2017/03/28 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノエル・ベネトーさんが現れました。
■ノエル・ベネトー > 困った。
ことの始まりは、いつもより多めのお金を持って出掛けたことであった。
あまり多く持ち歩いては危険だと教わって以降、最低限の持ち出しだったのだけれど、
最低限すぎたようで先日は初対面の方にケーキを奢らせるという事態に。
1か100かといった性格なのか、今度はまた多めに持ち出したのである。
そして、紛失。
昼間歩いた道を辿る途中、普段は足を踏み入れない貧民地区を歩く。
ほんの少しだったが、野良猫を追ってこの辺りを歩いたのだ。
「………ありませんよねえ…。」
猫を見失った路地裏にて、探し疲れてしょぼんと肩を落とす。
そんなエルフに1人の男が近づいた。
「え?あ、はい、…え?
そんな、悪いですよう。
だってそのお金はあなたのものでは?
わたしのお金はですね、このくらいのポーチに入っ………え、違う?」
案の定娼婦に間違われている。
しかし勘違いしているエルフ相手の交渉は難航し、男も困惑気味。
男女の押し問答はそう珍しくなく、ある意味ここの風景に溶け込んでいるけれども…。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にエズラさんが現れました。
■エズラ > 「こりゃ……――」
拾い上げたポーチの中身をあらためて、男は困惑していた。明らかにこのあたりに居る者が持ち歩く金額ではなかった。そもそも、かすめ取られることを恐れて財布すら持たず、現金を衣服のポケットに分散して持ち歩く――それくらいのことをするのが常識と考えられている貧民街。さて、これは天からの賜り物か、それとも――思案していると、耳に届く声。何とはなしに、記憶にある――角を曲がって、その先に。
「……あ、あ~……――」
この場所に似つかわしくないものが、もうひとつ見えた。手の中のポーチと、男に言い寄られているその姿を見比べて何事かを納得すると、すたすたと男の背後へ歩み寄る。ポン、とその肩に手を置き――
「そのお方はあんたが考えてるようなお人じゃねぇー……向こうへ消えなよ。」
語調は柔らかであったが、ひとたび視線を交わした男は――急に身震いし、すごすごとその場を後にする。そして、手の中のポーチをもう一人の眼前に掲げ――「また会ったな」と一声。
■ノエル・ベネトー > 男が一体何の話をしているのかすらピンと来ていないエルフは、ピンと来ないまま
男が追い払われたことに目を丸くし―――
そして、追い払った人物が誰であるか遅れて認知して貌をほころばせる。
「エズラさん~!
………あっ…、どこにありました!?」
ポーチを認知したのはさらに後のようで1テンポも2テンポも遅れる。
今夜はあの日と違い、湿気を含んでいない髪はふんわりと、
喜びに跳ねた身体に合わせて揺れた。
かなり探した様子で、表情に疲弊と安堵織り交ぜつつ、膨らんだポーチへと両手伸ばし。
■エズラ > 「その角、曲がったとこに。おかしいと思ったよ――ま、ノエルちゃんなら納得だぜ。」
一度伸びてきた手からひょい、とポーチを遠ざける仕草の後、すぐに手渡しつつ、少し悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「こんな場所でンな大金抱えて――下手すりゃ命がアブねぇんだぜ、ここいらじゃよぅ。」
しかりつけるような調子ではなかったが、カモがネギとナベを一緒に背負ってやって来るようなものである。指を二本立てると、ぴ、とその柔らかな金髪へゆっくりと振り下ろす――ぺしん、と緩くお仕置き。
■ノエル・ベネトー > 遠ざけられたポーチを追って跳ねる様子は若干まぬけたものだったことだろう。
避けられた衝撃に呆然とする前に手渡してもらえてよかった。
安心したカモは再びネギを腰に巻く。
そして振り下ろされる柔らかい鉄槌に、ふぐっ、と妙な声を出したりして。
「うー…やっぱり多すぎますかあ…。
まだ貨幣価値っていうんですか、そういうものがわからないんですよう。
でも拾ってくださったのがエズラさんでよかったです~。
あっ、今度はわたしが何か奢りましょうか?
………あ、でもこれはわたしが稼いだお金ではありませんでした…。」
相変わらずの無職なのである。
■エズラ > 「表通りの市場で買い物するぶんにゃ、今の半分の――そのまた半分くらいでも、十分だと思うぜ。それと、あんましこぉゆーとこに入り込まねぇ方がいい――勝手が分かってりゃモンダイねぇけど。」
腕か、口か――いずれにせよ、少々でも修羅場をくぐっていなければ、あっというまにカモにされるか、彼女の場合、先ほどのように――むむ。男の視線が、相変わらずその胸元へ。
「……奢ってもらいてぇとこだけど、先にコッチが奢る約束してるだろ。どーだい、それを果たしに、今から付き合わねぇか、一杯。」
くい、とコップを傾けるジェスチャー。
■ノエル・ベネトー > 「それは、…猫が………はあい…。」
貧民地区は危険な所。
知らないわけでもなかったため、言い訳しかかるものの素直に、しゅん、と。
まだまだ勉強中のため、相手の言葉はしっかり頭に入れておく。
叱ってくれて、教えてくれる優しい存在は本当にありがたい。
そんな反省と殊勝な感情も、1杯と聞けばゲンキンに表情明るくなり。
「付き合います付き合いますー!
介抱して頂くことが可能でしたら是非にー!」
酔い潰れること前提で、はしゃいだ様子で相手の腕に自分のそれを絡めようと。
避けなければぷにりと、膨らんだ胸が腕に押されて歪む感触があるかと。
娼婦に間違われるのも致し方ない、馴れ馴れしい態度が通常モードのようで。
■エズラ > 「よぉし、んじゃ早速……い、行こう、ぜ。」
歩き始める前に、腕に絡みつくエルフ。がっちりと鍛え込まれた腕が、呆れるほど柔く温かい肉厚に晒されて。こんなことで焦ってしまう自分が情けない――それもこれも、やはり相手がエルフだからか――?気を取り直し、貧民街と平民地区のちょうど境目辺りの裏路地――古ぼけた立て看板が出ているだけの、酒場に到着。「気を付けな――」と注意を促し、地下への階段を下りて――黒い木製ドアの向こうには、わずかなランプに照らされただけの、薄暗いバーカウンターが。
「貧民街っつっても、イイ店がないわけじゃねー……――」
カウンターの他には席もない、隠れ家的な酒場。カウンターの向こうには、初老の店主が静かにグラスを拭いていたが、ぺこり、と無言でこちらに会釈をし、ナッツの載った小皿が出てくる。二人してカウンターにつく他には、客の姿もない。
「さ――好きなもの、何でも頼みなよ――味のリクエストだけで、大丈夫だ。」
■ノエル・ベネトー > これが平民地区なら健全なデートに見えるかもしれないが、
場所が場所だけに道中の様子は、やはり娼婦と客に近かったのではなかろうか。
しかしそんなことを気にするそぶりもなく、
何に気をつければいいのかわからないほどに浮かれたまま、入店。
「わあ…初めてです。こんな静かなお店。」
酒場ではなく、バーと呼ぶに相応しい雰囲気にエルフの視線があちこちへと向く。
座ってようやく腕がほどかれるものの、距離は近く相手の横顔がよく観察できる位置だ。
今は語学力的に読めるか微妙なメニューに夢中ではあるけれど。
「ん……、甘いものがいいです。」
お言葉に甘えて曖昧なリクエスト。
読めなくても問題ないようにさり気なく接してくれるところは、彼の素晴らしいところだ。
■エズラ > 店内は、不思議な民族楽器や工芸品、人形など、恐らくは店主の趣味に任せた飾り付けがなされ、ランプに灯された明かりは時折七色に揺らめき、魔力を帯びているらしかった。
「甘いのね――了解。」
ちら、と店主に目配せすると、恭しい一礼の後、カクテルシェーカーに次から次へと酒や果汁を放り込み、熟練の手さばきてシェイク――小さめのグラスに注がれたカクテルは、透き通るようなブルー……彼女の瞳と同じ色。味は甘さとほのかな酸味を帯びたもの――度数は、少し高め。男の方には、何も言わずとも琥珀色の酒を半分ほど満たしたグラスが置かれる――
「んじゃ――再会に、乾杯。」
チン、とグラスをかち合わせ――わずかばかり、酒精を喉へ。
■ノエル・ベネトー > 賑やかな酒場で飲んだお酒も美味しくて、大好きだったけれど作られる工程は見ていなかった気がする。
店の雰囲気と相俟って何だか――少女が背伸びして大人の男性に付き合っているような。
そんなくすぐったい感情が胸の奥を疼かせる。
「かんぱーい……、ん。
おいしいです~。好きです、こういうの。」
澄んだブルーの液体が唇に触れる――と思えば、ジュースでも飲んでいるかのように
最初のひと口で半分ほど飲んでしまった。
甘いお酒は口当たりがよく、とても飲みやすい。
しかも貨幣価値や文字と同じく、お酒の飲み方も勉強中の身である。
心なしか頬の血色が薔薇色になった、気も。
「エズラさんはいろいろなところをご存知なのですねえ。
どこにお住まいなんですかぁ?」
そして若干語尾が伸びがちになっている気も。