2016/04/07 のログ
エアーティ > (あー…どうしよっかな)

とりあえず絡んでみたものの、何を聞き出すべきか考えてはいなかった。
エアーティは頭をボリボリかきながら、とりあえず最初に浮かんだ事をしゃべることにした。
こういう時は考えて話すのではなく、話してから考えるのだ。
行き当たりばったり、とも言うが。

「お前… 綺麗なカッコだな…。ここのモンじゃないだろ?どっから来た?」

訝しげに少女を見つめながら、エアーティが聞く。
ここの人間特有の「汚れ」が一切な服装。
胸に宿した紋章…。

ここまできて、エアーティはあることに気づく。
…見たことある。
青い目。聞き覚えのある声…。

「んん… お前とどっかで会ったことあるぞ… 気のせいかな…」

思い出そうとするが、エアーティの貧相な記憶力では浮かばなかったようで。
いきなり強硬手段に出ることにした。

「ま、いいや。顔見せろよ」

そう言うと、いきなり目の前の少女のフードを掴み、あらん限りの力で引きちぎろうと…

リーゼロッテ > 「…それは言えないです、ここに居る人は皆、人に言えないことをしてますから」

何時もと違い、全身を包む大きめのケープだが真新しいのが災いとなったらしい。
綺麗な格好というフレーズには敢えて触れずに、答えないのが普通だと組合長に習った通りのそれらしい言葉で受け流そうとしていく。
こちらにあった覚えがあると言われるものの、少女は彼女について記憶にはない。
誰かと思い違いしているのかなと思えば、苦笑いが零れたのだが。

「勘違いですよ、多分。 いや、それはちょっと…っ!?」

フードを捕まれ、引っぺがすのではなく、破壊するほどの力で引っ張られれば驚きながら胸元の留め金を外した。
パチッと小気味いい音を立てて拘束が解除されると、するりと長いケープの後ろへ飛びのいて下がり、全身を晒す。
薄茶の猫毛にゆるいクセがかかり、童顔に青目。
ここでは場違いなほど可愛らしく綺麗に整った茶色と白主体の制服調の格好。
ちゃんと帽子と肩を隠す程度のいつものケープを外套の下に着込んでいたのは、その格好が気に入っているから。
ロングケープの下に隠していた白基調のライフルを手に、警戒した様子で彼女を見やる。

「何するんですか、急に…」

むすっとした表情で不機嫌いっぱいに抗議をすれば、じりじりと下がるだろう。

エアーティ > 「あ…」

外蓑を片手に、エアーティは呆気に取られたような声を上げる。
やべえ。完全に人違いだった。
バツが悪そうな顔をしながらボリボリと髪を掻き、
目の前の少女に見ずに話す。

「あー… その、なんだ。わり。人違いだったわ… ほ、ほら、これ返すからさ!」

奪った外蓑を無理やり少女の両手に押し付ける。
どこも破壊されていなかったのが、不幸中の幸いとも言うべきか。

「いやーあたしさ、今仕事なくて… 弁償とかは勘弁な!」
媚びたような笑みを浮かべて謝るエアーティ。

…人違いだったのは事実だが、それを除いてもコイツはアヤシイ。
ダメ元でアレについて訪ねてみることにした。

「あ、そうだそうだ…。迷惑かけっぱなしでアレなんだけど、一つ教えてくれ。あたしさ、仕事でミレーの亡霊っつーの?探してるんだけど、心当たりとかないか?」

リーゼロッテ > 少々間の抜けた声にきょとんとしながらも、気まずそうな仕草に少しは察しがついていく。
多分探していた相手とは違っていたのだろうと。

「……むぅ、だから勘違いっていったじゃないですか」

拗ねたような表情で改めて呟くと、押し付けられた外套を受け取っていく。
バサリと再度羽織れば、組合の紋が入ったバックルで再度ロングケープの前部分を繋いで身を隠していく。

「破れてなかったですし、大丈夫ですよ。 ――噂に聞いたことがありますけど、そんな噂話を探ってたんですか?」

ミレー族の中でいう亡霊、伝承なのか、それとも自分達の裏の顔たる人達の働きをしられたのやら。
どっちとも分からないが、話には聞いたことあるという程度のニュアンスで答えれば、苦笑いを溢す。
見た目の荒々しい感じの割には、ガサツだけど良い人なのかな? なんて思いつつもあった。

エアーティ > 「おっ 心当たり、あるの?マジ!?」

こんな少女から手がかりが得られるとは!
エアーティは自分の幸運に驚いていた。

「そうそう、雲を掴むような話だろ?人間の霊ならワンサカいるが、ミレーだとそうはいかねえ」

路地端で蹲っている死体を指差しながら、エアーティは笑えもしないような冗談を飛ばす。

「そういえば、まだ名乗ってなかったなぁ。あたしゃ傭兵のエアーティっつーんだ。よろしくな。お嬢さん。…故あって、あたしゃどうしてもそいつらに会わなきゃならねえ。なあ、何でもいいから、何か知っていたら教えてくれ!」

…どうしてミレーの亡霊を探しているのか、は誤魔化しつつ、エアーティはどうにかして目の前の娘から情報を引き出そうと頭を下げる。

リーゼロッテ > 「心当たりというほどじゃないですけど…噂話ぐらいでしたら」

喜ぶ様子にクスッと微笑みながらも、ここでは当たり前の事とはいえ、物騒な冗談には困り顔で苦笑いを浮かべていた。
とはいえ、乱暴なところはあるにしても、悪い人ではないのかなという意識は強まっていく。

「エアーティさんですね、私はリーゼロッテです。ん~…知っているといっても、ミレーの人達の伝承ですよ?」

組合の諜報担当の話は、それこそ口外不可の王国と密接に繋がったものなので、彼女の追う亡霊なのか確かめるためだけに話せるものではない。
代わりにと、亡霊を少女と契約した隼へと置き換えてしまおうと思えば、頭を下げた彼女にアワアワしながら顔を上げてくださいと先に告げていく。

「――えっと、ここの土地にいた神様の伝書の鳥さんがいて、ミレーの人が危なくなると嵐と一緒にやってくるそうですよ、でも鳥さんは見えないから亡霊だってなるんだとか」

そんな昔話のような噂を半分捏造しながら答えると、小さくため息を溢す。

「…だから、もう二度と襲わなくなると良いんですけどね」

あんな大きな逆襲も見たくないと思えば、目の前の彼女がそこにいたとは思うこともなく笑っていた。

エアーティ > 「ははあ… なるほど、鳥ねえ… 鳥…」

そういえば。
以前何者かに襲われ、壊滅した輸送隊。
その輸送隊員は凄惨に殺されていたが、
多かった死因は
「まるで何かに啄ばまれたような傷による失血死」だったらしい。
鳥葬…。エアーティの脳裏にそんな言葉が浮かぶ。

見えない鳥の正体が亡霊なのだろうか?
鳥が悪人を選んで殺すのか?

「ふむ… 参考になったよ。ありがとな…」

リーゼロッテのもらしたため息、そして呟き。

「もう二度と…か。最近また大規模が襲撃があったらしいが…知り合いでもいたのか?」

その場の関係者とは思えないこと、白々しいセリフを吐く。
リーゼロッテの正体が、今の呟きで少し見えてきたようだ…。

リーゼロッテ > そうですと肯定するようにコクコクと頷いた。
彼女が思い出した輸送隊の壊滅も、目の前にいる少女の使役獣のしわざなのも、世界は狭いとも奇異な縁があるともいえるか。

「いえいえ。 ――知り合いといいますか、襲撃された里がチェーンブレイカーっていう組合の農奴さん達がいた場所なんです」

彼女がミレー族の人間をどう思っているか分からないところもあり、建前上の農奴としての扱いで答えていく。
記憶にあればになるが、少女のショートケープに書かれた紋章が襲った里の中に旗として立てられていたかもしれない。
酷いですよね と、同意を求める様に苦笑いで告げれば、更に言葉を連ねる。

「皆、ただ何時も通りに生きようってしてるだけなのに…何で酷いこと出来るんでしょうね?」

破壊的な享楽を理解できない、見た目相応な少女らしい純真な思いを呟きつつ目を伏せた。

エアーティ > 「そりゃ、ひどい話だなぁ。世の中には救いがないのかね 全く」

自分で言ってて反吐が出るようなセリフを済ました顔で吐いてみせる。
彼女の紋章のことは、エアーティは気づかなかった。
旗という旗は片っ端から燃やしていってしまったし、
破壊する方としてはあっという間の出来事だったので、印象に残らなかったのだ。
…エモノ以外興味がなかった、とも言えるが。

「まあ、その、なんだ… 元気出せって。悪いな。嫌な事思い出させちま…っ!?」

エアーティは胸を押さえ、慌てた様子でリーゼロッテから距離をとる。
体内に渦巻く魔力が変調を起こしたのだ。

エアーティの体内で苛まれているミレーの魔力の残滓が、リーゼロッテに微かな声を上げている。
目の前の悪魔を殺せ、と。

リーゼロッテ > 「…本当に酷いです」

ずっと虐げられる人達の為にと組合が生まれて、集落ができて…順風満帆といった様子だったのが一気に崩された。
悲しげながらも、ほんの少し悔しさから憤りをにじませる気落ちした声だった。

「いえいえ、また酷いことにならないためにも頑張らなきゃですし、大丈夫です!」

顔を上げて気合充分といった様子で空元気で微笑んでみせるのが精一杯だった。
それが急転したのは、紋章へと叩きつけられるような思念の響きから。
干渉した瞬間に僅かだが虐殺の映像が脳裏に流れていく。
冷たく背筋を走る怒り、先程までの暖かな笑みが冷え込んでいく。
砦で友人が見せた微笑みと同じような笑み。
そして…外套を再び脱ぎ落とすと、手にしていたライフルに友人と同じような弾倉クリップを押し込んでいく。

「ザムくん、見つけたよ…犯人。ここに来れる?」

バサリと大きな羽ばたきの音が周囲に響く。
しかし構造物が多いここでは下降して援護が難しいと、悔しげな声が聞こえた。
大丈夫と呟きながら、胸元の紋章が輝き、ミレーが発する魔力とよく似た気配と力強さが溢れる。

「私に力を送って…絶対、倒すから。 ――貴方ですよね、里を襲ったの…見えちゃいましたから」

確かめるように呟きつつも、銃口には緑色の魔法陣が広がっていく。
何時でも撃てるような構えを取りながら問いかけ、彼女が少しでも動けば、早撃ちの如く素早いか前から魔法弾を放つことになる。
太く靭やかな棘だらけの蔦が発生する魔法弾、彼女を取り囲むように地面を打って、着弾点から生まれる蔦で彼女を絡めて拘束する力を準備していkう。

エアーティ > 「チッ… あーあ バレちった」

先ほどまでの陽気な声から一転。
凍えるほど冷酷で、低い声。

「ヒトモドキ共め。くたばっても、アタシの邪魔をしやがる… そうだよ。あたしがあいつらをやったんだ」

邪悪な笑みを浮かべ、リーゼロッテを嘲るように笑う。
エアーティの体から、漆黒のオーラが立ち昇り始める。
同時に、肉体に力が漲り、体表には太い血管が浮かび上がる。

「ミレーの魔力は特別みたいで…アタシによく馴染むんだよ… 馴染みすぎてほら、こういう事だって出来るんだぜ?」

腕に力を込めると、表面に犠牲になったミレー族の顔面が浮かびあがる。
その顔は苦痛に歪んでいて、リーゼロッテに助けを求めているようで。
エアーティはその部分に爪を立てる。自らの体が傷つく事も厭わずに、喰ったミレー族を更に虐げる…

リーゼロッテ > 「ヒトモドキ…? それは貴方ですよ、あんな酷い殺し方して…」

素性がバレたと同時に本性を晒す彼女に、すべての評価が逆転していく。
相手が戦う体勢を取ったのを見て、何も怖く感じられない。
何時もなら戦いに竦んでいくのに、強い憎悪が体内を駆け巡っていく。

「……っ!!」

腕に浮かんだミレー族の顔に爪が食い込んでいく。
殺しても尚虐げる残虐極まりない仕打ちに、少女の中にあった留め金が砕け落ちた。
殺すという言葉を脳裏で何度も繰り返しながら、素早く緑色の魔法弾を放つ。
正面の地面に5つ、並べるように打ち込んでいくと、かなりの太さと強度を誇る靭やかな蔦が飛び出し、棘だらけのそれで彼女を絡め取ろうと迫る。
その合間にバックステップで下がると、胸の紋章を輝かせながら銃口に茶色い魔法陣を描く。
無言のまま、何の躊躇いもなくトリガーを絞ると、岩の塊が椎の実状になって放たれ、風の力で砲弾のごとく加速する。
建物にぶつかれば一撃で倒壊させかねない強力な破壊力の魔法を放ち、容赦無い攻撃を始めた。

エアーティ > 「ハッハァ! いいぞ! もっと憎め!あたしを憎めぇっ! ゴチソウになるためになあっ! ヒャハハッ!」

憎悪を募らせ、殺意を剥き出しにして襲ってくるリーゼロッテに、エアーティは歓喜する。

茨の蔦がエアーティを絡めとろうと襲いくる。
エアーティは手斧を豪快に振り回し、茨の蔦を裁いていく。

「チッ!」

が、蔦同士の連携プレーにより斧を取り上げられ、
エアーティは茨の中に閉じ込められる。
そこに風の力で加速した岩の塊が、蔦の檻に迫り…物凄い音を立てて直撃する。

岩は砕け、蔦の檻は衝撃により引き千切られ地面に転がる。
全ては終わった…に思えた。

蔦の内側から突き出してきたので、邪悪な炎に包まれた鋼のような豪腕。

「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ォ…!!!」

獣のような咆哮を上げながら、
全身の筋肉を膨張させたエアーティが内側から檻を破ってリーゼロッテの前に立ちはだかる。

「おお…オオオオォオッ…!! は、始めようぜ… ズタズタに犯した後、く、喰らってやるよ…!!」

巨躯の割にあわず、圧倒的な跳躍力と、速度でリーゼロッテの間合いを詰め、必殺の魔拳を振り下ろそうとする…!

リーゼロッテ > こうして皆を殺したのかと、狂喜する様子に静かに思いつつも魔法弾での攻撃を繰り出す。
蔦で足止めし、岩の砲弾を叩き込む。
それでもろくなダメージはなく、寧ろ一層凶暴化した彼女がこちらへと突撃しながら拳を振り下ろしてくる始末だ。

「犯されて殺されるぐらいなら自害するから大丈夫ですよ」

そこまでされて生き長らえようとは思えず、決死の覚悟で挑む。
表情は変わらない、狩人のように瞳を青く氷のように冷やしながら拳に対処する。
振り下ろそうとする拳へそれを巻き込んで明後日の方向へ受け流そうと、強烈な風の気流を作り出し、拳の軌道にそれをおく。
引っかかれば、拳は狙いをそれていくだろう。
同時に滑空するような飛距離で脇をすり抜けるように前へステップし、鳥のような素早さで移動すると、彼女へ振り返りながら先程の岩の砲弾を連射したのだ。
回避するなら、回避先に合わせるような精密な射撃をすれば、クリップがピンッ!と音を立てて宙を舞う。
次の増幅弾を装填しながら、加減の一切ない攻撃を繰り返していく。

ご案内:「饐えた瓦礫街」からリーゼロッテさんが去りました。
ご案内:「饐えた瓦礫街」からエアーティさんが去りました。