2017/05/25 のログ
■サンゾウ > 月を眺めていた男は、いつの間にか夜の闇に消えていく。
ご案内:「王都マグメール 裏路地」からサンゾウさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 娼婦街」にクロエさんが現れました。
■クロエ > 夜の娼婦街は、貧民地区の中でも別格の賑わいを見せている。
人間も魔族も、生きていれば誰しもが性欲を抱き、その発散する当てを求めてこの猥雑とした空間に足を踏み入れるのだ。
周囲の店は魔法の灯で様々な色に照らされており、異世界に迷い込んだかのよう。
聞こえてくる甘い女の声と、様々な匂いを誤魔化すための、強すぎる花の匂いを感じながら。
「……いや、うん。セクハラだ、とか気にしちゃいけないよね」
押し付けられた仕事を律義にこなす少女の抱える業務は、今では二人分を優に超す量だ。
見回りに歩く距離も大幅に増えており、これだけで痩せるのではないかと思うほど。
しかし、少女が見回らなければ、誰かが困るかもしれない。そう思うとさぼるわけにはいかなくて。
「さて、気にしないで、しっかり見回って行こう!」
頬を軽く叩き、気合を入れると、欲望の巷に足を踏み入れた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 娼婦街」にロレンスさんが現れました。
■ロレンス > 新たな血を求めて、夜の雑踏へと繰り出したものの、賑やかを通り過ぎてやかましく感じるような世界は、ゆったりと過ごすにはまるで向かない。
こうした煩い場所にも、自分の渇きを癒やしてくれる存在が紛れることもある。
暗がりに溶け込むようにして静かに佇んでいると、活気のいい声が耳に届く。
なんだろうかと銀髪をゆらりと揺らしつつそちらを見やれば、幼さの残る少女が目に飛び込む。
自分と同じ銀髪に青い瞳、格好からして騎士か何かだろうかと思えば、ほんの少しだけ自身の魔力を開放していく。
大きく広げてしまうと、他の輩にもバレてしまう。
指先に真紅のビー玉のような物を浮かべると、指鉄砲でそれを彼女に差し向け、銃撃のごとく指から弾いた。
ふっと空中に溶けて消えていく魔力は、限界まで圧縮されているゆえに、他のものには気付かない。
然し、彼女の進路と重なるように撃った礫が当たれば別だ。
痛みも感触もない、ただ濃い瘴気と魔力の気配、そして方向が分かってしまう。
(「さて、まずはこれぐらいで気付いてくれると助かるが……」)
雑踏の中を掻き分けて近づくにしても、傍で仕掛けるにしても、邪魔無く手に入れるには分が悪い。
彼女を誘い出す一手を放つと、軒下に吊るされたカンテラの明かりに、ゆらゆらと照らされながら柔和に微笑えんでいた。
■クロエ > 道行く先、客引きの男達が早々に道を開ける。
それはさながら、どこぞかの宗教画にある海を割った聖人のような気分だ。
道を歩く娼婦達からは、時折のからかいと、ねぎらいの言葉が飛ぶ。
こんな場所でも騎士の見回りがあると、安心するらしい。
存外に過ごしやすい空気を味わいながらの見回りは、しかし平穏には終わらなかった。
最初に感じたのは、点の圧力。自身に向けて何かが放たれた感覚。
それは、少女の生まれ持つ獣のような直感――人よりも偶然の気づきが多いのだ。
気づいてしまえば、其の後に続くのはいつも通り。常在戦場の覚悟だ。
少女の思考は切り替わり、警戒心による知覚の鋭敏化と即応の為の抜剣を続けざまに行う。
人込みの中、周囲が気づくよりも早く振り向くと、剣の側面を放たれた魔力にぶつける。
「っ……い、いきなりなんだっていうのさっ!?」
放たれた魔力がどのような意図だったのかはわからない。
しかし、往来で襲撃されるということは、周囲の人にも危害が及ぶ可能性がある。
短く溜息を一つ吐くと、瘴気と魔力の方角へ素早く跳躍。人込みを縫うようにして、一息で元凶の元へと駆けていく。
■ロレンス > 「おや……これは意外だ」
恐らく貴族の娘かなにかで、騎士の真似事をさせられている程度、そんな風に思っても居たが……気配で察知し、礫を弾く様子を見れば、少し目を丸くして驚くも、その才能に嬉しそうに笑うのだ。
油断しているとあっという間に距離を詰められそうな身のこなしに、釣りではなく狩りに変わる夜の宴に、変わらぬ笑みのまま壁に寄りかかっていた背を起し、すっと路地裏へと足を向けた。
「こっちだ、お嬢さん」
人の行き交いが不規則なブラインドとなって、彼女と男との視野を何度か塞ぐが、一気に近づけば、まるで手品のように軒下から消えている。
しかし、コツコツと響く足音は裏路地へと消えていき、ちらりと彼女を見やって角を曲がるのだ。
明らかに誘い出す動きを見せつつも……喧騒も遠ざかった裏路地の平地へとたどり着く。
周囲は朽ち果て、焼け落ちたような建物の跡があり、再開発が進んでいない荒れ地だ。
「いいのかな? 可愛いお嬢さん一人で、こんな裏路地にきて……君の声も、叫びも届かない場所に。魔族に襲われたら大変だね」
振り返れば、王都にいる貴族にしては派手すぎず、程よく着飾った姿に細い体付きが見えるだろう。
銀髪の下に伏せていた瞳は、普段は紺色だが敢えて本性たる赤色を晒す。
彼女に当てた瘴気、魔力、ほんの少しだけ血の香りを交えながら広げていきながら、変わらず微笑んでいた。
■クロエ > 今や騎士にも腐敗が見え隠れする世の中だが、少女に限って言えば真面目で実直だ。
実家で蝶よ花よと育てられる事を捨てて手に入れた、自分自身の力――だからこそ、今の一撃にも即応できる。
自身を狙撃した人影を視認すると、少女は足取り軽く疾走する。
途中、態と誘う様な仕草には、かつての経験を思い出して苦い表情を浮かべるが、それでも追う事はやめない。
例え誘われていると分かっていても、危険な存在はを見逃してはいられない。
やがてたどり着いたのは、寂れた廃墟が軒を連ねる荒涼とした平地だった。
そして、少女の後背――死角から掛かる声には、苦笑とともに振り返る。
「生憎と、その可愛いお嬢さん以外に見回りをする騎士が居ないんだよね。
お陰でこうして、出会い頭に狙撃してくるような、危ない相手に会えた訳だけど。
――大変だろうねぇ。でも、勝っても負けても、ボクの相手をしている間は、釘づけだよね。
覚悟の上でここに立ってるんだから、今更脅しても無駄だよ?」
赤い瞳を見つめるのは、澄んだ青色の双眸。その鋭さは、鋭い敵意に満ちている。
問答も何もなく、理由すらなく手を挙げる様な輩を野放しにしておける訳がない。
故に少女は、もう一方の剣も抜き放つ。片方が赤、もう片方が青。氷炎の双剣が少女の両手に淡く輝く。
「……それにしても、叫びだなんて物騒だね。拷問にでもかけるつもり?」
血の香りが漂う中、男の微笑みに返すように、少女もまた不敵に笑う。
仕込まれた淫具は不安要素だが、それでも刃を交える以外の選択肢はなかった。
■ロレンス > 「成る程ね、今も昔も、この国は変わらないというところか。若い割に随分と自信家だ、ならば賭けでもしようか?」
彼女の何処と無く呆れたような言葉に、こちらも苦笑いで頷くも、続く言葉は幼い割に自身に満ち溢れた言葉だ。
強く殺意を当てたつもりはなかったが、彼女は既に剣を抜いて臨戦態勢である。
少し話をして、それからでもいいかと思っていたが…猪突猛進ならば、相応の手段を取るまで。
こちらは武器を手にする様子もなく、大体5mほどの距離で彼女を正面から捉えていた。
「可愛らしい少女が壊れていく声は好きだが、あいにく本当に壊しきってしまうのと、殺してしまうのは嫌いでね。だから…君のような可愛らしい娘を見かけると、こうやって誘い出すんだ」
そうつげれば、地面へ向けて軽く掌を振るうと、二人が立つ大地いっぱいに赤黒い魔法陣が浮かぶ。
円の中に、蝙蝠羽で作られたバラを象った家紋が浮かび、赤黒い魔力の膜が周りとの空間に隔たりを作る。
「君が私を退けられれば、君が望むものを送るとしよう。君が負けたら……君の血と、贄姫としての印を刻ませてもらう」
退けられれば、その言葉はある意味彼女に対する驕りとも言える。
殺されることや、差し出す余裕がなるほどの手傷を追うことがないと言っているようなものだ。
彼女に選択肢を与えるような言葉を紡いでいるが、この場に踏み込んだ以上は掛けに乗ってもらうことになる。
変わらぬ笑みを浮かべつつ、説明を終えると、掌を彼女の方へと向けた。
「ではどうぞ、レディーファーストだ」
先手を彼女へ譲り、まるで口説き文句でも紡いでいるかのように微笑み、赤色が弧を描いていく。
■クロエ > 「そう言う事、になるかは知らないけれど、多分変わっていないのだろうね。
自信なんてないよ?ただ、君はボクを襲う気なのだから、勝っても負けても、どちらにせよその矛先はボクに向く。
それなら、どちらにせよ騎士として少しは役に立ってるんじゃないかな、なんて――強引だねぇ、うん」
賭けという言葉は、しかし予定調和なのだろうと直感が告げている。
彼我の実力を冷静に分析するが、周囲の空間を覆えるような魔力を相手にするのは容易ではない。
少女を誘い出した上で、余裕綽々なのだから当然自信があるのだろう。
戦う前から敗色濃厚な気もするが、今更後には引けないのである。
「壊されたくはないけど、君に屈する気もないんだよね。
……結界まできっちり作って、そこまでしてボクを虐めたいって訳?」
赤黒い魔力の檻の中、少女は鋭く男を見る。
空間を切り分けてくれるのならば、こちらとしても願ったり叶ったり。
それならば、今の自分でどこまでいけるかはわからないが、存分に暴れさせてもらうとする。
「望むものがない場合はどうすればいいかな?それだと君だけ得するから賭けにならないよね。
……それと、ボクは君ほど強くないとは思うけど、少々油断が過ぎやしないかい?」
目を瞑り、一呼吸を置いて再び開く。
同時に体内で練るのは魔力だ。淫具も振動を始めてしまうが、こればかりは耐えるしかない。
開放するのは、左手に持つ蒼き剣。作り出すのは、氷結の庭園だ。
初夏の近づくこの季節に赤い世界に降り注ぐ氷雪――空気が急激に冷え、足元には霜が舞い降りる。
「く、ぅんっ……それなら、行くよ?」
陰核のリングに噛み殺した甘い声を漏らしつつも、意識を完全にシフトした少女は快楽を意識的に遮断する。
刹那、跳躍すると共に空間へと剣を振る。軌跡に無数の氷の刃を形成し、そのまま男へと射出。
剣林弾雨の中を縫う様に肉薄しながら、一線を叩き込もうとする。出し惜しみなどしていられない。少女は、最初から全力だった。
■ロレンス > 「……ふふっ、本当に君みたいな娘が何年に一人か現れるけど、少しは自分を大切にしないとね? 私が本当の悪党なら、こんな呑気におしゃべりなんてしないと思うけど」
伊達に悠久を過ごしてきたわけではなく、自身でも研鑽しながら得た力は、僅か十数年しか生きていない少女に及ばれるとは思いもしない。
それよりも、彼女の真面目で自己犠牲も混じった言葉に困ったように笑いながら告げるのも、魔族にしては奇妙な言葉だろう。
「大丈夫だよ、望まれない限り壊したりはしないさ。虐めるというよりは、君を知った上で、君を奪いたい…といったところかな?」
虐めたいのかと問う言葉にはゆるゆると頭を振って否定していく。
望むものがない、その言葉にはクスッと笑いながら彼女を指差し。
「大丈夫、君みたいな娘は更に力を求めるか…壊れそうな自分をどうにかして欲しいと、救いを求める事が多いからね。油断というよりは、性分だね。君の力を見てからのほうが、後がずっと楽しくなる」
少々態度を嗜められても、口元に手を当てて苦笑いを浮かべるぐらいのもの。
周囲の空気が冷えていくと、足元に浮かぶ霜に、なかなかの力だと感心しながら、以前戦った別の女騎士の姿が一瞬脳裏をよぎった。
ある意味予行練習済みといったところだが、不意に溢れた甘い声に、意識は現実に戻され、怪訝そうに首を傾げる。
「いや……今の声は…っ!」
彼女の異変に意識を取られた瞬間、無数の氷の刃が迫り、反応が一歩遅れてしまう。
少しだけ焦りの様子を浮かべるも、掌を地面にかざし、赤い鞘に収められた剣を出現させれば、それで飛翔する氷を打ち払っていく。
刃を抜くこと無く打ち払えば、肉薄してきた彼女にカウンターの拳を打ち込もうと自らも踏み込んだ。
剣の柄の方へ空いた掌を押し付けるようにして、刃の到達を遅らせながら、反対の手で納刀した剣を突き出すようにし、柄頭を鳩尾へ激突させようと仕掛ける。
攻撃が当たったにせよ、激痛はあれど少々痣が残るぐらいに加減した攻撃だ。