2016/12/17 のログ
ご案内:「王都 貧民地区」にホウセンさんが現れました。
ホウセン > 寒い。四季の存在は、出身地にもあったが故に奇異に思う事は無いけれど、知っているからといて体が自動的に適応してくれる筈も無い。故に、こうして外を出歩く時には一応厚手の着物を着用にしているし、今宵に至っては羽織だけに飽き足らず、狐なりテンなりの毛皮で出来ていると思しき白い襟巻きをしている。ふわふわのもこもこ。寒気が襟首から内側に入り込むのを防ぐだけで、体感温度はかなり違う様子。

「ぬぅ。流石にこうも冷えると、人の出足も鈍ろうというものかのぅ?」

その小さなシルエットがうろついているのは、貧民街の中では、相応に栄えている通りだった。出自が低かったり、働き口が低賃金だったりする者が集まっている区画といえども、周囲が灰色の色褪せた風情で塗り固められている訳でもなく、人の営みがある以上は、賑わいもあろうというものだ。平民街と異なるのは、その賑わいの質のせい。一言で言うのなら”雑然”。上品にお高く留まる理由も無い輩が多いのだ。取り繕った娯楽の提供より、人間の欲に従ったストレートな遊びが提供される傾向がある。その結果、方向性がとっ散らかり、多様性の名の下の混沌がのさばっている有様。この妖仙にあっては、主に色欲と、主たるそれの間々に食欲を鏤めて、路面のでこぼこした目抜き通りを散策する。

ホウセン > 妖仙の呟きを他所に、一見できる範囲では、通りの賑わいは平素と大きく食い違っている様子はない。酔漢が肩を組みながら、ふらふらと千鳥足で歩いている姿は見受けられるし、酒場への呼び込みの声も途切れていない。時間が時間であるから、店を持たぬ露天商達は、引き上げる様子を見せているものもあるけれど、出店数に陰りがある訳でもない。それなのに、出足が鈍ると判じたのは、偏に露出の大きい衣装に身を包んだ街娼の姿が疎らになっている事に起因している。さもありなん。客の視線を誘引する為の商売道具は、冷えた夜気から体を守るには力不足も甚だしいのだから。

「儂が思うに、こういう日こそ、客の側も人肌の温もりを欲し、案外コロリと財布の紐を緩めてしまうもの…と思うのじゃがなぁ。」

短躯のせいもあり、物色しながらの歩行速度はゆったり。通りはメインストリートといえども整備されたのが古い時代だったのか、それとも計画さえなく無分別に整えたものをつなげたらそうなったのか、道幅は狭いとまではいかないものの直線たりえず、右に左に緩い湾曲を示し、今一つ見通しはよくない。寒空の下、緊張感無く歩み進む毛並みの良い無防備な子供。この界隈で遊ぶのも初めてではないため、顔見知りもいるかもしれないし、或いは非公式な場で”富豪の御曹司”と接触を持とうとする輩が待ち構える事もあるやもしれぬ。