2017/07/22 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏の露店」にジードさんが現れました。
ジード > 「今日も平和だねえ」

昼下がりとはいえ薄暗い貧民地区の路地裏に露店が開かれている。
場所が悪いのかお祭りという時期の問題かあまり繁盛している様には見えない露店の店番がポツりと呟いた。
普段は顔なじみも含めて人の通りがそれなりに多くてそれなりにもめごとが起きる場所なのに今日はそんな気配すらない。
露骨に残念そうにしながらお客さんを待つ姿はどことなく哀愁すら漂っていた。

「それでもあわてず騒がず自分の商売お仕事を堅実にやらないとお客さんが離れても困るし。
 困る人いるかな。いやきっと居るよね」

どこからか取り出した火のついてない煙管を手慰みに弄び悩みながら唸る。
中毒者くらいしか困りそうな人が思いつかない。

ジード > 「居なかったらいなかったで悲しい事になるから考えないようにしておくとしても、
 商売あがったりというのはこういう時に使う言い回しかなあ。
 あ、そこゆくお姉さん――」

全く嬉しいとは思えない言葉の体現を感じながらも時折通り掛る人影に声をかける事は忘れない。
そのすべてが素気無く相手にされずなおの事悲しみが募るだけの結果に終わってしまうのだけど。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏の露店」にアリアンさんが現れました。
アリアン > 太陽が中天に達するころ、のんびりと起きてゆっくりと食事など終えて、ふと思い立ちこの地区まで足を延ばす。
まだ駆け出しの歌手だった頃は、このあたりにも住んでいたので、さほど怖くはない。とはいえ、女一人で夜間に歩く度胸はないので、昼間、明るい時間に限るのだけれど。
ぶらぶらと顔見知りの商店など冷やかしながら歩いていると、路地裏に見慣れない露店。

「……怪しい」

怪しいとは思いつつ、つい引き寄せられるのは好奇心のなせるわざ。
辺りを見回し、商人の影にも人が隠れていないことを確認してから、おずおずと近づいて、売り物を覗き込んでみる。

ジード > 「やあや。何かお探しかな?何でもござれとは言えないが都合のつく範囲では勉強させてもらうよ」

訪れた人影が自分の店へと寄ってくるのをあえて黙って待って
興味を持った様子を見せたのを良い事にここぞとばかりに売り込みをかける。
露天に並んでいるのはアクセサリーや得体のしれない薬瓶が中心でお世辞にも煌びやかな見た目とは言えない。
見る人間が見れば薬の類は表通りでは売り出せない類の物なのはわかるだろう。

アリアン > あまり薄暗い世界とはかかわりを持たなかったので、その価値が分かるかといえば怪しいのだけれど。
この瓶の形には、見覚えがあるなあと記憶をさぐる。
劇場の踊り子の誰かが、パトロンに見せられていたのではなかったか。
その時は、随分と秘密めいた雰囲気だったので、ちらっと見て足早に立ち去ったのだが。

「こんにちは。いえ、何がってわけじゃないんだけど…最近、お店を出されたんですか?」

どうにも胡散臭い店主だと思いつつ、尋ねてみる。

ジード > 「最近というほど最近でもないですけどね。
 ええ、見ての通りの露天商な物で場所を転々としているのですよ。
 商う物もあまり店を構えて売り出すようなものでもありませんしね」

一応面に置いてあるのは装飾品や香辛料の詰まった瓶。
しかしよく見れば後ろには夜のお供かどこか別の世界への片道切符が並んでいる。
胡散臭いと言われても致し方のない様相を改めもせず笑顔で応対。

アリアン > 後ろの方に置かれた薬の瓶には、好奇心を刺激されつつも、触れてはいけないような気がして、ちらと見るだけにとどめて。
笑顔の店主に、ごく自然に笑顔を返しつつ、前の方に置かれた装飾品に目をとめる。
ぞんざいに置かれているから、一見おもちゃっぽく見えるけれども、よく見ると、何やら心惹かれるデザインで――。
銀の台に赤いガラスのようなものがはまったネックレスを、手に取る。

「とても綺麗ですね。これ、ガラスに見えるけれど…ガラスじゃないような」

ジード > 正直な話売れ筋はアクセサリー類ではなくてお薬の類なのだけどそれには興味がないらしい女性。
少しだけ残念そうに感じつつも特に無理におススメする事はない。
女性の手にしたアクセサリーは東方で仕入れて来たものと記憶から引っ張り出し。

「おや、お目が高い。それは東国のある場所でしか産出されない石だそうですよ。
 とはいえそれほど価値の高い物ではないらしいですが。お値段はこれくらいですかね」

帳簿を手に取り中身を確認してから値段を示すと大体夕食が2、3食食べられるかどうかといった値段。
装飾品としてはそれほど高くない値段ではあるのだけど。

アリアン > まだ薬が自分に必要かどうかも分かっていない経験の浅さで、興味はありつつも怖さが先立つといったところ。
これから恋人との仲が進展するにつれて、必要になる局面も、出てくるかもしれないが、それはそれ。女子としては、アクセサリーが気になる。

「あら、石なのですか。とても綺麗」

店主から示された値段を聞いて、目を丸くする。
駆け出しのころなら迷っただろうが、今の自分なら払える価格で。

「そのお値段なら、日常使いにいいですねえ。でも、あの」

と、声を潜めて。

「まさかとは思いますが、これ、つけているうちに変なものを呼び寄せるとか、外せなくなるとか、そういうことはないですよね?」

ジード > 「お陰で安く仕入れられてるんですけどね。ええ。
 正体をバラすと結構嫌がられるみたいで」

やはり女性は宝石などの貴金属類の方がいいらしいというのは店をやってて思う事。
気に入ってもらえたのならば文句は何もないけれど続けて投げかけられた質問に笑って手を打つ。

「いやいや、まさかそんな事は。普通に職人から買ったものなんで。
 ただまあ…そういうのが好みならない事はないですが。興味はありますか?」

まるで怪談話をするときの様に声を潜めて雰囲気を作って露天の後ろに置いてある荷物類を示す。
そこには得体のしれないガラクタのようなものがいくつも転がっていた。

アリアン > 「嫌がられる?」

はてと首を傾げつつ、手に取ったネックレスをしげしげと観察。
ぞんざいに置かれていたから見逃すところだったけれど、やはり見れば見るほど良い細工。
きちんと磨いて手入れをして、それなりの使い方をすれば、映えるのではなかろうか…などと、考えている時点で、もう買う気満々なわけで。

「そうですか、良かった。この素敵な石が呪いのアイテムだったりしたら、悲しいもの」

と、店主の笑いに応じて、こちらも声をあげて笑う。
しかし、続く言葉に目をぱちぱちさせ、彼の視線を追いかけて後ろに置かれた荷物類を見る。
店主の口調のせいか、それともこの路地裏の空気のせいか、得体のしれない空気をまとった、一見ガラクタのそれ。

「あ、あるんですか。……あの、ちょっと見たいです。見るだけ」

ジード > 「宝石類の方がいいと言われますね。ええ。致し方ないんでしょうが」

だからそれに近い物を案内することが何度かあった。大体はルビー関係の物になるのだが。
意外な事に脅かすような物言いで言った怪しげな道具の事に食いつかれたのですこしだけ驚く。
しかしこれはこれでチャンスとばかりに後ろに荷物を引っ張って出せば乱雑に扱っているというのに傷一つもついてない装飾類が姿を現す。
金でできた無体に豪奢な宝冠や真っ青な巨大な宝石のついた指輪…どれもこれも共通しているのは怪しげな雰囲気を持っているものばかりだ。

「この宝冠は何でも身に付けたら相手を支配したいという欲求にさいなまれるそうで。
 指輪は身に着けた人間の幸運の代わりに親しい人間に不幸を齎すとか。
 他にも身に着けると火傷のような痛みにさいなまれるネックレスだの蛇に締め付けられた跡のようなものが付く腕輪とかいろいろありますね」

呪いの道具というのが一番しっくりくる道具の数々を惜しげもなく並べながらも一応手には取らないよう注意を促す。

アリアン > 「ああ。なるほど、確かに宝石の方が気持ちは上がりますね。でもまあ、あんまり凄いの持ってても、結局しまい込んだままになっちゃうし」

このご時世、歩きなれているとはいっても、王都で護衛もなしに宝石を身に着けて歩く気にはならない。
せいぜい、目立たないピアスに少し良い石を持ってくるぐらいだろうか。

店主が背後から引っ張り出した荷物に目を丸くしていると、がらがらと目の前に怪しいアイテムが出される。
乱雑に扱っているのに、傷一つついておらず、むしろ誘惑するような輝きを放っているあたりが、非常にそれらしい。
解説を聞き、更に目を丸くして、じっとそれらに見入る。

「怖いですねえ。どれも綺麗だってところが、とても始末に悪い……」

半エルフとしての勘に、びりびりと触れてくる怪しい魔力の波動。
普通なら本当か疑いたくなるような話だが、これは本物だと信じないわけにはいかない。

「んー、こういうのを欲しがる人もいるってわけですね。お兄さんは持ってても、何も起こらないのですか?」

起こったらここで商売しているどころではないだろうけれど。
聞いた限りでは、どれもあまり遭遇したくない運命に翻弄されるアイテムばかりのようだ。

ジード > 「そういうものですか。女性のその辺の価値は良く分りませんからね」

文字通り価値観が違うのは男女差として無理なからぬこと。
ある程度商売をやってる関係上察しはするが完全な共感は多分できないだろう。
始末が悪いという言葉に思わず笑ってしまいながらも女性の疑問に首を横に振る。

「身に着けては無いし、一応そういうのにはある程度耐性がありますからね。
 おかげでこの辺の物を押し付けられたと言えますが…おや」

そうして談笑を続けるうちに日がかなり高くなり夕刻へ差し迫っている事に気が付いて声を上げる。

「すみませんお嬢さん、そろそろここでは店じまいです。
 別の場所に店を開かなければ」

アリアン > 「そうですよね、売り手さんがいちいち不幸に見舞われてたら、凄いことになっちゃいそうですものねえ」

耐性のある売り手がいるから、この手のものも出回る。
ということは、この店主も純粋な商売人というには、一癖ある存在のようだなあと思い、バッグから財布を出す。

「あら、ごめんなさい。お仕事の邪魔をしたかしら。それじゃあ、このネックレスを頂くわ。お代は…これでしたね」

店主の手にネックレスの代金を置いて。

ジード > 「理由は秘密ですけどね。何せ企業秘密が多い男の方が奥方様には受けがいい物で。はい、確かに。大事にしてくださいね」

唇に自分の指を押し当ててわざとらしい仕草を見せてお代を受け取り荷物を片づけて立ち上がる。
いつの間にか手にしていた杖を露店近くの地面を叩くと一瞬の光の後に先程まであった露店は跡形もなく消え失せて手持ちの鞄だけがのけが残る。

「それではまたご贔屓に。縁があれば会いましょう」

一礼をして見せてから路地を通り鞄を抱えて去っていく。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏の露店」からジードさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 路地裏の露店」からアリアンさんが去りました。