2016/08/21 のログ
ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にレン・レイトさんが現れました。
レン・レイト > 王都マグメール 貧民地区の更に深く
そこは廃墟が立ち並び、人の気配もほとんどない。
そんな場所の裏路地、一人の少年が倒れている。…いや、いたといった方が正確かもしれない。
倒れ伏すの少年の周りには夥しい量の血だまりはすでに乾きかけ、その肩口からはバッサリと胸まで切り裂かれていた。そしてその瞳孔は開ききっていて虚空を見つめている。
誰がどう見てもわかるだろう。少年は既に息絶えていた。

レン・レイト > ぴくり…と少年の指が僅かに動いた気がした。
既に身体は硬くなりはじめていた。死後痙攣ではありえない。
ではなぜ?誰かがその様を見ていれば疑問に思うだろうか。
彼の周りの血だまりが少しづつ瑞々しさを取り戻してゆき、蠢いた。
「あ…ぁか、は」
喉に溜まっていた血を吐き出した。吐き出された地も、血だまりも、最初はゆっくりと、そした段々早く、その傷に吸われるように動き出す。
少年の体に生気が戻ってゆく。
その傷口からもピンク色の肉がはい回るようにうごめき、縫い合わせ、修復していく。

レン・レイト > 少年の傷口が修復されて行くと共に、何度か少年の体が痙攣する。
開ききっていた瞳孔にも光が戻り、ゆっくりとだが手足が動き始める。と同時に
「ぁああ゛あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!」
少年の体中に欠陥が浮かび上がり、この世のものとは思えない、およそ人間が発することはできないであろう悲鳴、慟哭。自分が出す悲鳴に喉は内部から文字通り張り裂け、肉をこそぎ落とすほどに自らを掻き毟り、もがき、のた打ち回り、もだえ苦しむ。
しかしその自らつけた傷も、次の傷をつける前には修復していく

レン・レイト > どれだけ時間がったっただろう
傷口が全て癒え、血管の膨張が収まり少年の身体は数度跳ねるように痙攣した。
とめどなく涙のあふれるのそ目にはしかし、確かに光が戻っていた。暗く淀んだ光が。
死ぬと百度死ぬほどの痛みとともに蘇る、「百死の呪」。
およそ想像の埒外にあるその痛みの中、少年は気絶することも、精神を崩壊することも許されずその身で受けなくてはならない。
少年は起き上がり、すべるように、逃げるように壁の隅へと座り込み、自らの肩を抱き震える。
今しがた死んだ事による死への恐怖。
今受けた痛みによる恐怖。
そのような体験をしたにもかかわらず、縋るものののない、頼れる者のいない、生への恐怖。
「ぅ、うぅ……ぁぁ……」
とうとう耐え切れずに、嗚咽を漏らし泣き始めた。

ご案内:「王都マグメール 貧民地区2」にレイカさんが現れました。
レイカ > 「…………。」

先ほど、大絶叫が木霊したのは確かこのあたりだったか…。
かつて、私がミレー族を匿って生活していた貧民地区の奥―――私は『廃墟地区』と呼んでいた。
そのあたりから聞こえた大絶叫、貧民地区でとある薬を探していた私の耳にも、はっきりと聞こえた。

もっとも、貧民地区の人間はそんなこと、日常茶飯事のようで気にも留めていなかったが。

「……このあたり、のはずなんですけど…。」

あたりを見渡す。
特に何か、変わったものがあるようには見えないし…。
然し、あの痛みに耐えるような悲痛な声。
聞き間違えるはずがないし、気のせいなんてありえない。
誰か、ここにいるのは間違いないはずなんだけど……。

レン・レイト > 「うぁ…ぁぁ、……ぐす」
後から後からあふれ出る涙。
辛くて、苦しくて、寂しくて、憎くて、恨めしくて。
胸が張り裂け、潰れそうになる。
いつも死んだあとはしばらくこうだ。
痛みの余韻と恐怖と負の感情がないまぜになり、どうしようもなくなり動けなくなる。
「…もう嫌だよぉ……父さん、母さん…」
廃墟地区にこだまして消える、小さな小さな声。
その悲痛な呻きこそ少年の真の慟哭なのだろう

レイカ > 「…ここのミレー族は、全員拠点に引越しさせたはずですが…。」

まさか、残っているミレー族がいた?
いや、そんなはずがない。アレから何度も何度も、数は確かめた。
だけど…もしも、ミレー族がまだ残っていたとしたら?
…焦る気持ちを抑え、私は廃墟地区のあたりを歩き回った。

「すいません!もし、誰かいるなら返事をしてください!
私は怪しい物ではありません、どうか顔を見せてください!」

声を張り上げることに、なんのためらいも浮かばなかった。
ここに誰かがいるのは間違いない、先ほどから聞こえてくる嗚咽が聞こえてくる。
この声、助けを求めるような声があるならば…私は、助けてあげたい。
そうじゃなかったら、私は嘘をついていることになるような気がしたから。

「私は、貴方を助けたいんです!
どうか姿を見せてください!もう安心ですよ!」

レン・レイト > 「……ッ!!」
響く他者の声。自分の庇護を訴える凛として透き通るようなそれはしかし、今の少年にはただ恐ろしい「他人」の叫ぶ声で、その内容までは頭に入らなかった。
すぐに自分の手で口をふさぎ、音を出さぬように震えそうになるのを我慢し小さく縮こまる。
しかし、先ほどの声が聞こえていたのか、相手の足跡は迷いながらも、少しづつこちらに近づいている。
少年がいるのは袋小路で、向こうがこちらに来るのも時間の問題だった。
張り裂けそうになる心臓を必死でやり過ごそうとするも、すぐに、目の前の角から相手は現れるだろう。
そしてきっと、お互いに目が合った。
そこからは少年は早かった。先ほどまで打ち捨てられるように転がっていた自分の槍の柄を蹴り上げるようにして広い、すぐに構える。
「フーッ、フーッ…!」
獣のように牙を剥きだし、怒りや憎しみといったあらゆる負の感情があふれ出すような形相。
しかし、相手は気づくだろうか。先ほど目が合った時も、子鬼のような今のその形相も、その奥にあるのは何よりも怯えであることを。

レイカ > 「………この奥から、ですね。」

間違いない、この袋小路の奥から僅かな息遣いを感じる。
この場所を知っている人間は限りなく少ない上に、普段は人がいないけれども、いざ人がいると必ず何かが起きる。
そして、それは決まって血を呼ぶ惨事に成り果てる。
それを知っているからこそ、私は放っておけなかった。

「………っ!」

袋小路の奥、その場所に明らかに猫や動物とは違う視線を感じた。
瞳が合い、その瞬間…私は武器を構えられていた。
長いリーチを持つ穂先が私に突きつけられ…。

「待ってください!私は貴方の敵ではありません!」

然し、私はその瞳の奥に敵意以外の色を見つけた。
怯え、恨み、恐怖。いろいろな感情がない交ぜになった、とても孤独な瞳。
だが、その瞳を見て―――ほうっておけるわけがなかった。

「…………大丈夫です、私は君を傷つけたりは決してしません。」

私は、その場から一歩も動かなかった。
構えを取ることもない、彼が怯えながらも…敵ではないと認知してくれるまで。
勿論、その穂先が―――私を貫いても。

レン・レイト > 今の少年にとってはどんな声もどんな相手も恐怖の対象でしかない。
相手の姿を捕らえ、声を聞けばカタカタと、怒りと怯えに穂先が震える。
恐慌状態に陥っていて相手の言葉の内容も身に入らない。
いや、入っていて尚否定しているのだ。
優しい声も姿も自分をだますためのもの。
少年の経験が、呪詛のように頭の中でそう繰り返させた。

そして少年のは知らなかった。覚悟と決意を秘めた、闘志にも近いその強き暖かな目を。
故にその強い目を、少年は敵意と勘違いしたのだ

「ガッ!」

最早獣のような短いうなりと身のこなし。聊か距離のある相手には、壁へと飛び込み、そしてそのまま壁をけって相手の心臓をまっすぐに面に気にかかる。
だが、少年は違和感を感じた。まっすぐに自分を見据える相手に。まるで受け入れるかのように微動だにしない相手に。
このままではいけないと、少年の中で何かがこだました。
穂先が彼女に触れる直前に、必死でそれをそらした。
しかし完全にはそらすことができず、彼女の肩口を僅かに掠めてしまうだろう