2017/07/18 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジードさんが現れました。
ジード > 「さあさお嬢さん、こちらの装飾品などいかがかな?あれ、興味なし?うーん残念」

路地裏に並ぶ露天の一つから陽気な客引きの声が飛ぶ。
とはいえ陰気そうな風貌の男からの声がけなのが悪かったのか通りがかった娼婦に向けられた言葉は
素気無くあしらわれ、店主の男は心底残念そうな声をあげて肩を落とす。
路地裏ではよくある風景なのだが今の時期は少しだけ様子が違った。

「この一時間で二人目のお客さんとなると逃がすと損した気分になるよね。商売上がったりだ」

両手を少しだけ持ち上げる仕草をしながら通りを見るとがらんとしていて、
目の前を通っていくのは犬猫だけ。思わず真顔になって手を下ろす。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にチルユキさんが現れました。
チルユキ > 夜に溶ける紺のワンピースの裾をふわりと靡かせて、少し大きめの木靴の踵を浮かせながら歩く。
陽が沈めば足取りは弾むように軽く変わる。
行き交う人々の顔に視線を流しては移ろい―――― 陽気な声につられてふと立ち止まる。

みゃおう、と鳴く聞こえた。ご飯じゃなければ興味ないわよ、的な。
通り過ぎていく犬猫の交点から現れた人影一つ。
客引きの男をじっと見る

「―――――………」


「……売っているのは装飾品………だけか?」

男を、見る。

ジード > 「おやお姉さん、他のものをご所望で?ええ勿論他にも取扱がありますよ
 香辛料にポーション、後は夜のお供のお薬なんかも。気になるものでもありますか?」

犬猫を追いかけるようにしてやってきた人影が犬猫を散らすように視線を動かすまま
自分を見られていると感じればすぐに頭を接客用のそれに切り替える。
じっと向けられ続ける視線をなんだろうかと訝しみつつも営業スマイルで、問いかけに対してここぞとばかりに売り込んでいく商売人。
手元の露天に並んでいる商品を示すように腕を動かした。

チルユキ > 腕につられて視線が落ちる
順に示される物を、考え事に向かない頭が辿る。


怪我は……しても治る。
ポーションは……そもそも余り動かない。
夜の薬は……なんだ。

「……香辛料…… 紅茶に混ぜるようなもの に」

眉間に皺を寄せて言葉を止める。
あの時は確か…ガバッと行って、逃げられた。軽く頭を傾け

「…お前の血も欲しい」

言葉から。

ジード > 「はいはい、それじゃあシナモンかブラックペッパーとかどうでしょうね?
 割りとお姉さま方から評判ですよ、主に娼婦のですけど」

どうでもいい下世話な一言を付け加えながらも用意しようと瓶に手を伸ばした所で、
聞こえてきた言葉に思わず動きを止める。まじまじと相手を相手を上からしたまで眺めて、

「血となるとそりゃあお客さん専門のところに行った方がいいと思うけどね。
 俺なんかの血なんぞ飲んでも美味しかないよ?」

こういうのは乙女の血と相場が決まってる。なんて真顔で言いながら荷物を包めば、
相手の前に置きながら改めて視線を向け。

「何より私ゃか弱いんで血なんて大量に抜かれたら干上がっちまう。
 指の先から――くらいなら別に少しくらいはサービスしても構いやしませんけどね」

チルユキ > 「ブラックペッパー…。と。ピンクペッパーは無い?
……娼婦のお姉さんのことが大好きなのか…」

引き合いに出す程に。相手の新たな情報を余り皺の無い脳味噌に一つ。
飾り気一つ無い恰好は誰の目にも明らかな。

「専門…………?
飲んでみなきゃ分からない。
乙女は……却って容赦ない………」

劈くような悲鳴と、貌をバリッと引っ掻いた長い爪。服の裾を掴んでカタカタ震えた。
何かに抵触したらしい。包まれた荷物を両手に包んで鼻先を引っ付ける。
すんすんと鼻を鳴らしてから傍らに置き、貨幣を入れ違いに置いた。

「………そんな大食いじゃないから大丈夫…
…………か弱いんだ……?」

捕まえようと、ほっそりとした白い手が男の手首に伸びる

ジード > 「おやま、案外渋い趣味してますね。ええ勿論ありますとも。
 何せこの辺だと一番商売相手のお得意様ですから勿論大好きですよ?」

声を上げ笑って見せながらも注文の品は丁寧に包んで手渡し、
疑問符を付ける相手に今度は男が声をあげる番だった。

「おやご存じない?血を必要とする人のための商人ってのがこの貧民街にはいるんですよ。
 当然血の入手先を詮索するのはご法度ですけどね」

街の暗部を象徴するような仕事だが需要があるのもまたこの街なのだ。
何かの琴線に触れてしまったらしく、男の方へと手を伸ばしてくる女性の姿が見えれば手をやんわりと押しとどめる。
仕方がないといった感じで相手の目の前にからの瓶を差し出せばそれを持つようにいい。

「あまりやりたくは無いんですけど特別ですよ?」

そう言いたいことだけ言って露天の下から杖を取り出すと己の指の端を傷つけて瓶の中へと垂らす。
瓶の底まで血の一滴が滴り落ちたことを確認してから呪文と印を唱えると、瓶の中で増殖する血液。
瞼を5回もまたたけば瓶いっぱいになった血が見えることだろう。

チルユキ > 「……売りつける方なのか、買う方なのか………
後者の方がしっくりくる気がするのは………雰囲気……?」

ありがとう、と包みを受け取る。左手に抱え

「知らない…… どうしても餓えたら……考える」

手を取る代わりに与えられた瓶をじっと見る。
血の匂いが微かに空気を伝い、牙が僅かに疼くが。待つ。


「………………。

――――――――――!?」

一滴の血がこぷりと音を立てて増殖する。
眠たげに伏せていた双眸が丸々と見開かれて、瓶を放り投げそうになるのを辛うじて我慢する。
ぷつぷつと、鳥肌立ってた

「………………エエ…………? ど、毒………?エ、コワイこれ………」

瓶を相手の手に押し付け返そうとする

ジード > 「どっちでもお世話になってるのは否定はしやしませんよ?」

下世話な事を笑って臆すことすらなく言い返す。
杖で肩をトントントンと小気味良い音を立てながら叩いて、
押し付け返される瓶を受け取って見下ろし。

「失敬な。ただ魔法で増殖させただけで同じものだよ?
 いらないなら捨てちゃうけどね」

無駄に疲れたとは言いつつ瓶の中身を軽く揺らし。

チルユキ > 否定しない、のは納得できるので頷いた。
こくりと小さく咽喉が鳴る。
喉が渇いた。屹度あれは美味しい物だ。けれど…。

一滴の血が何十倍にも何百倍にも膨れ上がり満たされる、
増殖する、ものを。
胃の腑に落とすと、食い破られそうな気、が。
ぶるぶると震えた

「捨てなくても…。………う、売ってあげる……とか…………。
……………………その…………、………気持ちだけ………」

頂きます。じわりと踵が下がって身を翻す。其れはぱたぱたと乱れた足音を伴って
男は暫く、十字架も退魔の何も無く 血を求める吸血鬼を撃退した――――と
この界隈で伝えられるのかもしれない――――――

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からチルユキさんが去りました。