2016/10/12 のログ
リン > 「あっ」

暴力の余韻に浸っていないでさっさとずらかるべきだった。がもう遅い。
声の方向へとぎこちなく振り返る。
相手は剣を抜いていてこっちは武器らしい武器はない。
あまり良くない。ただ、相手はこの街区に相応しくなく馬鹿正直そうに見える。

「ひ、ひぃっ。違うんですよ~。
 こ、この人が襲ってきてぇ~。返り討ちにしちゃったんですけど、
 ちょっとやりすぎちゃいましたね、あ、アハハ。すみません」

上ずった笑いで後退り、剣の切っ先に怯えている様子を示す。
財布を放り、男の頭から靴をどけて、諸手を上げて害意のなさをアピールする。
どこまで信用されるかはわからない。

「そ。そうだ。この人放っておいたら死んじゃいそうだし……
 助けるのを手伝ってくれませんか?」

と、近くまで来るよう促す。

……リンとこの男の周囲には、聴いた人間の感覚を狂わせ
まともに動けなくなる音楽が、ごくかすかな音で奏でられている。
不用意に近くまで踏み込めば、その影響を受けてしまうだろう。

ユウキ > 「返り討ち……、君、見かけによらず強いんだな」

財布を投げ捨て、男の頭から足をどける少年の姿に、とりあえず抜いた剣は鞘へと戻して小さく息を吐き出す。
どちらかといえば、確かに倒れている男の方が、目の前の少年よりはるかに悪党らしい姿をしている。
ただ、その男を返り討ちにした少年が、自分と同じ程度の此方におびえているのも変な話だ。

油断をしているつもりはないが、彼は少々剣に自身のある普通の人間だ。魔術の類への知識はほとんど無い。
少年が周囲に施した術など知るすべも無く、確かに、倒れたままの男をこのままにしておくわけにもいかないと、素直に少年と男のすぐそばまで歩みを進めてしまい。

リン > 「あはは。ちょっとした護身術を嗜んでまして……
 襲われてカッとなっちゃって、こんなひどいことを……ううっ……」

大変なことをしてしまったといった調子で、口から出任せを放つ。
ちょっとわざとらしいかもしれない。
近くまで向かったなら、どこからか奇妙な旋律が響いてくるのが聴こえるかもしれない。
リンは小さく笑う。

「……とりあえず、その怖いのを、捨ててくれませんか?」

呪いの音に対する抵抗ができなければ、その言葉を聴いた瞬間――
手にした剣をその意思に関わらず取り落としてしまうだろう。
それどころか、もう、全身をほとんど動かせなくなっているかもしれない。

ユウキ > 「護身術、ねえ……」

とりあえず、倒れている男を起こそうとした時だった。
音楽のメロディーのような何かが聞こえてきたのは。
この音はいったいどこから?周囲へ視線を向けようとしたが、できない。
まるで金縛りを受けたかのように体が動かなかった。

「なッ……!?」

思わず表情が恐怖に曇る。
あまりにも無用心だった己を恨んでも、もう遅い。
まるで少年の言葉に操られるように、自らの意志に反して、鞘から抜いた剣を道の端へと投げ捨てた。

リン > 「はい、ご苦労様」

剣を捨てるのを確認し、リンの表情が嘲り笑うものへと一変する。
猿芝居を続ける必要がなくなったからだ。

「いやあ、素直に効いてくれる奴ばっかじゃないから、ヒヤヒヤしたよー。
 どう? 指一本動かせない気持ちって?
 大丈夫大丈夫、命は取らないからさー」

不気味なまでに穏やかな声。
実に楽しそうな表情で、硬直している相手の眼前まで近づく。
反撃されないということを確信しているためだ。

「女の子じゃないのが残念だけど――きれいな顔してるね、きみ。
 とりあえずそうだなあ。脱いでよ。それとも脱がされるほうがいい?
 なに、最近散財が続いててさ……」

身ぐるみをはいで金目のものを奪おう、というのだ。
どうやら、脱衣するためだけに手足を動かすことはできるようだ。
拒むのならば、自分で脱がすだけ――そう藍色の少年の目と手付きは語っている。

ユウキ > 「こ、このッ……!!」

今思えば、剣に怯えている様子もそうだが、一挙一動に演技のような胡散臭さはあった。
それも、今だからこそ思えるのかもしれないが。
目の前で上機嫌な笑みを浮かべる少年を睨みつける表情も、今の彼ではどこか弱々しい。

「ッ……。わかったよ……」

いとも簡単に身動きを封じられてしまう程の相手だ。
命までは奪わないといっても、此方が反抗すればその気も変ってしまうのだろう。
そうなれば、命を落すことも……。
悔しさに歯を食いしばり、目の前の少年を睨みつけながら、まるで全力疾走をしているかのような力を振り絞って、身に着けている鞄や上着、ズボンを脱ぎ、細身だが筋肉のつき引き締まった上々のスタイルをした体を、唯一の下着を残して外気に晒して、顔を真っ赤に染め。

リン > 「こんなもん? ま、期待はしてなかったけど、
 シケてんなぁ……」

脱ぎ捨てられた鞄や上着をあらためて、
貨幣や装飾品などを抜き取って懐に収める。

「にしても、剣振ってるだけあってなかなかいい身体しているね。
 ちょっと触っていい?」

もちろん相手が拒否できるはずもない。
間近で、自分の薄い身体を押し付けながら、
胸や腹、腋や脚の筋肉の形を確かめるように、ぺたぺたと無遠慮に触っていく。
どこか淫靡な手つき。

さらに、少年を縛る旋律が微妙に変わり――
ほんの微かにだが、聴き続ければ情欲を煽る魔の音楽となる。

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