2017/09/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にホルンさんが現れました。
■ホルン > 背負籠に様々な包みを乗せた少女が家の戸を叩いて巡っている。
時には返事も待たず家に入り、荷物を少し減らしてすぐに出てくる。
そうして包みが粗方なくなると、足早に駆け出す。
すぐに次の予定も待っているのだ。
「ふぅ……、お昼、間に合った……」
薬屋の粗末な看板を掲げた民家の前までくるとほっと一息。
時刻の頃は正午前。
午後からの予定に滑り込みといったところか。
本気で走ればもっと速度も出るのだが、この見た目で不自然ではない程度で走るというのは体力よりも精神力を使う。
家に入ると荷物を整理し、午後からの予定である店番の準備を始める。
「まあ、そんなに来ないと思いますけど……」
店内に陳列してある薬はどれもそう高価でも珍しくもない品物。
場所が場所だけに高価な薬を置いても仕方がないのだ。
午前中に済ませた訪問で足りている事が殆どなので、この辺りの住民でわざわざ訪ねてくる客というのは少ない。
狭い店内、申し訳程度に作ったカウンターに座ると客を待ちながら軽い食事を摂る。
「そろそろ、材料も補充しないと」
明日辺りは材料の採取と買い出しが必要かなと考えながら、とりあえず食事に手を付ける。
パン数切れといった慎ましい食事を終えると、そのまま座りながら本を読み始める。
内容は身分違いの恋を描いた恋愛小説。
ありふれた内容ともいえるが、長らくこういった娯楽とは距離をおいていたホルンには十分刺激的だった。
頬を赤らめドキドキしながらページを捲っていく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にマノとロノさんが現れました。
■マノとロノ > キィ……と静かに薬屋の戸を開けて、2つの小さな人影が入ってくる。
ボサボサの銀髪を長めに伸ばし、裾の擦り切れた簡素な貫頭衣で股下までを覆った、少年2人。
その姿はシルエットだけを見れば、まるで鏡で映したように瓜二つ。双子めいた2人は、手に手を握って歩み入る。
装いのみすぼらしさは貧民街に相応しいそれだが、他方、服は擦り切れていても汚れはあまり見られず、髪もつややかだ。
「………………………」
カウンターの向こうにいる店主を見つけると、そちらに4つの瞳を向ける。2つは赤、2つは青、人工的なまでに色鮮やか。
そして無言のままぺこりと軽く頭を下げると、そのままくるりと向き直り、陳列棚へと視線を移す。
並べてある幾つもの薬瓶を1つ1つ、2人そろって眺めて回っているようだ。頭と頭をぴたりとくっつけ、棚に沿ってカニ歩き。
「……薬品、いっぱい。ロノ、知ってるクスリ、ある?」
唐突に、赤目を持っていた方の少年が言葉を発する。見た目に相応しい、性徴の感じられない高い声だ。
ロノと呼ばれたもう片方の少年は、それに答える素振りを見せない。
まったく応答のないまま、二人はまた別の瓶へと視線を移す。呼びかけなくば、すべての瓶を見終えるまで、店主の元には来なさそう。
■ホルン > 「あっ、い、いらっしゃいませ」
夢中で読み耽っている間に、珍しく来客が。
奇妙な雰囲気の少年二人だ。
この辺りでは見た覚えがない。
とりあえずどちらも裕福そうには見えないが、薬を買うお金はあるのだろうか。
「あの何か、お探しでしたらご案内します」
カウンターから腰を下ろし、少年達に近づきながら声をかける。
といっても現在大した薬は置いていない。
痛み止め、解熱剤、炎症止め、消毒といったものが殆どだ。
症状や用途が分かればそれらも細かく使い分ける事も可能だが、そもそもそれほど高価なものでもなく薬効の方もそれなりとなっている。
■マノとロノ > 「ん……………」
背後から店主に呼びかけられれば、双子は薬瓶の棚から顔を離し、そちらの方を振り向く。
といっても手を繋いだままなので、握りあった手を軸にしてテテテッと円を描くように小刻みな歩み。なんとも妙な仕草だ。
そして、先程と同じように赤と青の瞳をじっと少女の方へ向ける。青目の少年の方はどこか虚ろで眠たげな瞼だ。
「んー、探してるもの。……なんかあったっけ、ロノ」
赤目の方の少年はくりんと丸く目を開いて少女をまっすぐ見つめている……相方に問いかける間も。
青目のほうに比べればまだ会話が成り立ちそうだが、それでも喋り方はどこかボケッとした印象を抱かせるだろう。
そして、棚を見分しているときと同様、青目の少年は一切の反応を見せない。
「……ないね。うん。お薬を探してるわけじゃないよ。ただ、並んでるお薬を見てただけ」
なんとも堂々とした冷やかし宣言を、赤目の少年は悪気もなく繰り出す。
「ただ、マノとロノが生まれた部屋には、お薬……じゃなくて、その素材がいっぱい置いてある。
僕たちには使い方がわからないからいままで触らなかったけれど……ここに持ってきたら、役に立つかな?」
続いて、ちょっと意味深な発言。抑揚なく、感情に乏しい口調で問いかける。
■ホルン > どういう事情かは分からないが少年の片方、ロノと呼ばれた方は直接話しをしないらしい。
マノと名乗る方も明らかに尋常ではないのだが、一応はお客様だし奇妙な人物の相手は初めてではない。
気にはなるが表立って詮索はしないで話しを聞き。
「お薬の、素材ですか?確かにあれば役に立ちますけれど……」
生まれた部屋とか薬の素材がいっぱい置いてあるとか、悪い意味でも非常に気になる言葉が飛び出してくる。
この提案がどういうつもりなのかもよく分からない。
しかし警戒すると同時に好奇心も湧いてくる。
「あんまり珍しい材料ですと、私も買い取れるか分かりませんが……。何が、あるのか分かりますか?」
一体どういうつもりで何を取り扱うのか、軽く探りを入れてみる事にした。
■マノとロノ > 「何があったっけ、あの部屋……。ロノ、覚えてる?」
赤目のマノは、何か思い出そうとする時は毎回ロノを頼っているようだ。相方の方は向かずに、また問いかける。
問いかけられた青目のロノは押し黙ったままなのも、先程からと同じパターン。
……しかし今度は、かくん、とロノの首が横に傾く。表情はボケッとした仏頂面のままで、なんとも滑稽。
そして、先程までよりやや長い間を置いて、ロノの首が真っ直ぐに戻ると同時に、マノが口をきく。
「………ロノが1つだけ思い出した。たしか、『黒マンドラゴラのへその緒』ってのが何個かあった。
すごい貴重な素材だって書いてあった……らしい」
頭の底からひねり出すようにゆっくりとした口調で、素材の名前を伝える。
『黒マンドラゴラのへその緒』は知る人ぞ知る素材であり、ホルンもおそらくは知っているかもしれない。
黒マンドラゴラはマンドラゴラの中でも、魔族の国の奥地にしか生えてないとされる種。
さらに、マンドラゴラは極稀に『へその緒』と称される副根を帯びることがあり、妙薬として珍重される。
……早い話、人間の世界ではとんでもなく高価な素材だ。
極めて強い生命力を内包しており、死者を蘇らせた逸話もあるとかないとか。
ごく少量でも強い強壮剤や精力剤としての力を持つ。
また、表向きは逸失したとされているが、ホムンクルスの材料としても優秀だったという伝承もあったりなかったり……。
「ほかにも色々あったから、今度帰ったときに調べて来ようと思うけれど……。
買い取ってくれなくても、この店で役立ててくれるなら、僕たち、そんなにお金はいらないよ」
なおもボケッとした顔のまま、マノは言う。
■ホルン > 「な、何個かですか……」
逸話は聞いた覚えがあるが、とてもじゃないが町の薬屋さんレベルが扱う代物ではない。
それが複数置かれた部屋というのは果たして何の目的で作られた場所なのか。
この二人、何らかの被験体だろうか。
尋常ではない二人の様子も相まって好奇心がどんどん湧き上がってきてしまった。
「あ、あの、とりあえずもう少し詳しくお話しを聞かせてもらっても……。とりあえず、お店の奥に部屋がありますので、そこで」
詳しい話しを聞きたいというのも本心ではある。
町の薬屋さんレベルでは手が余る素材も、裏の仕事では役に立つかもしれない。
それらの事を置いてもこの二人が何なのか純粋に興味がある。
この誘いに二人が乗るのなら、店の奥にある寝室兼アトリエへと招くだろう。
■マノとロノ > 「詳しく……? もっと詳しく?
う、うーん、ロノも名前と見た目くらいしか覚えてないから、これ以上教えられるかわかんないけど」
興奮の色を見せる薬屋の店主の姿に、さすがのマノもちょっぴりだが動揺を見せる。
いま心配することは、大きな期待を抱かせておいていざ実際の素材を見せたときにがっかりされるとか、そんな未来くらい。
「……うん、奥、行く。長い立ち話は疲れるからね。
あ、それに……図鑑とかあれば、それを見てロノがまた何か思い出すかも?」
店の奥の私室へと誘う提案には、躊躇なく応じるマノ。貧民街暮らしにしてはかなり無警戒だ。
ロノはやはり特段の反応を示さないが、互いに手を繋いでホルンの後についていく歩調は完全にシンクロしている。
私室に招かれてからも、二人はキョロキョロとあちこちに視線を流し、興味深げに観察する仕草を見せる。
他人のプライベート空間に入るのは久々。それが異性の部屋だとなおさら興味深い。調度品とか、匂いとか。
やはりふたりとも相変わらずの仏頂面だけど、鼻息はちょっと荒い。
■ホルン > 二人を寝室に招きながら、看板を閉店に変えたり鍵をかけながら人払いと防音の結界を張ったりと邪魔が入らないように準備をする。
そのついでに三人分のお茶を淹れると先に寝室へ入った二人の後に続く。
「ど、どうぞ。薬草茶ですけど、香りがいいので、温かい内に……」
手狭な寝室、二人にはベッドに座ってもらう事になる。
ホルン本人は作業台の前の椅子に腰掛け。
「え、えっと、図鑑ですよね。準備しておくので、その間お茶をどうぞ」
そう言うと自分の分のお茶は作業台に置いて、棚の中からいくつか本を引き抜く。
その中から、ホルンはもう殆ど内容を暗記してしまった、基本的な薬草等について記された図鑑をまずは二人に渡す。
希少な素材はあまり載ってはいないが、何かしら類似した素材があればそこから情報を引き出せるかもしれない。
何しろ種類は多岐に渡る。
植物、鉱物、爪や牙、本当に種類は様々だ。
■マノとロノ > 「お茶だ。おいしそう。…………ん、不思議な香り。頂きます」
促されるままベッドに腰掛けた二人。しかし、女子のように細い指でティーカップを掴んだのは、マノだけ。
ロノは相変わらず能動的な動作を見せないまま、書物を探しに行くホルンをじっと目で追っている。
マノは暖かいお茶の匂いをしばらく堪能したのち、ずっ、と口に含んだ。音を立てるのはちょっとはしたない。
すぐに嚥下せす、やや目を伏せてその風味を味わう仕草を見せるが、次の瞬間……。
「………ちゅ」
並んで座っていたマノとロノは同時に互いの方を向き合い、躊躇なく唇を重ね合わせた。
3秒ほど触れ合うだけのキスを交わしたのち、何事もなかったように正面を向き直る2人の少年。
しかし、ロノの唇もほのかに濡れている。そして、こくん、と同時に喉をならしてお茶を飲み込んだ。口移ししたのだ。
「………ん、ロノ、覚えてる。これと似た匂い、前にも……すごく小さなときにも、嗅いだことある」
マノは呟くように言う。そしてまたそっとカップを掴んでお茶を口に含み、今度は自分ひとりで飲み干した。
そして、図鑑を渡されれば、マノとロノは側頭部をぴたりとくっつけ、食い入るように書を覗き込んだ。
いままで眠たげに半開きだったロノの瞳もいまは丸く見開かれ、図鑑のページをやや早いペースでめくっていく。
時折めくる指が止まり、「……これ、あるって」と2人が同時に挿絵を指差す。
さすがに『黒マンドラゴラのへその緒』に匹敵する高価な素材は出てこないが、希少な素材が目白押しのようだ。
……心なしか、魔族の国でしか手に入らない代物が多め。
しかし、図鑑の半分も行かないあたりで、二人の指は止まる。
「……ロノ、疲れちゃったみたい。いっぱい思い出そうとすると、ロノ、すぐ疲れる。
お姉さん、ごめん。今日はこのくらいでいい?」
顔を上げるロノの瞳は、来たときよりも一層眠たげだ。頭を揺らしつつ、なんとか倒れこむのを抑えてる様子。
■ホルン > 何事もなかったかのように口移しをした二人を目撃し、色々と言いたくなったもののとりあえず図鑑に集中。
そして隙があれば邪な事もと思っていたが、二人から得られる情報に興奮してそれどころではなくなっていった。
「す、すごいですよ、それ!あのっ、あるだけ引き取るので次は是非おねがいします!」
どう扱ったところで目立ってしまいそうな素材群だが、何かあっても最悪拠点を移してしまえばいい。
人間と比べて物欲は薄い方だが、これだけ希少な素材が手に入るとなると知的好奇心の方を抑えきれない。
リスクを覚悟で二人に約束を取り付ける。
「あっ、今日はもうお疲れでしたか……。すみません、何か興奮してしまって……。
えっと、お礼、用意しておきますから、素材の件よろしくおねがいします」
夜からの予定もあるしこちらもこのぐらいが潮時であろう。
玄関まで先導してドアを開けると、二人を見送る事にする。
■マノとロノ > 「は、はひっ……! う、うん。次来る時、持ってくるから……」
自分たちが死蔵している『父の遺産』。
薬や錬金術の関係者なら興味を持つかもと思って来てみたが、これほど強く興味を持たれるとは。
大声を上げる女性に、マノはびっくりして肩をすくめ、顔をひきつらせる。はじめて、仏頂面以外の表情を見せたかも。
……ロノは相変わらず無反応で眠たげ。しかし、マノが立ち上がれば、ロノも操り人形のように隣に立つ。
「……あ、でも。一度にいっぱいは持ってこれないから、少しずつ持ってくるね。
お礼はあまりいらないけど……でも、この部屋は好き。またさっきのお茶飲ませてくれたら、僕もロノも嬉しい。
……それじゃあ、またね、おねーさん」
施錠を解かれた部屋から促されるままに退出し……すこし名残惜しげに、供された茶の残り香を鼻に吸い込むと。
二人はそのまま、貧民街の路地へと並び歩いて行った。
「……あのおねーさん、おもしろい人だったね。それに、きれいで……」
「……いい匂いだった。お茶も、部屋も、ベッドも」
去り際、相方に語りかけたマノの言葉に、はじめてロノが言葉で応えたのが、ホルンにも聞こえただろうか。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からマノとロノさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からホルンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にトゥーラさんが現れました。
■トゥーラ > 突然に入った配達の仕事の帰り、
少し離れた貧民地区の道を平民地区へ向かうために歩く。
記憶通りならばそろそろ娼館などが立ち並ぶ大通りへと到着するはず。
しかし歩けど到着はせず、ただ近くにまで来ていると言う事が判る賑やかな声が聞こえる。
「おかしいな……そろそろ着くはずなのに…」
この先…と角を曲がればあるのは更に進む道、
この先の角を曲がれば大通りにつくはずと考えて道沿いに歩いていく。
■トゥーラ > 「この先がそうだな…」
聞こえる声が大きくなればこの先がそうだ、
そう考えて角を曲がるがそこにあるのは道のない袋小路。
恐らくはこの先の建物の向こうが大通りのはず。
回り道をしていけばたどり着けると来た道を戻り歩き。
「あそこがあちらにつながっているのだから……こっちか」
頭の中で恐らくはあっている地図を思い浮かべ今度こそ着くはずと角を曲がる。
■トゥーラ > 「今度はあっていたな」
角を曲がればある意味見知ってしまった大通りへと付く。
通りにつけば顔見知りとなった者たちに声をかけられそれに答え。
気が付けば押し売りなどにもあいながら平民地区への道を歩いていく。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からトゥーラさんが去りました。