2017/10/24 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にホウセンさんが現れました。
■ホウセン > ふらりと外を出歩くことは、この小さな存在にとって日課のようなものだ。
流石に荒天時には頻度が落ちるものの、絶無ではないというのが道楽者の道楽者たる証。
今宵はといえば、天には三日月が浮かんだ穏やかな夜で、町並みに切り取られた小さな空を見上げる。
ほぅ…と、零したのは、感嘆のそれではなく、冷え冷えとした夜気を相手に、まだ息が白くならぬかと試したもの。
「ふむ、冬の到来はまだ先のようじゃな。
燗酒を一杯引っ掛ける愉悦は、もう暫くお預けかのぅ。」
春夏秋冬を愛でる妖仙は、その折々に愉しみを見出しているらしい。
尤も、同程度に、暑いだの寒いだのと不平のオンパレードを並び立てることも忘れないが。
貧民街の道端で足を止め、天を見上げた視線を地上へ引き戻す。
酒場に入ろうか、娼館を見繕おうか。
娯楽の為という大まかな方向性だけを定めた、目的地のない闊歩を再開する。
■ホウセン > 貧民街といえども繁華街に近しいエリアである為、自分以外の通行人を見かけるのは難しいことではない。
擦れ違う者達の装いが、布一枚二枚増えていることからも、季節の移ろいは察せようというものだ。
「然し、これでは娘っ子の軽装を見て、眼福等とほくそえむ機会は減ってしまおうか。」
見目麗しい子供の風体をしている癖に、頭の中は助兵衛親父のそれに似る。
重大な問題だとでもいうように、腕組みをしながら眉間に皺一本。
経済的に困窮している者が多いこの地区でも、季節に合わせて服装を変えられる者が多いのは立地のせい。
娼館が並ぶ区画が、即ち”外貨”が落ちる場所が至近にあるせいだ。
単純に羽振りが良い者、外からの”客”の気を引く為に着飾っている者、もしくは外からの客自身。
そういった者なら、過ごし易い装束に衣替えも可能だろう。
■ホウセン > 翻って食うや食わずといった輩では、食い繋ぐことを第一としなければならず、寒空の下でも質素な物しか身に纏えまい。
貧民街といっても、その上澄みに触れているだけ。
それを理解しつつも、妙な義侠心に駆られるには、この妖仙は老成し過ぎている。
「とはいえ、面白そうな誰彼かがおるのなら…少しばかり贔屓してやるのも吝かではありゃせんが。」
ほとほと気紛れなのである。
ふと夜道に漂う、肉の焼ける匂い。
恐らくは、交易先の海洋国から仕入れたであろう香辛料がたっぷりと塗されていることが容易に想像できる、エキゾチックな香り。
きゅぅ、と腹の虫が鳴いた。
夕餉は確りと摂っているが、宵っ張りが過ぎて夜食を欲する頃合に差し掛かっている。
そこに、胃袋を直撃するスパイスの香気を持ってこられたのだ。
鼻をヒクつかせて、匂いの元を辿るべくフラフラと歩みを進める。
■ホウセン > 比較的鋭敏な部類に入るも、この人外の嗅覚は視覚程突出した能力を備えている訳ではない。
故に、進行方向はあちらに寄ったりこちらに寄ったり。
風のない日であったことが幸いで、多少の時間はかかるものの、着実に目的地へとにじり寄る。
而して行き着いたのは、一軒の酒場。
まだ知らぬ店だった。
とはいえ、王都には数えるのが困難な程に飲食店があるものだから、この妖仙をして初見の店というのも枚挙に暇がない。
むふーっと、目的地を探り当てたことに、ひとまず満足気な顔を晒し、最後の一歩。
「御免。…肉!そしてそれに合う酒!」
押し戸をくぐって、開口一番がこれだ。
夜間であること、治安が宜しくない貧民街であること、どう見ても子供でしかないこと。
その上、異国出身者の風体をしており、物珍しい服に袖を通していること、加えてその衣服が上等なしつらえであること。
もう何が違和感の根源か分からぬ程度に場違い感を垂れ流しにしている客は、それでも無駄に堂々とした態度で、手近なテーブル席へと。
子供用の椅子なんて気の利いたものは望むべくもなく、体格に比べて高めの椅子へ、ぴょいっと跳ねるように腰掛ける。