2017/05/17 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 街路」にクロエさんが現れました。
■クロエ > 夜の見回りは大事な任務であるものの、最近は受ける物好きなど少ない。
騎士達にも家庭があり、或いは夜の娯楽があり、皆が任務を敬遠するのだ。
そしてやってきた鉢を受け取った少女は、嘆息しながら貧民街を歩いている。
溜息の理由は、任務に対するものではない。見回りを断ってしまう騎士達のせいだ。
「んー、当番制、のはずなのだけどなぁ。まぁ、ボクは全然構わないけどさ」
独り身で夜の予定がある訳でもなく、見回りをするのも当然のことと受け止めている。
だからこの程度は苦労にもならず、その足取りは軽かった。
街路を進めば、路地から飛び出してくる気配。それをさらりと受け止めて。
「あはは、残念。ボクから財布を掏ろうとするなんて、だめだよ?
ボクより、お忍びできた貴族様とかだったらもっと怖い目にあっちゃうし。
んー、残念ながらお財布はだめだけど……ほい、お夜食のサンドイッチ。
お腹空いているなら、今夜はこれで我慢しときなね?」
少年に包みを押し付けると、頭をわしゃわしゃと撫でてやる。
くすぐったそうに逃げていく少年を見送りながら、目を細めて。
「……流石に、あの位の子に紹介できるお仕事とか知らないしなぁ。
本当は食べ物やお金じゃなくて、それらを得る方法を教えてあげるべきなのだけど」
呟くと、くぅ、と小さくなるお腹を恨めしそうに見つめて。
もう無くなった夜食のことは諦めて、見回りで空腹を紛らすことにする。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 街路」にシェイアさんが現れました。
■シェイア > 貧民区の路地の奥まった場所。
そこに二つの人影があった。
場所に似つかわしくない女性にしては長身、魔術師のような眼鏡の女。
かたやその目の前には黒いローブですっぽりと全身を覆った女性の姿。
後者はご丁寧にフードまで被ってさも目立たないようにしている。
「…はい。ご家族で楽しんでいただければいいかと。」
糖蜜のような甘さ、それも毒の甘さを含んだような声が眼鏡の女から発せられる。
それと同時に、薄紫の液体が入った小瓶を差し出した。
女性はためらうものの、『さぁ』、とその声が一言告げればそれを手にした。
そして代わりにずっしり重そうな革袋を差し出す。
ローブ姿の女性は一声礼を告げれば踵を返し、路地の奥へと消えていく。
場合によっては非合法な取引現場にも見えるかもしれない。
さて、それを見回りの少女は気づくだろうか?
■クロエ > 一通り街路を見回った少女は、奥から戻りがてらのもう一周。
踵を返して幾つめかの路地に差し掛かった少女は、聞こえてくる話し声に、無意識の内に捉える。
取るに足らない会話ならよいが――と視線を向けたその先には二人の女性の姿。
片方は眼鏡をかけた魔術師の様な理知的な女性、もう一人はフードを纏った何者かだ。
声音を聞けば女性だと分かるが、そのシルエットはゆったりしたローブに隠されており、正確には測れない。
行われているのは取引か。紫色の瓶を渡し、代わりに何かが詰まった革袋を受け取っている。
非合法な取引か、とも思うが、ご家族で楽しむ、となると判断はし難い。
「……葡萄の果実水、と言う訳ではなさそうだけど……」
やがて取引が終わると、眼鏡の女性は足早に立ち去り、ローブの女性もまた踵を返して奥へと向かう。
どうしたものか、と一瞬考えるものの、話を聞いてみる位はするか、と騎士の職務に取り掛かる。
彼女の後を追って路地の奥へ。慎重に、警戒しながら進んでいくこととしよう。
■シェイア > こつ、こつ、とヒールが音を立てながらゆったりした歩調で路地の奥へ。
取引は終わった。今日のところは邸宅に戻る事にする。
アレの感想はまた後日、聞くことができるだろう。
場合によっては追加分も用意して伺ってもいいかもしれない。
そう思考していると、うっすら口元に笑みが浮かぶ。
一定の歩調を保ったまま、ゆっくりと路地の角を曲がる。
そして、少女が追いかけて来ればその角の死角で待ち受けている事だろう。
「…貴女も興味がおありですか?」
毒を含んだ蜜のような声が問いかけてくる。
眼鏡の奥の瞳が、少し愉快そうな色を湛えて少女を見つめているだろう。
狭い路地は大立ち回りには不向き。さて、少女はどう動くだろう、と観察しているようでもある。
■クロエ > 路地の先は暗がり。慣れていなければ何も見えないような場所。
しかし彼女も、そして自らも、足を止める気配はなく、ヒールが石畳を打つ音が響く。
さらに進めばその先は、月影でわずかに明るい角だ。彼女が曲がる様子を見てから、少女もまた角を曲がり――。
「――っ!?……あはは、びっくりしたなぁ、もう」
角を曲がった先に彼女の姿はなく、代わりに予想以上に近い死角に、こちらを見据える姿があった。
その声音は先程よりもよほど甘く、耳朶より染み入る毒の様。銀の加護がなければ、どうなっていたかはわからない。
ともあれ、少女もこうした手合いには残念な事に慣れている。こほん、と咳払いをしてから。
「失礼、貴女の後を追ったのは、大通りまでの道案内をしようかと思って。
女性の一人歩きは危ないから、騎士として見過ごせなかったのだけど……。
興味、というとさっきの小瓶だよね?危ないものかどうか、という点だけ、確認はしたいけど?」
そうでないなら、先の取引に首を突っ込むつもりはない。
家族で楽しむということは、存外美味しい飲み物という可能性もある。
故に、今は様子を見つつ、問うだけに留めておく。
■シェイア > 若干の魔力を込めた声は、どうやら効果をなさなかったらしい。
そこいらの騎士であれば反射で頷かせる事もできたのだろうけれど。
なるほど?面白い。
そんな風に思いつつ、こつん、と少女に一つ歩み寄った。
「ふふ。ご心配をおかけします。若い騎士様。
先ほどの小瓶ですか?…えぇ。構いませんよ。」
問われた言葉に素直に礼を言い、疑問には朗らかに返す。
懐より先ほどと同じような小瓶を取り出す。中には薄紫色の液体。
それを目の前の少女に差し出した。
小瓶の蓋を開ければ、甘く、どこか蠱惑的な香りが広がるだろう。
女性が奥に秘めた情欲をくすぐるような、そんな香り。
「…香油ですよ。貴族の奥方様は色々と苦心なさっているようです。」
■クロエ > 魔法にはさほど詳しくないが故に、声に魔力が込められていた事に気づいてはいない。
ただ、少女が身に着けていた銀の装備が、退魔の備えとして彼女の魔力を弾いたのだ。
少女の装備を剥いだなら、彼女の魔力を防ぐ手立てなどなくなってしまうのだが。
一歩歩み寄る彼女に、少女もまた一つ進む事で応える。臆した方が負けなのだ。
「いえいえ、ただ、雰囲気を見る限りだと、余計なお世話だった様な気がしなくもないかな?
ボクが取って食われそうだし――ん、それじゃ、少しだけ改めさせてもらうね?」
差し出された小瓶を受け取ると、まずはその物を検分。唯の小瓶であることを理解する。
次いで蓋を開けると、濃密な甘い匂いが空気に散って、蠱惑的なむず痒さが沸き上がるような気分になる。
とろりとしたそれは、しかし彼女の説明を聞く限りだと違法性はどこにもない。
また、家族で楽しむ、という意味も、これを焚いて休憩でもするのか、と判断。
あまり長く嗅いでいると危ない、と無意識の内に察知したのか、手早く蓋を閉めると。
「ん、問題はなさそうだね……苦労ねぇ、ボクには分からない事が色々あるんだろうねぇ。
それにしても、香油かぁ。お洒落だね。お姉さんは、薬師か何か?」
少女もボーイッシュだが女の子、お洒落にはそれなりに興味がある。
相手の警戒心を解く意味も込めて、少しの会話を試みる。
■シェイア > 眼鏡の奥の瞳はじっと少女を見つめている。
魔力が効果を表さなかった原因を思考で検分する。
まぁ、大体の場合本人のギフトか、アイテムによるものか。
しかし若い、というよりは幼いと言ってもいい年ごろだろうに。
なかなか肝が据わっている、と感じる。
「…ふふ。騎士様は冗談もお好きなようですね。」
検分の終わった小瓶を受け取る。
そう、違法性はどこにもない。毒でもないし、依存性もないのだ。
ただその香油の香りは、なぜかその場に滞留し続けているように感じるだろう。
耐魔力も、危険性の察知も見事。では残り続けるものにはどのように反応するだろう。
「えぇ、そのようなものです。傷薬。香油。石鹸…そのようなものをよく作っていますよ。
…ふふ、貴女にも興味が?」
うっすらと浮かべた笑みはどこか艶っぽい。
声をかければ数人の男性なら特に苦も無く落とせそうな雰囲気である。
■クロエ > 己を測るかのように、彼女の視線が降り注ぐ。
しかし、彼女の魔力をレジストしたことに気づいてないが故に、どうして見つめられているかが理解出来なかった。
騎士としての経験と貴族故に胆力のお陰か、得体のしれない気配のする相手を前にしても、どうにか怯えないでいられる。
ふわふわと甘い匂いの漂う中、少女もまた、彼女を見上げるように視線を向けた。
「冗談、だと良いんだけど、お姉さんの隙、全然ないから、すごいなぁって。
それにしても、随分と長持ちするんだね。まだ甘い匂いが消えないのだけど」
彼女の商売は、正当なものらしい、と自分の中で結論付ける。
一つ気になるのは、先ほど散った甘い匂いが未だに周囲に漂っていること。
本来ならば風の一吹きで散るはずだが、その気配は見えてこない。
偶然、と言われればそれまでなのだが、直感がわずかに警戒を示す。
「ん、そっか。色々作ってるんだね、尊敬かも――んぅ、少しだけね。
爽やかな香りの奴とかあるなら、今度売ってほしいなぁ、とか思ったり」
見上げる先、彼女の浮かぶ笑みは匂い以上に蠱惑的だった。
女である自分すら、ぞくりと背筋が震えてしまうほど。男だったら一瞬で悩殺されてしまうかもしれない。
甘い匂いと彼女の笑み、双方が合わさると、魔力とは別に、雰囲気に酔ってしまいそうになる。
魅了の術は、以前受け入れた事がある分抵抗性も弱いらしく、僅かにどぎまぎしながら慌てて視線を逸らした。
■シェイア > 「隙? ふふ。まぁ、そうですね。
ある意味商人でもありますから…隙を見せれば付け入れられる、でしょう?」
見上げてくる少女の前には蠱惑的な笑み。
甘い香りと共に、吸い込まれるような瞳が瞬く事もなく少女を見つめている。
滞留する甘い香りは、徐々に少女を侵していくかもしれない。
甘い想像。淫らな妄想。蕩けるような幻想を、脳裏に。
直感による警戒も、少し遅れれば甘い糸が縛り付けてしまうやも———。
「爽やかな?…柑橘のようなものが良いかもしれませんね。
覚えておきましょう。………あら、どうしました?」
少女が慌てて視線を逸らせば、うっすらと目が細まる。
まるでこちらが隙を見つけたとでもいうように。
ふ、と何気なく手が動く。
仕草に気を取られれば、開いた胸元や、潤った唇へと視線を誘われるだろう。
術や薬を用いず、相手の本能へと訴える妖艶な所作。
■クロエ > 「そういうことか――なんかちょっと違う気もするけど、まぁいっかなって。
とりあえずお姉さんが危ない物とか売ってる訳じゃないから、突っ込んでもしょうがないし」
彼女の物言いは一見理論的だが、何かを意図的に隠しているような気がして。
直感は妙に聡いものの、彼女の色々に不躾に踏み込むのもよろしくないと自制して。
甘い匂いを振り払う術だけはなく、徐々に、ゆっくりと気分が高揚し、脳裏に甘い予感が混ざる。
徐々に蜘蛛糸で絡め捕られる様な感覚。しかし、そこに不快感はない。
「ん、よろしくね?……あ、はは、やっぱりちょっと、油断しすぎだったかな?
この匂い、ただ甘いだけじゃ、ないでしょ。これ以外、これと言って気になるものは何もないし……」
体の変調で、ようやく香油の真の意図を悟る。
この香油は恐らく、あの貴族の女性が意中の人と交わる為に注文した物なのだろう。
酷く緩やかな効き目で多幸感のある媚薬は、盛られても不愉快になる所か好意を向けてしまいそうになる。
彼女のしなやかな手が動き、誘導されるままに視線を動かして。
「ま、待った。ボクは女の子で、お姉さんも女性だから、その、そういうの、はっ――」
目が合う。彼女の誘いは踏み堪えたものの、本能に抗った分だけ反動が襲い掛かる。
彼女に鳴かされる自分の姿をより鮮明に思い描いてしまうと、一瞬だけ思考に空白が生じて。
それは本当に僅かではあるものの、少女が無防備になった瞬間だった。
■シェイア > 「ふふ。そうですね。危なくはないですが…。
まぁ、用途にはよるかもしれませんねぇ…。」
お酒のようなものですよ、と笑みをもって答える。
飲みすぎには注意。使い方次第、という事だ。
答えながらも仕草はやめない。
ふにゅりと顔をうずめたくなるような柔らかな胸の谷間が歪む。
ちろりと唇に真っ赤な舌先が覗く。
より直接的に、少女の妄想を加速させていく。
「ええ。ですので最初に。奥方様は色々と苦心なさっていると。」
しれっと答える。
それはそういう意図をもって購入してもらったものだと。
…尤も、匂いの滞留に若干の気流操作は行ったのだが。
「そういう?……どういうのですか?」
少女の言葉に疑問で答える。
少女が反射的に「そういう事」を想像した瞬間に————。
『されたい?』
と思考の空白に、甘い蜜が滑り込ませる。
たった一言。まるで少女がそれを望んでいるかのように錯覚させ、誘導する魔性の言霊。
■クロエ > 「そ、っか。それなら、安心といえば、安心、だけど……。
く、ぅっ……そ、そういうの、だめだってば、もうっ!」
柔らかそうな胸元は、甘えてしまいたくなるほどに魅力的。
唇を舐める様な舌先も、妖艶な雰囲気を纏いながら、少女の理性を揺さぶった。
脳裏、彼女によって自由を奪われ、愛玩される姿が浮かぶ。
それは彼女の誘導か、それとも少女の秘めた欲望か。今の少女には判別できない。
「は、ふぁ……道理で、くらくら来ると思ったら……媚薬、なんてね。
……ボクを、どうするつもり?このまま、薬に酔わせて、さ……」
彼女の手に絡め取られる前に、それだけは聞いておきたい。
罠にかかった以上、最早手遅れ。ならばせめて、目的くらいは知っておきたい。
薬師であるならば、それすら消せる薬があるのだろうが、それでも少女は騎士だった。
「どういうって、その、え、えっちな――」
先よりも直接的に、彼女の責めに悶える己が見えた瞬間、言霊が滑り込む。
自身の不覚を理解する程度の理性はあったが、しかし少女の首は縦に動いて。
「――され、た、い……」
一度首肯してしまうと、それを契機に堅牢だった抵抗性が霧散する。
形はどうあれ、彼女の言葉を受け入れてしまったからだろう。
自我は残っているものの、指の一本すら動かせないような、催眠に近い感覚に陥りながら、どこか陶酔した視線を向ける。
刹那を経て、少女は確かに、彼女に魅了されていた。