2017/05/14 のログ
■ルーフェン > 豪快な笑い声が店内に響く
人は少ないものの活気はある店内にて、パンの一欠、スープの一雫でさえ、無駄にしないよう口に運ぶ
空腹は最高の調味料であった…硬くてモソモソするパンも、味気のない白湯のようなスープも、
これまで食べた人間の料理の中でかなり上位に食い込む味のような錯覚…夢中になって手を動かしていれば、
背後で勢い良く立ち上がり、ドン、と背中を押されて不運なことに掬ったスープが零れる
「――――……」
僅かばかり、本当に僅かばかり皿の外に溢れたスープ数滴
…しかし、このくらいで怒るほどの器であれば、とっくに自分が死んでいるか、或いはそこら中、
塩の柱に変じている
このくらいで怒るような自分ではない、と内心唱えていれば、背後で立ち上がった男は、
いささか寄っていたのだろう、悪い悪い、と力任せに自分の背中をバシバシとと叩いた
―――バシバシ…ドシャン
背中を叩きふらり、とふらつく男の脚元
なんとか体勢を保とうと、手をついた場所は自分の座ったテーブル…脚元だけでなく、
手元も覚束ないらしく、スープの入ったボウルに指先が掛かり、悲しいかな、ボウルはテーブルの外へ落ちた
当然、液体がボウルに留まっていることは出来ず、自然の摂理に従い、溢れて落ちる
男の覚束ない様子に店内に笑い声が響く
『何やってんだか』、『それっぽっちの酒で』などなどと…男も酒が入り気分が良いのか、釣られるように
ゲラゲラと笑い声を零す
店はほんわかと笑いに包まれて貧民地区にあっては温かい雰囲気に包まれた……――若干、一名を除いて
そんなに笑うんじゃあねえよ、と店内を見渡す酔った男
その視線が、此方へ向けられた瞬間、店内の誰もが目を疑った
男の体が下から押し出されるように浮き上がり、天井の梁に後頭部を強かにぶつけ、そのまま意識を失った
ブチ切れたらしい自称・器のでかいドラゴンの掌打が男の顎を見舞ったのだ
「…おう、何が面白い?
主ら、応えてみよ…聞いてやる」
立ち上がり店内を見渡す。もしゃもしゃ、と硬いパンを咀嚼しながら
背後に凄まじい怒気を帯びるから、笑い声はピタリと止まりごくり、と一同が生唾を飲み込む音が小さく響く
和やかだった酒場は一転、得も言われぬ緊張感に包まれる…誰も動いてはならぬ、そんな雰囲気が
しばらく続いたが、そんな緊張感に耐えきれなくなった気絶した男の連れが絡みつく空気を振り払うように
大声を上げ立ち上がると腰に下げた短剣を手にする
どしゃん、がしゃん、ぱりーん
店中をひっくり返したような音が貧民地区の一角で響く
人通りの少ない店の前の通りを歩く人影が店内から聞こえる音に何事か、と足を止め、さらに響く
大きな音に慌てて店の前から駆けていく
店の中に動く客が自分以外にいなくなれば、ふう、と息を吐きつつ、衣服の埃をハタハタと落とし
馳走になった、と震えて動けなくなっている店員に一声かければ店を後にするのだった
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からルーフェンさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にティエンファさんが現れました。
■ティエンファ > 「はいよ、まいどー」
酒場の裏口から出た少年は、掌の上で今日の用心棒の報酬を数え直す。
正しく支払われてるのを確認すれば、金袋に入れて腰に下げた。
湿ったかび臭い匂いがする路地裏を、鼻歌交じりに歩き出す。
「追加報酬はないが、定刻で終わるってのはありがたいな
まだ日が出ている間から呑み直す事もできるってもんだ
…確かこっちに旨い店があったと思うんだけどー…っと」
狭い路地裏をすり抜ける様に駆けて来る人影を見れば、身をかわそうとして。
しかし、駆けてきた人相の悪い男は、避けた少年に向けて身体を翻す。
スリか、暴漢か、良くある光景だ。 少年より頭一つ大きな男が、拳を握って殴りかかる!
■ティエンファ > しかし、特に慌てた様子も見せずに首を傾げ、その拳を頬に掠らせながら避ける。
そのまま腰を落とせば、突進の勢いが止まる前に半歩前、するりと力も込めずに足を払う。
思いっきりつんのめり、そのまま地面に顔から転がる男。 それを振り返り、小さく舌を出す少年。
「武芸者襲いたいなら、もうちょっと搦め手で来いっての
…なあ、アンタもそう思うだろ?」
そのまま真上を向けば、金袋から取り出した銅貨を強く弾き飛ばす。
上から石を持って覗き込んでいた男の眉間を強く打つ銅貨。
「恵んでやるから、怪我をする前に帰りなって、悪い事は言わんからさ」
■ティエンファ > 面食らった様子で額を押さえる屋上の男。 硬貨が当たった眉間が割れ、血が滴って居る。
にやりと笑う少年は、立ち上がろうとしていた巨漢のこめかみを、躊躇いも加減も無く爪先で蹴りぬる。
ぐぅと呻いて倒れ伏して動かなくなる男。 それを見下ろしてから、肩を竦めて。
「今日は荒事が無かったから、体力が余ってるんだ
用心棒の仕事上がりだからって、疲れてると思うなよ?
狙うなら他当たってくれ 俺は割に合わんぜ」
言いながら歩き出す。 突っ伏して動かない仲間と、去ろうとする少年を交互に見て、おろおろする襲撃者。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にルイトさんが現れました。
■ルイト > 薄暗い路地に乾いた拍手の音が鳴り響く。
偶々出くわした知り合いと襲撃者の顛末を、野次馬然として眺めていたらしい。
「お見事さん。……久しぶりだな、ティエ」
凭れている薄汚れた壁から背を離し、ニヤリ笑う。
彼の身体越しに、襲撃者はどうするのかと。傍目に伺いながら…
「何だか、見ないうちにまた強くなってるみたいだなァ。鍛錬は欠かしてないんだろうけど」
■ティエンファ > 拍手と、青年が少年に話しかける様子を見て、屋上の男は慌てて逃げていく。
その足音を後ろに聞きながら、ルイトに軽く笑って返す少年。
「物の数じゃあないさ ルイトご無沙汰じゃん、元気そうだな
はは、男子3日逢わざればって言うじゃん、まだまだ強くなるぜ!
そっちはこんなトコで何してるんだ?」
俺は仕事帰り、と先に言いながら訪ねる。
ルイトの前で立ち止まれば、再会を喜んで笑う。
■ルイト > 慌ててその場より逃走する男の、遠ざかっていく足音に笑う。
其処に横たわっている巨漢はそのうち回収されるか、適当に目を覚まして去るのだろう。
「結構なこった。せいぜい俺も追い抜かされないようにしなきゃあな」
「俺か? 仕事帰りだよ。お偉いさんがちょっと其処まで用事だっつぅから、用心棒してきたところだ」
此方も再会を喜び、久々にティエンファの姿を間近に見つめる。
パッと見は、以前とそう変化はないようだが。
■ティエンファ > 「お偉いさんがねえ…こんな場所に用事があるお偉いさんなんてきな臭いこって」
呵々と笑って返しつつも、深くは詮索しない。
用心棒や護衛をしていれば、踏み込まない方が良い場所もよくわかるのだ。
眺める少年の身体は筋肉や傷が増えた様子は無いけれど、
佇まいは随分と落ち着いた熟練の物だと分かる。
「そんじゃまあ、良かったら途中まで一緒に行こうぜ
これから酒場に行って、仕事上がりの一杯ってのをしようと思ってたんだ」
■ルイト > 「別に大したことじゃねぇさ。商売相手と話があるんだと」
同じように、自身も依頼人に必要以上の詮索・勘ぐりはしなかった。
面倒ごとに巻き込まれるのは御免だ。仕事をこなして、金だけ貰って退散するに限る。
以前より随分と落ち着いた風情を見、感心するよりも先に安堵の念が湧く。
しっかり強くなっているようだ。
「おぉ、行こうぜ。俺も一杯飲もうかって思ってたところだ」
言うと彼と連れ立ち、路地を抜けようと歩き出す。
■ティエンファ > 「商売相手ねえ…まあ、色んな店があるからな、ここいらは」
軽く笑って歩き出す。 ルイトが初めて見た時よりも、強くなったと言うよりもー…
浮足立ったところがなくなった様子は、武芸者と呼んでも差し障りの無い所作。
「暫く姿を見なかったけど、街を離れてたとか?
前に会ってから噂を聞かなかったんで、心配してたんだぜ」
しかし、そう言って笑う顔はまだどこか子供っぽい人懐っこさ。
■ルイト > 「あぁ。富裕地区ほどじゃねぇが、色々だな。健全な酒場から、いかがわしい店まで」
武芸者。歩いているその姿からも隙といったものは垣間見えない。
しかし表情の懐っこさは変わっていなかった。此方も微笑みを浮かべ、言葉を返す。
「まぁな。ちょっとシェンヤンの方に用事があったんで、王都を離れてたんだ」
「そっちが一段落したから、漸く此処に帰ってこれたってわけだな」
■ティエンファ > 「へぇ、シェンヤンまで? そりゃあ長旅だ
俺はあっちの生まれだけど、都に入った事ないんだよなあ」
山育ちでさ、なんて話をしつつ路地裏を行けば、向こうに見える酒場の看板。
エールとあぶり肉が旨いんだぜ、なんて言いながらそっちに脚を向ける少年。
あまり店構えは綺麗ではないけれど、良い匂いが漂っている。
■ルイト > 「へぇ。シェンヤンの山か……そういや、途中ででっけぇ山を見た気がするな」
どこだったか……と思い出す前に、どうやら酒場に着いたらしい。
炙り肉か、と期待するような声を零しながら、ティエンファについて店に足を向ける。
鼻先に漂う良い匂いに思わず口元も緩むというものだ。
■ティエンファ > 「なんて山かも知らないけどな …さ、呑むぞー!」
そう言って酒場の扉を開いた。
その日はきっと、遅くまで二人で呑みかわすのだろう。
酒の強さも、相変わらずだった。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からティエンファさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からルイトさんが去りました。