2016/11/21 のログ
■ノア > 「 ─── っ、?! 」
あまりの寒さと、カタカタうるさい窓の音とで、二人の人影が己の背後に近付くまで全く気付かず.. 床がみしりと鳴ったと同時に落ちていた角材を取り、瞬時に身体を翻して距離を取ると
「 ── って..... こど、も.. ? 」
其の角材を思い切り振り下ろそうとした、が.. 視界に捉えたのは衛兵ではなく子供、そして双子。極限の緊張から解放され へなりと膝から崩れては、手から角材がガタんと落ちた。
「 .....ごめ.. 驚かし、た... ごめ ん。」
二色の瞳を交互に見詰めながら、弱々しい声で謝罪を。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にノアさんが現れました。
■マノとロノ > 「「ひっ………!」」
床が鳴るや否や、恐ろしい速度で身を翻し臨戦態勢を取る先客。
少年2人は同時に詰まった悲鳴を上げ……幸いにもその悲鳴もかすかな鳴き声にとどまったが……仰け反るように数歩後ずさる。
とはいえそれで転ぶようなこともなく、顔に恐怖を浮かべてはいるが相手をまっすぐ見つめて。
ある程度は貧民街の危険に慣れていることを伺わせる反応を見せた。
「……ん、だ、大丈夫。びっくりしたけど、僕たちは大丈夫だよ。こっちこそ驚かせてごめんね、おねーさん」
そして相手がすぐに武器を取り落とせば、赤目の少年はクロークを纏ったまま、小さく頭を下げ返す。
青目の少年はとくにそういったそぶりも見せず、じっと女盗賊のほうを眺めているが。
「ここは僕の家じゃあないし、普段はお外で寝てたんだけど。
今夜はあちこちで兵士さんが行ったり来たりしてて落ち着かないから、寝床を探してここに来た。
どうも、誰かを探して聞き込みとかしてたっぽいけれど……」
赤目の少年は淡々と事情を語る。しかし、ここまで言葉を口にしたところで、ふと舌が止まる。
さきほどこの先客が見せた俊敏で過敏な反応。貧民街に似つかわしくない衣装。なにより、あまり見ない顔だ。
「……もしかして、おねーさんを探してる……?」
不用意に距離を詰めたり開けたりもせず。声も抑えて。クロークにぎゅっと身を包んだまま、赤目は問う。
■ノア > 「 そっか.. とにかくごめん。」
二人の内赤い瞳をした方が口を開けば、取り敢えず繰り返し謝り部屋の隅へ。先程の場所まで戻りながら、視線は二人の容姿へと向けていて。
( そっくり.. 可愛い顔、人形みたい。)
顔立ちから何からまるで同じ二人を交互に見詰めつつ、少年の声に耳を傾けるも.. 不意に正解言い当てられ、子供用に作った笑みを浮かべた。
「 .........そうなの、実はおねーさんワルイワルーイ人なの !! ...ふふ、なんてね♡ そんな風に見える ? 」
冗談っぽく、誤魔化した。無論、ただの貧しい人間の子供だと思っているから。子供向けに出す、普段よりずっと優しい口調で。
「 今夜は特に寒いもんね..... おいで。大丈夫、何もしないよ ? 」
■マノとロノ > 「…………………」
相手の冗談を真に受けてか、それとも疑ってか。
先程まで饒舌に喋っていた赤目も、しばらくの間は口を真一文字に閉じ、じっと女性の顔を見つめている。
……衛兵たちの探す人物がこの女性かどうかはともかくとして、先程の警戒心満点の行動は、少なくとも凡人ではありえない。
もちろん、「悪い人に見えた」と即答するほどにデリカシーがないわけでもないし、今はあくまで疑わしい程度だ。
そして、優しい口調で女性に誘われると。
2人の少年はこくりと軽く頷き、床を鳴らさないようにゆっくりとした足取りで女性へと歩み寄った。
相変わらず女性から目を離さないが、歩みに戸惑いはない。疑いの視線を向けていたわりには、警戒心は薄いようだ。
あるいは度胸がすわっているのか、それとも、何も考えていないのか。
「……うん、寒い。僕たちは2人で過ごしてるから、このくらいの寒さならまだ我慢できるけどね。
おねーさんも寒そう。こういう夜は、身体を寄せ合って寝たほうがいい」
同じ部屋の隅、ノアのすぐ隣までたどり着くと、そこで2人とも立ち尽くす。
薄いクローク越しに、少年の体温が女性のほうまで伝わってくるような、馴れ馴れしい距離の取り方だ。
相変わらず小声で、赤目の少年は無表情のまま喋る。
「僕はマノ。隣のはロノ。よろしくね、おねーさん」
■ノア > 話しながらでも無意識に、二人を交互に見比べてしまう。交互に とは云え、見る割合は7:3くらいの比率で.. 赤い瞳の少年とはすんなり目を合わせられるのだけれど、青い瞳の少年とは何故だか目を合わせづらく。其れは何も語らない青い瞳の少年に対して、無自覚な恐怖を抱いていたからか..
「 あれ、怖がらせちゃったかな.. ほんとにほんと、何もしないったらー 」
二人が無表情の意味なんて大して考えていなくて、ただの孤児だと信じて疑わず子供扱い。ローブの隙間から白い手覗かせて、ひらひらと揺らし手招き。やがて目の前まで歩み寄ってくれた二人に、柔らかい笑みを向け
「 貴方がマノで、貴方がロノね、ほんとそっくりで間違えちゃいそう。」
にこりと二人を順に指差しつつ名前を呼べば、ローブの留め具に指を掛け..
「 優しいのね、けど.. おねーさんは大丈夫♡ 大人ナメんじゃないわよー 」
背中から二人纏めて包み込んでしまおうと、丈の長いローブをふわりと広げ。抵抗がなければ、そのまま抱き締めるように双子をローブが包む。
■マノとロノ > 「ん……」
されるがままに、広げられたローブに巻き取られて女性に身を委ねる2人の少年。
……勘が良ければ気付くだろう。あきらかに孤児・浮浪者の装いと行動をしている少年なのに、不快な匂いがほとんどないこと。
それどころか、ローブに包まれる銀髪は乾いてボサボサではあるものの、ほのかに石鹸の香りさえ漂っていることに。
クロークもその下の貫頭衣も、擦り切れて補修も行き届いていないが、汚れはあまり見られない。
そして、2人の少年は歩いてくる間も、ローブの中に招かれたあとも、常に手を握り合っている。
「マノとロノ、間違えても別にいいよ。似てて紛らわしいってよく言われるし……僕たちは2人でひとりだから。
……ローブのなか、暖かい。でもおねーさんの身体はちょっと冷たい。震えてる」
初対面の怪しげな女性に抱かれながら、警戒心らしい警戒心を見せない言動のマノ。
ロノは徹頭徹尾言葉を発しないが、女性の体にすりすりと肩を寄せる仕草はやはり無警戒。
もし2人の身体を探っても、ベルトには金貨の入った巾着が吊り下げられているが、その他には刃物めいたものは一切帯びていない。
外から廃屋へ入ってきたばかりで、少年の身体もやはり冷たい。しかし身を寄せ合っていれば、いずれ暖を取れるであろう。
「ねえ、おねーさん。悪い人じゃないとは思うけれど。
ほんとうに、外の兵士さん達はおねーさんを探してるんじゃない、のかな?」
3人分の体温がローブに満ちていく感覚に目を細めながら、マノは女性の顔を見上げ、改めて問う。
■ノア > 二人纏めて包み込んでしまえば、床に膝立ちのままでローブの外側から緩く抱き締める。法の上では "悪人" でも、こんな双子を暖めずにいれる程 "ワルイ人" にはなれず。勿論、抱き締め触れ合う部分以外は肌が痛いくらいに寒いけど、強がる大人。
「 これなら足もあったまるよ。肌触りも最高でしょ ? 高かったんだからー 」
なんて、口調は相変わらず子供扱い。やがて身体を擦り寄せる仕草を青い瞳の少年が見せると、何だか嬉しくもなり。震えを悟られないよう思いっきり強がりながら、二人の肩や背中を手のひらで擦っていると..
( .....って、鋭いなこの子.. )
もう誤魔化せたと思っていた話を、再びぶり返される。相手が大人ならどんなに楽だろう、目の前の少年の問いは怖いくらい真っ直ぐで.. 騙したくもない、かといって怖がらせたくもなくて。
「 んん、どうだろうね。もし.. そうだって言ったら、マノとロノはどうする ? 」
二人の内一人が此処を飛び出し兵士を呼べば、其の手柄に対して多少なりとも礼が支払われるかもしれない。少なくとも、夜を暖かな宿で過ごすくらいは。そんな事を考えてしまっては、ほぼほぼ認めているような問いを返してしまった。
■マノとロノ > 「ん……ぬくくなってきた……」
ローブ越しに背を撫でられると、気持ちよさそうに目を細める2人。
ときおり、その華奢な肉体がぶるるっと小さく震えるのは、くすぐったさを感じたせいか。
しかし、やめてとは言わない。冬の差し迫った夜、暖を取れることはなによりもありがたいことなのだから。
2人はより身体を暖め合えるよう、肩や太腿を女性へと擦り寄せる。だが、手で直接触れたりなどといった下品な行動には及ばない。
ノアを挟んで両脇に抱えられる形で、なおも2人の手はローブの中で女性の背を通し、ぎゅっと結ばれている。
「んー、もし、外の人たちがおねーさんを探しているとしたら……」
白い頬がほのかに赤く染まり始めているのは、体温が上がってきたせいか、それとも。
質問を返され、マノはしばし返答を考えるようにノアから視線を外し、夜風に鳴るガラス窓の方を見る。
外ではなおも、ランタンの灯り、そして複数の足音が行ったり来たりしているのが感じられる。
ノアの背に触れる、マノとロノの握りあった手に、にわかに力がこもる。
「……もし、兵士さんがここを見つけた時、僕たちがおねーさんに何ができるか、考えてる。
どうやっておねーさんのことをごまかせるかって。でも、まだいいアイデアが浮かばない……」
再び女性を赤い瞳で見上げ、真顔でそう返した。
■ノア > 「 強がんないの、ちゃんとあったかくしないと風邪引いちゃうでしょ。」
( って、何やってんだあたし.. )
擽ったいからだなんてわからなくて、まだ震えていると勘違い。二人の身体を柔く柔く手のひらで撫で続け強がる自分に馬鹿だなぁ.. と、心の中で呟いて。
「 ......... 」
すりすりと、猫みたいな二人の仕草が可愛くて堪らない。むぎゅぅと強く抱き締めちゃいたくなるのを ぐっと我慢しつつ、マノの言葉を黙って聞いていると..
「 .....そっ、か.. 」
思いもよらない答えに、嬉しさよりも呆気に取られたような声が漏れ.. 其の直後、ぷはっと吹き出し肩を揺らし笑い。
「 おねーさんを守ってくれるの ? ありがと♡ かっこいいオトコノコは好きよ。」
やっぱり子供扱いだけれど心の底から嬉しく思い、同時に、この二人を守りたいとも強く思って。結局我慢できず、むぎゅぅと二人を抱き締めた。
■マノとロノ > 「おねーさんこそ、脚を外に出してると寒いよ。ちゃんとローブの中に丸くなって納まろう。
そんな体勢だと眠ることもできなさそうだし。僕たち、少しくらい窮屈でも全然平気だから」
膝立ちになって、どこか無理のある姿勢で一人分のローブに少年2人を抱え込む女性。
ローブからはみ出る脚先、ふくらはぎの当たりに、そっとマノの手が触れる。その掌はもう十分に暖かい。
そして、今までよりも強く抱きしめられても、マノもロノも人形のように、女性の力に逆らわず従うのみ。
遭遇してからずっとぼんやり仏頂面のロノはさておき、マノも女性に抱きしめられているにしては、羞恥心も興奮も表に出す様子がない。
……とはいえ、触れ合う少年の胸板から響く鼓動は、最初よりも確かに、その速度を増してきている。
「かっこいい。んー、そうかな、僕たちかっこいいのかな。
僕たちはただ、優しくしてくれて、暖かくしてくれるおねーさんが、良くないことに巻き込まれてほしくないって思ってるだけ。
……おねーさんが、本当に悪い人じゃないなら、だけど」
ぼんやりとした表情のまま、ノアの左右から赤と青の4つの瞳が見つめている。
時折、マノの視線は屋外で動く人の気配に機敏に反応して窓の方を伺うが、入ってこないことを知ればまた女性を見つめ直す。
窮屈なのは平気と言い張ってはいるが、脚がしびれたのか、たまに少年の細い太腿がもじもじと艶かしく蠢く。
■ノア > 「 ん..... ごめ、ん.. 」
我慢を続けて氷のように冷たくなった脚に、暖かい手のひらが触れると.. もう強がれない。ちょっぴり申し訳なさそうに、もそもそとローブの中へ脚を入れ。折角暖まった二人に冷たい肌が触れてしまってはいけないと、膝を曲げ小さくなって座るも..
「 .........カッコイイよ、嘘ばっか並べる大人よりずっと、カッコイイ。」
この二人に少しでも暖まって欲しくて、少しでも眠って欲しくて.. せめて夜が明けるまで、誰にも其の眠りを邪魔させたくなくて。女の視線も窓の外へ、ちらりと揺れた。
── 其れを叶えるには、
「 あぁ.. もうっ、やっぱ3人は窮屈ね。あたしが幅取ってるとか言わないでよ ? 身体には結構気を遣ってるんだから。」
徐に立ち上がりローブから出る、勿論.. 全身鳥肌なのは言うまでもなく。見ているだけで寒そうなドレス姿で、二人を丁寧に包み直すと..
「 教えたげる ── アンタ達の聞いた通り、あたしは泥棒。ワルイワルーイ泥棒。アイツらが探してんのもそう、あたし。」
先程までの口調とは違い、寧ろ普段より少し乱暴な言葉で正体を明かした。見下ろした二人をふん、と鼻で笑ってから戸に手を掛けて
「 天下の大泥棒にかかればそんなローブ、いくらでも手に入るのよ。丁度飽きてきたところだし.. アンタ達にあげる。じゃあね、マノ、ロノ ── 」
ひらりとドレスの裾を靡かせながら、空き家を出て行った。当然.. めちゃくちゃ寒い !!
周囲は衛兵だらけ、捕まれば終わり。上着も手に入れなければ、凍え死んで終わり。極限状態の鬼ごっこをしながら、貧民街を駆け抜けた。
■マノとロノ > 突然口調を荒げ、立ち上がる女性。
その振る舞いにマノもロノもポケッと口を半開きにしたまま、見上げている。
束の間ローブが舞い上がり、寒気が入り込む……その冷たさに震えるのさえも忘れて。
「……お、おねーさん……泥棒……?」
彼女の発した言葉を、反芻するように復唱するマノ。
泥棒、それは悪いこと。泥棒をするこの女性も悪い人、ということになるか。
しかし、貧しき者や弱き者がこの街で、とくにこの掃き溜めの地区で、飢えずに生きるためには仕方のない……そしてありふれた所業。
マノとロノだって、盗みを働いたことがないわけでもない。
この女性が悪い人かどうかは、どういったモノをどういった人から盗んでいるかにもよるだろう……が。
「……だめ、おねーさん、寒そう……。それにまだ、おねーさんの名前も……」
フェミニンなれど寒々しい薄着を隙間風に晒し、カッコつけて悪びれる女盗賊。
彼女は自分を悪い泥棒と名乗った、それを否定する言葉はマノ達にはない。出会ったばかりなのだから。
引き止めるか、礼を述べるか、あるいは……と逡巡するうちに、女性は目の前から姿を消した。ローブ1枚を残して。
二人はローブを握ったまま、立ち上がれない。
彼女が本当に皆の追う賊だとして、追いかける、付いて行く、どちらにしても逃走の足手まといになることは明白だ。
……やがて、一人分減ったローブの抱擁を、2人の少年は纏い直す。今更ながらに、女性の残り香が鼻をくすぐる。
「……ロノ。このローブ、絶対、あの人に返そうね。
綺麗に洗って。どこも破かずに。名前も知らないけれど、きっと見つけて、返そうね」
ノアの去っていった戸のほうをじっと見つめながら、マノはひとりごちた。
ロノもまた同じ方を見ながら、深く頷く。
そうして、しばし2人は貧民街を駆ける人々の喧騒に耳をそばだてていたが……。
やがて、気を失うように目を閉じ、健やかな寝息を立て始めた。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からマノとロノさんが去りました。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」からノアさんが去りました。