2017/06/08 のログ
■ボブ > (性質の悪い酔っ払い中年を追っ払ってみせれば助けた街娼が男にお誘いの声を掛けてくるが)
「う~ん?今夜のところは遠慮しておこうかな。
今夜しちゃうとさっきのお礼の分がはいって普段よりサービスが濃厚になって
今後買う時に君の方が後々損するだろうからな……
君が忘れた辺りのタイミングでこちらから声を掛けさせてもらうな……」
(ニカッと街娼に明るい笑みを浮かべて返事を返していくと男は路地をふらりと歩き始めていって)
■ボブ > (救った街娼のみならず、他に街角に立っていた街娼達にも顔を売った男……
今度、この繁華街に来た際にはいい事が起こりそうな善行を施した男は
今度の楽しみを取っておきながら、ふらりと繁華街を後にしていった)
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2 繁華街」からボブさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にジュウザさんが現れました。
■ジュウザ > 欠けたることのない望月に照らされるここ貧民窟の、通りと呼ぶには余りに短く余りに入り組んで、五歩を真っ直ぐ歩けば角に当たって左に折れて、そうしてすぐに次なる角に当たって左に折れて……と入り組む路地は、夜の帳の下に無秩序に建てられた粗末な建造物の影をも纏って道行く者の目を暗闇のみをくれるありさまだ。無数に走る――或いはそれは都市の血脈の如く縦横無尽なるとある路地裏もまた暗闇に満たされていたが、その中に何らかの気配を、そう……「孕んでいる」かのような。
蠢きの気配。低く言い交すような言葉。僅かな間をおいて薄い物体が夜気を斬る、ヒュンと甲走る音が一度、二度。そうして続く、物が倒れたような音。
やがて、暗がりの中で行われたであろう何事かを知る者が闇の帳を破って現れる。むっつりとした顔つきの男だ。男は月光が辛うじて届いて明かりが溜まった一か所に歩み出て、親指の腹で頬を拭った。しかし刷毛で刷いたようなあとが一筋残り、青白き月光の中で黒く光沢を帯びる。
■ジュウザ > 男は指の腹に残ったものを顔の前で見て取ると、指で捏ねてから振り払うような手つきをした。それから出来事を飲み込んだ闇を振り返ると、ふんと鼻を鳴らす。そのついでに発した一言が路地裏にぽつんと落ちる。
「他の追剥に出くわさねばよろしいな。」
そのうち息を吹き返すだろう。しかしその前に身ぐるみを剥がれぬ保証までは請け負えぬ。その言葉を残して足を踏み出しかけたが、思い直したように足を留めて辺りに目を走らせた。こういう場所でのトラブルだ。余人の目に留まって遺恨の種にならぬとも限らぬ。
見渡すその目に映るは狭苦しい路地の角とその間を埋める暗がりばかり、されどそれが身の内に何物かを抱いているとも知れぬ……
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にタピオカさんが現れました。
■タピオカ > (王都にたどり着いた足、漫遊の旅も一夜の宿からだとばかりに探し始めた安宿。けれど、慣れない人混みに慣れない街並み。辺境には存在しなかった人混みに酔っ払い、すっかり日が暮れてしまった。いい加減野宿したほうが手っ取り早いか、と不自由を覚悟する頃には明らかに治安と空気の悪い貧民窟へ迷い込んでしまった。さてどうするか、と望月を仰ぎ見たところに血の匂い。刃物が空気を切った音。するり、と足を向け。そこにはひっつめの黒髪、大男の姿)
「こんばんは。月が綺麗だね――ひと勝負、してみない?」
(どこか闇から倒れた人の血の匂いがする。そして、見上げる男の額に血の筋。相手が持つのは一振りの剣。――何も見なかったフリをして、無垢な旅人のフリをして逃げ去る事もできた。しかしそれより、湧き出てくるのは遊牧民の荒々しい血。この剣持ちは自分よりも強そうだと思えば、それだけで十分曲刀を抜く理由になる。にこりと笑って相手を見上げながら、左脇におさまっている剣鞘から、左手の親指だけを使って剣の柄と鞘の間から剣呑な光をほんの一瞬のみ、彼に向けた。――狭い路地で対峙している。距離は10mといったところ)
■ジュウザ > 余人の目に留まりはせなんだか――見渡す先の闇より出で来たりし人は薄く届く月明りの下で、清涼なる気配を纏い現れる。男は顔つきひとつ変えぬままその人を見る。奇怪な怪物が天に伸ばせし腕の如く夜空に迫る屋根を掻い潜りし月光の中でその人の、月と同じ色の髪の流れしを見る。灰白色に事物を染めるこの薄闇の中で、宝石に似て群青色に輝く両の瞳を見る。これは涼風のような人の目に留まったものだ。されど……清涼なるばかりではあるまい。鈴鳴りの声が伝えし言葉の意味と、腰間にぎらりと輝けし剣呑なる鋼の色は。
「流れの剣客か。されば……是非もなし。」
男は答えと共に抜刀する。手慣れた仕草だ。闇の中でサッと翻って中段に取ったその剣先は月の輝きを宿して輝き、二つの宝石にも似るその人の目に白刃の輝きを射かける。まんじりともせぬ顔つきのまま剣を構えて辺りを見渡せば彼我の距離およそ、我が足にて七歩か。左右は剣を振り回すに差支え無し、されど気ままに振れば壁を穿とうか。
受けて立つつもりを示したこの男、今日のこの蒸す夜の中にありなお涼やかなるその人の笑みを見る。そしてその内にふつふつと滾る闘志を目にしたのなら……面白い。胸中を表すために男がしたのはただ、フンと鼻を鳴らすことばかり。
■タピオカ > 相対した相手は背丈だけでなく、隆々と盛り上がった肩から首にかけての筋肉も十分すぎるほど見る者を威嚇する。ただそれだけの荒くれではない。彼を見た同業者ならこう言うだろう「血の匂いがしやがる」先が闇に同化しているように見える彼の黒髪は、ただこの場が薄暗いからというだけの理由にはとどまらぬだろう。命のやりとりを一歩崖手側で綱渡りしてきた気迫が、獰猛ながらも水打ちで引き締められた、鍛冶屋に打たれた鉄のよな顔つきから漂っている。……ゴロツキとの遊びじゃ終わらないな。そう思えば、にこりと笑むその口元は、好戦的な歪みをもったものとなり。
「ありがと。それじゃ――いざ尋常に」
礼を紡ぐ言葉はあくまでも軽やかな、年齢相応なもの。その後半ともなると、低くも、呻る獣じみたものへ変わる。剣持ちは剣で切り捨てられる覚悟がある者のみで構成される。シャムシールを持つ自分もまた覚悟ある者だ。それを証明すべく、それを示す低い声。――大柄な彼だと歩いて7歩か。素早く視線を巡らせて周囲の状況と相手の稼働範囲を推し量る。まずは自分から近づこう。そのまま自分の足で6歩分――だいたい、彼の持つ得物にプラスして彼の腕のリーチを加えたもの――近づいていく。妨害が無ければ、相手の刃が届くギリギリの場所まで寄って歩いて行く心算。歩いて行く様子は非情に落ち着いたものだ。ふたつの目でしっかりと彼の目を見据え、決してそこから視線を外さない。この路地裏の王者は自分だと言わんばかりにゆっくりと歩を進め。――その場所にたどり着けば口からふうっ、とごく短く息を吐いて呼吸を整え。特に構えらしい構えはとらない。ただ、左足をやや前に出し。腰を落として両手を下に伸ばしている。未だ納刀状態だ。
■ジュウザ > 尋常に、か。それを聞いた男がまた鼻を鳴らした。尋常とはまた……間髪を入れずに引き抜けし我が剣に微塵の怯えも見せぬその顔よ。そうして初めて目にした数秒前をさっさと裏切り人の者とも思えず変じたその声音、さらにはそれを置き去りにして一歩一歩と間を詰めるその足取りの軽やかなることよ。諸物に臆さぬその歩み、闇の中で揺れるその身なり、そうして腰間の、肉食獣の牙を思わせて曲がった剣……砂塵を纏いし獅子の言う「尋常」なれば、こちらは死力を尽くすに他なるまい。
男は構えたままぴくりともせず、その獅子の歩みを待ち受ける。獣が足を止めたのは、こちらの剣が相手を噛むまで、ぴたりと測ったかのように一歩を余す場所だ。いま、剣先を挟んで黒い両眼と群青色の瞳が相対した。されど互いに動かない。瞼を半目に落とした目つきでジロリと相手を睨むのみ……
夜風が吹いた。じめじめと湿った夜風が彼我の間を抜け互いの長い髪を揺らし、早くも額に滲んだ汗の玉を乾かしてゆく。その風の終わりに、路地に転がる塵芥――何の芥とも知れぬ一塊が乗った。重量感に欠けて吹き飛ばされるそれが、彼我を結ぶ不可視の線を横切ったその瞬間こそが……剣機。
「――えいッ!」
低く抑えた気合いと共に繰り出した初撃は、中段の構えからそのまま突き出し相手の右手首を狙う押し斬りの技。抜刀の機を抑え損ねてしまえば、その柔肌の上を走る利刃は容易く骨を食む。
■タピオカ > 間合いを詰めるべく歩きながら。中段にて油断なくこちらを狙う彼の剣は確かに視界の端に入ってはいたが、そこに気をとられてはいけない。一番気になるのは彼が何を見て何を思っているかだ。先手をとらなければ負ける。勝負はもう始まっている。ありがと、と告げたその瞬間から。――剣先を挟んで黒い両眼と群青色の瞳がかちあった。蛇に睨まれた蛙。まるでそうなのだが、自分はあいにく蛙ほど可愛くはない。夜風は涼しげ。月見もいい。場所や状況が違えばお茶にお団子をいただきたいところだった。そんな折、横切った塵芥が一瞬だけ殺気と殺気に水を差した。この間まで待つとは、風流な人だなあ。脳裏でちらりと、そしてくすりと笑う。もちろん、それが合図だとは勘付いてはいて。
「覇(は)ッ……!」
突き出した剣先が刃を見えない筋道に沿って一直線、こちらの右手首を狙ってくる。太刀筋がまっすぐ骨を砕く順路を辿ってしまう前に覇気を唇の隙間から吐いた。落としていた左手が、左の鞘から曲刀を最短距離で抜き打ちする。逆手で取り出した曲刀の刃の上で押し斬りを滑らせ、上半身を右へとひねって攻撃を受け流していく。金属が打ち合う音はしなかった。しなやかに受け止めた刃が刃の上を滑らせるのみ。……しかし、彼の鋭さと力強さには勝てない。全てをその場で受け流す事は叶わず、右足が一歩分後ろに押し出される。――こちらの手番。
「ふうっ!」
大きく息を吐きながら、片手の逆刃で握っていた曲刀を身体の右上で一瞬にして構え直した。高く肘をあげた右手をそこへ合流させ。両手持ちとなった曲刀の切っ先を相手の喉元へ突き出す。遠慮はしていない。よけなければ串刺しだ。
■ジュウザ > 我が初撃の導けし帰結はただ、鉄が鉄を滑る僅かな擦過音と、その際に生まれたたった一粒の火花のみだった。そのごく小さな帰結に反して我が身の内に、総身の毛が立つほどの衝撃が走る。逆手の持ちからなんと柔らかく受ける!たった一粒の石火は、その衝撃に押し開かれた我が目を照らし出すはずだ。そうして驚愕の支配を脱しえぬ我が目前で、獣の牙はあまりにもしなやかに銀光を閃かせる。
闇の帳が下りたこの路地に生じた三日月は、微塵も動かぬ男の喉仏を過たず貫くはずだった。それが指一本の長さにも満たず届かなかったのはただ、我が初撃がささやかなる帰結を導いてもいた、という事由のみによる。相手がたたらを踏んだその半歩のおかげで突きが届かなかったからだ。男は銀牙の伸長が限界を迎えたその直後にその剣を打ち払う一撃を振るい、滑るような引き足を使う。
「その剣、人を斬る技ではないな。」
ようやく驚愕より立ち戻ったジロリとした目つきと共につぶやく。獅子の牙の閃けしこの刹那が男の胸中に生んだ思いだ。構えを取り戻す男の背後で余計な気配が生じる。「あの野郎、どこ行きやがった!」……先に男が出で来りし路地の闇からの粗野な声だ。男は忌々しげに鼻を鳴らす。
「その底を見たかったが、これまでだ。」
■タピオカ > どういう理屈かわからないが、手に持つ金属は、その金属に触れるものの感触をそのまま伝えてくる。たとえば、刃が人肌に触れれば人肌をほんのり感じる。刃が遺骸に触れれば不快な腐肉の感触を感じる。――受け流している曲刀、その逆手の持ち手からは彼の剣の感触が伝わる。よく伝わる。何人斬ったかわかる気がする。どういう気分でそれを斬ったのかも、ぼんやりと伝わる。あるいは、どういう気分を振り切りながら斬ってきたのか、までも。生まれた石火は彼の衝撃に押し開かれた黒眼と、つらそうに細められる自分の群青色の瞳をそれぞれ照らす。受けた左手の小指が、直接触れていないのに切り落とされてしまいそうだった。ぎっと結ぶ唇。
三日月の次撃を走らせた。右肘をあげ、左肘をも彼へと肘打ちのように上げては、右向きに回転した上半身を返す勢いをこめた左回転。それらをこめても。まだ己には鍛錬が必要らしい。身長差や薄明かりに見誤った間合い、そして初撃を受けた後の詰めの甘さが際立ったらしい。
「なっ……?」
深くは無いが喉に刺さった、と思う間もなく。
その感触が訪れなかった一瞬が気の迷い。声音が浮いたとたん、彼の剣が自分の得物を振り払った。慌てて、腕の力を緩めて剣を持ち直し。両足で引き下がる。
「そうだよ。魔物を斬ってきたんだ……。――ちぇー。残念。それじゃあ、手合わせありがと。剣豪さん。僕はタピオカ。……縁があったら、また!」
ジロリと見下ろす台詞にはそう答えて。間合いを図り直すようにサンダルの足先が貧民窟の荒れた地面をぎりっと鳴らす。――が、そこへ雑音が入り込んだ。忌々しげに言い放つ相手の様子には、どうやら第一幕も閉幕といった頃合いらしい。獣の毛皮を脱ぐよに表情は元の調子に戻り、唇を尖らせた。そして、さらに一歩退き。戦意は無いといったように、曲刀を鞘に治めながら。にこりと笑顔を咲かせて片手を上げ。名前だけ名乗った。彼の返答はどうあれ、やはりにこやかにその場を立ち去り――今日の手合わせのお礼とばかり、あるいは相手にとっての余計なお世話かもしれないが。数瞬もしないうちに路地の闇からは「うぇっ!」という、呻き声が浮かぶ。遊牧民の曲刀がその粗野な声の主に闇討ちを食らわせた音だ。相手がその場を改めるのなら、気絶した男が路地に転がっている。――貧民窟の夜は更けていく――。
■ジュウザ > タピオカ、か。名を返さんと口を開きはしたのだが、どうもこの口は重きに過ぎるきらいがある。ジュウザだ、と声を発した時には既に相手の姿は闇へと消え去っている。そう――まるで砂塵を巻き吹き抜ける、一陣の風のように。その人の後姿を飲み込んだ闇の向こうから鈍い打撃音と情けない声音が転がり出てきた時、剣を納めた男の口元が僅かに動く。……味なことをする。
その場を去る男は胸の内に思う。切り結んだあの刹那、相手の獣の顔をよぎった曇りは果たして何であったかと。
斬った敵の数など覚えておらぬ。ただひたぶるに剣の術理にのみ従う無心の斬り合いは、何の痛痒も伴わずに行われてきたものだ。それが獣の心に、如何なる人の情けを呼び起したかなど……この男も残された闇も、知らぬ。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からタピオカさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からジュウザさんが去りました。