2016/09/16 のログ
ご案内:「貧民地区にある路地裏」にチェシャ=ベルベットさんが現れました。
チェシャ=ベルベット > 陽がそろそろ沈みかけた頃、王都の貧民地区ではさほど珍しくもない路地裏。
ゴミが道の端に捨て置かれ、物陰からそれを漁るネズミたちがじっと二人の人影を見ている。
壁に押し付けられるようにして背中から覆いかぶさられているのがチェシャ、そのすぐ背後で覆いかぶさっているのが浮浪者と思しき何処にでもいる男だった。
互いの下半身の衣服を寛げて、無我夢中になって腰を押し付けている。滑った交合の音が人気のない路地によく響いた。

常ならこんな浮浪者一人にいいようにされるチェシャではないが時期が悪く丁度発情期故に拒むことが出来なかった。
あまり清潔感のある相手と言えないので最初はしかめていた顔も、いまではすっかり身体の刺激と快楽には堪え切れずだらしない様相で溶けていた。

チェシャ=ベルベット > 安くて脆い壁板に頬と手を押し付け、爪を立てながら相手のなすがままに突かれている。
やがて、男が早々に達したらしく押し付けた腰がブルリと震えてチェシャの中に射精した。
艶めいた呻きを上げてチェシャは文句も言わずに受け入れる、だがどうも相性が悪かったらしい様子でそのひとつきがチェシャの絶頂には至れなかった。

やがて余韻を味わい終えた男がチェシャの中から己の萎えた逸物を抜き出しいそいそと下半身の身繕いを終えた。
支えを失ったようにその場にくずおれたチェシャはべったりと地面に尻をつけたまま男を恨めしそうに見上げる。

「んあ……もう、おわり?やだよ、もっとしてよぉ……」

行き場のない熱に浮かされて呆けたままみっともなく男の脚へすがるが、一蹴された。

「やなこった、タダ同然だからしてやったまでだが
 女でもないお前になんで二度もしてやらなくちゃいけねぇんだ。
 お前は間に合わせなんだよ、どうせでかくなっちまえば今みたいに客引きなんざ出来ねぇぜ」

は、と下卑た笑いとともにチェシャの足元へ金貨ならぬ銅貨を数枚投げつけた。
浮浪者が一日ゴミ漁りをして得たものを古物商に売り渡せばこのぐらいにはなるだろうと言うほどの値段だった。
じゃあな淫売、と手を振ってさっさと男は去ってしまう。後にはうずくまったチェシャ一人。

チェシャ=ベルベット > 再び立ち上がる気力も身づくろいをする余力もなく、
だらしない格好でしばらく投げつけられた銅貨に目を落とす。
そりゃそうだ、同性相手に欲情する相手なんざ異性愛がまかり通るこの世では割合として少ないのだ。
そして性的な仕事というやつは絶対に避けられない老いとの戦いでもある。

どんなにチェシャが努力しても性別の壁は愚か、過ぎ去る時間を留めることは出来ないのだ。

「んだよ……わかってるよそんなこと……だから皆嫌いなんだ……」

この世にはどうにもならないことが数多く合ってそれは避けようと抗おうとどうしようもないほどにチェシャの前に横たわっている。
悔しさに近い感情が胸にこみ上げてぐっと下唇を噛んで涙をこらえた。

心配そうに物陰からネズミたちがこちらを覗き込んでくるが、
シャーッと猫らしい威嚇をしてやればぱっと蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。(ネズミだが)
銅貨に指を伸ばして拾い上げる。無言でポケットにしまいこんだ。

チェシャ=ベルベット > 発情期はやたらと精神の安定を欠いて些細なやり取りでもひどく動揺して傷ついて弱る。
身体が無防備な状態だからこそ、心もそれに引きずられるのだろう。
女の月のものかよ、と自分でも嫌になるがチェシャ自身の月のものといっても差し支えがなかった。
こういう不自由なところも自分を嫌いになる理由の一つだ。

ようやく壁に手をついてのろのろと立ち上がり身を起こす。

ご案内:「貧民地区にある路地裏」にヴィールさんが現れました。
ヴィール > 窮屈な襟元を寛げ、帰路をゆっくりと歩いている。
貧民地区にいる連れの友人に顔を合わせてきたところ――
背丈が低いと舐められるのではと勝手に考えて、程々に調節したところ上々の反応だった。
帰るときはどうせ戻さなくてはならないが、まぁ今の内はこのままでも良いだろう。

ふと前方に目をやれば、路地から物音が微かに聞こえる。
気になって覗き込んでみると其処には、下半身を露出させた少年の姿が薄暗がりに見えて。

「……どうかしたのか?」

思わず声をかけてしまう。
見知った相手であるとは、今はまだ気づいていない。

チェシャ=ベルベット > 「……あんまり迂闊にこんな所で声掛けるとそのうちひどい目にあうぞ、不良少年」

かけられた声にじっと金緑の目を向ける。乱れた髪に着衣、暴漢にでも襲われた後のような姿。
夜目の効く猫の瞳でヴィールの姿を捉え、気だるそうに身づくろいを始めた。

ヴィール > 聞こえた声で相手が誰だか察すると、小さく舌打ちを一つ。
身づくろい始める様子を手伝うでもなく、壁に背を預けて見つめて。

「はっ。ひどい目なんざ散々遭ってるよ。そっちが思う以上にな。――大丈夫そうなら俺は行くぞ」

悪態をつきながら、程々のところで身を浮かせた。
金緑の瞳を見つめる双眸が、緩やかに細められる。

チェシャ=ベルベット > 「へぇ、そりゃあお気の毒様。でも今回は僕相手で良かったというか残念というか……」

嫌味にも聞こえる軽口が、いつもの切れ味もなくかけられる。
最後にボタンを止めた後、小さな歩幅でヴィールの方へと静かに歩いてゆく。

「……大体なんで声なんかかけるんだよ。あと、……大丈夫じゃない、行ったら怒るぞ」

身を浮かせかけたヴィールの衣服を軽く摘んで引き留めようとする。
ツンと澄ました表情だったはずのチェシャが今は相手に媚びるように上目を遣い、
すねてむくれた子供のようにヴィールへ縋る。

ヴィール > 何となく、チェシャの口調に違和感を覚えつつ。
近寄ってくる足音を耳に留め、肩越しに振り返った。

「……気になったからに決まってんだろ。――……なんだよ」

衣服を摘まれ、浮かせかけた足が止まる。
どこか媚びるような上目遣い、かつ拗ねた表情を見て不思議そうに問う。
踵を返して相手の方へ向き直り、改めて。

「……変な奴。何かあったのかよ。……話くらいなら聞くぜ」

チェシャ=ベルベット > 真正面に向き直られると居心地がいっそう悪そうに俯いて
だがつまんだ衣服を離そうとはしなかった。
まるで離したらヴィールが逃げてしまうのではないかというような様子で。

「……気になったの?僕が?それとも、あんなところにうずくまっていた”誰か”が?」

それが特別な意味があるように随分と食い下がって尋ねた。俯いていた顔をあげると
じいっと食い入るようにヴィールの顔を覗き込み徐々に二人の間の距離を詰めようとする。

「どうせいっつも変だよ……元からこんなだし……。なぁ、いいからさ。
 話なんかするよりももっと雄弁なことがあるじゃないか」

チェシャの表情が切羽詰まったものに変わっていく。同時に艶やかに口の端が笑みの形に釣り上がり
ヴィールの首に腕を回してその唇に自分の唇を押し当てようと動いた。