2017/08/11 のログ
ヴィクトール > 足を畳み、体育座りの様に縮こまった少女。
此方を見やる視線は明らかに、警戒を指し示している。
相変わらず、こういう時には自身の人相の悪さに困るものだと思うところだ。

「得体のしれねぇ男か……まぁ、顔つきワリィから否定出来やしねぇや」

毒混じりの言葉に、否定は返さず、軽く肩をすくめながら言葉を返す。
強がった言葉の割には、今にも崩れそうな心を必死に食いしばって耐える姿に、悪顔に苦笑いが浮かぶ。

「今日までがどうだったかによるんじゃねぇか? 何もしねぇなら……ここらで、珍妙に見られてる娼館に連れてかれて、暖かく一夜過ごすからよ?」

意味深な言葉、それこそ、彼女の言葉の前者を肯定しかけるような言い方なのは、あまり本人は意識していない。
だが、実際に答えたのは彼女の言葉の後者。
救世主などと、派手な言い方に似合うかは分からず、変わらぬ苦笑いのまま彼女へと近付いていく。

「何処ぞの貴族様ん家みてぇな、大層な歓迎は出来ねぇけどな? まぁ、取って食う気はねぇから安心しろよ、食うつもりなら問答無用でやってらぁな」

視線を合わせるようにしゃがみ込むと、掌を伸ばす。
届くなら、濡れた髪をくしゃりと撫で回しながら、最初のときと同じ悪人面でニヤッと笑うだろう。
それが、素の笑みと言わんばかりに。

リュシー > (初対面の人間に対して、ずいぶんな対応をしている、とは思うのだ。
ただ、今日はここに至るまでの展開が、己には少しばかりハード過ぎた。
それでも、肩を竦める相手の仕草と物言いに、つきりとボンボン育ちの胸が痛む。
わずかに眉根を寄せて、居心地悪そうに視線を俯かせ)

……顔は、別に……悪くは、ないと思う、けども。個人的には。

(もごもごと歯切れ悪く、言い訳にもならないような台詞を吐いて、
再びそっと彼に視線を戻す。
返ってきた言葉の、娼館、とかいうくだりで、ぴくん、と肩が跳ねてしまったのは、
条件反射のようなものだから仕方がない。
彼のほうから距離を削られれば、ますますもって肩やら四肢やらに力が入ってしまうのも。

言葉よりも、伸びてくる掌のほうに、やはり反射的に怯えて首を竦ませたけれど、
じっとりと濡れた髪を、くしゃりと撫でる手つきには、警戒していたような色はなく。
震えながらも深呼吸をひとつ、少しずつ、強張っていた肩の力を抜こうとしつつ)

………貴族とは、関係ないほうが嬉しいよ。

(それは思わず零れた、心からの呟きだった。
己も貴族の一員ではあったけれど、この姿になってみると、
彼らに関わればたいてい、ロクでもないことばかり起こるのだ。
―――撫でられているのが心地良い、なんて素直に言えない代わり、
ぷる、と濡れた犬のようにかぶりを振ってから)

酔狂だね、お兄さん。
取って食うわけでもないのに、首輪つきの子どもなんか、
連れて帰ってもなぁんにも、得なんかしないよ?
……見ての通り、一文なしなんだからさ。

ヴィクトール > 「そうか? そいつぁよかった、仲間にゃお前は客と顔合わせンなと文句言われるからよ」

悪くないと言われれば、カラカラと笑いながら楽しげに目を細めた。
彼女の心中とは裏腹に、顔の悪さも印象を与えることへ深い負い目は感じていない。
ただ、不便な時は不便、それぐらいといったところか。
近付いたところで、そういえば警戒されていたんだったと思い出せば、苦笑いへと歪んでいってしまう。
怯える仕草は、ここまで逃げ込むまでの乱暴を感じ取るに十分で、眉を顰める。

「貴族は~……あんま関わりねぇな、俺ぁアイツ等好きじゃねぇしよ」

思考を巡らせるように少し視線をそらしていくも、思い出すのは兄絡みに宴に呼び出されることばかりだ。
だからといって親しくなるわけでもなければ、取り込まれることもない。
冷たく冷えた髪をそのまま撫で続けると、再び紡がれるのは皮肉めいたもの。
子供のわりには随分と捻くれた…まぁ、捻くれもするかと思い返しながら、小さく溜息を零す。

「いらねぇよ、そういうのを抱えて返るのが俺達だからよ。まぁ、お礼に一晩お相手してくれるってんなら、喜んでだけどよ? さて、連れてっから脱げ。コートん中に抱えてく、ズブ濡れの服来てちゃ風邪引くからよ」

そう言いながらコートの前ボタンを解くと、黒装束の戦闘衣には、鎖を千切った様に描かれたエンブレムと、犬を象った印が描かれている。
九頭竜山脈の麓で酔狂にミレー族を抱える集落、そこを守る戦人達の印だ。
体温が皮のコートで熱を反射し、雨で冷えた空気の中でも、そこは暖かく熱を篭もらせる。
コートの袖から片腕を抜いて、肩に掛けるようにしてまとうと、こいこいと空いた手で手招きする。
どうやら本当にこの中に抱えて連れ帰るつもりのようだ。

リュシー > (己の吐いた毒が、特段、彼の機嫌を損ねた風ではない、とは、その表情からも明らか。
もう、8割がたはこの男を信じても良い、と思っているのに、
ついつい身体が緊張してしまうものだから―――また少し、
バツの悪さから俯いてしまうけれど。
触れられる刹那、とくん、と跳ねた鼓動は、ほどなく穏やかに鎮まって)

………ぼくも、…いまは、貴族って好きじゃない、かな。

(これまでの人生の大半を、ろくでなしの貴族として過ごしてきた己が、
こんな風に言って良いものかはわからなかったが、
俯き加減に己の足許を見つめて呟いた、それが今は己の本音だった。

どこもかしこも冷え切った肌に、じわりと浸みる彼の体温が心地良い。
濡れた髪がくしゃくしゃになりつつあるのも、気にならないほどだ。
ひと晩どうこう、という部分は軽口の範疇なのだろうと解釈して、
くふ、と吐息交じりの笑み声を洩らし)

気持ち良いのは嫌いじゃないから、まぁ、構わないけどさ。
その前にやっぱり、ご飯とお風呂が欲しい、――――― はい、ぃ?

(ぎょっと目を剥いた己の眼前で、彼の纏うレザーコートが翻る。
その奥から覗いたエンブレムに、微か、記憶が刺激されるのを感じたが―――
ずぶ濡れの己の身体を、じっと見下ろす一拍。
次いで、なんとも暖かそうな、男の懐辺りを見つめる一拍。

―――――最終的に背中を押したのは、ぶる、と背筋を走った悪寒だった。)

……お兄さん、さぁ……まあ、ぼくは良いけど、さ。
女の子に、いきなり「脱げ」とか、誤解されるからね?

(気をつけた方が良いよ、とかなんとか、諭すような口調は年寄り臭いか。
のろのろと立ちあがってみれば、濡れた服で埃じみた床に座っていたため、
今、身につけているものは、この場で脱ぎ捨てても惜しくない有り様になっていた。
肌にぺったりと貼りつくそれらを、もぞもぞとぎこちない仕草で脱ぎ落とすと、
さすがに裸身を晒しているのも恥ずかしく、勢い良く彼の懐へ飛びこんで)

……あったかいなぁ、お兄さん。

(少し躊躇ってから、伸ばした腕で彼に縋りつくと、ほう、と満足げに息を吐き)

ヴィクトール > 「今は……か、何か色々あったみてぇだな」

意味深につぶやかれる言葉の裏、それまでは嫌いではなかったという意味を含んでいた。
見た感じに元の出来上がりは良さそうなのもあり、元々は貴族かなんかの娘で、お家が潰されて売り飛ばされたとか。
そんなことを考えながらも、馬鹿なりに気遣って深くは探らなかった。
過去がどうあったかで、今の彼女をどう思うかは少し違う気がしたからだ。

「そうかぁ? 大体それはちょっとって言われるけどよ。だな、まずは体温めて腹拵えだな」

快楽を否定しないのは、追われる身の少女にしては珍しいと思いつつ、楽しげに笑う。
そのまま告げた言葉には、驚いた様子が見えたが、別段今直ぐここで事を始めるわけではない。
そう思っている男は何そんなに驚いているのだと言わんばかりに、訝しむ表情を見せた。

「そういうもんか、わりぃな。すげぇ寒そうだから、さっさと温めて連れてかねぇとなって思ってよ?」

そういう事かと納得したように頷きながら、苦笑いで謝罪を紡ぐ。
ホコリが張り付いて汚れきった服がべちゃりと床に落ちれば、見た目のわりに起伏の大きな体に、思わず おぉ と、感嘆の声が溢れた。
飛び込んだ彼女を片腕で確りと抱きとめると、コートの前ボタンを閉じていく。
襟口から顔をだすことも出来るが、フードをかぶってしまえば、そこに雨水が入り込むことも少ない。

「そっちはひんやり…つか、冷てぇな。じゃあ行くとすっか」

戦闘衣越しに感じる小さな体は冷たく、固く引き締まった体から熱が吸い込まれていくようだ。
柔らかな体を確りと抱きしめる腕は太く、固い筋で纏まった逞しいもの。
片腕で抱きしめているにも関わらず、そのまま立ち上がっても、何ら問題無さそうに支えてしまう。

「ぁ、そいや名前いってねぇな。俺はヴィクトールだ。嬢ちゃんは?」

今更ながらに名を告げて、名を問い返すと再び雨の中へと歩きだす。
深くフードを被って、彼女が濡れないようにしっかりと包みながら歩きだすと、それほど時間も掛からず、外れにある娼館へとたどり着く。
娼館にしては厳重な門番が二人いる入り口は、フードを取った彼を見ると、さも当たり前のように中へ通す。
彼女の名と、宿に入ってからのことは、二人だけが知る一夜の出来事になるだろう。

リュシー > (彼の頭の中を覗き見ることはかなわないから、色々、の中身についての推測も、
ひそかに行われた気遣いについても、己が全貌を知ることはない。
ただ、根掘り葉掘り尋ねようとしない、という一点について、
言葉にせずとも感謝を捧げるだけだ。

脱げ、という理由が理に適っていたから脱いだけれども、
彼が洩らした声の意味は朧に悟ったし、抱き止められた腕の中から、
睨みつける眼差しを送りもしよう。
しかし、―――あたたかい、確かな腕の、肩の、胸の感触。
それらを振り解いて逃げ出すことなど、思いもよらぬことで。

―――――名前を尋ねる声に、彼の懐へなかば顔を埋めながら、
「リュシー」とひとこと告げた後には、もうひたすらに黙ったまま、
存分に彼の体温を堪能することに。

連れて行かれた先が娼館らしいと気づいても、この温もりには代えがたい。
むしろ、食事とお風呂とベッドが保証されている場所だ、と楽観的な解釈でもって、
彼と共にその扉をくぐるのだろう。
己が望むものを、望むかたちで手に入れられたかどうかは、
彼と己、二人だけが知ることとして―――――。)

ご案内:「王都マグメール貧民地区/裏通りの廃屋」からリュシーさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール貧民地区/裏通りの廃屋」からヴィクトールさんが去りました。
ご案内:「王都貧民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 暦は夏の盛りに差し掛かり、夜になっても巷を漂う空気は熱を篭らせ、じっとりと重ったるい湿気を孕んでいる。
そんな中を好き好んで出歩く人間は早々いないと相場が決まっていそうなものだけれども、この薄暗い路地の向こうからは喧騒が耳に届く。
止むに止まれぬ事情を有している者は勿論だが、或いは夏場の熱気に対抗し得るだけの情熱を身の内に宿しているのだろう。
例えば、飯とか、酒とか、博打とか、女とか。
求めるものは様々であろうが、それらのどれもが手に入る雑多な地域に身を置いている。

「水辺の方が、より善い良いのじゃろうが…」

誰の家かも分からぬ、それどころか人が住んでいるのかも分からぬ年季物の、玄関から路地に下りる為の短い階段に腰をかける妖仙が一人。
傍らには、白く細い煙を立ち上らせる棒状の香が、簡素な作りの香炉に突き立ててある。
出身地の近隣で出回っている虫除けの香。
この時期に需要が見込まれるものではあるけれども、生産地と遠く離れたこの地の害虫にも効力を発するかの実験中らしい。

ホウセン > 何でも虫を寄せ付けぬよう進化した草花があり、その薬効の恩恵を手軽に享受できるようにと試行錯誤の後に世に出た製品。
成分を広く散布する為に、香に練り込み、乾燥させて、燃焼の持続時間を確保するべく太めに成型している。
形状については、もっと巧いやり方があるような気がしないでもないが、当座の所は効能が確認できればよいと。

「細かく検分すると、水辺の物と藪の物で種が違うそうじゃからのぅ。
 同じ土地でさえそんな有様故、実証が必要というのは、よぅ分かる…が。」

寧ろ、実験が必要と判断したのは妖仙自身である。
だが、いざ実行に移してみると――大変に無聊なのである。
これならば、懇意の飯屋等に置いてもらって、効果の程を調査すればよかった等と、人知れず臍を噛む。
念には念を入れてという凝り性が、完全に裏目に出た形だ。
こんな瑣末な事情であるが、”眼”を使って接近する蚊がいないか絶賛監視中。

ホウセン > 野兎を狩る為に弓や鉄砲を用いず大砲を持ち出すとか、調理の為に包丁を用いるのではなく斬馬刀を持ち出すとか、それらに通じる大仰さがある。
せめてもの救いは、例を実行すると兎は木っ端微塵に吹き飛ぶだろうし、食材は俎板ごと両断されるという役に立たないどころかマイナス方向に辿り着いてしまうだろうけれども、”眼”については”勿体無い”だけで、用を為せる点か。
オーバースペック甚だしい監視装置をして、未だ接近する蚊の類は見当たらない。

「効果は上々。
 あとは持続時間じゃが…」

欲を言えば、一晩補充なしで燃え続けているものが望ましい。
それにこのままでは香炉に埋もれている分が無駄になってしまう。
それらを両方解決する方策は、やはり形状の変更なのだろうか。
石段に軽い体を腰掛けさせたまま、意識の三割ほどを製品の改善に向けた思考へと傾ける。

ホウセン > 夜が更ける。
線香もまだ半分以上を残しているが、夜明けまで持つかは分からぬ所。
尤も、それよりも前に気まぐれな妖仙の、忍耐力の限界が訪れるのは想像に難くなく――

ご案内:「王都貧民地区」からホウセンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 賭博場」にボブさんが現れました。
ボブ > (貧民地区にあるうらびれた商店……常に『CLOSE』の木札が入り口に掛けられている商店だが、
そこに出入りする人は多数居て、褐色の肌をしたこの男もその一人として商店の扉を開け、一見雑多に商品の売れ残りが
配置された店の中へと入っていく。
棚に並べられた商品はどう見ても二級、三級品ばかりで閉店状態であっても何ら不思議はないように見えるが…
床は人が歩いても足跡が残るような埃などまったくなく、また天井にも蜘蛛の巣などの荒れた様子も無い。
適時、掃除が行き届いている様子を横目に見ながら男は『倉庫』と札が下げられ、
商店の入り口には掛かっていなかった鍵がこの倉庫には掛かっているのを分かっていつつ、
コンコン…コン…コンコンコンっ……と2回・1回・3回と決められたノックの仕方をしていけば、
倉庫の扉が開かれ、中からしっかりとした服装の賭博場の従業員が出迎えをしてくれて)

「やぁ、どうも。 今夜も盛況かい?」

(従業員にそう挨拶しつつ、賭博場の利用者の証である古びたチップを差し出していく。
チップにはとある魔法が掛かっているらしく、従業員がモノクルを目に当てれば、
身元確認が済んだようで、にこやかな笑顔で出迎えてくれて)