえ、冒険者としては彼女の見立てた通り駆け出しも良い所。
実際、冒険者登録もつい先程済ませたばかりの生まれたてルーキーなのだ。

セイン=ディバン > 「……? どうしたの、お嬢ちゃん。トイレ?」

自身の言葉、振る舞いが相手を刺激しているとは微塵も思っていない。
というか、本来少女は女性にはある程度優しいはずなのだが。
どうやら目の前のエルフの女の子に対しては、男性的視点よりも、冒険者としての先輩、という視点で見ているらしく。

「……??? え、なんでそんなに怒ってるの?
 ……あぁ、なるほど。自分がパートナーに相応しいかどうか。
 その実力を見せようってこと? いいわよ。じゃあ、相手してあげる」

激怒という言葉ですら足りないくらいの激怒。恐らく本来はもう少しエレガントだったりスマートだったりする振る舞いをしているのであろうエルフっ子。
だが、その激怒を招いた少女本人は、なんでそんなに怒っているのかが判らない。というか見事に勘違いしている。
そのまま、相手に付いて行き、とことこと外へと。周りの客どもは面白い見世物だ、とばかりにニヤニヤと笑い。
どっちが勝つかの賭けまで始めている始末。
少女はそんな喧騒を無視しつつも、少なくとも、実力を示そうとする気概はあるんだね、この新人は。うんうん、見所あるかも?
なんて呑気な思考。

オルティニア > 蹴飛ばすような勢いでスイングドアを押し開き、通りの中央、くるりと振り返って仁王立ち。
無駄に大きな乳房の下で細腕を組み、肩幅に足を開いた雄々しい姿。
ただし、ちんまい。

無論、酒場の中でくだを巻いていた冒険者連中は大喜びでついてくる。
可愛らしい獣娘と、小生意気な新入りエルフがキャットファイトを見せてくれるというのだから、手慣れた様子で胴元が立ち、賭けが始まるのも当然の事。
オッズは今のところ獣娘が大幅にリードしている。

「―――ッハ、逃げ出さなかった事は褒めてあげるわ。ただし、相手の実力も見抜けないんじゃ、あんた、すぐに死ぬわよ!」

周囲でヤジを飛ばす冒険者連中が一斉に押し黙り、お前が言うな、なんて突っ込みを視線に乗せてエルフに向ける。
そんな空気に気付きもせずに、鞘音も涼やかに銀剣引き抜き優雅に構え

「かかってらっしゃい。先手は譲ってあげるわ!」

言いつつ腰を落とす。
動きに合わせて豊乳が揺れる。
剣先を相手に向けて、空手は後方頭の上で緩くたたんだ刺突の構え。
獣娘に見る目があるなら、エルフ少女の周りにて渦巻くような精霊の流れが見て取れるだろう。

セイン=ディバン > 女の子に続いて出た少女は、通りの中央、距離を取って、ゆらり、と立つ。
首に手を当て、どこか気だるそうに。力抜き、リラックスしているような、あるいは退屈そうな立ち姿だ。

『張った張った!! 冒険者同士の真剣勝負だ!
 倍率は新人エルフ爆乳冒険者のオルティニアちゃんが60!!
 エデン所属、悪喰のセインが2.4だ!!』
『セインに1300!』『オルティニアちゃんに500だ!』『セイン死ね!!』

怒号にまで成長した賭けの声。少女は聞こえぬフリで、耳をほじっている。

「はいはい。そりゃどうも。その言葉、そっくり返すわよ。
 おじょーちゃん」

自信満々、気炎万丈、とばかりに吠える相手に、少女はあくびをしながら答える。
そのまま、剣を抜き、優雅な構えを取る相手を見れば。
ふむ。型はしっかりしてるじゃない、と。内心感心。

「あらそう? 優しいのね。じゃあまぁ。

 殺す気は無いけど。死ぬなよ? ルーキー」

先手を譲る。そう言った相手の声にニコニコと笑う少女。
次の瞬間。少女の声質が変わる。低い、まるで男のような声。
瞬間。少女が腰のホルスターからリボルバーを抜き。
雷光の如き速度での、抜き打ち三発。相手の周りに渦巻く、精霊の力の動き。
ソレを断ち切るように。そして威嚇射撃を兼ねてのクイックドロウ。
弾丸は、ほぼ同時に三発、地面に着弾する。そのまま相手に銃を突きつけたまま。

「来いよルーキー。実力、見せてみな?」

そこにいるのは少女ではなく。一介の冒険者の姿であった。

オルティニア > ふぅん、あの子、セインっていうんだ。
ていうか、結構名前知られてるし、妙に落ち着いてるし、もしかしたら意外とやるのかも……。
エルフ耳をピクつかせ、周囲の声音を聞くとは無しに聞いていたオルティニアだったが、不意にピクリと眉根を寄せて

「―――はぁっ!? あんた達、何言ってんのよっ、このあたしが、あんな獣娘に遅れを取るって言うの!? 良いから黙って見てなさいよっ、あんたらの手助けなんてなくっても、あたしの剣技でちょちょいっとやっつけてやるんだからっ!」

エメラルドの瞳が虚空を睨んで語気も荒く吠え立てた。
無論、そんなところに誰がいるでもなく―――いや、通りを挟んだ反対側、しどけない姿でバルコニーから様子を伺う娼婦達がいるけれど、どうも彼女たちに向けた言葉では無いらしい。
観戦する冒険者達は、おつむの可哀想な事になっているエルフなんだなぁ……とばかりに生暖かな視線を向けている。
そんな中、イカサマ師の如く閃いた彼女の手が、見慣れぬ武器を構えてこちらに向けた。
射撃武器……っ!?

「――――ひぁぁうッ!?」

と身構えた所で立て続けに轟く砲声と、ほぼ同時に爆ぜる土埃。
思わず可愛らしい悲鳴を上げてしまうも、腰を抜かすなんて事はなく、しかし思わず背後に飛んでしまった。
遠隔武器に対する明らかな悪手。

それなのに、経験豊かな先達と思しき女冒険者は仕留めに来るでもなく間を開けた。
周囲の冒険者達がエルフ娘の失態にゲラゲラと笑い声を上げ

「――――………こっのぉぉおぉおおおッッ!!」

途端にカッと血が上る。
思考の消えた身体が、教えられた通り、繰り返し鍛え上げられた通りに地を蹴り疾駆する。
的を絞らせぬグレープヴァイン。
ジグザグな軌道の最後は相手の視界から消える様に小躯を沈ませ、捻り上げる様な突き一閃。
狙いは銃を持った肩口である。

セイン=ディバン > そも、少女が本来の性別……男だったときの女癖の悪さとくれば。
まぁ同業者たちに怨まれまくるレベルだったわけで。
賭けの倍率こそセイン有利だが。客の心情としてはエルフの女の子の応援をしたくもなるわけで。

『いいぞー! その意気だー!』『俺が許す! 殺せ!』『がんばれオルティニアちゃーん!』『その胸揉ませてー!』

などと。一部応援ではないものの。声援は見事エルフの女の子に向けられていた。少女はといえば、やれやれ、という様子。

そうして、気合一閃叫んだ相手ではあったが。
少女の速射に、見事な悲鳴一つ。
しかし少女はその様子を見て侮りもしない。笑いもしない。

先ほどまでのあっけらかんとした様子などどこへやら。
そこに居るのは、冒険者として。目の前の相手を認め、真剣に対峙する戦士の表情で。

「黙れ。てめぇらの中に。一人でも、この子みたいに俺にケンカを売れるヤツがいるか?
 賭けの対象にするまでは許す。次に笑ったら。笑ったやつから鉛玉をくれてやるぞ」

湧き上がった笑い声に対し。少女はドスの効いた声を発する。
冥府の底から湧きあがるような恫喝。すぐさま、客の笑い声は消えうせるが。
同時に、目の前の敵は、少女に向かい疾駆する。

「は……やっ……」

侮っていたわけではないが。その速さは、少女の予想以上であった。
瞬間、視界から相手の姿が消える。下手な冒険者であったのなら、見事相手の狙い通り。突きにより肩を削がれ、武器を落としていたかもしれない。

「でも。……甘い!!」

そう。下手な冒険者なら、だ。少女にとってその刺突は、予想内の行動であった。
するり、と身体を半身にずらし。相手の伸びきった腕を掴む。

「ちょっと、教本通りすぎるな。でも、素質はある。
 ルーキーにしちゃあ、なかなかの才能だ。

 ……よい、っしょぉ!!」

素直に相手を褒める。少女にしては珍しいことだが。
相手の実力がしっかりとしているのなら、褒めることに躊躇はない。
そうして、少女は相手の腕をしっかりと保持すると。
そのまま、腕に力を込め、一気にその小柄な身体を持ち上げ、地面へと叩き付ける。
……遥か遠方、異国で言う所の、『セオイナゲ』という技であった。

オルティニア > 下卑た笑いを黙らせた少女の一声。
頭に血を上らせるでなく、ちゃんとその内容を聞いていたなら「やだ、かっこいい……」なんてきゅんとしていたかも知れない。
が、怒り狂った短気なエルフの頭の中はブッ刺してやる!なんて物騒な思考に塗りつぶされていたのでフラグが立つことはなかった。

とはいえ、どれほどに血が登っていようとも、殺す気は無い。
無礼極まる獣娘とは言え、こんな可愛らしい子を刺殺する趣味は無いのだ。
―――なんていうのは建前で、抜いたら殺すという当たり前の心構えさえ定まっていない半人前なのである。

良い師に恵まれたのか、もしくはエルフ族の長寿を活かした鍛錬の長さ故か、その刺突は理にかなった美しささえ持ち合わせた鮮やかな挙動。
剣先にブレはなく、動きに対して一直線に伸びた刀身は、ミスリルの鋭さも伴って鋼板さえ貫かんばかりの鋭さを帯びている。

しかし、当然の事ながら、当たらなければ意味は無いのだ。

風音鋭く突き出した銀閃に想定していた手応えは、無い。

「………っくぅうッ!!」

しなやかに伸び上がった体躯を戻す間も無く、刺突の勢いさえ利用されての投げ。
やばいと思った時には天地がぐるりとひっくり返り、剥き出しの土肌に華奢な背が叩きつけられようとしたその刹那――――。

――――爆発じみた空気の流れが、間欠泉の如く荒れ狂った。
響いていたであろう重い衝撃音はなく、代わりに剣鞘が地面に打ち当たる金属音だけが軽く響く。
いきなりの爆風に観戦していた冒険者の巨体がいくらかすっ転び、娼婦たちの薄い着衣がそれはもう派手にめくれ上がって高い悲鳴を上げさせた。

暴風はすぐに収まり、まん丸に見開かれた衆目の集まる場所に、大の字で秋の青空を見上げるエルフと、投げを打った姿勢を保つ獣娘の姿。

「――――ッ、はぁ……はぁ……はぁ……。」

呆然と獣娘を見上げるエルフの豊乳が、再開させた呼吸で大きく上下し始める。

セイン=ディバン > 少女とて、見世物になるのは気分も良くない。
ましてや冒険者なりたての新人を賭けの対象にし、笑うなどもってのほかだ。
と、真っ当なことを考えるようになったのはつい最近な訳だが。

ともかく。見た目と装備からこそ新人丸出しのニュービー冒険者、という雰囲気の相手ではあったが。
少なくとも、刺突に至るまでの動きは、なんとも見事な物。
少女としては、これは逸材だし、ここは少し痛めつけるだけにしよう、と思っていたのだが。

投げを決めるその直前。荒れ狂う暴風に、少女も思わず身を硬くした。

目の前。地に倒れてこそいるものの、ダメージは予想以上に無い相手。
少なくとも、骨やら腰やらはイってはいないな、と。その呼吸の様子から見て判断。
少女は荒れ狂う風に乱された前髪を掻き上げ、ニカッ、と笑って相手へと手を伸ばした。

「改めまして。冒険者、セイン=ディバンよ。
 歓迎するわ、オルティニア、ちゃん? だっけ?
 ようこそ、冒険者の世界へ」

言葉も。声も元通り。見た目相応の、若々しい女性の声で。

「よければ、話をしない?
 そこの酒場、二階は宿になってるし。私、アナタに興味が湧いたわ。
 その素質と才能。埋もれさせるには勿体無いわ。どう?」

ニコニコと笑いながら、手を差し伸べ続ける少女。
そこには、嫌味など一欠けらもなかった。

オルティニア > ドワッと上がる野太い歓声。
大穴エルフに賭けた男たちの悲鳴も混ざった大騒ぎの中、見開かれていたエルフ少女のエメラルドが数度瞬いてから、屈託のない笑顔と共に手を差し出す獣娘と視線を絡めた。

むっとした顔が妖精族の整った頬を膨らませる。
気まずそうに視線を逸し、尖らせた唇をぴよぴよさせて

「きょ……今日は朝からお腹が痛かったのよ……。」

負け惜しみにしてももう少し何かあるだろうといった感じの言葉を漏らしつつ、彼女の手を取り立ち上がる。
幸い、その恥ずかしい言い訳は喧騒にかき消され、至近の獣娘にしか聞こえなかっただろうけど。
ぱんぱんと着衣に付いた土埃を乱雑に、しかし、優雅な所作で叩いて落とし

「まぁ……あんたも中々やるみたいだし……いいわ。特別にエルフ様が相手してあげる。」

どこまでも小生意気な言葉遣いで彼女の誘いに応えるエルフ。
しかし、尖らせたままの唇端はぴくぴくしていて、彼女の笑顔につられて笑みを浮かべるのを我慢しているのが丸わかり。

セイン=ディバン > どうやら、さっきの暴風は勝負結果に影響を与えなかった、と判断されたらしい。
飛び交う悲鳴、怒号、札に金貨。それらを実に退屈そうに横目で見た後、ちらり、とエルフ少女を見れば。なんか、すごく可愛らしい負け惜しみを口にしていた。

「ふふ、だったら、ケンカを売るのは体調が万全な時にしなさいな」

しかし、それの言葉を決してバカにはしない。負け惜しみを言う、という負けん気の強さは。冒険者にとってはある種の資本だからだ。
手を握られ、立ち上がる相手。その仕草は、やはり優雅だ。

「うん。ありがとう。じゃあ早速行きましょうか」

生意気で高飛車な言葉も聞き慣れたか。あるいは、この子のチャームポイントである、と判断したのか。
少女は、上から目線な相手の言葉をニコニコと笑い受け流し。
酒場の二階の宿へと向かう。受付嬢にポイッ、と代金を投げて渡し、部屋へと入れば。

「は、っふー。疲れたー!!
 いや、実際アナタに遠距離戦を選ばれてたら、こんなに楽勝とはいかなかったかもねー」

いきなりベッドに倒れこみ、そう吐き出す少女。もしも。
もしも、エルフ少女の視線が運悪く少女に向いていたのならば。
ショートパンツの隙間から、下着を着用していないこと。
そして、少女が両性具有、いわゆるふたなりであることがバレてしまうかもしれない。

オルティニア > 負け惜しみに対する理論的な切り返しに、エルフ娘はぷいっと顔を背けて聞こえないフリ。
気恥ずかしさから溢れた性格の悪そうな物言いに対しても、「ありがとう」なんて言葉を返され、エルフ娘は困惑する。
長耳の先がむずむずする。
出会った直後の無礼な態度とはまるで異なるその対応は、多少なりともこちらを認めたが故の物なのだろう。
それが余計に擽ったくて居心地が悪い。

「―――……にしてもあんた、色々と随分手慣れてそうよね。冒険者になって長いのかしら? あんた、そんなに歳取ってなさそうに見えるんだけど。」

二階へと向かう途中、抱いた疑問をぶつけつつ、傍らを歩く少女の姿を改めて盗み見る。
身長は自分と同じくらい。腕やら脚やらの太さも似たような物だし、そこにぎちぎちの筋肉が詰まっているのかと言えばそうでもなさそう。
触れば心地よい柔らかさを味わうことが出来るだろう見てくれである。

胸の大きさはこちらの圧勝だが、そんな所で勝ちたくはない。
むしろエルフとしては大敗しておきたかったのだが、まぁ、それは言っても詮無い所なので黙っておく。

そうこうするうち、部屋に着く。
無骨なスツールに腰掛けようとして飛び出たささくれに気付き眉根を寄せる。
幸いにして藁のベッドはシーツを変えたばかりらしい。
室内で最も清潔そうなその場所、寝転んだ彼女の傍らに腰掛けようと近づいた所で、ちらりと視線に入ったモノにぎょっと目を丸くした。
切れ長の視線で思わずガン見。
ショートパンツのかすかな隙間の奥、下着の色などなくて肌の色がそのまま続いていることにもドキリとしたが、本来同性の身体にあるはずのない代物の一端がチラリと見えているのだ。
あまりの衝撃に、気軽な調子で紡がれた声音に応える事も忘れて押し黙る。

セイン=ディバン > 段々と、このエルフの女の子の扱いも判ってきたのか。
少女は連れ立って歩く中、ニコニコと笑い続けている。
恐らくは……こういう喋り方が、普通の子なのだろう、と。
そう思い、相手の言葉をいい塩梅に脳内で翻訳処理をしているわけである。

「あぁ、そうね。そこも説明しないと。
 私、実は本当は30過ぎのオッサン。で、呪われてこの姿。
 だから、獣娘ってアナタは言ってたけど、実は人間なの。
 冒険者歴は……20年まではいかないくらいね」

階段を上がりつつ、しれっ、と自身の秘密を打ち明ける。
信じる信じないは相手次第だが、当然ウソは言っていない。
ただ、表情はどこか悪戯っぽく笑うもので。

そうして部屋に入り、ベッドに倒れこみ、ごろごろとする。
なぜか近づいてきた相手が立ち止まってしまっているが、少女、それをまったく意に介さず。

「オルティニアちゃん、エルフだっての差し置いても、精霊に愛されてるでしょ。
 あの最初の射撃のとき、何もしてないのに力が生まれてたからピンと来ちゃった。
 アナタが挑発に乗って接近してくれたからよかったけど、呪文メインに戦われてたら……って」

相手の視線に気付かぬまま、言葉を続ける少女だったが。流石に相手の反応がないのを変に思い、ちらと伺えば。
なにやらガン見されていて。そこで視線の先を辿っていけば。

「……あぁ、そうそう。この姿、ってのはね?
 うん。いわゆるフタナリさんにされちゃった、ってこと。

 ……興味、ある?」

その視線の意味するところに気付き。少女は小悪魔的に笑いつつ、自身の服を少しずつはだけていく。
相手が止めなければ、このままここでストリップするつもりだろう。

オルティニア > 「―――へぇ、なるほどね。30すぎのおっさ……んん?」

あまりに自然な口調。
昨日食ったシチューが糞不味くてさぁ、みたいなノリの告白に、エルフ娘は双眸を瞬かせる。
改めて彼女を見るが、どう見ても成人前後の娘の体躯。
直前の言葉のインパクトが凄すぎて、「呪われて」という部分にまで思考が及んでいない。

部屋についた頃には、多分何か聞き間違えたのか、人間の言葉の翻訳を間違ったのだろうという常識的な解釈に落ち着いた。
だって、意味がわからないし。

それなのに、寝転ぶ彼女。
パンツの脇から覗くモノは、腕輪を外した際に己の下腹で膨れ上がる忌々しいアレが、繰り返しの射精を終えてへろりと垂れ下がった状態にも似て―――というか、まさにソレそのものにしか見えない。

「ふ、ふた……、は? ……え、ぇと………あたし、今日は疲れてるのかも知れな………て、ちょ、ちょっとぉ!? いきなり何してんのっ!? わ、わわわわわたしそんな趣味とかないんだけどっ!?」

あまりの展開に狼狽する。
そんな趣味は無いとかいいつつ、真っ赤になって逸した顔は、興味津々の態で彼女の着替えをチラチラ確認。
豊乳の奥は鼓動を早め、妙な焦燥感に逃げ出したくなる。
それなのに、ふたなり化の呪い以降、同性の身体に惹かれてやまぬエルフ娘の細脚は、ドライアドの蔦に絡め取られたかの如くその場に釘付け。

セイン=ディバン > 「あっは、いいリアクション。最近そういう反応なかったから。
 逆に新鮮だわぁ」

いきなり獣耳少女が、『実は私30のオッサンです』とか言えば。
まぁこういう反応が普通である。
そういう意味では、このエルフの少女は非常にまともであり、常識的であると言えた。

部屋に着き、ごろごろとしながら相手の能力を評していた少女。
しかし、相手は話を聞いているのかいないのか、随分と、少女の体の一部を観察していた。

当然、それに気付いた少女としては、悪巧み、ではないが。
色々と考えも芽生えようというもので。

「あら、そう? 趣味はないけど興味はある、ってことかしら。
 じろじろと見てたように見えたけど?
 んふ、フタナリが珍しいのか、それともチンポに興味があるのかしら~、な~んて♪」

慌てふためく相手を余所目に、少女はするすると服を脱いでいく。
プールポワンを脱げば、慎ましい胸が露になる。
見られて興奮していたのか。その先端の桃色の突起は、すでに硬く。
ショートパンツを脱げば、当然女性器、そして男性器もすぐに姿を現してしまう。
だが、その間も逃げ出さない相手に、少女はまるで淫魔の如き淫靡な笑みを浮かべ、視線を投げかける。

相手に、こういったことへの興味がなければ、からかってました、で済ませればいい。
そうでないなら……ぺろり、と。つまみ食いするのも悪くない。そんな、どっちにころんでもいい、という計算。
もしも少女が見られ続けたのならば、女性器からは蜜が溢れ始め。
男性器は、一気にそのサイズを大きくし……バケモノじみたサイズに勃起することだろう。