2016/11/02 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 街路」にマノとロノさんが現れました。
■マノとロノ > 王都マグメールに数ある通りの1つ。とはいえこの辺りは治安が悪いことで有名だ……いわゆる貧民地区である。
今は夕暮れ時。時刻にして午後4時を回ろうという頃だが、すでに東の空は闇に包まれ始めている。
冷たい風が、半分廃墟と化した建物の開け放しの窓をすり抜け、ひゅうひゅうと寂しい鳴き声を響かせる。冬の足音も間近に迫っている。
外灯もろくに灯っていない通りだが、それでもそこを行き交う人々の中に帰りを急いでいる様子の人は少ない。
多くの通行人は、決まって帰る場所もなければその通りを歩く十全な理由もない連中ばかりだ。
そんな人々の力ない足取りを、低い位置からぼんやりと眺める瞳が4つ。
2つは紅玉のように赤く、2つは碧玉のように青い。色彩だけ見れば鮮やかなれど、その瞳の奥に宿る生気は薄い。
粗末な服に身を包み、1枚の大きな布を毛布めいて背に羽織った2人の少年が、身を寄せ合い、路地の隅に力なく座り込んでいた。
瞳の色を除けば、この2人はまるで生き写し……いや、鏡写しのようにほとんど同じ姿形である。双子のようだ。
「……さむいね、ロノ」
紅い目をした方の少年が、片割れの方を振り向くこともなく、ぽつりと呟く。
その声は性徴を感じさせない高い声色だが、やはりここにも生気は篭っていない。
そして、ロノと呼ばれた少年もまた、その声に反応らしい反応は見せない。
ご案内:「王都マグメール 貧民地区 街路」にエミリーさんが現れました。
■エミリー > 「ごろごろ~ごろごろ~」
ゴロゴロと車椅子が通りを進む
ゆったりとした椅子に無理やり重厚な車輪を付けた歪な車椅子に乗って
そしてそれを押す黒甲冑のせいか貧民地区の面々も気味悪がって近付いてこない
当の本人は車輪から伝わる振動に意識が段々と薄れていく
「ごろ~…んんぅ?」
薄く開いた瞼の間から覗く綺麗な色
濁りのない赤と青
横に並んでいる彼等を見つめてみると同じ顔が並んでいる
全く同じ、同じすぎて目以外の違いがどんなに探しても見つからない
「人形さん~?」
杖を彼らの方へ向けて車椅子を近付かせる
人間らしくない2人に近付き尋ねつつ本当に人間なのか余計に気になる
まるで出来の良い人形を見ているみたいだ
■マノとロノ > ごろごろ、と荷車を引くような音。
赤眼の少年がその音源のほうを振り向けば、そこにはこの通りでよく見かける盗品売りのおじさん……ではなく。
椅子に腰掛けた肉付きのよい女性と、全身を黒甲冑で覆った偉丈夫の姿。
やや場違いな2人の往く姿をじっと眺める赤眼。
その表情には特段の驚嘆や怖れなどは見受けられず、厄介事に溢れる貧民街において無警戒すぎるまっすぐな視線の投げ方だ。
道端に座り込む影の薄い2人に気づき、近づいてくる素振りを見せられても。
そして、いきなり語りかけられても、その無感情っぷりは変わらない。
「人形……うーん、どう思う、ロノ?」
女性の発した言葉に、赤眼の少年は目をぱちくりと瞬きながら、そうひとりごちる。
感情の変化こそ感じられないが、その視線は近づいてきた異様な2人を素早く交互に見比べていて、興味は示しているようだ。
他方で、青眼のほうの少年は、女性の方を見上げて眺めてこそいるが、焦点があっているようには感じられず、まさしく人形めいた雰囲気を保っている。
「……そうだね。僕たちはある意味、人形かもしれない。
おねえさん、人形が好きなの?」
赤眼の少年はまるで一人で合点したかのように相槌をうち、そう問いかけた。
■エミリー > 「人形なんだ~」
違うではなくそうかもしれないと言われた
それに感情が全く見れない
喜怒哀楽の欠片も、本当に人形なのだろうか
「ん~好きだけど、気になっただけ。
人形さんなのか~人間さんなのか~?」
赤眼の子供はこちらに興味が有るような視線を向けてくる
そして青眼の子供は…こちらを見ているけれどどこか違う所を見ているみたい
「2人とも、眼が綺麗だから気になったの~
えっと、お父さんとお母さんは~居るの?」
気になったので更に質問をする
親がいるのだろうか?居ないのだったら彼等は人間なのだろうか?
■マノとロノ > 「眼がキレイ。ふーん、僕たちって、眼がキレイだったんだ。キレイって言われるのは、嫌いじゃない」
女性が口にした、自分たち2人の感想めいた発言を素直に受け取り、赤眼の少年は男とも女ともつかぬ声で呟く。
その声色には、そして目尻が下がったその表情には、若干ながら嬉しさが見て取れたかもしれない。
……青眼の方は相変わらずの仏頂面のまま目の前の2人を見上げているが。
「僕たちのことを褒めてくれたから、僕たちもおねえさんのことを褒めてあげる。
おねえさんは、唇がキレイだと思う。後ろの人は……えーと、強そう」
赤眼の少年は冷たい地面に座り込んだまま、抑揚の少ない声でそう語った。
聞き様によっては事務的なお世辞に聞こえるかもしれないが、本心はいかに。
「お父さんとお母さん……えっと。ロノ、どうだったっけ。僕たちのお父さんとお母さんって……」
ついで家族について問われれば、赤眼はまたも、隣の相方に問いかけるような言葉を放つ。そちらの方を向くことはなく。
そして数呼吸の後、
「……そうだった。お父さんはいた。でも死んじゃった。お母さんはいない。
だからいま、僕たちは2人だけ。おねえさんと、後ろのでっかい人は、家族?」
■エミリー > 「うん、ガラス玉みたいでとっても綺麗~」
他の感想は人形みたいとしか思わない
顔が同じすぎて気味が悪いと思う者も居るかもしれないが自分にとっては似ている2人ぐらいの認識
「ありがと~?ゴーちゃんは強いよ~とっても~」
唇が綺麗と言われて首傾げ
後ろのゴーさんが強そうと言われれば少しだけ嬉しくなって肯定する
「居たんだ~…お母さんが居ない?
ゴーちゃんは家族じゃなくて護衛?だよ~」
父親がいるのならやはり人間だろうか
母親が居ないのは可哀想だと思う
まだ小さいのに…可哀想にと赤眼の子供の頭に手を伸ばしてみる
「お父さんとお母さん居ないと、寂しいよねぇ…」
■マノとロノ > 「ガラス玉かー。ほんとにそんなにキレイなのかな」
そう呟くと少年たちは、全く同時に首を曲げて互いの方を向き、その瞳と瞳を突き合わせて間近で眺め合い始めた。
そしてすぐにまた眼前の女性を見上げる角度に直り、しばし瞬きをしたのち、
「そうかも、キレイなのかも。でも、おねえさんのおめめの方がキレイなガラス玉に近い気がする。
おねえさんみたいな若い女の人、この辺だとすぐ怖い声のおじさんに掴まって、無理やりどこかへ連れて行かれちゃうけど。
でも、後ろの……ゴーちゃん、って人が護衛で強いなら、きっと大丈夫だね」
貧民地区、いやもしかすれば王都全体で常識といえるかもしれない事柄をさらりと復唱し、後ろの甲冑男のほうをじっと観察する赤眼。
手を伸ばして髪を撫でられれば、赤眼を薄っすらと細め、気持ちよさそうな表情を浮かべる。
さすがに髪はボサボサで清潔とはいえず、手櫛の通りは悪いが。頭皮から感じられる体温は人間のそれで、人形ではないことを示唆している。
「寂しい……うん、そうだね。寂しい。
でも、ここは寂しい人ばかりが居るところだから、あんまり辛くはないよ。それに、2人で過ごしてたら、慣れちゃった」