2016/04/06 のログ
ご案内:「饐えた瓦礫街」にエアーティさんが現れました。
エアーティ > 饐えた瓦礫街。
神すら見放した地区、マグメール王都の膿。
昼でも日の光すら届かず、常に薄暗い。
常に何かが腐ったような匂いが鼻をつき、街を包む瘴気のためか、死体は一人でに動き出し生者に襲い掛かる始末。

そんな場所でも、後ろ暗いもの達には絶好の隠れ家のようで。
大抵のあくどい企みや犯罪は、ここから始まると言っても過言ではないだろう。

そんな腐った場所の、腐った酒場もどきにて。
エアーティは頭巾を被った痩躯の男に詰め寄っていた。

「仕事が無いって、どういうことだよ コラァ!」
痩区の男はエアーティの怒気を受け流すように応える。

ミレー狩りを派手にやりすぎたせいで、拠点のひとつが何者かに破壊される。
おまけに取引先の貴族が何者かによって暗殺されてしまった。
そのせいで、体勢が整うため、しばらくミレー狩りの仕事は無いこと。

『代わりに、こういう仕事あるよ。雲を掴むような話だがね』

店主は1枚の紙切れを出す。「亡霊退治」

『知てるか?噂だがね。ミレー族の中には「亡霊」て呼ばれてる集団が…』

店主の話は長くて、エアーティは半分ほどしか聞いていなかったが、要はこうだ。

実在するかどうかもわからないミレーの亡霊を捕まえろ。

「はっ… 亡霊ねえ… あたしゃ殴れないもんには専門外なんだがなあ」

店主から渡された紙切れを眺めながら、エアーティは腐れた街を歩く…

ご案内:「饐えた瓦礫街」にリーゼロッテさんが現れました。
リーゼロッテ > 里へ無数の旗を立て、農奴として抱えたのだとミレー族達をそんな建前で保護しつつ拠点の流通を強化して数日過ぎた頃。
彼女の言う亡霊にあたるかは分からないが、組合の中でも隠密に事をすすめる部隊の隠れ家の一つに少女は来ていた。
メンバーのミレー族の娘が使う魔法銃の調子が悪いと、修理を頼まれたのだが…技術員を送るわけにもいかず、多少の心得のある彼女がここへと来ることになる。

「終わりました、回路が溶けかかってたところがあったみたいです」

専用の器具で魔力の導線を直し終えれば、小さな隠れ家の中でミレーの少女に差し出す。
回路が焼けていたらそれこそ手遅れだったのだが、パーツの交換と線の引き直しで元の力を取り戻していた。
用事を終えると、それではと笑みで少女達に手を降って隠れ家を出れば、入り組んだ路地を身を包むケープで隠しながら進み、フードもしっかりと被って顔を隠す。
死体が歩き出し、こちらを見れば嫌がるように遠ざかっていくのは、胸に宿した紋章の力だろう。
闇と相反する旧神の残滓が魔を遠ざけ、安全に進むのだが、傍から見ると、死骸達が意図して少女を避けているのが分かるだろう。

(「…こういうところに、この間の襲撃の犯人とかいるのかな」)

里を滅茶苦茶にされた酷い襲撃を思い出す、ここを塒にしているならいっそのこと、ここを焼き払ってしまえばなんて危なっかしい事を考えると苦笑いを浮かべながら、コツコツと歩くのが、亡霊探しをする彼女の視野に入り込んでくるだろう。

エアーティ > (む…)

エアーティが前を見ると、顔を隠している少女が一人で歩いているのを発見する。
この街の敵は亡者共だけではない、悪漢達の溜まり場だ。
そんなところに迷い込んだ少女なぞ、100mも持たないだろう。

…こいつはただモンじゃない

エアーティの野生の勘がそう言っている。

「待てよ」
エアーティは少女の行く手を遮る。
とりあえず因縁をつけてみることにした。

今日の得物は厚刃の片手斧だ。
切れ味は鈍らそのものだが、逆にそれが気に入っていた。
力任せに鎧ごと叩き割る感覚がたまらないのだ。

リーゼロッテ > 周囲に薄っすらと緑色の鱗粉のようなものを漂わせ、心地よい薔薇の香りが少女の周囲に満ちていた。
ここへ足を踏み込む際に発動させた魔法だが、自分の周囲にだけそれを散布しつつ、近づいた男達は範囲を限定されて効果の強まった香りに、瞬間的な催眠を掛けられてしまう。
こちらに興味を示さない、ただそれだけ。
こっちにワザとぶつかって食ってかかろうとした男もいたが、香りに乗せられてペチャパイに興味ないと言われた時はグーで殴りたくなる乙女心をぐっと抑えていたり。
そんなやり取りを見られたのかどうか、不意に掛けられた声は男ではなく女性。
目の前にいるのは男性に近いような逞しさのある女性だったが。

(「女の人だと魔法が聞きづらいのに…どうしよう」)

同性には効果を発揮するのに時間も掛かる。
顔を隠すようにフードの布地を引っ張って目から下を隠しせば、丸く大きな青目が彼女を見上げた。

「なんでしょうか…?」

足を止め、突っかかってきた要件を問いかける。
緊張に高鳴る心音を抑え込みながら、落ち着いて事に当たろうとしていた。